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3話 シークレット・ガーデン

 空を飛ぶ人を見るのが初めて?

 プレイヤーならともかく、NPCの天翼種(リベルタ)なら自由に空を飛び回っているんじゃないだろうか。


(あ、違うのか。そもそも天翼種(リベルタ)は天空に住まう種族だから、地上に降りてこないんだ)


 ふと設定を思い出して得心する。

 そりゃ見たことないわけだよね。


「ふふっ、気持ちいいですよ、空を飛ぶの。よかったらご一緒いかがですか?」

「お気持ちは、うれしいです。けど、この子たちの面倒、見ないとですから」

「この子たち?」

「はい!」


 少女は元気よく返事した。

 太陽のように明るい笑顔だった。


「ようこそ秘密の園シークレット・ガーデンへ。何か、お買い求めに、なりますか?」


 え、あ、店?

 店なんだ⁉ ここ⁉

 こんな人通りのない場所で⁉

 客なんて来ないでしょ⁉


「あ、あと、その、動画なんですけど……できたら、投稿しないで、ほしいです」

「いいよー。でも、どうして? 店をやってるのに、集客したいとは思わないの?」

「この子たちには、騒音と離れて、伸び伸び育ってほしいですから」


 ええ子や……! この子、ええ子や……!

 寄生植物の種を押し付けてくるどこぞの精霊とは違う……!

 こっちの心まで浄化される……!


 よし! 決めた!

 わたしこの子の売り上げに貢献する!

 たくさん通って、少しでも楽な暮らしをさせてあげるんだ……!


 ――"あなたは搾取する側よ"


 違いますー!

 わたしはこの子に貢ぐんですぅ!


 って待って。今の声is誰。

 ちょくちょく変な声が聞こえるなぁ。


「OK、品ぞろえを見せてもらえる?」

「はい! こちらです!」


 少女に招かれて、わたしは建物に立ち入った。

 室内も色とりどりの花で飾られていて、本当に花が好きなんだなってのが伝わってくる。


 花か。花って何に使うんだろ。

 手近な生花に視線を固定し、詳細ウィンドウを表示する。


――――――――――――――――――――

赤色のバラ

――――――――――――――――――――

赤い色をしたバラ。

赤色の染色液を作る材料になる。

プレゼントによく使われる。

――――――――――――――――――――


 プレゼント用アイテムだったかぁ。

 うーん、なんていうか、その。

 使いづらい、です。


 染色液が何か知らないけど、いまのところ使う予定は無いかな……。


「お花屋さんなんだ?」

「いえ、植物全般、取り扱いますよ? 薬の材料から、爆発する植物まで、なんでも」

「待ってなんかすごい単語聞いたんだけど」

「マンドラゴラ、薬になる、ご存じないですか?」

「そっちじゃな――待ってそっちも気になるけど、今は爆発する植物が気になる」


 薬になる植物ってそういう感じなんだ。

 てっきりヨモギとかアロエとか、そういうたぐいの植物かと思ったよ。本当に。


「爆発、こちら、です」


 少女に招かれて、隣の部屋に移る。

 こちらは先ほどの部屋と違い、小さな引き出しが壁一面に敷き詰められた部屋だった。

 その一角に向かった少女は引き出しをひとつ引っこ抜くと、両手で抱えて運んできた。


「花粉?」

「花粉、です」


 粉だった。

 フォーカスを合わせると、「爆裂の花粉」というアイテムであることがわかる。


――――――――――――――――――――

爆裂の花粉

――――――――――――――――――――

ショウセキヨモギの花粉。

強いエネルギーが加わると

空気中の酸素を使わずに素早く燃焼する。

炸薬として使われる。

――――――――――――――――――――


 おお、おおお!

 いいじゃん!

 これまでは攻撃手段が乏しくて泣いてたけど、この花粉を使えばダメージソースを確保できるかも⁉


「これください! ありったけ!」

「危険、ですよ?」

「大丈夫! わたしは回復魔法が使えるから!」


 爆発の威力次第では回復する前にHPが蒸発するかもだけど。

 その時は死んで反省したらいいや。

 デスゲームじゃないんだからさ。


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