表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

第六節 白紙の地図

チュン…チュン……(鳥の囀る音)


(真っ白に輝く朝日が…少年を照らす…)


(そして…ゆっくりと…腫れた瞼を開く…)


少年

(結局…あれから寝ちゃってたのか…)


(地面は硬く、背中が痛い。それでも、夢を見た記憶だけが…ほんの少しだけ、体を温めていた)


少年「そろそろ…出発しよ…。」



(小さなバッグを肩に掛け、少年は歩き出す。…その足音は、まだ少しだけ、頼りない)


  ***


少年

「……。水も食料も限られてるし…。どうにかして補充しないと…」


(深く息を吐きながら、木漏れ日を辿るように進む)


(風の音に耳を澄ませながら、少年は水の気配を探していた)


ガサッ……


少年(慎重に近づきながら)

「……?今、何か動いたような…。」


スッ……


ーー草むらから、素早く何かが飛び出る。


少年「……っ!?」


キュウッ!



(小さな生き物が、ぴょんっと跳ねて、すぐに止まる)


ーー茶色い毛並み…長く伸びた耳…丸っこい体…


ーーそう、うさぎだった。


少年

「ビックリした…。あまり驚かさないでよ…マー……いや……もう居ないんだったね…。」


(口に出しただけで、心がきゅっと痛んだ。名前を呼ぶ相手は、もういない)


(それでも、目の前の命が跳ねていくのを見送る少年の目は、どこか温かかった)


  ***


少年

(……今までは、誰かが守ってくれてたんだ。ご飯も、お風呂も、寝床も……全部。

でも今は──自分でやらなきゃいけない)


(そう、誰もいない。この世界で、生きるには──)


ザーーーー……


少年「……。水の音……!水源が近くにあるんだ!!」


(嬉しさを隠しきれず、音の方へ駆け出す)


(しばらく走った先に、小さな川が姿を現した)


少年(身を屈めながら)

「これ…飲んでも良いのかな…」


(周囲は静まり返っている。鳥の声も、風の音も、聞こえない)


(そんな中で、少年はふと、ある声を思い出す)


ルイ

「サバイバルをする時は…まず、水の確保だ。でも、すぐに川の水を飲もうとするなよ?腹を下しちまうかも知れねぇからな!!」


ルイ

「水を飲めるか、簡単に確認する時はな…」


(川の水を見つめながら、少年は慎重に石をひとつ拾って投げる)


(ぽちゃん、と音を立てて水が波紋を描く)


少年

(濁ってない……泡も出てこない……変な匂いもしない……)


(そっと手を伸ばし、水をすくう。指の隙間から、透明な滴が零れ落ちる)


少年「……飲めそう、かな……」


(ゴクン…と水を一口飲んでみる…)


………。


少年「うん!ちゃんと飲めるね…!!」


少年(……ありがとう、ルイ兄……。ちゃんと…覚えてるよ……)


少年

「とりあえず、水はここで調達出来るから…食料問題がなんとか出来たら、ここに拠点を作ろう。そこから毎日少しずつ進んで、出口を探してみるか…。」


少年(食料…か。肉は血抜きとかしないといけないし…その前にまず…狩りをしないといけないな…)



(少年は、水辺の周囲を歩きながら、木の枝や石を拾い集め始める)


少年

「たしか…ルイ兄が昔言ってた。小動物を狙うなら、落とし穴よりも“くくり罠”の方が簡単で効率的だって……」


ーー森の中。若木の枝を曲げ、石を重しに使い、草の繊維で輪を作る。


少年(目を細めながら)

(この枝が跳ね上がれば、足を括って吊れる……うまくいけば、ウサギくらいなら……)


(何度かやり直しながら、ようやく1つ目の罠が完成する)


少年「よし……試してみよう……。」


(ふと空を見上げると…日が傾き始めている事に気づく…)


少年

「そろそろ、寝床も探さないと……地面だと…魔物が来た時、逃げられないかも……」


(辺りを見回すと…そびえる大木が目に入る)


