第十九話 この先もずっと
タコパをすることが決まった翌日、六人は昼休みにそれぞれの役割を決めた。波夏が調理担当を希望したことから、女子チームがパーティーの準備担当、男子チームが買い出し担当に決まった。
女子チームは常坂家に集合し、パーティーの準備をする。男子チームは近所のスーパーに集合し、買い出しを終えてから常坂家に向かうこととなった。
「買うものは僕がまとめてきたから、これの通りに買おう」
誠一は昨日、タコパに必要なものを調べてメモ用紙にまとめていた。
「わざわざありがとう誠一」
「ううん。じゃあ、早速行こう」
「おーーう!」
誠一のメモにはたこ焼きを作るのに必要な具材と、プラスでいくつか具材が書いてあった。
「なあアッキー、チーズとかウィンナーも書いてあるけど買うのか?」
「うん。入れるとおいしいんだって」
「へえ~、そうなのか。サイコロベーコンはうまそうだけどな」
「サイコロベーコンは先に焼いておくのがポイントなんだって」
「タコパはいろいろアレンジするんだよ。普通に作ったらそりゃ店のやつがうまいけど、タコパの醍醐味はアレンジできるところだからな」
「なるほどな」
「駿もなんかアレンジの案とかないか?」
「う~ん……。あ、餅なんてどうだ?」
「餅?」
竜翔は思わず声が裏返った。
「なんかよさそうじゃん」
「そういえば僕が調べてた時もあったよ。餅」
「まじかよ」
「よし!売ってたら買おう!」
竜翔はしぶしぶ賛成した。
男子チームが集合した少しあと、惺玖と八宵は常坂家に着いた。
「ひめちゃん、ユッキ~!」
「惺玖ちゃんに八宵ちゃん、いらっしゃい」
波夏と波夏の母親が、玄関で二人を出迎えた。
二人は「お邪魔します」と頭を下げてから家に上がり、リビングに荷物を置いた。
「今日は私たちのためにありがとうございます。パーティーの費用まで出していただいて」
惺玖は丁寧にお礼を言った。
「もう惺玖ちゃん、そんなの気にしなくていいのよ。波夏が言い出したんだし、子どもの楽しみは親が作ってあげないとね」
惺玖と八宵は揃って頭を下げた。
「そろそろ私は出かけないとだから。波夏、みんなに迷惑かけたらだめよ」
「わかってるよ~」
波夏は頬を膨らませ、母親を睨んだ。
「二人ともよろしくね」
「はい。いつものことですので」
「ふふっ、そうね。二人がいてくれると心強いわ」
「いくつだと思ってるの!お母さん、早く行きなよ!」
「はいはい。楽しんでね」
そう言って波夏の母親は出かけて行った。
「もう、お母さんったら」
「いいお母さんじゃないか」
「どこが!」
「まあまあ波夏。波夏もできるようになったことが増えて、ちゃんと大人になってるよ」
「ひめちゃ~~ん」
波夏は惺玖に泣きついた。
「よしよし。波夏だってちゃんとできるもんね」
「うん……」
惺玖にあやされて波夏は泣き止んだ。
「私ひめちゃんと結婚する」
「そうだね。結婚しよっか」
「うん!式はどこで上げる!?」
「う~ん、やっぱりハワイ?」
「おお!ハワイ~!」
「はあ~……、勝手にやってろ」
イチャイチャする二人は無視して、八宵はパーティーの準備を始めた。
パーティーの準備を終えようかとしている頃、男子チームが常坂家に到着した。
「やけにくっついてるね……」
ベタベタ引っ付く惺玖と波夏を見て、竜翔が小さく言った。
「だってね~ひめちゃん」
「ね~波夏」
「え、ほんとになに……」
状況がまったく読み取れない竜翔の問いに対し二人は「内緒~」と声をそろえた。
「こいつらは無視していいぞ。しばらくしたら大人しくなるから」
「そ、そうか……」
「まあ、仲良しなのはいいことだろ。お邪魔しま~す」
竜翔は駿のそういう割り切れるところだけは尊敬している。
その時、誠一に姿が惺玖の目に入った。その瞬間、顔の温度が急激に上がるのを感じた惺玖は、慌てて波夏を引きはがした。
「ひめちゃん?」
「ちょ、ちょっとトイレ……!」
そう言って惺玖はトイレに駆け込んだ。
「買い出しありがとう。ほら、二人も早くあがれよ」
「八宵たちこそ準備ありがとう」
誠一と竜翔も家に上がった。
「パーティーなんて久しぶりでテンション上がってた……。落ち着け惺玖……落ち着け……。大丈夫、実は変な人なんじゃないか、なんて印象はついてない……。たぶん……」
惺玖は深呼吸をしてからリビングに戻った。
