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4話 オリジナル武器を作ろう

 ダメージソースとなる候補アイテムは手に入れた。

 次は攻撃手段だ。


「んー、せっかく空を飛べるんだし、遠距離から攻撃できる武器がいいなー」


 そうすれば近接戦しかできない相手に無類の強さを発揮できるはず。

 そんなことを考えながら広場に降り立つ。

 やはり空を飛べる天翼種(リベルタ)は珍しいのかやけに目を引いた。


 見られることに性的興奮を覚える人格を張り付けた覚えはないけれど、どこか優越感を覚えるのも確かだ。

 ふふん、くるしゅうない。

 もっと畏敬の念を抱くがよいぞ。


「お嬢さん! そこの超絶かわいい天翼種(リベルタ)のお嬢さん!」


 振り返った先に、恰幅のいいおじさんがいた。

 キャラエディットができるゲームで肥え太ったキャラクターを選ぶとは……なかなか通な遊び方をしている。

 スキャンデータ流用のわたしが言うのもなんだけど。


「わたしですか?」

「そう! あんた以外に誰がいるってんだい! いい武器揃ってるよ~? 安くするから見ていっておくれよ!」


 ぽん、と手を打ち思い出した。

 これはあれだ。

 生産職の人が成果物を売りに出してる出店的な奴だ。


 一般にプレイヤーメイドの品はNPCの店売りと比べて質が高いゲームが多い。

 いやまあ普通に考えて、必死に作った道具が無限に手に入るアイテムより弱いですってなったら生産職なんてバカらしくてやってられないもんね。


 ここにある武器もNPC店売りより質が高い可能性に期待できるだろう。


「いっ」


 高い。めちゃくちゃ高い。

 ぼったくりではと思うくらい高い。

 わりにそれほど性能が高いとも思えない。

 初期装備の杖(使ったことないけど)とステータスの差ほとんどないじゃん。


「どうだい⁉」

「あはは、やー、品ぞろえはいいと思うんですけど」


 炸薬をありったけ買ったこともあり、手持ちはすかんぴんである。

 ちょーっと手が出せないかなぁ。


「なるほどねぇ。もしフィールドでレアアイテムを拾ってたら買い取らせてもらうけど、どうだい?」

「あ! それでしたら!」


 ある! あるある!

 ちょうど売りに出そうと思ってたんだよね!


「これなんてどうですか⁉ アルテミアス鋼‼」


 広場に静寂が満ちた。

 ……ん? 何この空気。


「おおおおおおお⁉ お、お嬢ちゃんこれを譲ってくれ‼ 1万、いや2万だす! それに、好きな武器をロハで貰ってくれていい!」


 ろは……?

 ちょっと何言ってるかわかんないですね。

 ゲーム用語か何か?


「ちょっと待てええええ! そこのお姫さん、あんたは今詐欺られようとしてるぞ!」


 急にものすごい剣幕で迫られ、やっぱ男って怖いと思っていると、隣で出店を開いていたお姉さんが割って入ってくれた。

 アネゴ……!


「なんだクソアマ! 人の商売に口出しすんじゃねえぞ!」

「ああ! あんたが自分の武器をいくらで売っていようが口を出さなかっただろうが! それはあんたが作った武器だ! 価値を決める権利があんたにはある! でもな、他のプレイヤーが苦労して手に入れたアイテムを買いたたこうとするのは根性が汚いんじゃないかい?」

「うぐっ! うるせえ! 今は俺が交渉してんだ! 横取りしようったってそうはいくか!」


 血走った眼をしているおじさんと、腕を組んで堂々としているお姉さんを交互に見る。

 個人的な意見、このおじさんには譲りたくないかな……。

 2万ゴールド出すって言われた時は飛びつきたくなったけど、話を聞く感じ相場はもっと高そう。

 あ、これは聞いていいや。


「相場ってどれくらいなんです?」

「……1万ゴールドだな」

「騙されるなよ? それはあくまでNPCに売った場合の話だ。いいか? 現状アルテミアス鋼はストーンゴーレムからしか入手できない。だがストーンゴーレムは物理攻撃に対して圧倒的耐性を持つ上に、遠距離ユニットを優先して攻撃する特性がある。このせいでパーティを組んでも討伐は非常に困難で、ほとんど市場に出回らないんだ」


 たしかに、わたしもパラサイトシードが無かったらボコボコにされるか命からがら撤退かの二択を迫られていたところだと思う。


「その代わり、このアルテミアス鋼から作れるアルテミアスシリーズの武器は現状破格の性能を誇っていてな? 生産職からすれば何十万だしても手に入れたいアイテムってわけ」

「そんなに⁉」

「ああ。この男がどれだけあんたを下に見てたかわかるだろ? なにもアタシのとこに卸せって言ってるわけじゃねえ。ただ、取引相手はしっかり選べよな」


 いい人! この人絶対いい人だよ!


 目の前のおじさん相手にぺっこりんと頭を下げて、すすすっとアネゴの店に並ぶ。


「おいおい、言っとくけど、うちにアルテミアス鋼を買い取るだけの資金はねえぞ?」

「うー、マジですか。ん?」


 店に並んだ武具を見ていると、気づいたことがある。


「隣の店とはずいぶんと武器のデザインが違うんですね」

「お! 姫ちゃん見る目があるね! 何を隠そう、アタシの店はモデリングからやってる完全オリジナルショップなんだよ‼」

「え、これお姉さんが1から作ったんですか⁉」


 アネゴに話を聞いてみると、どうやらこのゲームは外部の3Dモデルを読み込めるつくりになっているらしい。


「す、すごい。本職でデザイナーやってらっしゃる方ですか? って、すみません! マナー違反ですよね」

「あはは! いいっていいって! 素直に褒めてもらえて悪い気はしないからね!」


 ひとめぼれした。

 この人の作った武器を持ってパンドラシアの世界を旅したい!

 したい、けど……!


「ぐ、ぐぐっ、ぐぐぐぅ!」

「お、おい姫ちゃん? 大丈夫か⁉」

「……あの、現時点でアルテミアス鋼を適正価格で買い取れる方っています?」

「いやー、さすがに厳しいんじゃねえか? よっぽど稼いでるプレイヤーでも8万ゴールドくらいだとおもうぜ?」

「ぐ、ぐぐっ、ぐぐぐぅ!」


 わたしはお金が無い。

 換金アイテムは持っているけど、キャッシングできるプレイヤーが存在しない。

 アネゴの武器で冒険したい気持ちはいっぱいだけど、大損こくかしばらく待つかしかない。


 どうしたらいいのさ! こんなの!


「なあ、例えば、例えばな? 物の相談なんだけどさ」


 アネゴに声を掛けられて、頭をわしゃわしゃとかいていた手を止める。


「うちの商品を気に入ってくれたんなら、アルテミアス鋼を代価にフルオーダーメイドを注文する気は無いかい?」


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