第十五話 仲良し大作戦
この度、「できれば好きと、言ってみたい」が1000PVを突破いたしました。ご愛読くださった皆様、本当にありがとうございます。小さな一歩ですが、私はとても嬉しいです。もっとたくさんの方に読んでいただけるよう、精進してまいります。これからも「できれば好きと、言ってみたい」をよろしくお願いいたします。
竜翔が話し終える頃、公園の気温は少し下がっていた。
「誠一は人と関わるのが好きなやつだったから、余計に辛かったと思うんだ……」
竜翔の心苦しさを、その暗い表情が物語っていた。
「竜翔。淳月はその後の学校生活、大丈夫だったのか……?」
「一応学校には来てた。でも、明らかに周りと距離を置いてた。必要最低限の返事くらいで、それ以外は全く誰とも話してなかった。中学生になってもずっと……」
「そうか……」
「誠一、最初は俺のことも遠ざけてたから理由を聞けなかったんだ。だから家まで行って、誠一のお母さんに話を聞いた。また話せるようになるまで苦労したよ」
竜翔は苦笑いしながらそう言った。
「そんじゃあ、私らがやるしかないな」
「え?」
「えじゃねえよ。水崎とは話せるように戻ったんだろ?」
「それはめちゃめちゃ頑張ったから……」
「なら、私らもめちゃめちゃ頑張ればいい」
「賛成!」
「やるか!」
「いやでも、どれだけかかるか……」
「そこは俺たちの技量よ。実際、少しは変わってきてるんだろ?」
「そうだけど……」
「大丈夫だって竜翔君。せっかくこうして出会えたんだもん。そんな話聞いたら見過ごせないよ」
「波夏ちゃん……」
「よ~し、淳月仲良し大作戦だ~!」
「よっしゃ~!」
「ちょっと波夏……!青凪君も……!騒いだら近所迷惑になるでしょ……!」
駿と波夏は慌てて静まった。
「水崎君。作戦名はあれとして、良い考えなんじゃないかな。波夏の言う通り放ってなんておけないよ」
竜翔は胸がいっぱいになり、何も言えなかった。
「にしても、八宵さんが言い出すとはね~」
「あ、確かに。俺も雪枝が言ったのは意外だった」
「悪いかよ」
「別に~?」
駿と波夏に腹を立てる八宵。それをなだめる惺玖。その様子を微笑ましく眺める竜翔。先程までの静けさは噓のようだった。
話もまとまったところで、五人は公園を出た。
「みんなありがとね。誠一のために」
「何言ってんだ竜翔。仲良くなりたいのは俺たちなんだから、礼なんていらねーよ」
「あ、駿君いいこと言った。その通り」
駿、惺玖、波夏の少し後ろを竜翔と八宵が歩いていた。
「だろ~。あ、あだ名とかいいかもな……」
「あだ名?」
「そうそう。仲良しって感じでるだろ?」
「なるほど」
「淳月だから~……アッキー、なんてどうだ?」
「う~ん……。かわいいけど、誠一君困らないかな~……」
「慣れれば大丈夫だって」
「そういうものなのかな……。ひめちゃんはどう思う?」
「え?あ、まあいいんじゃない……?仲良しな感じで……」
「だよな!」
「あ、じゃあついでに私も八宵のあだ名を解禁しようかな……」
「封印してたのか……」
「うん。ぶん殴られそうで」
「あ~……」
駿は波夏に強く共感した。
「で、そのあだ名って?」
「雪枝の雪をとって……ユッキー!いいよね?」
波夏は楽しそうに、八宵の方を振り返った。
「嫌だ」
「え……」
「なんだよ雪枝~。冷たいな~」
「波夏、そんなに落ち込まなくても……」
ムスッとする八宵に竜翔が言った。
「呼ばせてあげれば?かわいいじゃん、ユッキー。俺はいいと思うけどな~」
「だって今更……」
「それに、惺玖ちゃんはあだ名なのに八宵は名前なのも違和感あるし。この機会にさ」
「ま、まあ、確かにそうだな……」
竜翔に見つめられた八宵は小さくうなずいた。それを見た竜翔はニッコリ笑って、波夏に伝えた。
「波夏ちゃ~ん。八宵が呼んでいいよって~」
「ほんと……!?」
「やったな常坂~」
「よかったね、波夏」
「うん……!」
「橋姫もハッシーしするか?」
「絶対に嫌です」
「私も嫌だ。かわいくない。ひめちゃんにはもうあだ名あるし」
「だよね~波夏~」
「そんなに言わなくても……」
しょんぼりする駿を見て、惺玖と波夏は笑っていた。
「楽しそうだな」
「青凪がまたなんか言ったんだろ」
