共存部 2
「っと、うおい……」
豪快な飛びつきだったので避けるわけにもいかず抱き止める形になる。
「いっちばーん!! あははははっ」
そしてその二人を囲むように団体の輪が出来上がっていく、周りの景色が完全に見えなくなる前に校門にいた宮前が飛び出そうとして校門の鉄骨にすねをぶつけていたのが見えた。
(~~~! あの女の子、いったい誰ですか……!!)
そんな一人の少女には誰も目をくれず大勢の男女は巡にずいずいと迫っていった。
「さあ巡くん! 赤ノ平能力部に入ろう! あと水瀬は離れろ!!」
「片山、キミの力が必要なんだ! 水瀬はさっさと離れろ!!」
「片山さん……お願いします、我が部の力に……水瀬はさっさと離れなさい」
「みんな勧誘より片山爆発しろとか思わないわけ? あの水瀬に抱きつかれてるんだよ? ねぇお前らおかしくない?」
「赤ノ平能力部に入ろう!!」
「今誰か関係ないこと言ってたぞ、薗もいきなり飛びつくな危ないから」
「ごめんなさーい、だって競争は一番にならなきゃ……でしょっ?」
「競争じゃねーだろ今の」
「あたしの中ではオリソピック決勝だったりして」
「あー話がややこしくなる! 水瀬はもう教室に戻ってくれ!!」
「――いいや、戻るのはお前ら全員だ」
そこに、ようやく助け舟がきた。取り囲まれているというのにその姿は簡単に確認できるほど巨大な舟だ。最近ここの教師になった手に入れる者の浩仁、巡の入院中に朝会で挨拶をしたらしい。みんな彼のことを浩仁センセーと馴れ馴れしく呼んでいた。
「朝の勧誘は他の生徒の迷惑になるだろ、さっさと教室に戻れ」
「す、すいません」
「あと言っておくが、ソイツはもう部活に入ってるぞ」
「なっ……それは本当かね片山くん!」
「本当だよ」
「メグル部活はいってたの~? じゃあ…昨日はサボりだね?」
「ちげーよ、てかそろそろ離れろ」
「はぁい」
「このチビが口を開くと話がややこしくなるな」
「センセーもそう思います?」
「あはは~」
「俺からしたらあんた達全員やかましいわ、俺は能力部には入らないぞ」
「そんな……」
「どうしてだい巡くん!」
「だーもう次々に喋んな、筋肉先生はやく何とかしてくれ」
「誰が筋肉先生だ! 能力部にブチ込むぞ!」
「えっ、あれっ?」
それでいいのか浩仁さん。
「そうだ浩仁さん、校門の方で綾が膝を抱えて倒れてい」
「わあああああがああああああああああむううううううううすううううううううううめええええええええええよおおおおぉぉぉぉ……」
言い切る前に走り出し、みるみるうちに小さくなっていく浩仁。その変貌に能力部の男女全員の視線が釣られ、お姫様抱っこしようとして顔を真赤にした宮前が教師に思いっきりビンタを食らわすというシーンを見届けている間に、巡は氷の足場を創ってその人の輪を飛び越え昇降口まで来ていた。何故か水瀬までついてきている。
「メグル、毛先白くなってる、すごーい」
「お前だって能力つかったら変わるだろ」
「ぶぅ、お前じゃない」
「薗な、わかってるよ」
「それでよ~し。あたしはまだBになりたてだから能力を発動してもそんなに容姿は変わらないの~、変わったとしても髪はもともと藍色だからわかんないカモだし?」
「なるほど」
「なるほどしてくれたみたいでなにより、ではあたしはこっちだからばいばーい」
「ん、じゃあな。あんま暴れんなよ」
「暴れてなんかないよ、それじゃあね~」
そうして人が全員去ると、ものすごく静かに感じた。それほどまでに騒がしい登校だったということだ。もう二度となくていいと巡は階段を昇っていくと、その背後を「保健室!保健室はどこだァアァァァァァァァ!!!!」という声が通り過ぎる。
(ホンッと騒がしい……)
潜り込んだ教師とはいえ、クビにならないか心配になる巡であった。




