第七話
「おい、どうするよ? 蓮・・・」
「どうするって言ったって」
国王なんて感謝状なんて貰うなんて恐れ多い・・・・。でも、気が付いたら、城の前なんだけど!?白く巨大な綺麗な城。昔来た事はあるけれど・・・。
「絶対に何度来ても慣れないよなぁ」
俺はそんな事を言いながら溜め息を吐くと、霧也さんは苦笑いを浮かべる。そして本当に申し訳なさそうに、俺達に向き直った。
「本当にごめんな、二人とも。国王、言い出したら聞かないんだよ」
霧也さんや俺の父さん、嵐の親父さんは国王陛下と昔馴染みらしい。名前で呼び合う仲だったらしいが、父さんが話していた話であって、俺は全く信用出来ないんだけど。嵐の親父が言うには、『もっと国王としての自覚を持てば文句は言わないが・・・』だそうだ。いまいち、どんな人なんだか予想が出来ない。でも・・・。
「言い出したら聞かないって言うのは、俺の父さんも変わらないか・・・あの馬鹿、今どこにいるんだか・・・」
俺の父さん、八神俊と言うんだが、極秘任務という名目で出ていったきり・・・全く帰ってこない。俺の家は母さん名前は八神花と言う。
その母さんが、数年前に死んでしまって、姉さんが留学中と言う事で今は俺一人。まぁ、楽だし、家事は普通にこなせるから苦ではないんだけど・・・父さんがいた時は本当に地獄だった。いつだったか、小さい頃に千尋の谷に突き落とされたり、魔物の巣窟に一人放り込まれたり・・・数えたらきりがない。
破天荒で天の邪鬼、悪逆非道の傍若無人・・・そんな言葉がぴったりの人間だ。しかし、いなければいないで人様に迷惑をかけていないかとか、色々と不安になる。
「あのクソ親父、帰ってきたらただじゃおかねぇ・・・」
「「・・・・」」
理解はしている。子供が親に向かって放つ言葉じゃない事ぐらいは。でもこれだけは譲れないのだ。
「いっいや、俊さんだって何か考えがあるんだって!!」
「そうそう! 多分重要な任務に就いているんだと思うんだ!!」
霧也さんと嵐が必死に宥めようとはしてくれてる。しかし・・・俺の怒りは収まりそうにない。大事な任務だからと言って!
「本職の国王守護職を放り出してやる事じゃない!!」
「「・・・・」」
「はぁ・・・」
胸に貯まった鬱憤を吐きだした蓮は盛大に溜め息を漏らす。てか、どうしたら、破天荒な親父さんから・・・こんな生真面目な人間に育つんだろうか? 反面教師って言葉があるが、ここまでまっすぐ育つものか?
「わかんねぇ・・・」
俺の言葉に、霧也さんも苦笑しながら頷いている。思っている事は同じのようだ。
「俺もそう思うよ。・・・まぁ、俊さんの話は蓮にも毒だろうから、まずは城内に入ろうか」
「そうですね・・・・」
霧也さんに促され、城の中へ。謁見の間まで凄く距離があるようで、疲れるけどごめんなと霧也さんが言っていた。・・・謁見の間まで行く途中、ふとある事を思い出す。
「なぁ、蓮」
「・・・なんだよ」
・・・さっきのダメージが相当酷いらしい。ヤバいくらい顔が青い。いや、何の為に思い出したんだよ。この暗い蓮の雰囲気を払拭する為だろう!
「昔、親父達のツテでさ、城に来た事あったよな?」
「ああ・・・あったけど。それがなんだよ?」
こいつ、昔っから自分の事になると鈍いよな。鈍感って言うの? 事の発端は七歳くらいの時か、蓮と共に親父達の仕事場であるここ、城に来た事がある。その時に城にいた同い年か、少し年下くらいの子と出会い遊んだ。こいつの分かりやすい性格の為、俺はすぐに分かったんだ。
「あの時に会った初恋の子に会えるかもって言ってんだよ!!」
「っ!?」
はいはい、予想通り。顔も耳も真っ赤っか♪本当に分かりやすい。
「ばっ馬鹿! そんな昔の事なんて! あっちは覚えてるはずがないだろ!?」
茹で蛸のようになりながら、俺に蓮はそう言って俯き出す。自分で言って悲しくなったんだろう。当たり前だよなぁ・・・当の本人は、その時の事が忘れられなくて、今の今までモテるくせに彼女いない歴=歳の数。
「それに・・・あっちは俺の事なんて本当に忘れてるよ」
「ネガティブだよなぁ、お前」
「自覚はある」
ありゃりゃ・・・。
こんなにネガティブな主人公もあんまりいないですよね?っていうか、ヒロインの子もずっと待ってるんですねwww(二話参照)まぁ、次回は再会編かな?頑張ります。