タコパの準備が終わり六人はテーブルを囲んだ。
「みんなグラスは持った~?」という波夏の問いかけに「持ちました!」と駿が元気に返事をした。
「レポートお疲れさまでした!かんぱ~~い!!」
波夏の声に続いて「かんぱ~~い!!」と五人が言った後、六つのグラスがテーブルの中央でぶつかり打ち上げ開始の音を響かせた。
六人の会話はとめどなく続いた。一つの話題が終わりそうになると、いつの間にか別の話題に変わっていた。クラスのゴシップ、部活の愚痴、先生の好き嫌い。打ち上げの最中、時間が進んでいるという事実は、誰の頭にもなかった。
たこ焼きも残り少なくなってきたところで、話題は将来の夢についてだった。
「俺は学校の先生を目指してる」
「うわ~似合うよ竜翔君!絶対向いてる!」
「そうかな」
「よっ!水崎先生!」
「いつの時代の煽りだよ」
「水崎は先生になるのか」
「まあ、なれたらね。八宵は?」
「夢っていう夢はないな。あんまり考えたこともないな」
「私も~」
「俺も~」
誠一と惺玖は八宵に同調しなかった。
「誠一君は夢とかあるの?」
「いや、夢っていうか……」
「なんだよアッキー、もったいぶるなよ」
誠一に視線が集まった。
「自分の和菓子屋を持てたらいいな、とかちょっと思ってる……」
ここで初めて常坂家から人の声が消えた。誠一が変なことを言ってしまったことを謝ろうとしたその時、波夏が身を乗り出した。
「すんごく素敵じゃん!」
「アッキー、お客様第一号は俺だよな!」
「は~?第一号は私だよね、誠一君」
「そんな気が早いよ……。出来るかもわからないし……」
「いいじゃんか淳月。出来るかどうか分からないから夢なんだろ。不安すぎるくらいがちょうどいいんだよ。それに、めちゃめちゃ似合ってると思うぞ。だから今のうちに予約しとく。雪枝で一名。第一号な」
「あ、おい!しれっと割り込むなよ!」
「そうだよユッキー、ずるい!」
「だまれ。二人は予約してないだろ。店ってのは予約順なんだ」
三人が言い争っている間に、竜翔が惺玖に尋ねた。
「惺玖ちゃんはあるの?夢」
「私は……」
誠一は惺玖と不自然に目が合った。それがしばらく続いたので「ん?」と誠一が首をかしげると、惺玖は目をそらした。真面目な雰囲気を感じ取った三人は言い争いをやめて、惺玖の方を見た。
「夢っていう夢はないんだけど、将来は何かに頑張る人の手伝いがしたいなって思ってる」
的外れなことを言ってしまったと思い、惺玖は慌てて謝った。
「ごめん……!そういうことじゃないよね……」
「惺玖らしいな」
「うん。惺玖ちゃんらしいよ」
「あ、ありがと……」
「ひめちゃんそれって私のこと?」
「何が?」
「何かに頑張る人って。だってさっき私とけっこ……」
何かを言おうとした波夏の口に勢いよく惺玖の手が被さった。
「なんだよ橋姫。常坂はなんて言おうとしたんだ?」
「さ、さあ~……なんだろうね~……」
波夏は「ん~!ん~!」と必死に何かを言っている。しかし、惺玖の手はその唸り声が言語化することを許さなかった。
波夏が諦めたところで、惺玖は手を離した。
「よし、たこ焼きも食べ終わったしコンビニにアイスでも買いに行こうか」
竜翔の提案に波夏は元気を取り戻した。
「なんかいいね。夜でみんなでコンビニに行くの」
「そうだな~。ていうか、俺たちいつの間にこんなに仲良くなったんだっけ」
「私は青凪と仲良くなった覚えはないぞ」
「雪枝……。俺だって傷つくんだからな……」
「大丈夫だよ駿君。嫌いだったらこんなに一緒にいないよ。ね~ユッキー~」
「雪枝……。まさかお前……」
「頼む。謝るからその勘違いだけは勘弁してくれ」
竜翔と波夏はその会話に大笑いをした。
「あの二人は仲が良いのか悪いのか……」
「ま、まあ、良いってことにしとこう……」
誠一と惺玖は後ろでそんな会話をしながら、コンビニへの夜道を歩いた。
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打ち上げが開催されましたね!書いていた私の感想としては、楽しそう!羨ましい!でした(笑)
今回は第二十話とセットでの投稿になります!打ち上げが終わりコンビニに向かう六人。誠一はその光景を見ながら…。
ついに、第一章が完結です。ぜひご覧ください!




