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できれば好きと、言ってみたい  作者: 漣眞
第一章 声。今君に
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第十七話 ストラップ

 第一章も終盤にさしかかりました。第十七話、ご覧ください。

 ある日の夜、二優花は誠一の部屋で勉強をしていた。誠一に分からないところを教えてもらうためだ。


「え~っと……、ここはどうするんだっけ」


 誠一は明後日の方を向いたまま答えなかった。


「お兄ちゃ~ん」


 誠一はまだ答えない。


「おい誠一!」

「あ、はい……!」


 誠一は慌てて返事をした。


「ちょっとお兄ちゃん、どうしたの?なんか悩み?」

「悩みとかじゃなくて……」

「じゃあ、なんなの?」

「え~っと……」


 誠一は静かに話し始めた。


「今度、この前話したグループのみんなで打ち上げをすることになったんだけど」

「え~、いいじゃん!」

「それがさ……」

「うんうん」


 誠一は立ち上がって、クローゼットを開けて見せた。


「しばらく人と出かけてなかったから、服がなくてさ……」

「あ~……」

「せっかくみんなで集まるからある程度ちゃんとした格好をしたいんだけど、服とかよく考えたことないし、お母さんもよく分からないって言うし、おとうさんは……」

「ファッションなんて無縁だもんね~」

「いや、そんなことは言ってない……」


 誠一は今の苦悩を二優花に話した。


「自分で調べてみようって思うんだけど、慣れないことだからか全然進まなくて……」

「その打ち上げはいつあるの?」

「決まってないけど、そんなにすぐにではないと思う。みんな部活があるから」

「ふむふむ。お兄ちゃん今週末、眼科に行くって言ってたよね?」

「うん」

「よし。じゃあ、その時ついでに服も買いに行こう!」

「いいの?」

「もちろん!ていうか、もっと早く言ってよ」

「妹に相談することじゃないかなって……」

「ばか」

「す、すみません……」


 二優花は勉強道具をまとめて立ち上がった。


「そうと決まれば、いろいろと情報を集めなきゃね!」


 部屋を出ようとした二優花を、誠一は呼び止めた。


「あ、二優花勉強は?」


 二優花はドアの前でゆっくりと振り返り言った。


「チッチッチ。お兄ちゃん。善は急げ、よ……」


 そう決め顔をして、二優花は誠一の部屋を出た。


「二優花の変なスイッチを押してしまったのかもしれない……」


 誠一は小さくつぶやいた。


 次の日、誠一と二優花はまず眼科に行った。一通り検査を終えた誠一は、診察に呼ばれるのを待っていた。


「淳月さ~ん、淳月誠一さ~ん」

「はい。二優花、少し待っててね」

「うん……!きっと大丈夫だから……!」

「ありがとう」


 看護師の促しで、誠一は診察室に入った。


「失礼します」

「はい、どうぞ」


 そこにいたのは、ベテラン風の男性医師だった。黒髪の中にところどころ白髪はくはつが混じっている。


「荷物はこちらにおいて、おかけください」

「はい、ありがとうございます」


 看護師に軽く頭を下げて、誠一は椅子に座った。誠一は男性医師からの質問に答えた。


「目の色が変化したのはいつ頃から?」

「はっきりとは覚えていないんですけど、そんなに前ではないです」

「痛みとか見えづらさはあったりした?」

「いえ、ないです」

「なるほどね。検査の結果、炎症とかもないし特に異常はなさそうだよ」


 それを聞いた誠一は、少し安心した。


「でも、逆に原因が分からなくてね~……」

「そうですか……」

「ごめんね」

「いえいえ。大丈夫ですよ」

「とりあえず様子を見て、何か異常があったらまた受診してください」

「分かりました」


 誠一は立ち上がり、一礼をして診察室を出た。


「どうだった……?」


 戻ってきた誠一に、二優花が心配そうに尋ねた。


「異常はないけど、原因がわからないって」

「そっか……」

「大丈夫だよ。こうなってから一回も異変を感じたことはないから」

「お大事にね」

「うん」


 眼科を出ると、二優花は大きく背伸びをした。


「目も大丈夫だったことだし、服を買いに行くぞ~!」

「お~」


 楽しそうな二優花が、誠一には微笑ましかった。


 服を買うために、二人はショッピングモールに移動した。淳月家もよく利用する、人気のショッピングモールだ。


「服の目星とか付いてるの?」

「はい。準備は万端です」


 二優花は得意げな表情でそう答えた。


「お兄ちゃんみたいにファッションに気をつかうのが初めての人は、テンプレから入るのがいいと思うの」

「てんぷれ……?」

「テンプレっていうのはテンプレートの略で、ざっくり言うと基本形みたいなことかな」

