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鷹兎の仲

いちゃらぶ苦手な人は自衛してください

 安住先輩!とサークル時代から慕ってくれる後輩の田中と久しぶりに飲んだ。田中は、何やら俺にはよくわかんないことで日銭を稼いでいるのだという。めたばーす?仮想通貨?俺には想像もつかない世界だった。

 こいつの詳しい漫画やアニメの話に、俺は全然ついていけない。だが、妙に馬が合う。あと、映画の話だけはいつでも盛り上がるのだった。

「先輩、『第10地区』観ました?やっぱ監督は天才ですよ!主人公がクソで!!」グビグビと甘いチューハイを飲みつつ田中は管を巻いている。

「あの映画は情に厚いエイリアンがよかったよなぁ……。っておい、田中は細くて酒弱いんだからあんまり勢いよく飲むなよ?」

「先輩こそたまには締めの麺とか食べりゃいいのに~。糖質制限永遠にやるんすか」

「筋肉を保つためだ、仕方ないってことよ」

 顔をしかめてから、俺には無理っすよ、こんなひょろいですし、と田中は笑う。

「ところで、先輩から誘ってくれるなんて珍しいじゃないですか。もしかして、なんか悩み事とかあるんすか?」

 そう、こいつはいつもながら鋭い。察しがいい、本当によくできた後輩だなぁと思う。

「まぁな。あのー、な。片想いしてるんだよ。いい歳こいて恥ずかしいだろ?仕事が同業でさ。やっと実績が出たから、そろそろ腹括って告白とか……って悩んでんだけど。どう思う?」

 いつもより真剣な声音になってしまった。固唾を飲んで聞いていた田中は緊張がとけたようで、大きな声で笑った。

「せーんぱい!ほんっと真面目っすねえ。いいんですよ!ガンガン行こうぜ!です。あたってみなきゃチャンスゼロじゃないすか!1%でも可能性があるなら、あたって砕けろっすよ」

「砕けたくはないよ俺だって!でもなあ、田中の言う通りだなぁ。当たってみるわ、サンキューな」口元に晴れやかな笑みが浮かんだ。


vVv


 二兎奏は、質問箱の質問に答えないままだった。放置していると、徐々に鷹見とのコラボを要望する声は出なくなっていた。しかし、田中が二兎奏の名前でエゴサをすると、要望する声やリアクションのなさに不仲説を唱えるものまで出始めていた。

 そろそろこの問題に取り組まないと俺の中で警告音がじりじり鳴っている。

 綾子の公式ツイッターへDMを出した。

 飛び切りテンションが高く、信者のテンションで繰り出された返事には「打ち合わせ用のお道具をお送りいたしますので、よろしくお願いいたします」と結んであった。

 打ち合わせ用の道具とか必要なのか?企業Vは金があるのかなぁ、想像もつかない。

 翌日、巨大な箱が届いた。ほしいものリストに入れたもので、こんなに大きなものなかったような……?

 過剰梱包をむいていくと、なんと、ヘッドマウントディスプレイ、いわゆるVR機器だった。ひらりと落ちたメッセージカードにはこう書いてあった。

 『いつでもおいでください。お打ち合わせ、どうぞよろしくお願いいたします。 鷹見綾子』

 恐る恐るスイッチを入れると、目の前に二兎奏がいた。ぎょっとしてのけぞると、二兎奏ものけぞる。どうやらこれは鏡に映った自分らしい。一通り動きをチェックしてから、指定の場所にジャンプ。スタート画面からロココ調の部屋へと移動した。

