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4話 【フローズングレイブシード】

 せっかく倒したヒグマのドロップアイテムをロストしちゃった。


 唖然。


 くっ、やつは大変な置き土産を遺していきました!

 わたしの心にダイレクトアタック!


「We have different goals here listen. We gonna make some evil seeds」


・Renちゃんが壊れちゃった……

・急に英語配信するなwww

・なんて言ったの?

・熊肉は諦めて交配頑張るってさ


「All right. Exseed, it's time to make a baby. Kiss」


 おら、キス(受粉)しろ。


「あ、待って間違えた。【交配キット】じゃなくてヨトゥン凍土に植えなきゃダメだったよね?」


・日本語に戻った

・聞き間違えじゃなかったらさっきKissって言ってなかった?

・その前にベイビーって聞こえた

・英語で何しゃべってたのwww


 ヒミツ。

 なぜならその方がミステリアスだから。


 さて、【交配キット】からエクシードを掘り起こしヨトゥン凍土に埋め直す。


 そーれ、【ヒール】!


――――――――――――――――――――

トクシクイチイ

――――――――――――――――――――

降雪地帯に分布する針葉樹。

真っ赤な実に含まれる種子には強い毒がある。

――――――――――――――――――――


「イチイの木だ!」


 針葉樹林はナイス!

 広葉樹は気孔が冷気で塞がっちゃうから、冷帯と言えばやっぱり針葉樹林だよね!


「みんな知ってる? 『賽は投げられた』で有名なカエサルの死因はこのイチイの種に含まれる毒なんだよ?」


・アルカロイド系のタキシンが含まれるんだよね

・花言葉「悲哀、慰め、憂愁」

・イギリスだと墓地に植えられるからネガティブな花言葉が多いんだよね

・アイヌ語だとクネニ。意味は「弓になる木」


「だからなんでうちの視聴者は植物博士ばっかりなの?」


 まとめるとうちの視聴者は数学学者で植物学者で英語の同時通訳もできるってことになる。

 ハイスペックだなぁ。

 変態なことが玉にキズだけど。

 変態なことが玉にキズだけどもっ!


 さて。

 15メートルほどに育ったイチイの木。

 わたしの背はそんなにないので、パタパタ翼を動かして木の実をもぎる。


 必要になるのは種子の方。

 余った果肉は口に含んでみる。


「あっま⁉」


・容赦なく食べたwww

・え、毒……

・毒があるのは種の部分だから果肉は大丈夫


 めっちゃくちゃ甘い。

 名前にToxic(毒)ってつくだけあって毒性が強いのかな? 記憶にある普通のイチイの実の何倍も甘くて笑っちゃう。


「冷えた体に甘さが染みる……っ。毒薬の弾丸はまだ持ってないですし、今のうちに回収できるだけ回収していこうかな」


 甘味につられたわけではない。決して。


・もぐもぐタイム

・そだねー

・この配信だけ試される大地で撮影してるの?


 もぐもぐタイムとそだねーに関してわたし悪くないが?


「んくっ。よし! 元気百倍! 交配を再開するよ。血統はご存じ【パラサイトシード】、相手は新アイテムの【トクシクイチイの種】」


 ふたつを【交配セット】に埋めて準備万端。


「【ヒール】!」


――――――――――――――――――――

フローズングレイブシード

――――――――――――――――――――

極寒の地に適応した寄生植物。

相手の生命力と体温を奪う性質を持つ。

亡骸となった生物の上で樹氷を作る。


【交配】

パラサイトシード × トクシクイチイ

――――――――――――――――――――


「え、これやばくない?」


 寒冷耐性を狙ってただけなのに吸熱効果まで付与されたんだけど、大丈夫? 頭冷やす?


・まーた壊れアイテム生み出してるよ

・Renちゃんのところだけ環境が早い

・最前線に送り込んではいけなかった人物

・混ぜるな危険


 散々な言われようである。

 最後の希望を捕まえてなんてこと言うの。


「あ、でもそっか。例えばパラサイトシードより成長しづらいとか、HP吸収効率が落ちるパターンもあるよね。あとは、種が増えない可能性とか?」


 パラサイトシードさえ在庫を切らさないように気を付けていれば、あとは秘密の園シークレット・ガーデンでメモリーフラワーを買えば無限に生成できる。

 だから種の個数については、増えないとめんどくさいだけで致命的なデメリットにはなりえないけど。


「ちょうどいいところに獲物がいるじゃーん!」


 雪原にできた小ぶりな雪山の陰に、狐の耳が見え隠れしている。あれでフローズングレイブシードの効果を試させてもらおう。


照準(Lock)――発射(Fire)!」


 急所は外した。あえてね。

 今回の目的は新種の回復量確認だから。

 ヘッドショットで一撃じゃあ呆気ない。


「待ってってば! 【ヒールストーム】!」


 雪山を盾に身を隠すキツネに追い打ちをかけるように回復魔法を飛ばす。普通のヒールだと当たりそうにないから、範囲回復の【ヒールストーム】を使った。


「……へ?」


 次の瞬間。

 雪山に一本、凍り付いた木が生えていた。

 フローズングレイブシードのフレーバーテキストを思い返す。


 ――亡骸となった生物の上で樹氷を作る。


 死んだ? この一瞬で?


 予感は確信に変わる。

 宝石のようにきらめく枝葉が、ポリゴン片に砕けたからだ。


――――――――――――――――――――

【収穫】フローズングレイブシード

【収穫】フローズングレイブシード

【収穫】フローズングレイブシード

【収穫】フローズングレイブシード

――――――――――――――――――――


「むしろ繁殖力ましてるんだけど⁉」


 完全上位互換かな⁉


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