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EYES  作者: 早村友裕
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1.旅立ち

かなり昔書いた文章のバックアップ用です。

いろいろひどいです(笑)

「ウェスタ王!ウェスタ王!ついに王子がお生まれになられましたぞ!」

「おお、そうか!」

「母子共にお元気だそうです。おめでとうございます。」

「会えるのか?」

「はい。今すぐにでも!」

王宮内に喜びの声があふれた。待ちにまった王子の誕生だ。

「アークル!でかしたぞ!」

「ウェスタ。」

王妃が赤ん坊を抱いていたが、その表情は暗い。

「!」

王にもすぐその意味が分かった。

「GOLDEN EYES・・・。」

その王子の瞳は金色だったのだ。部屋にいた全員が一つの伝説を思い出す。

―― GOLDEN MEMORY・・・!

「金色の思い出」と題されたこのデルタス王国の伝説だ。

「おお!何ということだ!我が子にこのようなことが!」

「ウェスタ王・・・。」

「ウェスタ。この子に名前を・・・。」

「あ、ああそうじゃったな。」

王はこの不幸な我が子にと、一心に考えた。

「アキリア・・・はどうかの。」

「いいですね。東方の伝説に出てくる太陽神の名前でしたか?」

「アキリア・・・この運命を乗り越えられるのかしら・・・。」

両親の悲しみを知ってか知らずか、赤ん坊は静かに眠り始めていた。

青い瞳と茶色の髪の人種ばかりのデルタスで、金色の瞳が意味するものは、GOLDEN MEMORYの伝説以外のなにものでもない。それはこの王国の誰もが承知している事だった。


黄金の瞳をもつ王子

この世に生を受けしとき

王国は危機にさらされる

碧い瞳・漆黒の瞳の龍の導きによって

GOLDEN EYESの偉大なる力目覚めさせ

定められし運命を乗り越えよ


その直後、デルタスのある街にも青以外の瞳をもつ赤ん坊が誕生した。それもまた、アキリアの運命によるのだった。

「青い瞳と黒い瞳・・・。」

周囲は愕然とした。

「GOLDEN MEMORYの伝説の龍だ!」

両親は必死にその子をかばったが、とうとう王宮に連れていかれてしまった。その幼い赤ん坊の名はまだない。青い瞳と黒い瞳をもつ、生まれて間もない女の赤ん坊・・・。




「アキリア。お前に話さねばならない事がある。」

「何ですか?」

アキリアが14歳になった時、ウェスタ王はすべてを話す事を決意した。使い獣の<アキラ>を隣に従えて。


この国では、使い獣と呼ばれる妖獣を連れる人が多い。妖獣は普通の動物が妖力を持ったもの、妖魔はもともと妖力をもって生まれる種の事だ。使い獣には、妖獣の方がむいている。もっとも妖力が高いのは、妖魔の方だが。

アキラは普通より少し大きい妖鷲で、火を吐くこともできる。特に賢く、人間の言葉も理解するようだ。


そこへアキリアがやってきた。金の瞳、金の髪、整った顔立ちで、すらりとした体格。少し気の弱い所もあるが、人を引き付ける何か不思議な雰囲気がある。

「立派になったな、アキリア。」

「ありがとうございます。」

「お前に話さねばならぬ事というのは、だな・・・。」

ウェスタ王はGOLDEN MEORYの伝説の一部を話して聞かせた。

アキリアは終始無言で、顔色一つ変えずに話を聞いていた。そして去り際に一言だけ言った。

「俺は・・・運命なんかに負けない。安心してください。」

「アキリア・・。」

残された王が深いため息をつくと、アキラは慰めるように寄り添った。


アキリアはその夜、めったにいかない王宮の裏庭に出た。夜の風が気持ちいい。鳴いているのは、どこの妖魔だろう。

「俺は・・・何をしたらいいんだ?王国の危機とは、何なのだ?」

アキリアの頭の中は、王国の事でいっぱいだった。その時、背後から声がした。

「誰だ?」

とっさに振り向いたアキリアの目に、青と黒の瞳を持った少年が映った。

「メシアじゃないな。名前は?」

「アキリ・・・アキラ。」

そう聞かれてアキリアはとっさに嘘をついた。

「アキラ?へえ・・・。妖鷲と同じ名前なんだな。」

どうやらその少年は、アキリアの事を知らないらしい。アキリアも今までそいつを見たことがない。何者だろう?

「俺はマサキだ。久しぶりにここでメシア以外の人に会ったよ。」

「?どういうことだ?」

「俺、夜しかそとに出ちゃ行けねえんだ。生まれてからずっと。何でかは知らないけど。昼間はいつも部屋にいて、夜だけこの庭にいる。メシアは俺の見張り役だな。」

それでこんなに肌が白いのか。

アキリアは少年を観察した。青と黒の瞳に、黒い髪。整った顔立ちで、透き通るような白い肌に青い石のついた腕輪をしている。背丈はアキリアより少し低い。

「アキラはなんでここに?」

「ん・・・ちょっといろいろあってな。疲れちまったんだ。」

「大変だなあ。」

マサキはアキリアの側にある石に腰掛けた。

「俺も疲れたら、ここに来るんだ。なんか安心するだろ?」

マサキはそういってニカッと笑った。

「ああ。・・・お前、いいやつだな。」

「そうかあ?」

「俺・・・ここから逃げてえよ。」

アキリアは、何か張り詰めていたものが切れた気がした。なぜか涙があふれてくる。

「アキラ・・・?」

涙が止まらない。さっきまで平気だったのに、マサキの声が、なぜか心の中にしみ渡っていく。すごく不安な気持ちがあふれ出してくる。

マサキがアキラの頭をぽんぽんと叩いた。

「アキラ・・・泣きたいの、今まで我慢してたろ。泣きたい時は、泣いた方がいいんだぜぇ・・・。」

マサキはゆっくりゆっくりそう言った。


気づいた時には、空が白みはじめていた。いつのまにか地面に寝かされている。

「じゃ、いくか。」

「へ?」

起き上がったアキリアにマサキは当然のように言った。

「ここを逃げ出すのさ。俺も行くから。」

マサキの両目がキラキラと輝いた。アキリアは昇ってきた朝日を見て、決めた。

「ああ、行こう。」

2人はそのまま王宮を抜け出した。


「ウェスタ王!ウェスタ王!」

「何事だ。」

「アキリア王子とマサキが王宮を抜け出したようなんです!」

「アキリアとマサキ・・・?はっはっは・・!放っておけ。GOLDEN MEMORYの伝説どおりじゃないか!アキリアはこの国を救いにまた戻ってくるだろう!」

「ですが、ウェスタ王・・・。」

「まだ何かあるのか?」

「それが・・・王宮の金庫から黄金の板ばかりが盗まれているんです!ダイヤやルビーは手付かずのままなのですが・・・。」

それをきいてウェスタ王は心の底から笑った。

「アキリアめ!なかなかやりおるわ!」


そのころアキリアは黄金の一部を売り、街の外れで待つマサキのもとへと急いでいた。

「アキラ!遅いぞ!」

「すまん。」

瞳をきらきら輝かせているマサキの横顔を見て、きのう夢うつつに思った事を聞いてみた。

「なあ、マサキ。」

「なんだ?」

「お前さ・・・女だったのか?」

マサキは驚いた顔で言った。

「今更気付いたのか?」

こんな言葉づかいの、こんな性格の女がいるかよ!危うくアキリアはそう叫ぶところだった。

「いこうぜっ。」

「あ、ああ・・・。」

最初の目的地アトリアの港町に向けて、二人は出発した。



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