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これが九降士。

いつからかだろうか。

もう思い出せない。


悠久の時の流れの中で儂は考えることをやめてしまった。



あれは、何時頃だったか。

ただ暑い日だったのだけは覚えている。



まだ、儂が子供の頃の話じゃ。

儂は村の外れに母1人、子1人で住んでいた。


「母よ、ダメだ。まだ、逝かないで!!」

母の優しい囁きが聞こえる

慈勇(ジオ)、私の大事な坊や。

気にしないでおくれ。

私は後悔してないのよ。

ただあなたを置いて逝くのがつらい。」

母は、息絶え絶えに話す。


昨晩、モノノケ(モンスター)達に襲われ辛くも逃げ延びたふたりだが、母は俺を庇い大ケガをおってしまった。


「ごめんね、ごめんね、ごめんね。」

母は、謝り続けた。

こんな時代に子1人残して黄泉に逝くのを。


やがて、母は、息たえた。

この時、ジオ若干8歳。

真夏の暑い日だった。




ジオの胸に残るは母への思いと、母を救えなかった自分への怒りだった。

ジオはこの時よりモノノケ達を滅す事のみに、命を捧げる事を決めた。


しかし、8才のジオには、モノノケ退治ができるはずもなく、ただ無駄に時間だけが流れていた。


そんな時、村にはあるモノノケ達が溢れていた。

殺の河螺(サイノカワラ)

猫くらい大きさの蜂である。

頭と尻に針を持つ獰猛なモノノケで集団で行動、攻撃を仕掛けてくる。


村では母以外にも多数の被害者が出ていた。

村長は、なけなしのお金を集め、遠方の九降士(クダシ)を呼ぶことを決めた。


九降士。

九つの(ことわり)を持ってモノノケを滅する((くだ)す)特殊技能士集団である。

理とは力であり、知恵であり、武器であり、言霊である。

九つに枝分かれした特殊技能(能力)保持者。

これらを扱いし者達を畏怖を込めて、九降士と呼ぶ。


九降士達は村長の要請から、10日後姿を表した。

この度、村長の要請で村に来た九降士は三名だけだった。



村長が九降士三名に今回の依頼内容を説明する。

「今回、この依頼を担当する一士、志熊(シグマ)です。

よろしくお願いいたします。

こちらが三士の水言(ミコト)、六士の源磨(ゲンマ)です。」

シグマ以外の二人が頭を下げる

シグマは中肉中背の優男、腰に長刀と短刀をぶら下げている。

ミコトは、幼さが残る顔つきで腰に扇子を下げている。

ゲンマはずんぐりむっくりの体型、拳に銀手甲をし回りに愛想を振りまいている。


ゲンマがシグマに「シグマ!そろそろ、行こうかねっと。」

「だね」と相づちするミコト

「あぁ」、シグマが答える。

ジオは、茂みに隠れ、話を盗み聞きし先回りする。

彼らの向う、サイノカワラの巣へと。


3時間程歩いただろうか、目の前に大な巣穴が現れる。

シグマ、「ミコト!支援の言霊を!」

「おっけ!」

ミコトが腰の扇子を外し舞う。

(なんじ)!我の言葉に耳を傾けよ!

この言霊はそなたを守る盾であり、剣である。水衣(スイ)!」

シグマ達の体を水色の光が包む。


「ヨシ!」と

、ゲンマが吠える。

するとゲンマの銀手甲がオレンジ色に輝きだす。

ゲンマの気が銀手甲に集まる。六士の基本技能、「溜め(集中)」である。



シグマは長刀を軽く持ち、前にでる。

「いざ!推して参る!」

ゲンマが全長5メートルの巣を横から殴る。

百華弾(ひゃっかだん)!」

巣穴からサイノカワラが驚いて出てくる。


そこをミコトが舞ながら言霊を使う。

「我!汝を深き眠りに誘う!霧である!

