第十六話 六人組
今回は後書きの方に次回予告が書けませんでした。申し訳ございません。
五人が公園で話をしている頃、部屋でくつろいでいた誠一を二優花が呼びに来た。
「お兄ちゃん、夜ご飯できたよ~」
「ありがとう。今行く」
誠一は二優花と一緒に下に降りた。
ご飯中、美零はにやにやしながら誠一の顔を覗き込んだ。
「そういえば誠一~、最近いいことでもあった?」
「な、何で?」
「何でって、学校から帰って来た時の表情とか家にいるときの表情とか、なんか明るいじゃない」
「私も思った。最近のお兄ちゃん、生き生きしてる」
「そうかな~……。別に何もないよ」
戸惑っている誠一を見て、美零は思い切って聞いてみた。
「学校、楽しいの……?」
零太と二優花も誠一に視線を向けた。
「うん、楽しいよ」
誠一の嘘偽りのない本心だった。
「いいことあったんじゃない」
「いいこと……まあ、いいことなのかな……」
誠一の表情が緩んだのを見て、零太は味噌汁を一口すすった。美零は誠一に学校生活について尋ねた。
「最近はどんなことしてるの?」
「クラス内でグループに分かれて、レポート課題に取り組んでるところ。この前でかけてたのも、レポートの情報集めに行ってた」
「そうだったの」
「うん」
「何人グループなの?」
「僕たちのところは男女六人」
「六人……。誠一と竜翔君と、他に四人か」
「そうだよ」
「どうんな子たちなの?」
「えっとね~……」
誠一は四人の顔を一人ずつ思い浮かべた。
「あまりのフレンドリーさに少し驚いたけど、それだけ人と打ち解けられる正直で真っすぐな男の子と……」
「いつも笑顔で少し抜けてるように見えるんだけど、自分の芯を持ってる友達思いで純粋な女の子と……」
「少し物静かだから冷たく感じるんだけど、実は一番周りのことを考えてくれてる優しくて温かい女の子と……」
誠一は今までの高校生活をもう一度頭の中で振り返り、最後の一人について話した。
「誰からも愛されるような、そんな人柄を持った女の子」
誠一が話終えると、美零と二優花はポカンとした表情を浮かべ、零太は静かにご飯を食べていた。
「え、何か変なことでも言った……?」
「いや、そうじゃなくて……」
「お兄ちゃん……」
誠一は何を言われるのかと少し身構えた。
「すごい分析力ね……」
「本当、お兄ちゃんすごいよ……。私、顔までなんとなく想像ついちゃった」
「それは大げさだよ」
「よく見てるのね。その子たちのこと」
「別に普通だよ……。みんなの個性が強いってだけで」
「謙遜することないわよ。胸張っていいことだと思うよ?」
「あ、ありがとう……」
少し照れくさくなっている誠一に、二優花が尋ねた。
「最後に話した人が、この前一緒に和菓子屋に行った人?」
「そうだけど……、何で分かったの……?」
「なんとなーくそんな気がして」
「そっか……。二優花は中学校楽しい?」
「うん、楽しいよ!小学校とは違うこともたくさんあって!あ、それに面白い人とも出会えた!」
「面白い人?」
「そうそう。面白いっていうか、不思議な人?」
「へ~。どんな人なの?」
「なんかね、異常にテンションが低いの。ずっと落ち込んでるのかなってくらい」
「そんなに?」
「そんなに。でも、話しててすごく楽しいんだよね。それに私、異常にテンションの低い人には慣れっこだから」
「何で俺の方を見るんだ」
「別に見てないし~」
「いや見たじゃないか」
「こら二優花。お父さんが可哀想でしょ」
「可哀想でしょもおかしいだろ」
「なによ~かばってあげたのに」
零太は不満そうに食事を続けた。
次の日の朝、誠一は普段通りに登校した。教室に入ると、惺玖の席に五人が集まっていた。
「お、アッキーおはよう」
「おは……、あっきー……?」
「ほら~、誠一君困ってるじゃん」
「最初はそうだろ。淳月、今日からはアッキーだからな」
「そ、そう……。分かった……」
「誠一、無理しなくていいんだぞ……?」
「全然無理なんてしてないよ」
「八宵もユッキーだもんね~?」
「だからなんだ」
「仲間だね~って」
「何の仲間なんだよ」
