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Attri-tY  作者: ゆきながれ
見つめるべきは、共通よりも個性であった
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氷点火山



「なるほどな。しかし阿木李護甲と接触してたとは想像もできねェぜ」

「俺だってそうです。加えて薗が阿木李護甲と関係していたことにも驚きですし」

いつかの病室、いつかの面子を再現した月の下旬。ほとんど傷の癒えた巡と浩仁が太陽の登り切った天気のいい日に話を交えていた。今の今まで浩仁は気を使って巡から何か聞こうとはしなかった、それは水瀬から『阿木李護甲』の名を聞いていたからというのもある。浩仁自身も混乱したし、何より巡にどう話しかけるかも考えものであった。しかしながらこのままでいいわけもないので、巡の調子が整ったくらいのタイミングを見計らい浩仁は病室を尋ねた次第だった。

話した内容というのは、薗が阿木李護甲にさらわれたというところから薗の話、阿木李護甲の印象といった感じで内容的には少ないものだった。それを補うように浩仁もまた自分の調べてきた阿木李護甲の情報について巡に話した。どうやら阿木李護甲は最強の食す者イーターを生み出すための実験をしていたらしい、食す者イーター開発者トップクラスの一人であった彼ならではの行動だろう、食われるモノミートという存在がいる以上そう思うのは至極真っ当だと思う、しかし彼はやり方を誤った。長い目で見ればこれから世界の将来に関わる食われるモノミートとの敵対関係を、少しでも有利にしたかったとはいえ水瀬薗を含め沢山の人を傷つけたのは許されていいはずかない。

次いで話された情報が、だいぶ前に阿木李護甲が食す者イーター開発の団体から脱しているということだったのが巡にとっては何よりも気掛かりで、しかし巡の感じた彼の印象と何か結びつきがあるのかもという気持ちがほんの少しだけ阿木李護甲という男に関しての話を進めさせたかもしれない。形はどうであれこの男は警戒するべきだというのが浩仁の言い分であり、巡もまた同意見を放ってその日は解散し、週末の連休にあわせて巡は退院し自分の家へと戻ってきた。

若干埃っぽくなってしまった部屋を、長い間横になっていた身体を慣らす事を含め掃除していた時、部屋のインターフォンが鳴らされた。相手はしばらくぶりの、お隣さんだった。


「お父さんに、見舞いはできれば行くなって強く言われてたんです……水瀬さんにも同じこと言われていて」

阿木李護甲について知っている浩仁ならではの言葉と、深く関わりあいをもった水瀬に言われて宮前も従うしかなかった。でもただ素直に、というわけでもなかった。宮前は二人から少なからず今回の件と、巡や薗、阿木李との関わりを意地でも聞き出していた。

「色々、あったんですね」

「聞いたのか」

「はい……直接聞けないのならせめて2人からと思って……すいません、話したくないから隠していたのはわかっていたのに」

「違うんだ、俺もいつ話せばいいかわからなくて」

「そう……なんですか」

宮前はその言葉に少しだけ安堵した。阿木李護甲について知らないのが自分だけだったため疎外感を感じていたし、なにより力になれなかったこと、頼ってくれなかった事が残念だった。もちろん巡たちにそんな余裕がなかったのはわかっている、それでも宮前は、結果的に何もできなかった自分に俯いてしまった。そして反面、彼の強さを改めて目にした宮前には抑えられない疑問が芽生えていた。

「レベル3の食われるモノミートは、Bランクの食す者イーターが一撃で倒せるものなのでしょうか」

「いや……そんなことはないよ」

巡は、その答えが自分を例外に置くという意味になるのを理解して言った。

「それでも巡さんは正式にBランクとされています。ご自身で能力ティを抑え、実力を隠されいるのかもしれませんが……」

「それもないんだ。俺は本当にBランクの食す者イーター、試験ではどんなに頑張ってもAランクには届かない」

「……私はその言葉を疑うつもりはありません。きっと巡さんは、特殊な何かをお持ちなんですね、それを詳しく聞くつもりもありません……ただ、巡さんの中にある特殊なものが、今回のような事態につながっている、あるいは巡さんの日々に問題を与えているのでしたら、私は力になりたいんです……」

自分にはどうすることもできない食われるモノミート、きっと少しの戦力にもなれないAランクの食す者イーターとの戦い。目にして耳にして、宮前の中では自身の未熟さが膨張し、張り裂けてしまいそうだった。それでもなお宮前は力になりたいと口にした、できることがなくても……

(巡さんという人と……私はこれからも関わっていたい……)

それは自己中心的だとわかっていた。できることがないくせに、自分には関係がなかったかもしれないのに、自分の知らないところで巡が血を流していることを見過ごすことが、どうしてもできなかった。

(あぁ――これは)

久しぶりに巡と会って、間近でその顔を見て、宮前はそっと悟った。

これはなんて、厄介な感情なのだろう、と。


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