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えんぴつを侮って、賞を逃した話 (なろうラジオ大賞4、2022年12月)

削った際に思い切り尖らせたえんぴつは、間違って膝に突き刺した。その痛みは結果的に1カ月続いた。時はスポーツの秋。そんな痛み程度で、運動という名の趣味は妨げられない。でも、代償は大きかった。


なろうラジオ大賞4の「えんぴつ」題で書きました。


「ぃたっ」

右膝に痛みが走った。


ナイフで削るえんぴつは、会心のとがり具合になると自慢したくなるもの。この日もそうだった。

「見ろよ、これ」

見せびらかすように大振りになった手。ランニング用短パンの無防備な足。


普通なら一瞬だけですむ痛みは、その後も続く。

刺さった跡を見るが、若干黒いだけで芯は見当たらない。


「残ってない」

そう自分を納得させるも、痛みで、ランニング再開は4日後に延びた。

2週間後の記録会は、今ひとつのタイムながらも、昨年より若干良い。

これなら、ひと月後の駅伝2区は勤まるだろう。


おっと、その前に紅葉狩りだ。

旅行は美しい季節にこそすべきで、その為の自主休校をいとうべきではない。特に自転車なら。

駅伝は陸上部参加禁止のレベルだ。旅行より優先度は低い。


普段は真面目な学生だから、教授にも

『学生は気楽でいいですねえ』

という嫌みを言われるだけで済む。問題は膝の鈍痛。記録会は走れたから大丈夫だろうが。


旅行自体は秋晴れと紅葉に恵まれ、人生最高の景色を得た。


峠前で自転車を倒して横になる。空腹だから。

通りがかりの車が止まって

『おい、大丈夫か?』

と声が掛かった。申し訳ない。


過去に登った全ての山よりも標高の高い峠も超えた。


峠前でバイクが倒れている。凍った水溜りで滑ったらしい。

「大丈夫そうだ」

と横を抜けた。


峠の先は、手がかじかむ白樺みちだ。

手を温めるために、折角の下りを、しょっちゅう止まったほどだ。

でも、景色を楽しめて、塞翁が馬。


唯一の問題は、膝の痛みだ。えんぴつの芯という爆弾は日々悪化している。


以前も似た経験をしたなあ。

北海道の小平でポイ捨て空き缶を踏み、チューブどころかタイヤまで割れた時のことだ。

応急処置をして再開したが、標準でないタイヤで、寄る街のどの自転車屋にも置いなかった。

処置したところは、ブレーキに当たり、パタッ、パタッ、っと音を出す。

いつ完全にかれてもおかしくない。

それでも、新潟まで行ってしまった。


帰ったら医者に行かなくっちゃ。


900kmを漕ぎ終えて1週間後、膝を見てもらうと、直ぐに

『良性腫瘍摘出手術』

を施されて2針縫った。1週間後の抜糸まで運動禁止。そして抜糸から駅伝まで1週間。

1カ月前に来るべきだった。


大会では2秒差で区間賞を逃し、総合も2位。自転車旅行のせいではないだろう……そう思いたい。

翌年も出たが、総合3位の区間2秒差。人生唯一の機会を逃したらしい。


えんぴつを侮るなかれ。

実話です。刺したのはもっと間抜けな動きでしたが。


高校の頃、文化祭で使う竹の余りを使って、待機時間に竹とんぼ作りをしていました。

「おい、飛ばすぞ」「今度こそお前の記録の抜いてやる」

などという会話をしながら、削り方を工夫したものです。


その癖もあって、鉛筆もいかに尖らせるか競争してしました。特に、数式の多い理系では、消しゴムの使いやすいHB/Bの鉛筆を使うことが多く、削るのは簡単でも、先端を折らずに尖らせるのは難しくて、確かに競争になりました。

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