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8話 解決策

茜のトラウマを聞いた俺は考える。


う~ん。そうすると別の案を考えないとな~。小笠原の奴はよく知らんが、茜が少しでも不安を感じるなら、俺の案はなしの方向か。そうすると、どうすればいいんだ。


とか考えているとふと思い当たったことがあったので、茜に聞いてみた。


「そういえば、茜は小笠原にどう説明したんだ?」


俺からの質問に少し困った顔をした茜と呆れるように茜を見る楠木。


「あの・・私は・・・隠したい所は隠して純君と話をして分かってもらおうとしました。失敗しましたが・・・その時に義兄さんの名前を出してしまいました。それまでは相手が誰かは特定されていなかったのに・・・すみません」


「・・・・」


茜の話を聞いて言葉がでてこない。結構最悪の状況じゃないかこれ?


男性恐怖症の茜が、どこの誰かわからん・・・いや小笠原は俺が茜に告白したと勘違いしてたから少しは警戒しているだろうな。そんな俺と仲良く話していた。

兄妹になった事を隠して浮気じゃないと説明して納得してもらうのは・・・どう考えてもやっぱり無理だな。


茜の話を少し考えて無理だと結論づけた俺は楠木にチラリと目をやると首を振っていた。多分楠木も無理だと考えているのだろう。


「・・・・やっぱり厳しいでしょうか」


「「・・・・・」」


俺も楠木も何も言えない。


「・・・そうですね」


茜自身もかなり厳しいと理解しているのか素直に引き下がるがやっぱり表情は暗い。

さて、もう少し話をして他の案を考えるか楠木のいう最終手段かになる訳だがどうするかと考えていると楠木が口を開く。


「他に考えはある?なければ私の考えを言わせてもらうけどいい?」


「そうだな。すぐには他の案はでてこない気がするから、楠木の案を聞かせてもらおうか。それ聞いたら別の考えが思い浮かぶかもしれないし」


「・・・・・」


茜は楠木の案に乗り気じゃないのか無言だったが、楠木は気にせず言葉を続けた。


「その前に、あんた・・いま・・す、好きな人・・・っているの?」


何かもじもじしながら楠木がいきなり良く分からんことを聞いてきた。今それを聞く必要があるのだろうか。疑問に感じたが正直に答える。


「いや、いないな」


俺は今まで勉強して医者になる事しか頭になかったので誰かを好きになった事はない。


「そ、そう。よかった。それじゃあ次に橘の恋人のふりを頼めて茜と仲がいい女子って心当たりある?」


何がよかったのかよく分からんし、次も何か変な質問だなと思いながらも楠木のいう仲のいい女子について考えてみる。まあ、考えるまでもなくそんな女子はいない。


「そんな奴は・・・あっ」


いないと言おうとした所で、一人だけ思い当たる奴がいる事に気付いた。


「え!い、いるの!嘘?誰?」


楠木が意外そうに食いついてきた。


いるのがそんなに意外か。失礼な奴だな。


とか思ったが、別に自慢できる相手じゃなかった。


「紅葉だよ。従妹の。前にお前も会った事あるだろ。あいつなら頼めばやってくれるし、茜とも仲いいな」


「あ、ああ、うん。紅葉ちゃんか。・・・う~ん。どうだろう・・・いや、駄目か・・・小笠原絶対信じないな・・」


ブツブツ言いながら何故か微妙な表情になる楠木。


「紅葉ちゃんじゃ駄目ね。小笠原って中学から一緒だから大体の茜の交友関係把握してるし、いきなり紅葉ちゃんと仲が良いって言っても信じて貰えないわね。そもそも紅葉ちゃんって家は結構遠いんでしょ?そんな遠くの子と茜と仲がよくて、しかも橘がその子と付き合いたいから茜に相談していたって結構無理っぽくない」


なんとなく楠木の案が分かってきた。茜と仲が良い女子を俺が好きになり、茜に相談していた所を電車で見られた事にするつもりで、相談してた事を疑われないように俺に恋人の振りをしてくれる人物が必要って訳か。別に俺が振られたって事でもいいけど、それだと小笠原の性格からしてまだまだ俺と茜の中を疑いそうだしな。


