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できれば好きと、言ってみたい  作者: 漣眞
第一章 声。今君に
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第九話 思い出の場所

 六人全員が恐怖心を抱く中でも、惺玖は特に怖がっている様子だった。


「橋姫さん大丈夫?」

「う、うん……」

「ひめちゃん、無理しなくても大丈夫だよ?」


学校では嫌がる惺玖を説得した波夏だったが、惺玖の気持ちを無視しようという気はもちろんなかった。惺玖もそのことは理解していた。


「ありがとう波夏。でも大丈夫。せっかくみんなで来たんだから最後まで一緒に行くよ」

「わかった。やばくなったらみんなで全力逃走ね!」

「うん」


波夏の明るさに惺玖は元気をもらった。


 山を進むにつれ、場の空気が重くなっていくようだった。


「なあ、なんかやばくないか……?」

「確かに……。でも私は、びくびくしてる八宵ちゃんが見られてちょっぴり嬉しいかも……」

「お前まじで置いて行くぞ」

「そんなに変な感じする?」

「誠一、何も感じないのか?」

「不気味な感じはあるけど、そんなに……」

「誠一君って鈍感?」

「そんなこともないと思うんだけど……」


分かれ道に着いた頃、誠一は何かに気がついた。


「あれ?ここって……」


その時だった。


「ぎゃあああああ!!!!」


竜翔、駿、波夏、八宵の四人は大きな悲鳴をあげながら山を駆け下りていった。


「え、ちょっとみんな……!」


誠一は完全に置いて行かれた。その横でしりもちをついている惺玖の姿が目に入った。


「橋姫さん!?」

「……」


恐怖のあまり腰が抜けているようだった。


「立てそう?」

「無理……かも……」


誠一は少し悩んだ後覚悟を決め、座り込んでいる惺玖の背中と両ひざの裏に手をまわした。


「きゃっ……!」

「ごめん、これしか思いつかなくて……。早くここから離れたいだろうし……」


咄嗟(とっさ)の事だったので、二人はこの状況への心の準備など到底できてはいなかった。


「絶対に下向いちゃちゃだめだからね……」

「わかってる……。橋姫さんも上は見ないようにしてくれると助かる……」

「わかった……」


二人はお互いの顔を見ない約束をした。


「ごめんね、迷惑かけちゃって……。置いて行かないでねなんて言ったばっかりに……」

「気にしなくていいよ。もし言われてなかったとしても、きっと同じことしてたから」

「そっか……」


もう少しで山のふもとというところで、誠一は惺玖を降ろした。その後もしばらく、二人はお互いの顔を見れなかった。


 山を下りると、四人が疲れ切った顔で待っていた。


「誠一……遅かったな……」

「惺玖も大丈夫そうで何よりだ……」

「もう嫌だ……。あそこには二度と近づかない……」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」


駿は絶望し、波夏はひたすら謝り続けていた。そんな四人の様子を見て、誠一は不思議そうに尋ねた。


「あの、なにがあったの?」

「誠一は見てないのか?」

「うん」

「あの分かれ道に入ろうとした瞬間、紫色のとんでもないのが襲いかかろうとしてくるのが見えたんだよ。それで慌てて逃げたんだ」

「そうなんだ……」


誠一の横で惺玖が強くうなずいていた。


「この話しても誰も信じてくれないだろうね」

「だろうな。私たちみたいに実際に見た人たちが結構いるのに、あの場所が何の規制もされてないのがその証拠だ」

「だよね~……。あんなに怖い思いしたのに誰にも話せないなんて、なんか損したみたい」


波夏は残念そうに肩を落とした。


「常坂さん、それは違うと思うよ」

「え?」


波夏は誠一の方に顔を上げた。


「他の誰が信じなくても、ここにいるみんなが分ってくれてる。それに、誰も信じてくれないってことは僕たちだけの思い出になるってことだから。少なくとも僕は、一生忘れないみんなとの思い出になったよ」

「誠一君……」


波夏の表情が軽くなった。


「お前は見てないけどな」

「それは言わないでよ……」


竜翔にからかわれ弱々しくなる誠一を見て、みんなが笑っていた。そこに先程までの重い空気はなかった。そして、場をまとめるように駿が手をたたいた。


「よし!気を取り直してレポートに向けて頑張るか!」

「お前が仕切るな」

「なんだよ。別にいいだろ」

「なんか(かん)に障る」

「ひどくないですかそれ……」

「ま、まあとりあえず今後は図書館とかで情報集めをしようか」

「ならさ、三グループに分かれようよ。みんなで動いても効率悪いし、二人なら情報もまとまりやすいだろうし」

「波夏にしてはいい案だな」

「褒められてる気がしない……」

「雪枝さんはぶれないな……」


誠一は小さくそうつぶやいた。


「じゃあ、ジャンケンで分かれようか。勝ち負けじゃなくて、同じの出した二人がペアってことで」

「おもしろそう!」


六人は小さく集まり、波夏がジャンケンの音頭をとった。


「じゃあ行くよ~……、ジャンケンポン!」


偶然にも一回で、六人はきれいに分かれた。

ご覧いただきありがとうございます。よろしければ、いいねや感想などよろしくお願いいたします。

葵山は六人にとっての思い出の場所になりました。

次回はペアが決まります!六人はどのように分かれたのでしょうか……。

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