眠霧(ミン)

何体かのサイノカワラが地面に落ち、眠っている。


シグマは眠らなかったサイノカワラを一体ずつ倒していく。ゲンマも後に続く。

小一時間で、サイノカワラを全滅させた。

「楽勝!楽勝!」ゲンマが両手を挙げ、勝ちを宣言する。


シグマ一行が町に戻り村を離れようとした時、ジオが道を塞ぐ。

「お、俺を、俺を、連れてってくれ!母の無念!、いや強くなりたいんだ。」


シグマ一行はジオを一目みて、無視して進もうとする。

ジオはもう一度シグマの前に立ち、「俺の覚悟は本物だ!」と手にした小出刃(こでば)で腹を刺す。

痛いはずなのに涙を見せず、真っ赤な瞳で、シグマ達を見据える。


シグマが口を開く。

「お前の思い、しかと受け止めた。」

ジオは、緊張が解けたのかその場で気絶した。

シグマ一行は、ジオの回復を待ち、村を後にした。



「ジオ、これから九降士が住む九蓮山(くれんざん)に向かうよ。」ミコト姉さんが言う。

九蓮山、九つの理を学ぶための霊峰。

その一つ一つが九降士達の修練場であり、理を極めし者が九降士に成れる。


九蓮山に着くまで一番仲良くしてくれたのはミコト姉さんだった。年も近いこともあり、ジオを弟の用に接してくれた。

2週間後、ジオ達は九蓮山へとたどり着いた。


先ず、ジオが連れていかれたのは士練堂(しれんどう)である。

ここには九降士の長、十師(てんし)のウーエ様が鎮座(ちんざ)している。


シグマ一行は、今回の事後報告をしている。

「これが、今回入門したジオです。ウーエ様。」

紹介されたジオは、深くおじきする。

「フムフム、お前の話は聞いておる。負の感情に飲まれず精進しなさい。」

「ハイ!頑張ります!」もう一度ジオは深くおじきする。

「では、これにて。」シグマ一行は士練堂を後にする。


ジオはミコトに連れられて士練堂の離れにやって来た。

ミコトはジオにこれから、どの士(職業)に就くか訊れた。

九降士は、大きく分けて戦士系、術士系に別れる。

戦士系は、一士(武士)、二士(弓士)、六士(拳闘士)、七士(軽業士)。

術士系は、三士(言霊士)、四士(召還士)、五士(導士)、八士(賢士)、九士(元素術士)。

それらを全てを極めし者が十師(天士)である。

士を極めればいずれ、師となる。


九降士になるには並々ならぬ努力、気力、根性が必要である。

ジオは、九降士見習いとして九蓮山での修行が始まった。


修練場には、幼い子ども達が九降士になるために勉学に励んでいた。

修行は座学に戦闘訓練。武器の取り扱い方といろいろである。


ジオが13歳の春先であった。

ジオには2つ年上の兄弟士あにでしがいた。名を慈府ジフと言い、ジオを実弟の様に面倒をみていた。


そんなある日、ジフはジオを連れて九連山の中腹ある薬草採りに出掛けて時だった。

必要な数の薬草を採っての帰り道、その事故は起きた。ジオが足を滑らせ谷に落ちたのだ。ジフは慌ててジオを追いかけた。


落ちた所は小酸魚シャオの住処だった。

シャオは体長1メートル、体液の7割が酸でできている。己に危機が直面した時、口から水鉄砲の様に酸を吐く。

ジオは足を挫いており、ジフはジオの元に駆けつけたもののなす術がなく、ただ威嚇をしていた。

ジフは三士見習いである。「汝、我が言霊を聞き入れよ!気楼キロ!」

またたく間に、ジオの体が透けていく。

キロ、モノノケより、見方を認識できなくなる言霊。

その間、ジフはシャオの攻撃を受け、体の半分がただれていく。

「ジフ兄、逃げてくれ」ジオの願いも空しく、ジフは膝をついた。

ジオはただ、冷たくなるジフを見ているしかなかった。

一時間後、救助の一士によりジオは救出された。

この事故によりジオは大切な人をまた失い、力を欲するようになった。

そして一士を目指す様になる。





時は流れ………………7年後。


ジオ15才の冬である。

九士見習い卒業試験前日。

ジオは、布団の中で眠れずにいた。

(明日、やっと見習い卒業試験を受けられる)