「まあ、辻褄は合いそうだけど、かなりの偶然が重なった結果って事になりそうだな」


「あとは義兄さんと紅葉ちゃん苗字が同じだからそこからも怪しまれるかもしれないです」


茜も同じ苗字だろと思ったが、学校では「清水」のままでいるんだったな。


「でしょ!だから私と橘が付き合う振りをすれば話は簡単でいいのよ。にしし~」


そう言うと、いたずらが決まったような顔で笑う楠木


「は?・・・・・おれと楠木?」


いきなり話が別方向に飛んで何を言われたか理解できずに戸惑う。


「そう、浮気相手と思われている橘が私と付き合ってるってなれば、茜に告白前に相談していたって事で電車での噂は簡単に説明できるし、紅葉ちゃんみたいに遠くに住んでる訳でもないし、茜と私が仲良いのは有名だし、これなら小笠原は絶対自分の早とちりだったって思うわ」


楠木の案をしばらく考えてみた結果、確かにいい案だと思う。思うのだが、問題だらけだ。


「・・・いやいや、それは駄目だろ」


「そうよ、舞。やっぱりその作戦は駄目だよ」


楠木の提案に兄妹で口をそろえて反対する。


「茜!あなた一回は納得したでしょ。反対しないで!」


楠木はピシャリと言って茜からの意見を封じる。がやっぱり納得できないのか「やっぱり、悪いよ」「舞がそんな事しなくても・・・」と言いながら引き下がらない。

すると楠木は茜の頬を両手で引っ張り優しい声で語りかける。


「あかね~。納得したわよね~?」


「ひゃい」


「よし、茜はこれでいいとして、橘は何で反対なの?」


脅しみたいな説得の仕方で茜を黙らせると、俺の方を向いて反対する理由を聞いてくる。


「まず、楠木は今回の件、全く関係ないし巻き込んじゃ悪いだろ?次に俺と付き合ったふりをするメリットが楠木にはないし、逆に俺なんかと付き合ってるってなったらお前の評判が下がるだろ」


俺が反対する理由を答えると、楠木は大きなため息をついてあきれた様子だ。


「はあ~。関係ないっていうけど、この時点でもう巻き込まれてるんだけど。っていうか本当の事情を知ってるの私だけよね?あと、茜は私の一番の親友よ、困ってたら助けてあげたいじゃない」


楠木の言い分はもっともだ。すでに巻き込んでしまっているし、全ての事情を知っている唯一の人物で更に茜の親友だ。こちらとしても助けてもらえると有り難い。


「う~ん。でもな~。楠木にはデメリットしかないからな~。・・・やっぱり悪いからいいよ。別の案を考えよう」


やはり、俺と付き合う振りをすると楠木にとって悪い事しかない。いくら茜を助ける為とはいえさすがにそれは出来ない。と思っていたが、


「勝手に決めつけてるけど、私にだってメリットはあるわよ」


デメリットしかないと思っていた俺は少し驚いて楠木の方に顔を向ける。


「・・ええっとね。自慢したいわけじゃないんだけど・・・私ってそこそこモテるの。ああ、茜ほどじゃないわよ。唯、私も今まで結構告白されてるの。大丈夫よ。全部断ってるから」


何故かいきなりモテ自慢が始まった。いや、自慢じゃないと本人は言っていたが。

ただ、改めて言葉にされるとやっぱり二人の容姿はかなり可愛い部類で、すごいモテるんだと再認識する。


「でね、告白されると嬉しいけど、付き合う気はないから断るんだ。で、その断るのがすごく大変なの」


隣で茜もブンブン頷いている。俺は経験がないが確かに告白する方も大変だけど、それを断る方も心苦しくて大変だろうなとか考える。


「まあ、なんとなく大変だろうなってのは想像できる」


「でしょ!で、もしもよ、私に彼氏がいるって分かればどうなると思う?」


「・・・・・大半は告白する前にあきらめるだろうな」


少し考えて多分一般的な見解を述べる。


「そう、それよ!実際、茜も小笠原と付き合いだしてから月に1回ぐらいしか告白されなくなったのよ」


ええっ!それでも月1かよ。すごいな、俺の義妹。っていうか小笠原と付き合う前ってどのぐらいのペースで告白されてたんだ。


ビックリして茜を見ると、顔を赤くして俯いている。


「舞~。・・・話盛りすぎだよ~」


茜は、か細い声で楠木に抗議する。


「盛ってないわよ。むしろこれでも抑えてる方よ。私が今までにあんたの告白に付き合わされて断った人数教えてあげようか」


「・・・・・」


楠木に何も言い返せない所を見ると、どうやら本当に話を控えめに言っているらしい。


「で、話を戻すけど、付き合うと告白される事が減るから、私も心苦しい思いをして断らなくてもすむのよ。しかも橘なら今、話したこっちの事情も分かってくれてるから丁度いい訳!ほら、私にもメリットあるでしょ?」