「お待ちしていました!」

目をキラキラさせた綾子が待ち構えていた。こちらへ向くと、ぶわりと鳥籠のように丸いスカートが膨らむ。

 ギョッとしつつ、少し頭を下げた。

「二兎奏です。今回はお願いします」

 キャラよりも社会人として挨拶優先で話しかける。

「鷹見綾子です!お会いできて光栄です!!」

「お嬢様言葉はいいんですか?」

 私も大概ですけれど……たはは、と頬をかきながら話す。

「いいんですいいんです!嬉しさ優先!もーーーお会いしたかったです!大ファンです!!」

 お星様がたくさん詰まった目が、見開かれキラキラしていた。

「ありがとうございます。たはは……。今回は、コラボの打ち合わせでお呼びいただいたんですけど、どうしましょ」

 お互い時間はなかろうと話を進めると、

「悩ましいですねえ。どんなゲームがいいですかねえ」と首を傾げる。ノープランかよ!!と突っ込みたいのを堪えた。

「鷹見さん、ゲーム苦手じゃないですか」

「えへへ、そうなんですよ。うーん……あっ!早押しクイズなんてどうですか?」

「おお、さすが!いいかもです!」


 こうして、早押しクイズコラボをすることになった。

 何回か打ち合わせを重ねるごとに、綾子嬢の生真面目でしっかりものなのに天然なところと、俺のゆるいけどツッコミなところが妙に相性が良いことがわかった。話はサクサクと進み、上手いこと企画が立ち上がって、当日を迎えた。


vVv


「おはにー!二兎奏だぞい!今回は特別ゲストを呼んでいるので、ご紹介するぞい!」

 横にぬっぬっとズレると、ボフン!と魔法の煙が立ち上り、綾子嬢が現れる。金のかかった演出だな……!

「ご機嫌よう!新人Vチューバーお嬢様の鷹見綾子ですわ!」

 キターー!!!待ってました!!!などなど、反応コメントは上々で始まった。

 まずは他己紹介コーナー。

 画面共有で音声オフの相手の動画を流した。ワイプで説明する。

「綾子お姉ちゃんは、プロテイン会社、鷹見社に所属の企業Vで、主にフィットネスゲームをしているお嬢様だぞい。いやあ、なんつーか色々と大迫力だなっ」

「むっ、色々とはなんですの?」

 真っ赤になって顔をぶんぶんするので、縦巻きロールが振り回されて、小さい二兎のうさ耳にバシッと当たる。

「あはは、ごめんごめん。いつもはサークルフィットファンタジーをメインでプレイしてるなー。この間、ガラスの靴アワードを受賞したのが初めてプレイしたほけモンだな。下手っぴだけど謙虚で意欲的な成長が大喝采を浴びたんだぞい。僕も見たけど、めちゃくちゃ下手なのに頑張り屋で助けてあげたくなっちゃったぞ」

 綾子は、照れたように俯いて、嬉しさを噛み殺すようにわなわな唇を噛み締めている。かなり可愛い。

「なに可愛い顔してるんだぞい?」と覗き込むと、

「ひゃあ!」と言ってバランスを崩し、手をぐるぐるした後、バタンと後ろに倒れた。芸が細かいな。

「申し訳ございません……憧れの二兎奏様に直接褒めてもらえて鼻血が出そうですわ……」

 立ち上がりながらこめかみを抑えて話す。

「変態かよ?ほら、大丈夫か?立てる?」

「すすすすみません。次は奏様の紹介をしていきますわ!皆様しかとご覧くださいまし!」

 なんだ、妙に明るくて苦手だなぁと思ってたけど、こいつもオタククソ早口の信者じゃん、と思ったら可愛く思えてきた。

「二兎奏様は、ほけモンと同人ゲームをメインに実況しているうさ耳の個人Vチューバー様ですわ」

 夢見る乙女のような口調で紹介が続く。

「私、ほけモンの攻略が下手で下手で……攻略動画を探していたときに、奏様の動画を見つけましたの。お声が可愛くてたまらなかったのですわ!プレイは素人目にもわかるほど、とてもお上手でしたわ。皆様も本日は奏様のお声を耳に焼き付けてお帰りください」

