ランチタイムに、グラウンドに行く
ランチタイムとなり、私はご飯を食べる前に、彼のところに行く。
「どうした? 外に買いに行くのか?」
「違う!! グラウンドに行こう!!」
「え? 何で?」
「有名人が来ているんだって!!」
「そんな話、聞いていないぞ」
「いいから行こう」
彼の腕を引っ張り、私はグラウンドに向かう。
外は太陽が大暴れするように、熱い手を伸ばし続ける。
どっと汗が出てきたが、それよりも有名人に興味をもった。
白い作業着姿の男性。
40代くらいだろうか。
ペンキを大きく広げた紙にぶちまけたりして、楽しそうにしている。
私はキラキラ瞳を輝かせ、彼の腕を嬉しそうに揺らす。
「私達もやらせてもらおうよ!!」
「え!? 俺達、制服姿だぞ!?」
私は彼に指摘され、動きを止める。
「あ、そうか。ジャージで来れば良かった」
私は残念そうに指をぱちんと弾く。
むーっと悔しそうな顔をしていると、彼が頰を突っいてくる。
「何?」
「可愛い顔でいろ。分かったか?」
「え…。私、ひどい顔をしていた?」
彼が肯定したので、私はガーンと音がしそうなくらいショックを受け、スカートのポケットに入れた鏡を使う。
「えっと、えっと、大丈夫!!」
スマイル、スマイルと意識すると、やはり好奇心が勝つ。
「少し一緒にやらせてもらおうよ。楽しそうだし」
「汚れない程度にな。あんまりひどいと、母親に怒られる」
「分かった」
私は嬉しくて、腕を振るうと、筆を使っている男性に声をかける。
「あの!! 私達もまぜてください」
「え? 何? 興味あるの?」
「あります!! 本当に少しでいいので」
私は両手を合わせ、男性に頼み込む。
彼が横から、
「どうしてもやりたいって聞かないので、お願いします」
と言うと、男性は腕を組み、うーんと唸ると、私達を交互に見てくる。
「彼氏と彼女?」
「そうです」
「いいね、青春、しているね」
男性は少年のような笑顔を浮かべると、ペンキなどを顎で示す。
「いいよ、少しだけなら。そこのペンキや筆を使って」
いたずらする子どものように、楽しく言ってきたので、私と彼は素直に喜んだのだった。
「ペンキを思いっきりぶちまけたいです」
「何? ストレスでもあるの?」
目を細める男性に、私は負けじと見つめ返す。
何か試されているような気がして、ここは挑戦にのるべきだと判断する。
「よーし!!」
私は手を挙げると、ペンキの入ったバケツを持つ。
「うおりゃあ!!」
何も考えず、紙にぶちまける。
その気持ち良さといったら。
まるで太陽が紙にまで伸びてきたような赤色。
見ているだけで興奮してくる。
彼は少し躊躇していたが、私がはしゃいでいるのを見て、ペンキに手をつける。
青色は空よりも濃く、強烈なものとなり、私は彼もやるなとにやりと笑う。
「ライオンさん、ライオンさん、もっと派手にやろうよ」
私はそう言うと、制服が汚れても構わなかった。
彼は冷静になろうとしているらしく、私をじっと見てきたので、「早く!!」と手招きする。
「その歳で遠慮しない」
男性にも発破をかけられ、彼は「よし」と腹をくくったようだった。
「イェーイ!!」
彼がペンキをぶちまけると、大きな人の顔に見える。
「うわ、楽しい!!」
彼の言葉に、男性が声を立てて笑う。
「楽しまなきゃ。時間がもったいない」
「はい!!」
彼の楽しい姿を横目に、私は靴下を脱ぎ、足跡を作っていく。
本当に3、4歳に戻ったかのように、自由にアートしていく。
楽しい、楽しい、楽しい!!
心の声が紙の上に表れる。
そのうち、皆が集まって来たので、男性は声を張り上げる。
「皆、楽しもうぜ!! 好きにしていいよ!!」
わあっと人だかりができたので、私と彼は隅に移動する。
「ああ、気持ちが良かった」
「そうだな。お礼を言うか」
男性は作業着自体がアートのようで、目立っていた。
「ありがとうございました。楽しかったです」
「それは良かった。また遊ぼうね」
手を振られたので、私と彼も笑顔で振り返す。
「皆、来たから、ご飯を食べに行こう」
「その前に、うさぎさんの肌と足を洗ってあげないと」
私の色づいた腕と足を見、彼があははと笑う。
「またやろうか」
「おう!!」
2人で男性に頭を下げると、その場を後にしたのだった。