普通10年の修練の後に試験資格が与えられる。

しかし、ジオは寝る間も惜しんで修練しこの資格を7年で手に入れた。

卒業試験は九蓮山の頂上にたどり着く事。

しかし、山道は険しくモノノケも多数現れる。

この試験で命を落とす者も多いと聞く。

ジオは不安で、眠れなかったのだ。


試験当日。


九蓮山の大蓮門(だいれんもん)の前には沢山の受験者で溢れていた。

ジオは背中に大剣(両手剣)を背負い、腕に赤の布を巻いて始まりの鐘を待っていた。

「ドーン!」鐘が鳴り、ウーエ様が卒業試験の始まりを告げる。


卒業試験が始まった。

ジオは無理せず自分のペースで登っていく。山の一合付近で洞窟が表れ、受験者は我先に中に入っていく。

入口で佇む人影がある。


ジオは気になり足を止めた。その者は、ジオと同い年位に見えた。

腕には茶色の布を巻いている。七士である。

七士、別名軽業士(かるわざし)。トリッキーな動きで敵を翻弄する。

近付くと1人微睡(まどろ)んでいる。ボーイッシュな髪型だが確かに女の子であたのま背と腰に短剣、短刀を下げている。


女の子はジオに気づいたのか、欠伸をしながら微笑む。

「アンタ、ジオだろ。おいらは沓伽(トウカ)って言うんだ。ジフ兄にアンタを手助けしてくれって言われてて。ここで待ってたんだ。こいつは洸太(コウタ)、五士さ。」

トウカの後ろに隠れていた男の子。腕に白い布を巻いている。

五士、別名導士。導術により他人の傷、怪我を癒す。

三人は中へと入っていった。

ジオとトウカは同じ位の背丈だが、コウタは一回りも背が低い。

コウタは腰に短杖(ワンド)を下げている。


この試験、特に1人で登頂する必要はなく、集団での登頂もよしとされていた。

洞窟の中はひんやりと肌寒い。

通路には、申し訳ない程度の明かりがついていて、足下も湿って滑りやすくなっている。

道は曲がりくねっており、先が見えない。

小一時間、歩いただろうか。

踊り場へと三人は着いた。


そこには5体の(オニ)、モノノケ達がいた。

オニは背が低くすばしっこい。

赤い肌をしているがこの角は黒い。

どうやら、試験官(四士)の使役獣らしい。


角はおのおのが武器を持っている。

それは小斧、木棒、小剣、小鞭、小弓だった。

試験官が、叫ぶ

「君たちの実力!見せてもらおう。

行け!オニ達!」

オニ達は、陣形を取りながら間合いを詰めてくる。


コウタが、小さくワンドを振る。

炸裂光ライトパニッシュ!」

オニ達の前で光が弾ける。オニ達が怯む。

すかさず、トウカが背中の短剣をオニに投げる。小弓のオニがうめき声をあげ、消える。

ジオも大剣で、小鞭のオニを切る。残りは三体。

トウカが背中に残った短刀をオニの影に刺す。

刺影(しっえい)!」オニの動きが止まる。刺影、別名影縫いとも言う。

オニ一体が身動き出来ない間に、ジオが、残りを一刀両断。

最後の一体は、トウカが止めを刺す。


無事試練をクリアした。


ジオ一行は、山頂にたどり着いた。

そこには石で出来た開眼陣(理定陣)があり、試験官が、話始める。

「この陣は、己の目指す理を開眼するためのもの。自分の中の理に耳を傾けよ!」

コウタ、トウカ、ジオの順で陣の中央へ進む。

コウタの胸元が、トウカの手の甲が、ジオの肩におのおのシンボルカラーの紋様が浮かんでは消える。

「これにて開眼陣を修了する!」「お前達、今までご苦労だったな。しかし、この儀式は、九降士になるための入口にしかならない。より精進し、己の理を極めよ。」


三人は深く礼をする。

かくして、ジオは一士の剣士に昇格した。


それから………5年後。


物語は、新たな局面をむかえる。


                完

初めての小説のため、誤字、脱字等有りますが、追々訂正します。

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