 うっとりとした顔で語られて、なんだがそわそわとむず痒い。

「わ、わぁ、正面切って褒められると照れるな……」

「んふふ。奏様が素敵なんですもの」

 あわわ……と俯いて目を伏せていると、コメント欄が「鷹兎てえてえ」という単語で埋まっていた。

「あら?てえてえ、とはなんですの?」

「尊いって意味だぞい。二人の会話が聞けて嬉しいってことらしいな。やりがいがあって嬉しいぞい!さて、そろそろふたりでできるゲームに移るぞい!」

 なんとか恥ずかしい気持ちとこのほめ殺しから逃れようと、次の企画を叫んだ。

 早速始まった早押しクイズは、サブカルに詳しい二兎と、博学な綾子で五分五分といったところだった。

「むっ、綾子お姉さんなかなか手強かったな」

「奏様こそ素晴らしかったですわ」

「次はほけモン道場やるか?」

「それも素敵ですわね!同人ゲームのおすすめも伺いたいですわ」

「ん。じゃあ綾子お姉さんが好きそうなの探しとくぞい」

 こうして、お互い初めてだったコラボ配信は高評価で幕を閉じた。


vVv


「いやあ!お疲れ様でした!」

 終わった後は、例のVRのロココ調なルームで落ち合うことになっていた。打ち上げと称して、お酒を飲みながら話すのだ。

「ぷはー!お疲れ様でした。反応良かったすね」

 心からほっとして、緩んだ声が出てしまう。

「本当にやってよかったです!!ファンアートもこんなにたくさん!」

 綾子嬢は目をキラキラさせながら、スマホで結構エグめの百合絵を見せつけてくる。こいつ本当にこれ見たのか?というか、俺が受けかよ!?

「よ、よかったっすね……。なんだか、勝手に鷹兎ってコンビ名までつけられちゃったっすね」

「ですね。えっちなファンアートは企業Vとしてはなくしたいところなのですが、嬉しくてもったいないです!」

「う、嬉しいんかい」じわ、と顔が熱くなる。

「嬉しいですよお!えっちなかなにー様が見れてうっとりです……」

「だぁ、もう、やめーや!マジで綾子お姉さんは、僕のこと好きですね!」

「奏様が好きです!おっ、お砂糖に、なりたいぐらい……」

 思わず、ふはっと笑ってしまった。お砂糖になりたいってなんだよ。

「ふふふ、不思議な表現しますね」甘いものになりたいってどういう感情なんだろ。可愛くなりたい感じかな。

「ち、ちが、お砂糖っていうのは、VR上でお付き合いすることです」

 ただでさえ大きな目をうるうるさせて、上目遣いで恥ずかしそうに綾子嬢は話した。え??

「えっ、それってネトゲ恋愛みたいな?」

「そうです!!わ、わたしは……その……奏様と恋人になりたいんです……」

「ふえっ!?」

 思わず腑抜けた声が出た。

「えっ、でも、お互いの性別だってわかんないし、いいんすか」

「VR上だけで構いませんから、どうかお付き合いさせていただけませんか」

 真剣な瞳、子犬のような不安げな様子に胸がキュンキュンして苦しい。

「ううぅ、話してるとキュンキュンして、冷静じゃいられなくて困るっす!大体、急にお付き合いとかお砂糖とか言われても」思ったことがテンパって口から全部流れ出す。

「はわ!?奏様はキュンキュンするのですか!?」

 綾子嬢は顔が真っ赤になり、目を潤ませて、こちらにずいっと近づいて来る。

「だ、だって!そんな大きな目で見つめられたら、動けなくなっちゃうっすよ」

 眉が下がるのと一緒に、自分の長いうさ耳がへちゃっと垂れる。

 じり、と下がろうとして、背後が壁なことに気づく。逃れられない。綾子嬢のかわいい顔と大きなおっぱいが迫って来る。どきどきが限界まで大きく聞こえて、おしりと胸のあたりがずっとソワソワする。嬉しい、怖い、どうしよう!?

