共存部 8
能力審査当日、巡はいつもどおりの時間に起きて朝食を済ませ家をでた。もう何度目かだが扉を開けたところで宮前と待ち合わせをしている、今日はさらに水瀬も一緒だ。昨朝に目を覚ました巡はとりあえず現状に至るまでの経緯を思い出し落ち着いてから水瀬を叩き起こして脱衣所で着替えさせその間に朝食を作り、身支度を終え脱衣所から水瀬が出てきたのと同時に家のドアを誰かがノックしたので、フライパンを振るっていた巡に気をつかった水瀬が代わりに応対しようとドアを開けたらそこに立っていたのは宮前で、突如痙攣とも言えるほどの震えを発症させどこの国の言語でもない発音を繰り返しながらもちゃんと靴は脱いで巡の前までかけつけ、訳の分からない言葉を並べながら彼の胸ぐらを弱々しく揺さぶり、その結果金曜日の特訓は宮前の部屋で行うことになったのだ。ともあれ、その夜巡は一人で安眠することができた。万全で能力審査当日を迎えられたのだ。
「おはよ」「おはようございます」「おっはよ~!」
挨拶を交わし学校への道を行く、宮前はいつもの制服姿だが巡と水瀬はジャージをまとっている、水瀬の胸元には宮前の名前が書かれていた。
「アヤ体操服ありがとね~」
「いいです、私が貸さなかったら巡さんのを着るつもりなんでしょうし」
「メグルのかぁ~ぶかぶかだろうけど着てみたいなぁ、アヤのは逆に少しちいさいカモ?とくに胸のあたりが」
(お、ゴング取り出すか)
水瀬は彼女に恨みでもあるのだろうか。ガクっとなにもないところで転びそうになるが、無駄に浩仁の体術で綺麗にバランスを取り戻した。
「わっ、私だって無いわけじゃないですよ!」
「ふぇ? あっ胸のことお?わかってるよアヤが見た目以上にあるっていうのは~」
「ちょっ、そんなこと町中で平然と言わないでください!」
「でもー、キツイってことはあたしのほうがあるのかな」
「」
(精神攻撃は基本なんですね)
男の巡でも宮前の心境は察することができるのに。水瀬薗という人物はどうやら本物の天然というやつらしい。
「でもまー胸なんてあっても邪魔なだけだよね~」
「生きていく気力を失いました」
「諦めないでくれ」
「どうしたのアヤ~?」
「お前はちょっと黙っててくれよ」
「お前じゃない~、ぶぅ」
沈んでしまった一人と膨れてしまった一人を連れ巡は校門をくぐった。昇降口の大きな掲示板に能力審査について印刷された用紙がいくつか貼られていたので目を通してみると去年同様体育館に集合とのことだった。三人は1階の体育館まで足を伸ばし、正式なバスケットボールコート3つ分はある巨大な体育館の、いくつもの壁で区切られた一番手前の小部屋で受付を済ませた。
「もう始まってるんだぁ。てか名簿に結構チェックついてたね~、みんな来るの早い~」
「自分の力量は知っていきたいんだろうな、薗だってそうだろ?」
「んまね~」
ワンテンポ遅れて宮前が後をついてきて「見学、していいみたいです」と許可を取った旨を二人に知らせる。
「んじゃあ行きますかね~」
水瀬を先頭に次の部屋に入るとこれまた去年同様、広い空間に長机が何台も横に並べられそこに生徒が等間隔で立っている。隣の生徒が見えない程度の壁で区切られ、生徒たちはそこから10メートル離れた直線上にある、各テーブルに置かれた30センチほどの黒い球体を各々の能力で狙うのだ。ここにいる食す者はCランク以上、つまり開花した生徒全ての生徒がまずはこの審査から始めることになる。
「……はぁ!」
待機列に並びながら宮前は一人の生徒を興味深そうに見ている。その生徒は自分の手のひらを上に向けて前に差し出し、そこに意識を集中させるようにして力んだ声を出した。少しだけ髪の毛がなびき手のひらに赤い光が集まっていく。ここにいる生徒はどういった審査内容なのかを当日に説明されるが、実はだいたい皆知っていたりする。というのも毎年大きな変更がないため先輩などから聞いた情報を信じておけばなんとなく似た審査方法とぶちあたるという寸法で、巡は前夜に水瀬と宮前を含め自分のわかる限り審査内容について話しておいた。最後には噛み砕いて言えば、全て的当てだとも付け加えて。




