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できれば好きと、言ってみたい  作者: 漣眞
第一章 声。今君に
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第三話 隣の席③

家に着いた誠一は玄関まで響く声を聞き、真っ直ぐリビングに向かった。


「お兄ちゃんおかえり。どうだった?」


「うん、楽しかったよ」


「そっか」


二優花は嬉しそうに笑い、美零も安心したような表情を浮かべた。


「二優花、これおばあちゃんが二優花にって」


「え、ほんと!?」


「あんたそれを期待してたんでしょ」


帰ってきた二優花が今日のおやつは要らないと断ったところを見て、美零は勘づいていた。


「へへ、ばれた?」


ニヤける二優花に美零は呆れたように笑っていた。


「誠一、先にお風呂入っておいで」


「うん」


美零に言われて誠一はリビングを出た。


「お兄ちゃん無事でよかったね」


「無事って……。まあ、そうね。朝のやつがだいぶ効いたみたいで、家を出る時にはもう軽い顔してたし」


「朝のやつって?」


「さあね〜」


「えー、教えてよ」


得意気な顔をする美零に、二優花は頬を膨らませた。




 その日の夜、誠一は零太の部屋を訪ねた。


「お父さん、入るよ」


「なんだ」


「今日はありがとうね。おかげで気分が軽くなったよ」


「なんのことかは知らんが一応、お母さんと二優花にはその話をするなよ」


「うん、わかった」


誠一は優しく微笑んで部屋を出た。




 次の日。誠一は今日の発表のことがずっと頭から離れないまま、午前中の授業を終えようとしていた。


「今日の授業は終わりね〜。あと悪いんだけど学習係の人は前にあるこの資料、資料室にお願いね〜」


(ほんとに悪いと思ってるのかなあの先生……)


誠一は軽すぎる雰囲気に疑いの目を向けていた。




「げっ、結構多いじゃん。今日、もう1人の係の人休みなんだよな〜……。ま、後でぼちぼち持って行くか」




(……)




 昼休み、惺玖はいつも女の子三人で昼食をとっている。同じ吹奏楽部の雪枝八宵(ゆきえだやよい)と、同じく常坂波夏(つねさかなみか)だ。二人とは中等部の頃からの友達で、たまたま同じクラスになった。


