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第1話 そこに勇気はあるのか

シドラたちはルシファーの軍との戦いを終え、異世界の戦乙女(ワルキューレ)追放戦乙女ワルキューレ・ベニシュメントであり王国騎士団志願の天使の少女、レヴァタイズを連れて王国オデヌヘイムに戻った。

戻ると、さっそくシグルド王が出迎えてくれた。


「そこの戦乙女らしき少女は?」

「は、はい。私は異世界から来ました。追放戦乙女ワルキューレ・ベニシュメント所属のレヴァタイズです。今回は、この国の王国騎士団に入団する為にこの方たちについて来ました。」

「俺はこの国、王国オデヌヘイムの国王、シグルド・ニーベルング・オデヌヘイムだ。追放戦乙女は俺も聞いたことはあるが見たことはない。だが、なぜ追放戦乙女の一員であるお主が我が国の王国騎士団に入団する?」

「それは…」


そして、一呼吸置いてから、レヴァタイズは話し始めた。


「私は確かに追放戦乙女の一員です。ロキ様から[勇気を振りかざす者]を意味するこの名前ももらいました。でも、勇気も自信も持てなくて、その名前を本当に自分が持っていても大丈夫なのかいつも心配だし、私は特に戦力でもないから『その名前持ってるからって前線に出て来られると足手纏いだ』って言われるし…。だから、こっちで強くなってみんなを見返したいんです!…なので敢えてこっちに残ったんです。」

「そうか。ならば幾つか問おう。本当にそこに勇気はないのか?」

「え?ど、どういうことですか?」

「さっき、敢えてこの世界に残った、って言ったな?」

「そ、そうですけど…。」

「なら、お主は十分に勇気があるはずだ。」

「え?ど、どうしてそうなるんですか?」

「普通、世界樹経由で異世界に行くのは当たり前だがその多くはやむを得ずな事情が殆どで、自分から異世界に滞在しようとする奴は相当肝が据わっていると思うが。実際、俺もこの200年近くで異世界には何度も行ったが、未知の世界には到底滞在しようだなんて思えなかった。だからだ、自分の知らない世界に滞在しようと思えるのは、お主に勇気があるからだ。」

「で、でもみんなに迷惑かけてるかもしれないし…」

「しかし、お主は他の追放戦乙女ワルキューレ・ベニシュメントから足手纏いなんて言われたんだろ?なら、そんな奴らを気に掛ける必要はない。さっきお主も言っていたであろう?強くなって見返したい、と。」

「はい。でも、私のわがままに付き合ってもらってもいいんですか?」

「気にしなくてよい。強さを求める者は同志として歓迎する。それに、熾天使(エンジェル)が軍に加われば軍の士気も上がるであろうしな。まあ、気が済むまで我が軍で成長したまえ。」

「…はいっ!」


「久しいな、シドラ。世界樹から生きて帰れるとは、俺が見込んだだけのことはある。仲間も増えているようだが、紹介してくれないか?」

「はい。まずはシャラから。」

「初めまして。72柱の序列15、グラシャラボラスです。親しんでもらえるようにシャラって呼んでもらってます。72柱を2回倒しました。」

「何⁉72柱を2回殺しただと⁉…ふがいないことに俺はまだ7体ほど瀕死にしただけでいつも殺し損ねている。お主、よほど強いのだな。」

「はい。実は私、ルシファー(様)直伝の強化魔法を持っているので。」

「もしシドラたちが騎士団に入れば世は泰平だな。」

「ごめんなさい、王様。ある程度の要求にはお応えしますが、僕たちは騎士団に加入するつもりはないです。それに、あと何年かのうちに必ずルシファーたちは攻めてくるはうです。そう長く安泰は続きませんよ。」

