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TSゲーマー、ダクファン世界を配信中! ~魅力極振りの有翼ヒーラー(※3重地雷)はドラゴンさえソロ討伐可能の最強ビルドでした~  作者: 一ノ瀬るちあ/エルティ
8章 イースター祭

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6話 魔法のオーロラ

「イースターエッグに描かれる色や模様にはさ、意味があるのさ」


 例えば赤は幸福や希望。青は空と健康。

 星は魔除け、花は美しさ、波は永遠。


 大きなタマゴに砂を吹きかけて表面を研磨しながらアヤタカガさんが説明する。

 タマゴの表面のざらつきが、これからペインティングをするうえで障害になるから、らしい。


 油絵を描くときに、キャンバス全部を単色で塗りつぶすのと同じようなものなのかな。

 地塗りにはキャンバスの目を埋める効果があるって聞いたことがある。


 アヤタカガさんがどんな塗装を目論んでいるのか今から気になるけれど、楽しみは後にとっておこう。

 わたしはショートケーキのイチゴを最後に食べる派なのだ。


「それでだ。今回は塗料にとっておきを使う」

「青……? んん⁉」


 アヤタカガさんが取り出した塗料を、わたしは最初青だと思った。だけどよくよく、塗料を舐めまわすように観察すると単なる青ではないことに気づく。


「赤が混ざってる? というより、見る角度によって色が変わってる?」

「お、いい目してんね!」


 アヤタカガさんが顔をほころばせる。


「偏光性塗料って言ってな? 正面から見た色と横から見た色が、滑らかに変化するんだ。まあこれはシェーダーにコードをゴリゴリに記述した模造品だけど」


 そう言って、既に塗装済みの平面板を取り出すと、アヤタカガさんはわたしの前で水平方向に振った。

 その動作に連動して、塗料が青から赤へ、赤から青へと変化する。


 ……頭がバグりそう。


「塗装した表面に層を作るように出来ててな? 光の一部が層の中に侵入したり、あるいは反射したりして光の波長に干渉する仕組み……って、言ってもわかんねえよな」

「ニュートンリングだ!」

「なんで伝わるんだよ」


 一応理系の大学でてるので……"俺"くんがだけど。


 あれ?

 ということは、赤からオレンジとか、赤から黄色に変化する塗料もあるのでは?


 そんな中、青と赤を選んだ理由ってなんだろう。


「ええと。青が空、赤が希望でしたっけ」


 アヤタカガさんは満足げに頷く。


 研磨が終わった後で除電。

 塗装の密着性を上げるプライマー。

 色のとまりをよくするサフェーサーが塗布されると、タマゴの表面が白っぽい塗料で塗りつぶされた状態になる。


 あいかわらずアヤタカガさんの腕の動きが人外じみてる。この俊敏さにはゴキブリも真っ青。


「古来、青空は笑顔に例えられてきたんだ」


 乾燥の工程は自動クラフト+時短アイテムでカットして、耐水ペーパーを使って表面がつんつるてんに磨き上げられていく。


「姫ちゃんにぴったりだろ?」


 作業の手を止めたアヤタカガさんが、花が開いたような笑顔を向ける。

 こっちまで楽しくなって、釣られて笑ってしまうような朗らかな笑みだ。


 そんないい顔で言われると照れる。


「で、でだ! 見てくれよ姫ちゃん! ついに手に入れたんだ」

「なぜアヤタカガさんまで照れて……」

「照れてねえし⁉」


 お顔が真っ赤っか。

 あらあら、まあまあ。

 そう言うことにしておきましょうね。


 それで、見せたいものっていうのは?


「アルミ顔料。メタリック加工に使われるアルミニウム粒子の塗料なんだ」

「なにこれすっごい! 吹きかけたところが金属っぽい質感に⁉」


 急にタマゴが金属質になったんだけど⁉

 なにこの塗料⁉ すごい!


 と、感動している間にもアヤタカガさんは目にもとまらぬ速さで作業を進めていく。

 今はマスキングテープをぺったんぺったんしているところ。

 この上からさらに塗料を吹きかけたあとにマスキングテープを剥がすことで模様が浮かび上がる仕組みらしい。


 タマゴの殻に金属加工、およびマスキングテープを張り終えると、その上からさらに黒系統の塗料を吹きかける。


 この工程で他と少し違ったのは、時短アイテムを使わずに塗料が定着するのを待ったことである。


 先ほど張り付けたマスキングテープを、今塗った黒色が完全に硬化してしまう前に引っぺがすためらしい。


 マスキングテープを引きはがすと、下から模様が浮かぶ。


 偏光性塗料の出番はここにきてようやくである。

 アヤタカガさんがタマゴの上から一見無造作に、けれどよく見れば塗りむらが無い丁寧な仕事で塗料を吹きかけていく。


 白い部分はあまり色の変化がわからない。

 けれど黒っぽい部分の上に吹きかけた部分は、先ほど見た塗装済みの板同様、青から赤に変化するグラデーションが広がっている。


「出来たぞ姫ちゃん」


 大きな花と、舞い散る羽根々々(はねばね)

 それから、吸い込まれるように広がる紺碧の空。


「姫ちゃん?」

「アヤタカガさん。わたし、これめちゃくちゃ好きです」

「お、おう」


 力強い息吹を感じる。

 新しい何かが始まる予感がする。


 やっぱり、アヤタカガさんってすごいや。

 こんな芸術を、息をするように作り出してしまうんだから。


「そんな物欲しそうな目で見なくても、それは姫ちゃんへのプレゼントだって」

「え」

「じゃなきゃ、わざわざハンドクラフトで研磨やら下塗りなんてしねえよ」


 へへっと鼻の頭を指でこすり、アヤタカガさんは笑う。


「えええええ⁉ いいんですか⁉」

「いいもなにも。もともと姫ちゃんがいなきゃ拾えなかった素材だしな。姫ちゃんに喜んでもらいてえって思って作ったもんだし、むしろ受け取ってくれってお願いしたい立場なんだが」

「もらう! もらいます! 貰えるとなったら遠慮なくいただきますよ⁉ 本当にいいんですか⁉」

「育て屋の爺さんみたいだな」


 人を捕まえて爺さんとはなにごとか!

 このかわいらしいお嬢さんとお呼び!


「きっと生まれてくる子も、姫ちゃんの力になってくれるよ」

「そっか」


 アート性に気を引かれて忘れかけてたけど、このタマゴからペットが生まれてくるんだっけか。


「……よろしくね。まだ見ぬ相棒くん」


 どんな子が生まれてくるかなぁ。


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