異音
掲載日:2026/07/05
精肉店の作業場で、高校生のDはアルバイトをしていた。はいってまだ三日目だ。
機械から出てくるミンチ肉をパックに詰めて、ラップをして、値札を貼って、トレーにならべる。
なんだか妙な音がした。ミンチに黒い毛髪のようなものや、こまかい破片、布のような異物がまざる。
挽き肉をつくる機械はとなりの部屋にあった。一度だけ担当をしたことがあるのだが、大きな機械にぽっかりとヒトもはいれそうな投入口があって、そこに材料となる肉をほうりこんでいく。完成品は、ふとい筒のようなところから押し出されて、かべ一枚を隔てたこちらがわに出てくるという寸法だ。
異音の原因をたしかめるために、店長がひとりで隣室を見にいった。すぐにもどってきたが、どこかに連絡するなどはしない。「たまにあることだから」と言って、ミンチのおいしそうな部分だけを両手でまとめる。
「きれいなところだけ選っていくから、D君は気にしないで詰めてって。機械のある部屋には入らないでね。あとでボクが片付けておくから」
店長はDに肉を渡しながら指示をした。
だからDはあの妙な音の正体を、まだ確認できていない。
※このものがたりはフィクションです。
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