鬼の目にも涙
我ながら、ことわざ好きだねえ。
鬼の目からも涙がこぼれ落ちたのなら
それは鬼の涙のほんの一部でしかない
こぼれ落ちこそしなかったものの
まぶたに浮かべて溜めたまま
なんとか こらえた涙だってあったんだろうし
まぶたに浮かぶことすらなかったけれど
心は号泣していた
そんな涙だってきっとあったはずだ
目からこぼれ落ちたぶんだけが
鬼が流した涙ではない
かみしめた唇やにぎりしめたこぶし
地団駄をふんだ踵にふるえる背中
こぼれ落ちたぶんの涙を見るだけじゃ
鬼の心はわかりやしないさ
心を鬼にするとはよく言ったものだけど
鬼の心は号泣していたのを
ちゃんと気づいたうえでそう言いまわしたのなら
ちょっと意味が変わってくるはずだ
心を鬼にするとは
目から涙がこぼれ落ちないように そのぶん
号泣する心のことを言うのだ
きっと まぶたに涙が
溜まりきらないほど浮かばないように そのぶん
号泣する心のことを言うのだ
最近、論述系の詩しか描けないや(汗)