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君と風と、花言葉【完】  作者: 新羽梅衣
8.2秒

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 あれ以来、なんだか大和くんと顔を合わせられなくて避ける日々が続いている。山野井によると時々教室にも来ているし、日に日に不機嫌は増しているらしい。誤魔化してもらうのもそろそろ限界かもしれない。逃げ場がないと思うと、いつもの場所にも行けなくなった。


 この封じ込めた感情がなくなる日まで、大和くんとは会わない。会えないという方が正しいのかもしれない。


 そのうち、きっと大和くんも文化祭や部活で忙しくなるから、俺のことばかりに構ってはいられなくなるだろう。


 俺自身も文化祭の準備が始まって、忙しくしていた。クラスとしてはシンデレラの劇をやると決まったけれど、学年でも有名なカップルを主役に推して、なんとか目立つ役からは逃れることができた。


 放課後を部活と文化祭の準備に費やしていれば、自由な時間なんてなくて、あっという間に文化祭当日になっていた。大和くんのクラスは模擬店で、人気者の彼は客寄せパンダにされていたと噂で聞いた。買いに来てくださいね、とメッセージが入っていたけれど、しばらく葛藤して結局行くことはできなかった。


 既読無視したメッセージばかりが溜まっていく。だって、大和くんには早く俺を嫌いになってもらわないと。あのまっすぐな瞳に射抜かれたら、俺が隠している感情がすべて暴かれてしまうから。


 後輩で、みんなの人気者の大和くんを好きになんてなりたくなかった。好きな人に嫌われたいなんて馬鹿げたことを考えているくせに、大和くんからメッセージを受信する度に喜んでいる自分がいる。


 そうして、去年よりも気を張った文化祭は何事もなく幕を閉じた。水野谷たちと回るのは楽しかったけれど、心の奥底に沈めたモヤモヤは燻ったまま。


 「なぁ、遥も後夜祭出るだろ?」

 「……いや、やめとく」

 「は? お前に告白しようとしてる女子が何人いると思ってんだよ」

 「それは……」


 文化祭が終わっても「はい、解散」という流れじゃない。むしろ今からが生徒たちにとっての本番。うちの学校ではメインは文化祭よりも、その後の後夜祭にある。


 文化祭で園芸部がフラワーアレンジメントを展示するのが恒例なのだが、製作途中で出た花の余りを希望者は一人一本貰うことができる。いつから始まったのか、後夜祭でその花を意中の相手に渡して思いを告げる「花告白」が我が校の伝統行事だった。


 去年はありがたいことにいろんな人から貰ったのだけど、最終的に面白がったクラスの女子もノリで渡してきて、大層な花束になった記憶がある。どう考えても悪目立ちしていた、あれは。今年も同じ轍を踏みたくない。それに、俺には――……。


 「ごめん、俺、好きな人がいるからやっぱりやめとく」

 「え、遥!?」


 先生たちがアナウンスを始めたタイミングで、俺はそう言い残し、人の波に逆らって走り出した。水野谷の驚く声は耳に届いたけれど、足が止まることはなかった。


 はぁ、結局この場所に来ちゃうんだよな。

 自然と足が向かっていたのは、いつもの場所。当然のようにそこには誰もいなくて、ほっと息を吐き出した。


 ここ最近の俺、逃げてばっかりでダサいな。恋は人を臆病にするらしい。いや、俺って元々はそういう気質だったのかも。周りから煽てられて、釣り合ってない人気者の皮を被って、理想の王子様を演じて……。自分で自分をどうすればいいのか、わからない。


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