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5話 阿毘羅吽欠蘇婆訶

 わたしたちに襲い掛かってきた巨鳥が、翼をもがれて落ちていく。

 両翼に植え付けたフローズングレイブシードが翼に根を下ろし、そのうえ筋肉を断裂して木っ端みじんに粉砕したのだ。


「雑魚戦はカット」


 配信してるわけでもないからね。


「姫ちゃん姫ちゃん、どう考えてもボスモンス――」

「雑魚戦はカット」

「はい」


 翼を持つ程度で天翼種(リベルタ)に挑むなんて片腹痛い。

 空はわたしのフィールドだ。

 これにて格付け完了である。


――――――――――――――――――――

【Level UP;38】

――――――――――――――――――――

ステータスポイント10UP

――――――――――――――――――――


「姫ちゃん今レベル上がらなかったか?」

「気のせいじゃないかな」

「認めろって。あれを雑魚敵って言えるのは姫ちゃんくらいだって。他に誰があの巨鳥を雑魚扱いできる」

「木の精じゃないかな?」


 レベルが上がるなんて、雑魚敵のはずなのにおかしいな。


 そうかわかった。

 ノーザンクロスを倒した時点でレベルアップ目前まで経験値が蓄積してたんだ。

 きっとそうに違いない。


「それよりさ! はやく持って帰ろうよ! このタマゴ!」

「おい待て! それを持って帰るつもりか⁉」

「そうだけど?」

「アタシに自力で下山しろと⁉」

「大丈夫、痛みは一瞬だから」

「デスルーラさせようとするなー!」


 アヤタカガさんがわたしの体をゆっさゆっさと揺する。あ、だめだこれ。目が本気だ。

 本気で痛いのが嫌らしい。

 鍛冶場の熱の方が絶対苦しいと思うけど。


「冗談ですって……。このタマゴがクラフトできると仮定したら、現状はアイテム扱いのはずでしょ?」

「あ、そうか。インベントリにしまえばいいのか」


 そういうこと。

 というわけで崖の上の巨大な鳥の巣にフォールダウン。……感触は干し草をイメージしてたけど、これはかやぶき屋根の方が近いね。

 どっちも飛び込んだことないけど。


――――――――――――――――――――

巨大なタマゴ

――――――――――――――――――――

ザンガの頂で見つけた大きなタマゴ。

ときどき中から音が聞こえてくる。

――――――――――――――――――――

イベントアイテム:イースター

――――――――――――――――――――


 鑑定から得られた情報に従って、タマゴの殻に耳を当ててみる。すると確かに内側に宿る命が聴覚で確認できる。もうすぐ生まれてくるのかな。

 なんてことを考えながらインベントリにタマゴを収納。


「よし。それじゃあ帰りましょうか!」


 わたしはアヤタカガさんを抱きかかえると、鉱山都市アルテマへと舞い戻った。



「やっほー! みんな元気にしてた⁉ イースターエッグクラフト配信始めるよー!」


・はーい

・待ってました俺の唯一の楽しみ!

・また来たよー

・今日は工房なんだ


「そう! 今日はアヤタカガさんの工房にお邪魔してます!」


 配信の画角にアヤタカガさんが映るように、立ち位置を変える。そのまま身を寄せ背中側から手を回し、アヤタカガさんの手を取ってフリフリとジェスチャーをカメラに送る。


「あー。うん、アヤタカガだ。よろしく」

「デレいただきました。アヤタカガさんと言えば、わたしのメインウェポンであるNorthern-X Blessingや衣装のMillenium Optimizeのデザイン・作成を行ってくれた生産職ですね! いずれ歴史に名前が残るから覚えていってね!」


・もう覚えた!

・はーい!

・あれ⁉ 武器変わってる⁉

・ノーザンクロス素材のアサルトライフルに変えたのか

・最前線マップだと火力不足が目立ったからね……

・アルテミアス鋼も十分強力な素材なんだけどな


 おっとそっか。

 アサルトライフルを転生させてからの配信は初めてだったね。金曜日の配信を実写で済ませたせいで報告が抜け落ちてたや。


「それで、ちょっとこれ見て? さっきアヤタカガさんと遊んでるときに見つけたんだけど……」


 てててと歩いて工房の作業台へと移動する。

 そこには台からはみ出すほど巨大なタマゴが安置されている。


・でかすぎんだろ……

・デカすぎて草

・まーた新要素発見してきてるよ

・隙あらば新情報を発信する女


「このタマゴにペインティングして、明日のイースター本番に備えたいと思います! 先生、よろしくお願いします!」


 どんなペットが生まれてくるのかなー。

 楽しみ過ぎるっ!


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