2話 これボッチには厳しいイベントですね?
「やっほー! みんな集まれー!」
・はーい
・待ってました俺の唯一の楽しみ!
・また来たよー
・実写⁉
・ネ申回
・降 臨 し て み た
・後光が、後光で目がぁぁぁ!
・ガチのマジでスキャンデータ準拠で草
どうも、姫籬Renです。
目が覚めたら夜になっちゃっててもう大変!
そのうえいつも配信してるゲームはメンテナンス中でログインできないし、このままだと配信ノルマが残っちゃう。
わたしの配信生活はどうなっちゃうの⁉
次回予告風にするなら現状はそんな感じかな。
「いやぁ、よしパンドラシアオンラインやるぞ! って思ったらまさかのメンテというね。やらかしました」
で、考えましたわたし。
何を配信しようかなって。
それで思い出したんだ。
「前に収益化記念配信で要望があった実写配信だよ。ゆるい感じのラジオ感覚で、それこそ作業用BGMくらいにしてもらえればうれしいかな」
・わかりました!(画面集中)
・こんなの目を離せるわけないだろ!
・ラジオ助かる
・毎日ラジオして
「あはは……、まあ今日はお試しってことで。うまく回せそうならシリーズ化もありかなって感じですね」
――しゅぽん。
メッセージアプリが通知音を奏でる。
(ちょっと"俺"くん通知切って無いの⁉)
まあいいまあいいまあいい。
勤めていた会社の連絡先をほぼ完全に着信拒否した結果、このスマホに連絡入れる人はほぼいないし。
どうせ公式アカウントの通知でしょ。
「そういえば今日のメンテis何――」
――しゅぽん。
メッセージアプリが通知音を奏でる。
いやしつこいね?
「今日のメンテ――」
――しゅぽん。
メッセージアプリが通知音を奏でる。
……すぅ。
「ごめん一回スマホの通知切るね」
誰さ。こんな時間帯に。
わざわざわたしに連絡入れるの。
――"ねえ先輩。もう少し手加減してくれてもよくないですか? そんなに私に見つかるのが嫌ですか? この1年で私のこと嫌いになりましたか?"
――"あーあー。てすてす"
――"もしかしてRenちゃんと同棲してます? ねえ先輩、先輩は私のこと嫌いになりましたか? だから他の女性と交際するようになったんですか? ごめんなさい。先輩を責めるつもりは無いんです。そんな権利が無いこともわかってるんです。でも本当のことを教えてください"
"俺"くんのバカぁぁぁぁぁ!
なんで配信前にユノさんに連絡入れるかな⁉
配信中にユノさんがこっちにメッセージ飛ばして来たらそりゃ通知音で「あれ?」って思うに決まってるじゃん!
どうすんのさこれもう!
・Renちゃん?
・どしたの?
・誰からだったの?
・もしかしてマネージャー?
そ、それだ!
マネージャーってことに……いやいやこれまでの配信のどこかで完全個人勢って言った気がするぞ。
この言い訳はダメだ。
「ああ、うん。カットモデルになりませんかって連絡だったよ」
ちょっと言い訳としては苦しい……?
いやでもあんまり考えこんでも不自然だし、これ以上の回答は思いつかなかったんだもん。
仕方ないじゃん。
・ああ……なるほど
・Renちゃんめっちゃ誘われてそう
・町を歩くたびに読モに勧誘されてそう
ごまかせたわ。オタクくんたちチョロだなぁ。
しれっと通知をオフにする。
ついでにサイレントモードにもしておこう。
「で、話は戻るんだけど、今日パンドラシアオンライン、メンテナンス入ってたじゃん。あれってなんのメンテなの?」
・明日明後日、つまり土日でイベント開催するみたい
・想定の3倍くらいプレイ人口がいるから急遽決定したらしいね
・メンテ急だったもんな
あ、やっぱ緊急メンテだったんだ。
お知らせ見落としたかなって思ってた。
いや、わたしが見落としても視認さえしてれば"俺"くんがサルベージしてくれるもんね。
"俺"くんが知らなかったってことは、やっぱりもともと通達されてなかったメンテナンスってことなんだよ。
・はえー、こんな夜遅くに大変だな
・それな(開発元はイギリス。真昼間である)
・あっ、恥ずか死
「イベントかー。どんなイベントなんだろ。公式サイト見に行ったらわかるかな?」
・イースター!
・イースターだな
・イースターらしい
・イースターなるもの
・イースターなんだって
「五段活用かな?」
キミら協調性上がった?
いやギスギスしないならいいんだけどね?
それにしてもイースター、ね。
字面から察するにタマゴが主役のイベントなんだろうな。
問題はどういう形式かってところかな。
単純にアイテム集めるだけなのかな。
それともタマゴモチーフのモンスターが現れて、討伐数を競うスコアアタック?
その時はガチで走るつもりは無いし、ゆるランする感じかなぁ。
「お、これかな。『イースター』。みんな見えるかな。よいしょ、配信画面にキャプチャ映ってるよね?」
・配信ツール使いこなせてえらい
・初配信のミュート芸が懐かしい
・配信切り忘れてアルラウンの森を練り歩いていたころが懐かしい
「よーし、みんながわたしをポンコツと思ってることはわかったぞっ!」
わたしだってやればできるんです!
「どれどれ? イベント中に手に入るタマゴをクラフトして友達と交換しよう。クラフトに使用した素材によって生まれてくるペットのステータスと種族が変化するよ」
あー、なるほどね。
だいたいわかった。
「オタクくんたち、ドンマイ?」
これボッチには厳しいイベントですね?