「ひめちゃんのペアって淳月君だっけ」


波夏が惺玖に尋ねた。


「そうだよ」


「そっか。淳月君って何かミステリアスだよね」


「わかる」


「やっぱ八宵も思ってたか」


「そうかな」


共感し合う二人に惺玖は疑問を抱いた。


「何か、人を受け付けませんオーラ出してるよね」


「たしかに。でも、水崎には心開いてるよな」


「二人、幼なじみなんだって」


「あーそれでか」


八宵は納得したように頷いた。


「それになんか目が赤みがかっててちょっと怖い」


波夏は弱弱しくそう話した。


「最近あんな風になったんだって。病院に行くって言ってたけど」


「詳しいな」


八宵が冷静につっこんだ。


「たまたま最近その話したから」


惺玖はごまかすように目をそらした。


「ひめちゃんも目が青みがかってるよね」


「そういえばそうだったな。すっかり見慣れて違和感なくなってた」


二人は改めて惺玖の目を見た。


「遺伝なんだよね?」


「そうだよ」


「今考えても不思議だよね~。そんな遺伝があるなんて。あ、話し戻すけどひめちゃんは結構話すの?淳月君と」


波夏のこの自由奔放な性格には、惺玖と八宵も未だに手を焼いている。惺玖は少し圧倒されながら答えた。


「あんまりかな。最近少し話すようになったくらいだよ。課題があったから」


「やっぱ謎に包まれてるな……」


波夏は一人で渋い顔をした。


「お前、余計なことするなよ」


八宵が波夏に鋭い視線を送った。


「もうやだな八宵さ〜ん。何もしませんよ」


「お前のその感じが一番信用ならん」


にこにこ笑う波夏とそれを睨みつける八宵を眺めながら、惺玖は微笑んだ。




 誠一がいつものベンチに行くと、すでに竜翔が座っていた。


「遅かったじゃん。どこ行ってたんだ?」




「ちょっとね」




「そうか。それはそうと、昨日はどうだったんだよ」


「大丈夫だったよ。いつの間にか普通に話してる自分がいてびっくりした」


「そうか。よかったな」


「でも、僕が怖いのは話すことじゃなくて仲良くなることなんだって改めて気づいてさ。なんかまた怖くなったっていうか」


竜翔は誠一の表情がまた少し暗くなった気がした。


「別にへこむことないよ。そんなにあっさり受け入れられるならこんなに苦労はしてない。何度も言うけど、無理はしなくていい。誠一のペースで行こ」


「うん、ありがとう」


「なんか最近そればっかりじゃないか?」


竜翔は笑いながらそうつっこんだ。


「そうかな」


誠一も思わず笑いながら答えた。




「ふぅ〜……。よし、持ってくか。ん?半分無くなってる……」




 迎えたこの日最後の授業は、一昨日話されたLHRの時間だった。


「それでは皆さん、ペアの人と発表をお願いします」


その合図で全員が一斉に発表を始めた。


「じゃあ、私から言うね」


「うん」


誠一は何を言われるのかとそわそわしていた。


「淳月君はまず、妹ちゃんが大好き」


「え……」


「当たりでしょ?」


「なんで……?」


誠一は今までずっと隠してきたことを見破られたかのように動揺した。そして、妹好きと改めて人に指摘されたことでか少し恥ずかしくなった。


「そりゃわかるよ。昨日も楽しそうに話してたし、おばあさんからお土産もらう時もにこにこしてたよ」


「そ、そっか……」


誠一は、頼むから誰もにも聞こえていないでくれと心から願った。


「そしてちょっと人見知り。でも人のことが嫌いとかいう感じはなさそう」


誠一の動揺が止まった。


「そ、そっか……」


同じ返ししかしてこない誠一を横目に惺玖は続けた。


「あとは、和菓子が好きとか家族が好きとか水崎君のことが好きとか……」


誠一は再び爆発寸前になった。


「あとはね」


急に改まった惺玖に誠一も身構えた。


惺玖は誠一の方をしっかりと向いて言った。




「とっても優しい人」




誠一は思わぬ回答に少し驚いた。そして、先程までとは別の意味で頬が熱くなった。


「そ、そっか……」


「ねー、それしか言わないじゃん」


「ごめん……」


そんな誠一を見て惺玖はクスッと笑った。


「あと、面白いっていうのも追加で」


「なにそれ」


結局誠一は、惺玖の発表の時間いっぱい気が気ではなかった。




 惺玖の発表が終わり今度は誠一の番になった。


「じゃあ発表します」


「なんでそんなにかしこまってるの」


惺玖は再び面白がった。


「橋姫さんは人と関わるのがすごく上手だと思う」


「淳月君人見知りだもんね」


「その、真にコミュニケーションが上手な人っていうか……」


上手く言葉に出来ない誠一を惺玖は優しく見守った。


「ただ話しかけたりするだけがコミュニケーション能力だとは思わないんだ。ちゃんとその人その人に距離感があるから」


「なるほど」


「うん。橋姫さんは話してみて嫌な気がしなかったから、その距離感をはかるのがすごく上手なんだと思う」


「初めて言われたな」


惺玖は少し照れくさそうにした。その後も誠一はいくつか惺玖についてのことを発表した。


「あとは……あ、うん。以上です」


「今なんか言いかけた」


惺玖は誠一の言動を見逃さなかった。


「いや、別に何も……」


「そこまで言って言わないのはだめ」


惺玖は引き下がる気配がなかった。


「えっと、じゃあ最後に一つ」


少しの間が空いた後、誠一は口を開いた。




「橋姫さんは一途な人なのかなって」




「え?」


惺玖は驚いたようにして固まった。


「あの、そんな気がしただけで本当に気にしないで。忘れてください」


誠一は顔を逸らし、前を向いた。


「そ、そっか……」


惺玖も前を向き直しそれ以上は何も言わなかった。




 授業が終わり帰りの支度をしていた惺玖のもとに、八宵と波夏が近付いてきた。


「ひめちゃ〜ん、一緒に帰ろ〜。あれ?なんで赤くなってんの?」


波夏は惺玖の顔を覗き込んだ。


「本当だ。どうしたんだ惺玖」


「なんでもない」


惺玖は慌てて顔を隠した。


「なんでもないことないでしょ」


波夏は引き下がらなかった。


「なんでもないったらなんでもない」


「嘘だ〜」


「もう、本当になんでもない!」


惺玖は教室を飛び出した。


「八宵さん、あれは黒でいいんでしょうか」


「まあ、要観察だな」


二人はこれ以上のことを惺玖に尋ねなかった。




「もう……さいあく……」


惺玖はこの後、波夏を少しだけ怒った。

ご覧いただきありがとうございます。よろしければ、いいねや感想などよろしくお願いいたします。

思わず赤くなってしまう惺玖!みなさんはいかがでしたでしょうか。次回は新しい登場人物の予感です!

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