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第10話 はぷにんぐ‼

古竜の化身、ヴィネアと仲間になっておよそ1週間になった。4人は9階層に来ていた。


「そういえばこの1週間、72柱とは会ってないね。」

「ヴィネアの威厳に恐れて誰も近づきたがらないんじゃないかな…。」


「アタシ、怖い?」

「そんなことないよ。」

「ありがとう、パパ!」


そして、誰も予想だにしなかった行動に出る。

ヴィネアはシドラに抱き着いた。ヴィネアよりも背の低い彼はその胸に顔をうずめる形となった。


「ちょ、ちょっと!?ヴィネア、何やってるの?」

「うわ、ご主人様って本当に免疫無いんですね。耳まで真っ赤になって気絶してる…。」

「ごめんなさい、ママ…。」

「別に、ヴィネアが謝ることじゃないよ。」

「ご主人様にこんなことはしちゃダメだよ。」


シドラは、国から貰ってきた魔道具のうちの一つである救護用ベッドの上で目を覚ました。


「…あれ?ここは?」

「お兄ちゃん、ヴィネアに抱かれて気絶しちゃったんだよ。今はまだ9階層だよ。」

「ご主人様、起きたんですか⁉よかった…。お世話頑張ってよかった…。」

「パ、パパ…。」

「何?」

「その…、ごめんなさい!!」

「いいんだよ。僕が女の子に触れることに免疫がなさすぎる所為だから。」

「お兄ちゃん、その…うわぁぁぁ!?!?」


その時、アオイは一瞬宙を泳いだ。


「いててて…。あっ!お兄ちゃん!?大丈夫?」

「アオイちゃん、今ご主人様狙って転んだ?」

「お兄ちゃんが女の子に免疫無いこと知ってて私はそんなことしないよ!」

「そっか。確かにあの距離じゃ普通じゃあ、ベッドには届かないか。まあ、足元には気をつけてね。」

「う、うん。」


そして今度は半刻も経たないうちに目を覚ました。


「本当にごめん…。みんなに迷惑かけちゃってるし、本当だったら今日のうちには10階層に行く予定だったのに…。」

「いいよ。それよりご主人様、今日は私がお粥作ってあげる。」

「わざわざ消化のいい物じゃなくていいよ。」

「ダメ。ご主人様はまだ病み上がりに近い状態なんだから、今日くらいは消化にいいもの食べて、また明日から頑張ろう。ね?」

「そこまで言うなら…。」

「じゃあ、ちょっと待っててね。」



「お姉ちゃん。…あれ?確かここでお粥を作ってるはずじゃ…?まさか!?」


「あ、あれ…?何で私はご主人様に膝枕を?確か今はお粥をご主人様のところに持っていくところだったはず…。って、それどころじゃない!ご主人様、ご主人様!」

「…この程度で気絶ばっかりしてられないな。」

「ご主人様、お粥ができたけど、食べる?」

「ああ。で、できれば自分で食べるから膝枕をやめて…」

「だめです。ご主人様は病み上がりだから無理に起き上がるとまた体の調子が悪くなるかもしれないよ?」

「え!?で、でも…」

「フゥー、、フゥー。ほら、私が冷ましてあげたから、少し熱いかもしれないけど食べて。ほら、あーん。…って、また気絶してる!」

「…お姉ちゃん?なんで私に秘密でお兄ちゃんに触ってるの?」

「アオイちゃん、誤解招くようなこと言わないの!」

「…で、何で膝枕?」

「や、ヤンデレ状態?ちょっと一回落ち着いて理由を聞いて。」

「だめ。2人だけずるいよ。お兄ちゃんとそうやって密着して。」

「で、でも、この3人の中でご主人様と一番長く同じ時間を共にしてきたのはアオイちゃんでしょ?あと確か、アオイちゃんとご主人様は友達以上恋人未満の契りを交わした、って聞いたんだけど。」

「…でも、お兄ちゃんとそんなに密着してない。なのに、2人だけ…」


「…2人とも、僕のことで喧嘩しないでくれないか?」

「お、お兄ちゃん!」

「ご主人様…。」

「僕は、2人にはいつも笑顔でいてほしいんだ。だからこそ、まずは仲間でも友達でもある僕ら同士で喧嘩をしたらどっちも笑顔になれないでしょ?本当に悲しかったり辛かったりした時は泣いてもいいけど、普段は2人ともに笑顔でいてほしいな。」