「そうか。ならば我々も軍備の強化を…おっと、話題が逸れたな。他の新しい仲間も紹介してくれ。」

「私はステラ・ヘイチェイスです。私の足元、透けてないですか?」

「ん?確かに透けているように見えるが、まさかアンデッドの幽霊か⁉」

「そうなんです。私は72柱のとある死霊闇魔術師(ネクロマンサー)に召喚されたらしいんですけど、文明崩壊はご存じですよね?」

「それはそうだが、文明崩壊で死んだのか?」

「少し違うんですけど、私が文明崩壊を起こした張本人です。」

「…ゑ?何ィーーーーー⁉」

「驚かせてすいません。でも、今は当時ほどの力は無いのでまた文明崩壊を私の手で引き起こすなんてことは無いと思います。」

「わ、我が国で力を開放するようなことは絶対にやめてくれ!!」

「分かってますよ。」

「あれ?そういえばパティーナちゃんは?」

「あ。確かにパティーナはどこへ?まさか、ユグドラシルに置いてきた⁉」

「そのパティーナ様とは、こちらのことでしょうか。」

「あ、ルキネアさん。その水筒は?」

「しばしお待ちを。」


そう言うと、ルキネアは水筒の蓋を開け、それをひっくり返した。すると、中から水色の液体らしきものが出てきて、それが人型を形成し始め、最後にはパティーナになった。


「なぜパティーナをあなたが?」

「オデヌヘイムの(シノビ)は、オーディン様やその支配下方が行った戦闘の後始末をすることが義務であり、歴史は浅くともここ60年近くの伝統であります。なので世界樹の50階層に行ったのですが、そこにこのパティーナ様がおられました。しかし、水の精霊であること以外は不明だったのでひとまず水の精霊を保管する容器に入れて持ち帰ってきた次第です。」

「それ水筒じゃないんですか?」

「いえ、専用の容器です。」

「シドラ。その少女も仲間か?」

「はい。パティーナは言葉はしゃべれないですけど、72柱の序列41、フォカロルの魔力から生まれた水の大精霊なんです。」

「そうか。フォカロルとは俺も茶会をしたことがある。奴は誰とでも茶会を開きたがる少し変わった奴だ。」

「そうなんですか。」

「これで全員か。お主ら、心して聞いてくれ。最近、俺が60年近く前に封印した暗黒竜ファブニールが復活した。3日後、我々は暗黒竜を封印しに遠征する。そこで、心裂剣リディルを持っているからにはシドラたちにもついて来てもらう。それでいいか?序でにレヴァタイズもついて来るといい。」

「えっ?いいんですか⁉」

「さっきも言っただろう?強さを求めるものは同志として歓迎する、と。」

「ありがとうございます!シ、シグルド様、も、もし明日かあさってのどちらかで予定の入ってない日があれば、私の新しい装備を買うのに付き合ってもらえませんか。」

「いいだろう。明日のうちにしなければならない仕事をできる限り終わらせて明後日にしよう。」

「あ、ありがとうございます!」



~2日後~

「シグルド様、はやく行きましょう。」

「あ、ああ。ま、まずはどこに行く…?」

「シグルド様、眠そうですけどもしかして夜なべしてまで仕事を頑張ってくださったんですか?でも、シグルド様が疲れてらっしゃるのなら今日は休養を…」

「いや、それでは夜なべした意味がなくなってしまうだろう?あと、少しでも気持ちから強くなろうと思うなら、俺相手でも敬語でしゃべらなくていい。」

「つまり、これからはシグルド様相手でも敬語を使わなくていいってことですか?」

「ほら、まだ敬語になってるぞ。」

「あ、すいません。どうしても昔から普段の会話にも敬語が交じっていた所為で癖になってるみたいです。」

「そうか、ならしょうがないか。最初はどこに行くんだ?」

「まず、軽装を見たいので服屋と武器屋を兼ねたお店に行きたいんですが。」

「それならいい店を知ってるぞ。騎士団御用達の店だ。」

「え?いいお店教えてくれるんですか?」

「もちろんだ。強さの為だろ?」



「わぁ。このお店とても広いですね。」

「この店の開業には俺も関わっているから店のどこにどの商品が置いてあるかは知っている。」

「すごいですね。シグルド様が関わっているお店ならよっぽど凄いお店なんですね。」

「ああ。別の意味でもな。」

「別の意味?」

「後で分かる。」


「シグルド様、この軽装とかどうですか?」

「その軽装は魔法をかけた特殊製法の布が使われているから動きやすさや防御力、通気性にも長けた高性能なやつだな。高額ではあるがその分買い直すことも少ないし…」

「そ、そういうことじゃないですよ!」

「そういうことじゃないなら何を…」

「私に似合うか、ってことですよ!ほ、ほら、例えば…、」

「ああ、とても似合ってる。戦乙女(ワルキューレ)ならば強く美しくあるべきだからな。」

「ありがとうございます。で、でもこの軽装もの凄く高いですよ。」

「大丈夫だ。この店の商品は基本凄く高いがそこは俺が国王の権力で安くしてもらうから。」

「そ、そんなことして大丈夫なんですか?」

「さっきのは冗談だ。俺が買うよ。」

「申し訳ないですよ!自分の装備くらい自分で買いますよ。」

「じゃあ、俺からの騎士団加入祝い、ってことにすればいいか?」

「…はい。お願いします。」

「わかった。」



「剣は買わなくて本当によかったのか?」

「いいんですよ。私、あんまり両手剣が得意じゃなくて、昔からずっと長針剣(レイピア)タイプの武器しか使ってこなくて…。ほら、長針剣もそれぞれ直径が違うので1本1本に対応した人がいるんですよ。なので、一度1つの長針剣を使い慣れてしまうと、他の長針剣が使いづらくなるんです。」