少年「……あの木の上……登れそうだな……」


(慎重に枝を掴みながら木を登る。中腹あたりに横たわった枝がいくつかあり、体を預けられる場所を見つける)


少年「ここなら…風も通るし、寝返りしなきゃ……落ちない……かな」


(荷物をしっかり抱えて横たわる。夕暮れの空が、木の間から赤く覗く)


少年(目を閉じながら)

「……お母様……お兄ちゃん……」


(それ以上は言葉にせず、ただ静かに、夜の帳に身を委ねる)


  ***


少年(ん……。)


少年「もう朝〜?……あとちょっとだけ……」


………。


少年

「そっか…昨日木の上で寝たんだっけ…」


(優しい夢から覚め、現実に目を向ける…)


(慣れない体勢で寝たからか…身体中に凝った感覚がする…)


(腹の奥が、しくしくと痛む。昨日よりも、寒さが身に沁みた気がした)


少年(そう言えば…)


(昨日、罠を設置した所に目をやる…)


(だが…何もかかって居なかった…)


少年「そんなに甘くなんて無いよね…」


少年「まぁ…考えても無駄か…前を向かないと……。」


(少年は気持ちを切り替える…)


少年

「…食べ物よりもまず…火を確保しないといけなかったよね…」


少年「でも、僕に出来るかな……。」


(ちょうど良い大きさの枝を探すため、少年は少し歩き回ってみることにした…)


ぐぅ〜〜〜……


少年(お腹…空いたなぁ……)


(空腹な少年の目に…キノコが留まる…)


少年「美味しそう……」


(思わず手を伸ばしかけて…ぴたりと止まる)


(少年はまた、兄の言葉を思い出す…)


ルイ「素人は絶対に、地面に生えてる草やキノコを口にするな。もし食べちまえば、最悪死んじまうぜ?」


(少年は息を呑み…ゆっくりと手を引っ込めた)


少年「キノコは食べちゃダメ…だったよね…」


(胃がきゅうっと縮むような感覚がしたが…)

(少年は少し身震いしながら…そこを後にする…)


少年(……僕、まだ生きてる。ちゃんと……生きてる。)


  ***


少年(……火を起こすには、細くて真っ直ぐな枝と、平たい木の板が必要……だったはず)


(そうして、少年は落ちている枝の中から、比較的軽くて柔らかそうなものを手に取る)


少年「これは……多分、乾いてる……?割ってみないと分かんないけど……」


(小さなナイフで表面を削ると、白い木肌が顔を出す。湿っている様子はない)


少年これなら……いけるかもしれない


(さらに周囲を探し、平たくて安定した木片も見つけ出す)


少年「これで……火が起きれば……」


(かすかな希望を胸に、少年は枝を組み合わせ、手のひらをこすり始める……)


ふー……


(息を吹きかけるが、火がつく様子はない……)


少年やっぱり…ダメなのかな…


ボウッ……


(その音と共に、小さな火種が──かすかに、だが確かに生まれる)


少年「……やった……!これを、後は……」


(そう言いかけたその時──)


スゥ……


(何事もなかったかのように、淡い火が儚く消える)


少年「……ダメ、か……。…仕方ないよね……。それに、もしここで火をつけても……すぐに消えちゃうかも知れないし……」


(うつむく少年の背に、夕闇が静かに落ちていく)


少年(罠…作り直してみないとな…)


  ***


(また、今日もゆっくりと瞼を開く…)


(その日は特に風が強かった。木々がざわめき、少年の身体を容赦なく冷たい空気が包む)


少年(……寒い。火を……火を起こさなきゃ……)


(両手を擦っても温まらない。水はあっても、食べ物はない。冷たい夜を越えるには、もう──これしかなかった)


(少年は、朝拾っておいた枝の束を地面に並べた)


少年「スピンドルは……これ。板は……こっち……」


(何度も頭の中で思い出す、ルイ兄の言葉。昔聞いた“火を起こす方法”を頼りに、少年は手を動かし始めた)


(細長い棒を板の窪みに押し当て、両手で挟んで擦る)


ギュッ、ギュッ、ギュッ……


(最初は乾いた音が響くだけ。熱も出ない。少年は額の汗をぬぐうこともせず、ひたすら力を込める)


