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3話 雷を避けるな / 夜見坂ユノ

ようやくユノちゃん登場!

「配信始めるよー、みんな集まれー」


・わーい

・待ってました俺の唯一の楽しみ!

・また来たよー

・新衣装⁉

・ホントだ、装備変わってる!

・このデザイン……アヤタカガさんか!


 アヤタカガさんから新装備、Millenium Optimizeを受け取ったわたしは、さっそく衣替えして配信を行っていた。

 そしてデザインだけでアヤタカガさん作だと気づいたユー、そこのユー。ナイスだ。拍手をおくろう。


「ですです! 例によってアヤタカガさんに制作依頼しました! 見てこのデザイン! 『戦術的』を意味するタクティカルファッションがアサルトライフルと合わさって最強に見える……! そして手首まである袖の下に見えるアームカバーが醸し出す歴戦の風格! アヤタカガさんの作るモデルってなんでこう刺さるんですかね? もう最高すぎる」


・ここすこ

・太ももがエッッッ

・アヤタカガさんを賞賛するRenちゃんからしか得られない栄養がある

・絶対アヤタカガさん楽しみながら作ったよな。助かる。


「本当はね、まだまだ語りたいところがあるんですけど、今日は配信内でやりたいことがいろいろあるんで新衣装お披露目はいったんこれくらいで! 各自カメラをグリグリ動かしてつぶさに観察してねー。

 と、いうわけでですよ。わたしの露店に手紙を負値価格で引き渡していったみなさんの手紙を読みます」


・草

・金を払って手紙を押し付ける……スパチャやん

・ぐああぁぁぁぁ! その手があったか‼

・えっ⁉ 読み上げてもらっていいんですか⁉


 わたしは笑いながら返事して、鉱山都市アルテマを飛び出した。目指すは攻略組の最前線である落雷地方。たぶんそこそこ距離があるし、貰った手紙は全部読めるはず。


「はーいまず一通目。『Renちゃんへ、いつも配信を楽しく視聴させていただいております。今後も一生推します』ということでね、こちらこそいつもありがとうございます。まだ配信2日目ですけど――」


 ……まさかとは思うけど、前世バレしてないよね?

 バレる要素は無い、無い、はず。

 いきなり怖い文章やめて。


「一生推しますということで、言質取りましたからね! 次のお手紙です。『ボクの妹になってください』」


・これ俺の手紙かも

・俺この手紙出した気がするな

・俺がいる

・一人称ボクだったんだよなぁ

・ボクがいる

・今日からボクくんになります


 コメントの流れ、うん、知ってた。

 斜め読みしてた時から、この手のお便り多いなって思ってた。

 こっちは前世バレしてなさそうだし安心。


「もうっ! しょうがないんだから、お兄ちゃんっ!」


・ヴっ‼

・姫籬に改姓します

・世界一殺傷力の高い笑顔


「次――」



 そんな感じで疑似スパチャを読み上げながら移動していると、次第に空模様が変化を始める。

 黒い雲だ。

 見るだけで不安になる色合いの雲が空に広がっている。


「い」


――――――――――――――――――――

【旋回】発動

――――――――――――――――――――

ドッジロールの無敵時間が微増します。

――――――――――――――――――――


 ヤな予感がして、その場でローリングを行った。

 無敵フレームの間に雷が落ちて、わたしの体をすり抜けていく。

 いやぁ、危ないところだった。


・ちょwww雷を避けるなwww

・雷を避けた女

・神回避

・マジでRenちゃんのプレイヤースキルどうなってんのwww


「わたしこのゲームうまいかもしれない……あれ? ちょっと待って? 誰か下にいない?」


 いつの間にか振り出した豪雨の中。

 わたしはわたしの真下に動く人影を見た。


・どれ?

・見えない

・地上が遠すぎる


「いやわたしも豆粒くらいにしか見えてないんだけどさ」


 ざっと振り返ってみよう。

 まず、雷は天からわたしに向けて落ちた。

 そのわたしの真下には、誰かほかのプレイヤーがいる。

 つまり、落雷に直撃した可能性が高い。


「今助けに行くからね!」


 風切り羽で風を切り、わたしは鉛直下方向へ加速する。その速度たるや、降り注ぐ雨が相対的に空へ登っていくように見えるほどである。


 次第に人影が鮮明に浮かび上がる。

 女だ。黒い髪の女がそこにいる。


 ……というか、ちょっと待って。


「あ」


 わたしは、おもわず急降下を止めた。

 そこに、見知った顔があったからだ。


・え

・この人ってもしかして

・うっそだろ?


 というか、わたしの視聴者たちもよく知っている。


 この1年で大きく躍進した配信者(ストリーマー)であり、パンドラシアオンラインのCM出演を果たしたVライバーであり、そして――


「待って雷のダメージ想像以上にキツイですね。回復薬……無い、え? 嘘、さっき使い切ったの? ちょっと、早くいってよもう! 死んじゃうから、私死んじゃうから! ……あれ?」


 その女性とばっちり目が合った。

 この距離ならヘッドショットを外さない。

 今のうちにPKして……いや、さすがに蛮勇が過ぎる。

 相手のチャンネル登録者何人だと思ってるの。

 敵が強大すぎて立ち向かえないよ。


「そこの天翼種(リベルタ)さん! 回復薬に、あまりがあれば! おすそ分けいただけないでしょうか⁉」


 ――"俺"くんを探しているかつてのメンバー、夜見坂(よみさか)ユノがそこにいた。


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