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地獄の鳥取砂丘

 今日の昼間、仕事中にへたばりかけた。外に立っているだけで汗が止まらなかった。

 最高気温は32℃だったそうだ。体感的にはもっと暑い気がした。


 しかし……もう九月も中旬である。


 昔は九月に入った途端に涼しくなったりしたものだ。

『暑さ寒さも彼岸まで』なんて言葉も現代には通用しない。


 とはいえ夜はいくらか過ごしやすくなった。

 ペットがいることもありまだ迂闊に部屋のクーラーは止められないが、外を歩くと……いや、まだムシムシするな。


 鳥取砂丘の夜がとても涼しいと聞いた。

 ネットに『寒いぐらい』と書いてあった。


 幸い車で砂丘まで40分のところに住んでいる。

 涼しさを求めて行ってみることにした。




 一人のドライブは楽しいものだ。

 誰も私の大好きな中国語の歌を嫌がる者がいない。

 夜の海岸線はところどころ真っ暗で、結構急なカーブもあるが、それもまた楽しかった。

 日本海なんて真っ暗で存在しないみたいに見える。それもまた想像力を掻き立てられて楽しかった。




 松林に囲まれた駐車場に車を停めた。

 ドアを開け、外へ出るなり、私は声を漏らした。


「さ……、さむっ!」


 半袖Tシャツで来たのはまずかった。なんというか凍えそうだ。

 車に積んである仮眠用の毛布を取ると、それを羽織り、砂丘へ向かって歩きだす。



 ヒョオォ……


 ヒョオォォォォ……



 ここは南極大陸か?



 夜とはいえ、明らかに九月中旬の気温ではなかった。たぶん氷点下だ。私はそのまま砂の上につんのめり、気を失った。



 寝るなぁー



 眠ったら死ぬぞぉー



 そんな声を耳にして、私が意識を取り戻すと、朝だった。

 とはいえまだ薄暗く、声は幻聴だったのか、辺りに人は誰もいなかった。

 

 優しいおじいさんみたいな声だったな……。


 砂丘の夜明けは山のほうから始まる。

 海のほうから太陽が昇ってくれたらいいのになとは思うが、これもなかなか乙なものだ。

 砂紋に赤っぽい陰影がつき、ブラックライトに照らされるように存在が浮かび上がり、それからようやく山の上からお日様が顔を現す。


 私は夜明けの神秘的な景色を放心しながら眺めた。


 太陽がそのハゲ頭を山の頂上に覗かせた。


 昇る、昇る──


 じわじわと昇ってくる。


『秋の日はつるべ落とし』とかいうが、昇る時はのろいものだな。


 そう思って見ていると、いきなりスポーン! と太陽が飛び上がるように昇った。



 カアッ!



 炎のような太陽光を浴びせかけてくる。


 焼ける! 焼ける!


 お肌が日に焼けるどころの話じゃない! まじで焼ける! 焼き殺される!


 私は毛布を盾のように構え、身を守った。




 後にネットで見ると、今日の鳥取砂丘の最低気温は2℃、最高気温は50.1℃だったそうだ。


 もう、砂丘というより砂漠だな。


 しかしここは日本、四季のある国である。





 どうりでラクダさんが紅葉してたわけだ。



 ラクダさん「にひっ」



 

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― 新着の感想 ―
調べてみました所、鳥取砂丘の砂の表面温度は夏場の昼間だと75℃になるそうですね。 砂なので照り返しも凄そうですし、熱中症でダウンする観光客がいるのも無理はないですね。
日本にとんでもない場所が……と思ったらフィクションなんですね! 良かった、良かった…… ……フィクションですよね? この異常気象により現実となってしまった、恐ろしい実話ではないですよね……?
確か香取慎吾さん主演の『西遊記』でのエンディング場面で舞台になった場所でしたよね かなり熱くて、蝿がわんさか居るそうです 熱さに蝿なんて、地獄のナンバーワンですね
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