ギュッ、ギュッ、ギュギュッ……


(少しずつ、板の表面が黒ずんでいく。細かな木屑が集まり、小さな凹みに落ちていった)


(そして──)


プス…………


(一瞬、白い煙が立った)


少年「……っ!?」


(少年は咄嗟に手を止め、口を開けたまま煙の方を凝視する)


(くぼみの先、木屑の中に小さな火種が生まれようとしていた)


少年「……お願い……消えないで……っ」


(そっと火口を近づける。乾いた苔と木の皮、そして細く裂いた布きれを包むように重ねる)


(火種が、火口の中で赤く揺れる。少年は両手で包み込むようにそれを抱え、口を近づけて──)


フーッ……フーッ……


(少しずつ、慎重に、吐く息に想いを込めて吹きかける)


フーッ……


ボッ……!


(小さな炎が、ふっと舞い上がった)


(その瞬間、少年の顔に、確かな暖かさが触れる)


少年「……ついた……火……火が……!」


(言葉が震える。涙が、零れ落ちそうになる)


(だが、少年は急いでその炎を枝の上に移し、火が消えぬよう、大切に風を遮る)


少年「……ありがとう……ルイ兄……僕、ちゃんと出来たよ……」


(少年の眼に灯った炎。それは、寒さを凌ぐためだけのものではない)


(それは、失ったすべての中で、たったひとつ──少年が“自分の手”で手に入れた、最初の光だった)


  ***


(火が小さく燃える中で、少年は自分の手を見つめていた)


少年(……火がついた。僕にも……できたんだ)


(その温もりに背を預けながら、もう一度、思考を整理する)


少年「次は……罠を、改良しないと」


(昨日作ったものでは何もかからなかった。その原因を、少年は考える)


少年(ただの輪っかを木に結びつけただけじゃ…ダメだ。動物にバレるか、逃げられるか……)


(地面にしゃがみ込み、頭の中で設計図を組み立てながら森を歩く)


サク…サク……


(落ちている小枝、絡まりやすい蔓、しなやかな枝、そしてバネ代わりになりそうな木片。いくつかの素材を集めていく)


少年(たしか…“くくり罠”。ルイ兄が言ってた…地面に仕込む、跳ね上げ式のやつだ)


(小さな穴を掘り、細枝をバネにして、蔓で作った輪を設置。輪の上に草をかぶせ、動物の足が自然とそこを踏むようにする)


(最後に、石で目印をつけて位置を記憶しておく)


少年「……うん。昨日より、だいぶ“罠っぽく”なった」


(土を払って立ち上がると、空は茜色に染まりかけていた)


(夕風がひゅうと吹き抜ける中、少年は木に登ってその夜を迎える)


(葉の間から洩れる星明かり。少年はそっと、ロケットを取り出す)


(そこには、笑い合う家族の姿)


少年「……みんな。僕……今日も、生きてるよ」


(誰にでもなくそう呟くと、風が少しだけ優しく吹いたような気がした)


  ***


(夜が明けきる前、少年は目を覚ます)


(まだ冷え切った空気の中、昨日仕掛けた罠の元へ向かう)


少年(頼む……。少しでいいから、何か……)


(ひとつ、またひとつと確認していく。そして──)


ガサ…ガサ……!


少年「っ!……いた……!」


(最後の罠──そこでもがいていたのは、小さなウサギだった)


(片足を蔓に取られ、身動きが取れず、目を見開いている)


少年(……ちゃんと、かかってる)


(成功の実感と同時に、胸の奥に鋭く刺さるような感情が溢れ出す)


少年「……ごめんね。ほんとに……ごめん」


(両手が震えていた。ナイフを取り出すまでに、何度も深呼吸した)


(そして──一度だけ目を閉じ、処理を終える)


  ***


(焚き火の上で、串に刺した肉が焼ける)


ジュゥ………


(焦げた脂の匂いが、空腹の胃を痛いほど刺激する)


少年(ちゃんと、食べなきゃ……)


(ふと、背負っていたバッグを開ける)