三人様子を、竜翔と八宵は後ろから見ていた。
「ありがとな。八宵」
「なんだ急に」
「さっきのこと。八宵が言い出してくれたから」
「私が言わなくても誰かが同じようなこと言っただろ」
「そうだとしても嬉しかった。八宵が言ってくれたのは本当に意外だったから。悪いとかじゃなくて、そんなに話したこともないだろうし」
「全然ないな。でも、波夏が言ってたことがすべてだよ。私も同意見だった」
「せっかく出会えたからってやつ?」
「そうだな。まあ、もっと言えば」
竜翔は八宵の顔を見た。
「せっかく淳月みたいな人と出会えたから」
八宵の言葉は竜翔には予想外だった。
「誠一みたいな人……?」
「うん。惺玖も波夏も青凪も、そして私も。自分の損得とか関係なく、純粋に淳月と仲良くなりたいんだよ。そう思わせるだけの人柄が、淳月にはあると思う。全然話さなくても、見てれば分かる」
「そんな風に思ってたのか……。意外過ぎる……」
「意外ばっかり言うな」
「ごめんごめん」
竜翔は少し笑いながら謝った。
「あんな暗い顔見たくないし……」
八宵の小さなつぶやきは、竜翔には聞こえていなかった。
「ん?なんて?」
「何も言ってない」
「いや、なんか言ったじゃん」
「言ってない。忘れろ」
「え~……」
「忘れろ」
「はい……」
こうして五人は、いつもより少し遅く家に帰った。
家に着いた惺玖は部屋で一人ベッドに座り、今日のことを考えていた。
「ずっと仲良くしてた人が、実は自分をよく思ってなかった……。私で言えば、八宵や波夏が本当は私のこと……」
そんなことを考えると急に寂しさがこみ上げてきた。
「いやいやいやいや」
惺玖は我に返り、首を横に振った。
「小学六年生……」
惺玖は誠一のことが不憫でたまらなくなった。そんな時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「姉ちゃん……。入るよ……」
「うん」
部屋に入って来たのは、弟の橋姫光陽だった。
「どうしたの?」
「姉ちゃんの乾いた洗濯物……。持って上がるの忘れてたでしょ……」
「あ、ごめん。ありがと」
光陽は惺玖の表情から何かを感じ取った。
「なんかあったの……」
「え?なんで?」
「いや……、なんとなく……」
「光陽はやけに鋭いな~。実はね……」
隣に座った光陽に、惺玖は今日のことを話した。
「仲良し大作戦……。姉ちゃんが考えたの……?」
「違うよ!」
「そっか……」
「どうしたらいいのかな~……」
「そんなに深く考えなくてもいいんじゃないかな……」
「え?」
「寄り添ってあげたいって思いがあれば……、それは自然と伝わると思う……。何をしてあげるかじゃなくて……、何を思ってしてあげるかが大切なんじゃないかな……。それだけの真っすぐな思いなら……、きっと伝わるよ……」
光陽の言葉が、惺玖の不安を晴らした。
「光陽、良いこと言うね」
「いや別に……」
光陽は少し照れくさくなった。
「姉ちゃんは……、その人のことが好きなの……?」
「いやいや、そんなんじゃないよ。ただ」
少しの間が空いてから、惺玖は言った。
「せっかく知り合えたからさ、仲良くなりたいんだ……」
光陽から見て、その言葉は紛れもなく惺玖の本音だった。
「そっか……」
「光陽はいないの?」
「何が……?」
「好きな人」
「いないよ……」
「本当かな~」
「いないってば……!」
「はいはい。もう言いません」
惺玖は両手をあげて光陽に降参した。
「じゃあ頑張ってね……!」
光陽は立ち上がると、足早に惺玖の部屋を出た。
「いくつになっても弟だな~」
惺玖は一人で微笑ましくなっていた。
「よし。淳月君にはいつも通りでいこう。光陽が言ってくれたように、それできっと伝わるはず……!」
明日からに向け、惺玖の考えがまとまった。
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誠一の過去を知った四人。誠一へのそれぞれの思いが溢れていましたね。そして今回、惺玖の弟である橋姫光陽が新しく登場しました。いかがでしたでしょうか。かなりおとなしい男の子でしたね。
次回はレポートの発表です。波夏からとある提案が……?ぜひご覧ください!