「ひええ、あの、あの!お砂糖になるから!僕が慣れるまで時間をください!」

「お砂糖になってくださるんですね!やったあ!」

 ぎゅっとハグされながら、ジャンプで揺れるお胸を感じて僕はそろそろ死にそうだった。

「あ、あの、わかった、わかったから、おっぱいを押し付けるのをやめて……」

 あわあわしながら震え声で伝えると

「はっ。ごめんなさい。わたしったら、奏様がおろおろとされるのが可愛らしくてつい……」とあちらも恥ずかしそうに距離を取った。

「嬉しいけど、な、なんでそんなグイグイくるの……?」

 ぽろりと漏れた疑問に、明るい声で綾子嬢は答えた。

「大事な子から言ってもらったんです。恋ならガンガンいきましょう!行かなきゃゼロですよ!!って」

 そう、ニコニコしながら言われた。

 ……そのセリフめちゃくちゃ言った覚えがある。二兎奏として、ではなく、田中という男として、安住という男の先輩に向かって、だが。

 まさかな、と笑いながら

「だ、誰から言われたの?」と引きつった顔で聞くと

「サークルの後輩です!かわいいやつなんですよお」と言われて、希望は脆くも崩れ去った。


vVv


 綾子嬢とお砂糖したときのどきどきと、安住先輩の顔がうまく一致しない。でもこの確信は間違いない。気まずい。どんな顔していいかわからないし、綾子嬢の話を聞く限り、メインのゲーム配信以外の日は個人として雑談配信のコメ欄にいる、と言っていた。つまり、安住先輩はずっと俺の配信を聞いていたのだ。俺だとは気づかずに。

 何より、よく知る男の後輩だと知られたら、嫌われてしまうかもしれない。大好きな先輩も、VRのお砂糖関係も、全部失うかもしれないなら、現実だけでも守りたい。

 そっとこのまま休止して、引退してしまえれば気が楽だ。SNSで、転職に伴う二兎奏のお休みのお知らせを呟くと、少しほっとした。コラボもしたし、不仲説は再燃しないだろう。

 そろそろ逃げていた転職にも本腰を入れなきゃな。エージェントに連絡を取ろうとスマホを手に取ると、ちょうど電話がかかってきた。誰かと思えば、安住先輩で。


「あっ、田中!?突然ごめん、なんか好きな子が今の仕事辞めるみたいで、あの、今少し話せるか?」

「今、ちょっと、すみません……」

「えっ」

 ぷちりと通話を切る。泣き出しそうで、声が裏返り、上ずってしまった。

 ベッドで仰向けに寝転がった。涙も出ない。全部がめちゃくちゃになる方がマシかもしれない、と想像する。先輩が恋した女の子は、野郎の後輩だったのだ。これを隠し通して生きていくのは、素直な俺には難しい。ずっとロシアンルーレットを回し続けて緊張するより、撃ち抜かれて死んで楽になりたい、そんな気持ちだった。

 それとも、本当は気付かれたいのだろうか?