「そうか。そうだ、強く美しくある為にはやっぱり…。」

「やっぱり…?」


「ここって?」

「世界でも数少ない精霊石(ジュエル)を作る錬成所だ。俺の幼なじみのエルフが経営してる店だ。」

「精霊石の錬成って、確か賢者様や法王様に並ぶほど最上級の神聖魔法を取得していないといけないのでは…?」

「この世界では少し違うんだ。この世界ではエルフ族はみな精霊石の錬成ができるんだ。」

「そうなんですか。ところで、何をしにここへ?」

「もちろん、お主に精霊石の装飾品(アクセサリー)を買う為だ。」

「え⁉け、軽装も買ってくださったのにそんなお高いものまで…」

「実は、歴代の女王候補には候補の証として買っているんだ。」

「…え?わ、私が女王候補?わ、私は仮にも異世界人ですよ⁉」

「そんなことは関係ない。それより、はやく作ってもらおう。」


2人が中に入ると、そこにはクールな顔つきをしたエルフの女性がいた。


「久しいな、シグルド。って、お前大丈夫か⁉熾天使(エンジェル)なんかを女王候補にしたらオーディン様とフレイヤ様のお怒りに触れやしないか?」

「問題ない。この()は異世界の熾天使だ。」

「まさか、追放戦乙女ワルキューレ・ベニシュメントの1人か⁉異世界のロキなんか得体の知れない神を敵にまわすなよ?」

「わかっている。それより、ご察しの通り…」

「女王候補に贈る精霊石だろ?何色にするんだ?」

「お主、何色がいい?」

「シ、シグルド様。お主、じゃなくてちゃんと名前で呼んでくださいませんか?」

「わかった。レヴァタイズ、何色がいい?」

「私はピンク色であざやかな宝石がいいです。」

「なら、ピンク・ミスティック・トパーズでやってくれ。」

「付与する魔法は?」

「『防御向上』、『攻撃向上』、『命中率向上』、『走力向上』、『視力向上』、『筋力向上』、『領域(フィールド)耐性』、『異常耐性』、『魔力回復』、『魔力削減』…くらいか。」

「いちいち注文が多いんだよ。まあ、依頼人(クライアント)の注文だからやるけどさ。」

「すまない。お詫びとして魔晶石を10Kgほどやろう。」

「よし、今からとびっきりのやつ作ってやるから外で少し待ってろ。」


そして2人が外に出て10分経つか経たないかのうちに完成した。


「ほら、これでいいんだろ?」

「代替わりごとに済まない。あと、言い忘れていたが俺としてはこれがお前にする最後の注文だったと思う。」

「そういう大事なことは先に言っとけよ。まさか、ルシファーと()り合うつもりか⁉」

「もちろん、主神様の傘下でだが。」

「そうか。なら魔晶石をあと100Kgくれれば水晶系統の魔道具作りまくっとくぞ。」

「いいのか?ならば頼んだ。」


「国王陛下!!速報です!!」

「何事だ?申してみよ。」

「はい。たった今、村の住人から連絡があり、ファブニールが洞窟から一時的に脱走し、周囲の村を焼き払ったようです!!できるだけ出撃を前倒しにした方がよろしいかと思われます。」

「そうか。ならば少し待て。」


シグルドは宙に浮くと…


“〔全騎士団員及び上級冒険者に通達する!今、悪しき竜が罪なき民を苦しめている。そこで、出撃を前倒しにすることになった。昼間のうちに用意を済ませ、亥の刻には王城の前に集合せよ!世界平和の為に命を捨てる覚悟のある勇敢な戦士たちよ、その身を捧げるのだ!〕”


拡声器を使ったような爆音で国中に旨を伝えた。


「と、いうことで今夜出撃だ。俺たちもすぐに準備しよう。」

「う、うん。」

「さっそく、あの軽装を着て出撃してくれないか?」

「…喜んで!!」


こうして、暗黒竜ファフニールを討伐するおよそ200名に満たない軍が出撃した。

※「キャラ紹介」に[イメージCV]がつけられました。これからもこの作品をご愛読よろしくお願いします。

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