「えっと~……、何かあったの……?」
駿と波夏はドキッとした。
「いやいやいや、な、何でもないよ!?ね~?駿君?」
「そ、そ、そうだよな~?常坂~?」
「はあ~……」
八宵が諦めるようにため息をついた。
「え……本当にどうしたの……?」
「気にするな誠一。本当に何でもない。あだ名呼びにテンションが上がってるだけだ」
「そっか……。何で急にまた……」
「気分屋なんだろうな。俺も急に駿から下の名前で呼ばれ始めた」
「そうなんだ……」
「うん。あ、今みんなでレポートの最終確認やってたんだ。みんな部活で早く来てるから。今日発表だろ?」
「そうだったんだ。言ってくれれば早く来たのに」
「いやいや、俺たちも集まってるついでに確認しただけだから」
「そういうことだから、気にするな淳月」
「うん。ありがとうね」
「よし、そろそろ俺たちは席に戻ろうか」
惺玖以外の四人は席に戻って行った。
「淳月君」
誠一は視線を下した。
「おはよう」
誠一は惺玖にまだ挨拶をしていないことを思い出した。
「おはよう、橋姫さん。ごめん、無視してたわけじゃなくて……」
「そんな気にしなくていいよ」
申し訳なさそうにする誠一に、惺玖は思わず笑いが出た。
「大変そうだったもんね」
「まあ……。でも、青凪君には驚かされてばっかりだから慣れてきたかも」
「なにそれ」
誠一の一日は、今日も賑やかに始まった。
レポート発表の時間、E組はグループごとに集まって座っていた。
「最後、私たちの番だね駿君」
「あ~、なんか緊張してきた」
「大丈夫かよ駿」
「お、おう」
「そういう水崎はどうなんだ?」
「俺は大丈夫だよ。八宵も平気そうだな」
「まあ、たかだかクラスでの発表だからな」
「なるほど……」
「私、間違えたりしないかな……」
「橋姫さんなら大丈夫だよ」
「本当?」
「うん。きっと大丈夫」
「ありがとう。そう言って、淳月君が間違えたりして」
「え……」
「もう、冗談だよ。あ、私たちの番来た……!」
そうして六人は無事に発表を終え、全てのグループが発表を終えた。
「みなさん、発表お疲れさまでした。素晴らしいものばかりで、とても感動しています。まとめは最後にするので、それまではグループで反省会を行って下さい」
先生の合図で、誠一たちも反省会を始めた。
「とりあえず、みんなお疲れ様。駿も緊張してた割には上手くできたじゃん」
「いや~、結構緊張した」
「それはご苦労だったな」
「相変わらず冷たいやつだな……」
「橋姫さんも間違えなかったね」
「うん。淳月君もね」
「橋姫さんの脅しが効いたのかも」
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないでよ~」
「ごめんごめん」
頃合いを見て、波夏が提案を出した。
「ねえねえ、発表も上手くいったしさ、みんなで打ち上げしない?」
「打ち上げ?」
波夏の提案に駿が首を傾げた。
「そう!レポート発表お疲れ様会!」
「いいじゃんそれ!やろう!」
「打ち上げか。いいかもな」
「お、珍しく八宵が乗り気だ」
「乗り気じゃなかったことなんてないだろ」
「駿との葵山」
「あ~……」
「否定しろよ雪枝!」
四人が盛り上がる横で、誠一と惺玖が話していた。
「淳月君、行く?」
「うん。橋姫さんは?」
「もちろん行くよ」
全員の意見がまとまったところで、波夏が手をたたいた。
「じゃあ、決まりね!詳しいことはおいおい決めるから!」
「計画立てるのは私も手伝う。波夏一人じゃ心配だからな」
「も~う、ユッキーったら~、そんなに楽しみなのね」
「あ、気が変わった。波夏、一人で頑張れ」
「嘘嘘嘘!手伝って~!」
八宵に泣きつく波夏を見て、四人は笑っていた。
誠一の心情に大きな変化が訪れていることを、誠一自身もまだ知らずにいた。
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レポート発表が終わりました!六人の関係がさらに深まったような気がしますね。誠一の心情の変化。みなさまは感じたでしょうか。
次回もぜひご覧ください。