「お兄ちゃん、私たちのことをいつも考えてくれてありがとう。」

「私もそうやって笑顔でいてほしいって言ってくれるご主人様に会えてよかった、って思ってるよ。でも…」

「でも…?」

「お兄ちゃんとはイチャイチャもしたいの!」

「私も普段の労いでたまにはお触りを許してほしいです!」

「は、はぁ…。」

「私も女の子だから、恋だってするの!自分の恋を自分が一番応援してるからこそ、他の女の子に触れてほしくないとかも思っちゃうの!」

「私も、ルシファーの下から離れる機会をくれたご主人様には一生仕えていたいんです!でも、やっぱりただ使えてるだけじゃ面白くないし…。」

「ちょっと!今物語の中でよくある貴族が給仕さんに罰って言って色んなことするのを考えてたでしょ!?」

「やっぱり貴族に仕える給仕(メイド)がその若君から辱めを受けるのはロマンだよ。」


「パパとママ、何話してるの?」

「べ、別にそう大した話じゃ…」

「私も、パパは好き。でも、おかしいの。顔を見られないっていうか、輝いてみえるっていうか…。それに、何か分かんないけど苦しいの。」

「それって…。」

「ヴィネアもライバルってことね。」


「えっと…、さっきアオイとシャラが言ってたこと理解が追い付かないんだけど…。」

「つまり、こういうことだよ♪」

「ご主人様にご奉仕♪」


そんなことを言いながら、2人はシドラの腕に抱き着いた。


「………。」


またもやシドラは気絶してしまった。


「ははは!やはり面白いラブコメを見ることができたよ。」

「誰!?」

「僕は72柱の序列70、セーレさ。実は今日3人ともに1回ずつ移動魔法かけてみたけどどうだった?」

「まさか、あの時のって…」

「そうだよ、僕がやった。でも、おかげで面白いものを見られたよ。」

「私たちを見物にしてたっていうの?」

「あれ?君って、たしかこの前72柱を仮退団したグラシャラボラスだよね?噂に聞いてたよりも女の子らしかったから気付かなかったよ。」

「…許さない。」

「え?噂が相当ひどいものだって思ったの?」

「違う!ご主人様は自分の所為で攻略が遅れたことを後悔してた。なのに、ただお前みたいな奴に遊ばれてただけなんて…。お前はここで私が殺す!」

「え?でも、君は変な方法でしか敵を倒せなかったって話だけど。」

「もう私はあの頃の卑怯で汚い私じゃない!ここからはまだ誰も知らない領域だよ。」

「いいよ。どんな技だろうと返り討ちにしてやる。」

「『陰陽覇狼変化 夜闇に紛れ、敵を討ち取るその爪を我が手に。[月追う覇狼の加護(ヘギモンド・ハティ)]』!」


そして、シャラは黒や紫の装飾が施された黒地のドレスに身を包んだ。


「おいおい、いくら狼に因んだ強化魔法を使おうと僕には移動魔法がある。だからどんなに早い攻撃を繰り出されても…」


そして、シャラはセーレの眼中から姿を消した。


「え?」

「後ろだよ。遅い!」


そしてセーレは移動魔法を自身にかけて移動し、シャラの短刀(ダガー)は空振りした。


「一体どんな手を使って僕の後ろに回りこんだ!?」

「どんな手でもアタシの勝手でしょ?『影技(えいぎ)十六方奴斬騎じゅうろっぽうやつざき』!!!」

「どんな手段を使っても無駄だよ。がっ…、ぐふっ…ぐぁっ…」


シャラの詠唱が終わると、セーレの四方八方の影からシャラの分身が現れ、闇の短刀でセーレを切り裂き始めた。


「そんな…、僕が負けるなんて…。」

「もう終わりだよ。」


そしてシャラは自ら手を下した。


「なあ、君に一つ渡したいものがある。」

「何?」

「僕は、財宝と関係性を作り出す能力があってね。これ、受け取ってくれ。」

「これは?」

「炎の首飾り、ブリージンガメンさ。本当は神フレイヤの持ち物だが、もし本人に会ったら返しておいてくれ…」


その一言を遺言にし、セーレは消滅した。


「すごかったよ、シャラ。」

「ご、ご主人様。いつから見ていらしたのですか?」

「そうだな、シャラがパワーアップするあたりくらいからかな。」

「私の活躍、ちゃんと見てくれた?」

「ああ、頑張ってたね。ありがとう。」

「…へへっ。」


こうしてまた1柱、72柱の魔神が殺されたのであった。

追伸:シドラの少女免疫はついたようです。


続く 次回、メスガキ現る!?

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