少年「……あ」


(奥から、小さな木の瓶が転がり出る)


(それは、白い粒が詰まった、“塩”だった)


少年「……お母様……」


(記憶の中で、柔らかな声が蘇る)



レイファ「非常時用のバッグにはね、塩をちゃんと入れてあるから。何も味がなくても、これさえあれば、ちょっとだけ、食事が豊かになるわ」



(瓶の蓋を開け、指先で少しだけ塩をつまむ)


(焼けた肉にふりかける──じゅっ、と音が鳴った)


少年「……いただきます」


(ゆっくりと、歯を立てる。嚙みしめる)


(獣臭さはあっても──それを超えて、塩が“生”の味を引き出していた)


少年「……あったかい」


(目頭が熱くなる。けれど、それは悲しみじゃなかった)


少年「ありがとう……お母様。僕……もう少し、がんばれるよ……」


(この一口は、生き残るためだけの食事じゃない)


(それは、“記憶の灯火”と“生きる決意”が宿った──初めての糧だった)


  ***


(日が昇り、また一日が始まる)


(火の名残が燻る中、少年は静かに荷をまとめる)


少年(……もう、そろそろ……行こう)


(少し痩せた体で、枝を杖代わりに、再び森の奥へと足を踏み出す)


(木々は相変わらず鬱蒼と茂り、苔むした地面には、何度も転びそうになる)


(それでも──もう、怖くはなかった)


少年(……きっと、出口はある。世界は……まだ、続いているんだ)


(朝露を踏みしめながら、静まり返った獣道を歩く)


(何度も遠回りし、罠の跡を確認し、乾いた木の実で飢えをしのいだ)


(夜は木の上で震え、雨に濡れた身体を火の残りで温める日もあった)


(それでも、あの日の炎が──その灯火の記憶が、少年を支え続けていた)


  ***


──そして、ある日の朝


(ふと、足元の土の感触が変わった)


(踏みしめると、柔らかい苔ではなく、固い石の感触が返ってくる)


少年「……?」


(顔を上げた先、木々の向こうに、わずかに差し込む光)


(それは森の中とは明らかに違う──まっすぐで、広がるような光だった)


(枝をかき分け、陽の方向へと足を早める)


(すると──)


サァァァァ……


(風の音が変わった。森のざわめきではない、開けた地形特有の吹き抜ける音)


(そして──視界が、開ける)


少年「…………」


(そこは、森の端だった)


(深い木々の帳を抜けた先に、乾いた大地と、果ての見えぬ空が広がっている)


(草の絨毯が、風に揺れていた)


(誰もいない……けれど、確かに世界が、そこにある)


(少年は立ち尽くす)


(振り返れば、もう戻れない深い森。そして目の前には、白紙の大地──)


(何も描かれていない。だが、それは“始まり”の証)


少年(……ここから、僕は歩いていく)


(誰も知らない地図を描くために)


(何かを取り戻すために)


(ただ、生き延びるだけじゃない──“意味”を探すために)


(小さなロケットに手を添える。笑っている、あの家族の姿を胸に刻みながら)


少年「……行こう」


(その歩みは、まだ幼く、危うく、頼りない)


(それでも、その足音は──確かに、未来へと響いていた)


  ***


ーーどこかの町。

まだ夜が明けきらぬ頃、薄明かりが差し込む小さな宿の一室で……


(薄い毛布をかぶった少年が、静かに瞼を開ける)


アル(……ここは……)


(石造りの壁、粗末な天井、古びた机……)


(思い出そうとしても、“昨日”が霞んでいる)


アル(……夢だったのかな……全部……)


(けれど、ロケットは胸元にあった。冷えた金属の感触が、確かに現実を告げていた)


アル「……行かないと。まだ……終わってないんだ」


ーーあの森の果てから、どれだけの時が流れたのか。

それを、アルセリオ自身も知らない。


でもただひとつ、“まだ歩いている”という事実だけが、

彼を前へと導いていたのだった…

サバイバルみたいなのした事無いので全く知識はありません。出来るだけ調べてはみましたが、違和感とご都合はあると思います。お許しを

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