 ただのいい後輩なら、好きな女の子の相談を笑って聞けるはずだ。でも、俺は今そんなことはできない。

 全部ぶちまけたい。いやいや、先輩の希望をぶち壊すわけにはいかない。いろんな気持ちがぐるぐるした。

 締め切ったカーテンから細く伸びる光が、街頭の明かりなのか、太陽の光なのかわからないまま、ずっと横になって、トイレとベッドを往復していた。

 何日が過ぎたかわからないくらいの頃、ピンポーンとインターホンが鳴った。通販を頼んだ覚えはなかったが、欲しいものリストからの贈り物だろうか、と扉を開けた。

「よっ」

 そこには、安住先輩が立っていた。

「えっあっ、あの、帰ってください」よろよろと扉を閉めようとしたが、安住先輩のムキムキの脚に阻止された。

「ぼろぼろじゃないか。やっぱりな。電話したとき様子がおかしかったから見にきたぞ」鈍感なくせに、世話焼きな先輩で嫌になる。

 上がるからなーと宣言して靴を脱ぎ散らかし、ずかずか上がりこみ、レトルトのお粥を温め始めた。

「いやあ学生時代からお前の住所変わってなくてよかったわ」とコンロの前でにっこり笑う先輩はいつも通りの調子だった。

「先輩は、話したいことがあってきたんじゃないんですか。好きな女の子のこととか」とむくれてみた。

「そんなことどうでもいい。いや、どうでも良くはないが、かわいい後輩が困ってるのを助けるのが先だ」 

 ほらよ、と手渡してくれたおかゆに少し漬物が添えてあって、食の細い俺にはありがたい。とりあえず、何も考えずに今はありがたく、幾日かぶりのご飯をもくもくと食べた。

「食べれたか?」とこちらを見てくる先輩に、もぐもぐとしながら頷いて、空になった茶碗を見せた。

「少し落ち着いたか?うん、そうか、よかった。で、話があるんだが」

 いつもより真剣な先輩の顔に、まさかなと、やめてくれがない混ぜになる。

「お前が奏様だったんだな。気づかなくて、ごめん。悪かった」

「えっ、なんでバレて……」声が震えて、裏返る。真実に、撃ち抜かれてしまった。思っていた以上に、早く。どうしよう。

「その、震えた声が、かなにー様とそっくりだったから」

「あの、俺」逃げる先もないのに、机に手をついて、よろよろ立ち上がって、小走りに玄関に向かおうとした。が、ダメだった。先輩の逞しい手が俺の細くて弱っちい手首を掴んでいる。

「ごめん、怯えさせたいわけじゃないんだ、聞いてくれ。お砂糖になることを押し切って悪かった。奏様とこれっきりになるのが怖かった。あなたの人柄に惹かれて、それ以外なんかどうでもいいから、そばにいたいと思ったんだ」

「あ、あの!手、離してください」

「あっ、済まなかった」

「え、えと、正直、俺、女の子が好きだし、お砂糖とか全然わかんないし。でも、かなにーの自分を隠して安住先輩と仲良くし続けるの、無理だなって思ってたんで、ちょっとホッとしました」

「そうか……」

「また、かなにーの僕とも、田中の俺とも、遊んでくれますか?」

 不安でいっぱいの気持ちのまま、先輩を見上げる。

 先輩は、爽やかな笑顔で「もちろん」と言ってくれた。

「よかった」ふにゃ、と笑顔になったら、気持ちが緩んで、ぽろぽろと涙が出てきた。安住先輩がこどもをあやすように抱き寄せてくれる。分厚い胸板がふに、と頬に当たって、あぁ、綾子嬢と同じく巨乳だなぁと笑ってしまった。

「あの、俺、また綾子お姉さんとお砂糖したいです」ふと、やりたいことが口をついて出た。

「しような」先輩は背中を優しく撫でながら答えてくれた。

「お前のことが心配だよ。放っておいたらご飯食べるかどうかすらあやしいし。なんなら一緒に住みたいくらいだ」冗談めかした口調で安住先輩が言うので

「一緒に住みますか?」と聞くと、鳩が豆鉄砲を喰らった顔をしていた。その顔が可愛くて、なんだか胸がキュッとした。


vVv


「おはにー!二兎奏だぞい。長く引きこもっててごめんな!」

 ぼふん、と現れた二兎奏はいつものツナギ姿ではない。細身な体にぴったりとそったマーメイドのような白いレースのウエディングドレスを纏っている。

「ご機嫌よう!鷹見綾子ですわ」

 隣にぼふん、と現れた鷹見綾子も同じくウエディングドレスを着ている。こちらはロココ調のぶわりと広がる鳥籠のようなスカートのドレスだ。

「鷹兎のコラボ配信に来てくれてみんなありがとうな!」

「今回は、予告の通り、特別な配信ですのよ!ご覧の通りウエディングドレスでお送りいたしますの」

「なんでウエディングドレスかって言われると難しいんだけど……僕たち、今後、公私ともに支え合って行こうって話になったんだぞい。結婚みたいだねって話になって」

「それでは、いつも見てくれているファンの皆にわかりやすく伝えたいですわね、ということで、今回の配信をするのですわ」

「皆、よかったら祝ってくれよな!」

 二人のVは、相手を支えながら、二足並んだサイズの違うガラスの靴をそれぞれ履いた。ちゃんと履き終えると、二兎は照れ臭そうに、綾子は嬉しそうにお互いを見て微笑んだ。ふたりじめの笑顔の横顔は、ヴェールに隠れて見えにくい。そのまま、二人の横顔が近づいて、配信はフィナーレを迎えた。

 花吹雪のように色とりどりの御祝儀投げ銭が飛び交い、コメント欄はいつまでも祝福の言葉で満たされていた。

 この日から、鷹兎の仲、というネット古事成語が生まれた。仲睦まじいふたりを意味することは、言うまでもない。

いやあ書いてて恥ずかしいなイチャラブ。つらかった。面白いかどうか自分でわからなくなるので、前編と後編で間を空けるのはやめようと思いました。

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