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できれば好きと、言ってみたい  作者: 漣眞
第一章 声。今君に
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第十八話 懐かしの笑顔

第一章も終盤を迎えました。第十八話です。

 波夏は母親にとある交渉をしていた。


「じゃあ、みんなを呼んでもいい!?」

「うん。でも、あんまり遅くまではだめよ」

「わかった!」


 そう言うと、波夏は勢いよく自分の部屋に向かった。


 同じ頃、誠一は二優花とリビングでテレビを見ていた。


「やっぱり可愛いな~!」


 二優花はテレビに出ていた女優を見ながら、ときめくようにそう言った。


「最近、よくテレビに出てるね」

「そりゃそうだよ!今大人気の売れっ子さんだもん!」

「可愛いもんね」

「あ~あ~、お兄ちゃんがこんな人と結婚してくれたらな~」

「無茶言わないでよ……」


 そんな時、誠一の携帯が鳴った。


「常坂さんだ」

「常坂さん?」

「この前のグループ同じだった人だよ」


 それは、六人のグループへの連絡だった。


“みなさん、お待たせしました!打ち上げの詳細決まりました!”

“待ってました!”

“今みんな時間大丈夫?”

“いいぜ!”

“俺も大丈夫だよ”

“私も”

“私もいいよ”

“僕も大丈夫”


 全員がそろったところで、波夏は打ち上げの詳細を説明した。


“ずばり……、打ち上げは私の家でタコパしましょう~!!”

“タコパ?”

“駿、タコパ知らないのか?”

“うん。何それ”

“ごめん、僕も分からない”

“タコパはたこ焼きパーティーの略で、みんなでたこ焼きを作って食べるパーティーのことだよ”

“そうそう!それを今回は私の家でやろうってことです!”

“波夏の家、使って大丈夫なのか?”

“うん!さっきお母さんに許可はもらった!打ち上げの予定にしてた日、ちょうど親の帰りが遅くてね”

“そうか”

“うん。だから、夜の8時か遅くても9時くらいまでは大丈夫!”

“じゃあ、波夏ちゃんの家でタコパで決まり?”

“おう!タコパやってみたい!”

“私も賛成”

“迷惑じゃないなら、僕もそれで大丈夫”

“あんまり遅くならないようにしないとね”

“決まりね!それで役割分担したいんだけど、どうする?”

“それはまた学校でゆっくり決めよう”


 竜翔の提案に反対はなかった。打ち上げの内容が決まったところで、話し合いは終わった。


 五人に挨拶をし、誠一は携帯を置いた。


「長かったね」

「打ち上げの話し合いをしてたから」

「あーそれね!」

「うん」

「結局どうなったの?」

「みんなでたこ焼きパーティーするって」

「え~、いいな~!」


 二優花は目を輝かせた。


「たこ焼きパーティーについていろいろと勉強してくるから、今度家でもやってみようか」

「ほんと!」


 二優花は未来のたこ焼きパーティーに想像を膨らませていた。そんな姿を、美零はキッチンから微笑ましく眺めていた。


「あ、お兄ちゃんコーディネートも忘れないでね!」

「え……」


 誠一の表情が日に日に変わっていくのが、美零には嬉しかった。


 見ていたテレビ番組が終わり、二人は自分の部屋に戻った。それに気づいた零太は、待っていたかのように誠一の部屋を訪ねた。


「誠一、入っていいか」

「あ、うん」


 零太はドアを開け部屋に入った。


「どうしたの?」

「あーいや、ちょっとな」


 零太は誠一のベッドに腰を下ろし、寝る前の少しの合間でも机に向かっていた誠一に言った。


「相変わらず努力家だな」

「軽く復習してただけだよ」

「続けてていいぞ」

「う、うん……」


 零太が何をしに来たのか疑問を抱きつつも、誠一は勉強を再開した。その背中を見て零太は思ったことをそのまま口に出した。


「誠一も大きくなったな」

「もう高校生だからね」


 誠一は、昔から父親の不器用さはよく分かっていた。それを自分が色濃く受け継いでいたからだ。誠一は零太が話しやすいように、勉強に集中しているふりをした。そしてしばらくの沈黙の後、零太は口を開いた。


「学校が楽しいって聞けて安心したよ」

「すごくいい人たちに出会えたから。今回は運がよかったみたい」

「ごめんな、いつも偉そうなことばかり言って。人間関係については、俺は一番ものが言えない立場なのに」

「謝ることなんてないよ。お父さんの言葉に何度も助けられてるから。僕の方こそ心配かけてばっかりでごめんなさい」

「子どもを気にかけ続けるのが親の務めだ。気にするな」

「うん」


 部屋の空気が軽くなったところで、零太は本題に入った。


「誠一。最後にもう一度だけ偉そうなことを言ってもいいか?」

「うん」

「俺が今まで誠一に言ってきたことは、人を信じてほしいからじゃないんだ」

「うん」

「俺は誠一のいいところもそうじゃないところもある程度は分かってるつもりだ」

「うん」

「それを踏まえて、誠一に自分を否定してほしくないんだ」


 誠一は相槌をうてなかった。


「俺が言えたことではないが、人間関係っていうのはそんなにも深いものじゃない。いたって単純なものだ」


 零太は、狭く深くといった人間関係を築く性格だった。


「信じるとか信じないとかそんなことは重要じゃない。自分が一緒にいたい人と一緒にいればいい。大切にしたい人を大切にすればいい。その思いが何度届かなくても、自分を否定することは無い。誠一の人生だ。正解は誠一が決めるんだ」


 誠一は、心の中を縛っていた大きな鎖が外れるような感覚を覚えた。


「思いは伝えるものだ。答えてもらうものじゃない」

「そっか……。そうだよね……。ずっと信じなきゃいけないって思ってた。もう一度人と友達になるには、相手を信じなきゃいけないって」


 人と同じ時間を過ごせば過ごすほど、誠一の中でその条件が強く浮かび上がっていた。しかし、今ならのそれを感じない自信が誠一の中に芽生えた。


「今度グループのみんなで打ち上げをするんだ。たこ焼きパーティーするって」

「いいじゃないか」

「うん」


 誠一は零太に微笑みながら言った。


「お父さん、楽しんでくるね」


 零太はその表情に懐かしさを感じた。数年前、遠足などの学校行事の前日に必ず見ていた表情だった。


「土産話頼むぞ」

「任せて」


 ベッドから立ち上がった零太は「おやすみ」と言って誠一の部屋を出た。


 この後、零太はこのことを自慢げに美零に話した。美零は心の底から嫉妬したが、近いうちに見れるだろうと納得した。


 誠一はこの日よく眠れなかった。だが、嬉しい睡眠不足だった。

 ご覧いただきありがとうございます。いいねや感想などよろしくお願いいたします。気に入っていただけた方はブックマーク登録の方お願いいたします。


 零太から誠一へ最後の言葉が伝えられました。誠一はまだ、惺玖たちとの関係に思い切りは踏み出せていなかったんですね。その背中を押してくれた零太。かっこいいお父さんです。


 次回は、六人で打ち上げです!誠一がついに踏み出すのでしょうか……。次回もぜひご覧ください!

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