「はいはい」

「ファッションにはいろいろとジャンルがあって、人によって好みがわかれるんだけど、自分がどんな服装が好きかもわからないでしょ?」

「はい……」

「だからまずはいろんなジャンルのテンプレを着てみて、自分に合う服装を見つける!ついでに好みも分かれば、今後のためにもなるから」

「なるほど……」


 誠一は、二優花のエンジンが段々と暖まるのを感じていた。


 店に着くと、二優花はすごいスピードでかごに服を入れていった。誠一はそれに圧倒されるように、ただ茫然と眺めていた。


「はい、まずはこれ!」

「あ、ありがと……。これは?」

「いいから早く着てみて!」

「う、うん……」


 誠一は試着室に入り、二優花に渡された服を着てみた。


「お兄ちゃん、どう?」

「う~ん……」


 誠一は試着室のカーテンを開けて、二優花に見せた。


「はいはいはい」


 一つ目のコーデは、スキニーパンツやレザージャケットなどのいわゆるロックコーデだった。


「お兄ちゃん的にはどうなの?」

「服はかっこいいなって思うんだけど、僕にはちょっと派手すぎるかなって……」

「なるほどね。よし、次!」


 二優花はそう言うと、次のコーデを誠一に渡した。


「いつの間に……」

「お兄ちゃんが着替えてる間に」

「そ、そっか……」


 誠一は再びカーテンを閉め、着替えを始めた。


(とりあえず、ここは流れに身を任せよう……)


 着替え終えた誠一は、カーテンを開けた。


「おお~」

「どうでしょうか……」


 二つ目のコーデは、ヴィンテージのズボンなど味のある服でそろえた、いわゆる古着コーデだった。


「さっきのよりはしっくりきてるかもね」

「自分で着ててもなんとなくそんな気はしてる」

「じゃあ、次!」


 誠一は服を受け取り、カーテンを閉めた。


(このお店、ふり幅すごいな……)


 そんなことを思いながら誠一は着替えを終え、カーテンを開けた。


「うん、これだね」


 三つ目のコーデは、無地のTシャツやジャケットといったシンプルなコーデだった。そのおさまり具合に、二優花も見てすぐにうなずいた。


「今日着た中で、一番落ち着くかも」

「お兄ちゃん、すごく似合ってるよ!」

「ありがとう……」


 服装を褒められたことがない誠一は、嬉しいような照れくさいような、なんだか不思議な気持ちだった。


 会計を済ませて、二人は店を出た。


「二優花、ありがとうね」

「全然!人のコーディネートしてみたいと思ってたんだ~!」

「あ、なるほど……」


 誠一はこれまでの二優花のやる気に納得した。


「またいつでも相談してね!」

「うん。二優花がいてくれて頼もしいよ」

「へへへ~。そうだ!今度、お兄ちゃんが私のコーディネートしてよ!」

「え……!?」

「いろいろ調べといてね!」

「いやいや……」

「楽しみだな~!」


 誠一に再び悩みができた。


 ショッピングモールの出口に歩いている途中、二優花が何かを見つけた。


「あ、ガチャガチャだ!和菓子グッズのやつもあるよお兄ちゃん!」


 二優花は足元にあるガチャガチャを指さした。


「お~、珍しいね」

「なんだ、みたらし団子ないじゃ~ん……」


 二優花は少し肩を落とした。


「でも、お兄ちゃんの好きな大福はあるよ!」

「本当だ」

「回してみれば?」

「そうだね」


 誠一はお金を入れてガチャガチャを回し、出てきたカプセルを開けた。


「あ~、残念。大福じゃなかったね」


 出てきたのはおはぎをモチーフにしたストラップだった。誠一はしばらくそれを見つめていた。


「いらないなら、私がもらおうか?」

「大丈夫大丈夫。せっかくだから自分で持っとくよ」


 誠一は中身をカプセルに戻し立ち上がると、二優花と出口に向かって歩いた。


「ね~お兄ちゃ~ん、お腹すいた~」

「まだ夜ご飯の時間じゃないよ?」

「そうだけどさ~、たくさん動いたから……」

「なら、ドーナツでも買ってく?」

「いいの!?」

「うん。今日のお礼」

「買う買う!!」

「夜ご飯が食べられる程度にね」

「は~い!」


 そうして二人は、ショッピングモール内にあるドーナツ屋に立ち寄った。誠一は先程のカプセルを、そっとカバンの中にしまった。

 ご覧いただきありがとうございます。いいねや感想などお待ちしております。気に入っていただけた方はブックマーク登録の方お願いいたします。


 誠一と二優花のお買い物回!いかがでしたでしょう。二優花のファッションに対する熱量が伝わってきましたね。シンプルコーデが似合う男の子。誠一のビジュアルがなんとなく想像できましたでしょうか。


 次回は波夏から打ち上げの具体的な内容が……!ぜひご覧ください!

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