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できれば好きと、言ってみたい  作者: 漣眞
第一章 声。今君に
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第十二話 筆箱

 過去編について皆様にお詫びがあります。誠一の過去について話をしているのは竜翔ですが、誠一の過去を明確に伝えるために過去編は誠一目線で書きます。したがって、竜翔が知らないはずの誠一の私生活や心理描写のシーンが多数含まれます。そのことに違和感を持たれる方もいらっしゃるかと思いますので、予めお詫び申し上げます。申し訳ございません。これからも「できれば好きと、言ってみたい」をよろしくお願いいたします。

 ――四年前。


 誠一はキッチンで朝食の準備を手伝っていた。


「誠一。ちょっと二優花を起こしてきてくれない?」

「分かった」

「ごめんね。ありがと」


 手が離せそうにない美零に頼まれて、誠一はリビングを出た。二階に上がり二優花の部屋の前に着くと、扉を三回ノックした。


「二優花~。もう、朝ご飯できるよ~」


 応答がなかったので、誠一は部屋のドアを開け中に入った。すると、ベッドの上で二優花がすやすやと眠っていた。誠一は二優花の前にしゃがみ込み肩をゆすった。


「二優花。早く起きないとご飯食べる時間なくなるよ」

「う~ん……。あれ……?お兄ちゃんが人間に戻ってる……」

「どんな夢見てたの……。寝ぼけてないで早く降りておいで」


 誠一は立ち上がり部屋を出た。


 朝食をテーブルに並べ終わった頃、二優花がリビングに降りてきた。


「二優花おはよ。ご飯できてるわよ」

「う〜ん……」

「まだ半分寝てるわね……。先に顔洗っておいで」

「は〜い……」

「おはよう二優花。なんだかテンションが低いな。元気出していけよ」

「お父さんに言われたくない」


 零太に頬を膨らませた後、二優花は洗面所にとぼとぼ歩いて行った。


 この日も、淳月家の朝はいつものように過ぎていった。


 学校に行く準備を済ませた誠一は玄関を出ようとした。


「待って待って。私も行く」


 ちょうど準備を済ませた二優花が小走りで来た。


「行ってきます」

「行ってきます!」

「いってらっしゃい。二人とも気を付けてね」


 この二つの背中を見送ることが、美零の日課だった。


 誠一と二優花はたまにこうして二人で学校に行っていた。今は春先。学年が上がって間もない頃だった。


「お兄ちゃんはもう六年生か~。あっという間だな~」

「確かに。二優花もいつの間にか三年生だもんね」

「中学校は違うところに行くんでしょ?」

「うん。受かるか分かんないけどね」

「お兄ちゃんなら大丈夫!頭いいし、すっごく勉強してるし!」

「だといいんだけど」

「竜君と二人で絶対行けるよ!」

「ありがとう」


 にこにこ笑う二優花を見る誠一の目は、優しく微笑んでいた。


 誠一のクラスは明るく元気な学級だった。


「あ、せいいち君おはよう!」

「せいいちおはよ!」

「あきづきおはよ~」


 教室に入るなりみんながあいさつをしてくれた。誠一は普通のことだとは分かりつつ、それが嬉しかった。


「おはよう」


 みんな友達、みんな自分を受けいれてくれていると誠一は思っていた。


「浦木君、おはよ!」

「おお、せいいち。おはよ」


 中でも二年連続で同じクラスになった、この浦木という男の子と仲良くしていた。浦木はいつもクラスの中心にいるような人物だった。誠一によく話しかけたり、誠一をよく頼ったりしていた。自分のことを必要としてくれる浦木を、誠一は竜翔のように少し特別な友達だと思っていた。


 この日最後の授業では、授業の最後にノートの回収があった。


「係の人。申し訳ありませんが、集めてもらったこのノートを職員室に運んでください」


 先生が教室を出た後、係の女の子がノートの量を見て困っていた。


「あ、もう一人の人休みなんだった。私一人じゃ持って行けないよ~……。えっと……」


 女の子は手伝ってくれそうな人を探していた。


「どうしたの?」


 そう声をかけたのは誠一だった。


「あきづき君。係が私しかいなくてノートこんなにあるし……」

「僕が手伝うよ」

「いいの?」

「うん。半分ずつ持って行こう」

「ありがとう!」


 誠一は人の手助けをすることが多かった。困っている人をどうしても見過ごせない性格だったからだ。


 その日の帰り道。誠一はいつものように竜翔と帰っていた。


「誠一は勉強どんな感じ?」

「やってるつもりだけど、どうだろうな~」

「俺もそんな感じ。やっぱ、俺たちみたいな人って少ないんだって」

「俺たちみたい?」

「中学受験する人だよ」

「あ~そうだろうね。周りでも僕と竜翔しかいないし。今の時点ではっきり夢がある人の方が珍しいかも」

「受かったらちょっと離れ離れだな。みんなと」

「だからこそ、残り時間を楽しむ!僕はそう決めてるよ」

「それで落ちたら二人で大笑いだな」

「縁起悪いこと言わないでよ!」

「ごめんごめん」


 そんな話をしながら帰っていた途中、誠一が何かに気が付いた。


「あ!ごめん。筆箱、学校に忘れてきた」

「どうやったら筆箱を忘れるんだよ」

「取ってくるから先に帰ってて」

「分かった。気を付けてな」

「うん。またね!」


 誠一は走って来た道を戻って行った。


 もしこの日。誠一が筆箱を忘れていなかったら。何か違っていたかもしれない。

小学生時代の誠一はいかがでしたでしょうか。今とはなんだか雰囲気が違いますね。

次回、最後の文の意味とは……。学校に戻った誠一は何を見るのでしょう……。

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