楠木はドヤ顔で腰に手を当ててメリットを教えてくれた。確かにメリットがある事は分かった。分かったが。


「やっぱり楠木の評価が下がるのがなあ」


ポツリとこぼれた俺の呟きに楠木は、


「あんたと付き合うと何で私の評価が下がるのよ?」


楠木はよくわかっていないようだから説明する。


「俺が学校で何て呼ばれてるか知ってるか?『寝太郎』だぞ、いい意味の渾名じゃないってのは分かるよな。そんな奴と付き合ってるってなると、趣味が悪いとか男を見る目がないとか言われるだろ?」


「馬鹿じゃないの!そんな事で評価を下げる人は私の友達にはいないわよ!もしそんな人がいたら友達やめるわ!あと知らない人達からはどう思われようと私は気にしない!」


俺の理由に納得してくれるかと思ったが、予想に反して楠木はなかなか男らしい答えを返す。


「だから、ね!お願い!」


うん?何で楠木がお願いする方になってるんだ?逆だよな?こっちがお願いする立場だよな・・・

そんな疑問が浮かんだが、茜を助けたいのだろうと思い、話合いの内容について考える。


楠木にもメリットがあるのは分かった。全ての事情を分かってもらってるやつに手伝ってもらうのもこちらとしてもすごく助かる。・・・・ただ、楠木は気にしないと言ったがやっぱり俺と付き合う振りをすると絶対陰で何か言われるよな~・・・う~ん。よし!決めた!


考えがまとまった俺は楠木の方を向く。楠木は真剣な顔でこっちを見ている。


「ええっと。こっちがお願いする立場なんだけど、条件を2つ付けさせて欲しい。ああ、そんなに難しい条件じゃないと思う」


俺の提案に楠木はコクリと頷く。その目が『早く言いなさいよ』と言っている


「まず一つ目、何か問題があった時は必ず俺が悪い事にする事。例えば、本当の事情がバレた場合、付き合う振りをした理由が俺に頼まれて仕方なくだったとか。小笠原の問題が解決して付き合うふりをする必要がなくなった時、俺が浮気とかしたから別れたとか。まあとにかくこっちがお願いしている立場だから何でも俺が悪い事にしてくれ」


楠木に説明すると、すごく不満そうな顔をしていたが、特に何も言ってこなかったので、二つ目の条件を説明する。


「次に付き合ってるって事は周囲には内緒にする事。まあ、小笠原には言わないといけないけど、他の人には、極力言わないようにしよう。楠木は気にしないって言ったけど、やっぱり知らない人でもお前の評価が下がるのは俺が心苦しいからな」


楠木は相変わらず不満顔だったが、俺の説明を聞いて一つ質問をする。


「もし私が周りにバラした方がいいって判断したらどうする?」


そんな状況あるのだろうか?俺には良く分からんがあるのかもしれない。


「・・・こっちからお願いしている身だし、まあ、その時はその時だから楠木に判断を任せる」


「本当に!分かった!ならその条件でいいわよ!」


楠木は自分の案で茜を助けられるが、よほど嬉しいのか二つ返事でこちらの条件を飲んでくれた。


「すみません。舞、義兄さん、もう少しだけ時間を下さい。親が再婚した事を話す覚悟を決めますから」


気まずそうに茜が謝ってくる。付き合う振りをする期間は茜が小笠原に本当の事を言うまで。


「小笠原の件は私たちに任せて、あんたはゆっくり覚悟を決めなさい」


そう言われると茜はコクリと頷いた後、改めて俺と楠木にお礼を言った。





「・・・さてと、話もついた所で、私は帰るね」


「ああ、駅まで送ってく」


辺りはすっかり暗くなっていたので、駅まで送る事にした。


「私も送るついでに、夕飯の買い出しに行きます。今日、学校休んだから食材買えなかったんです」


そう言って用意しようとする茜を楠木は手で制する。


「茜はやめときなさい。私と別れた後、買い出しや、帰る途中二人でいるのを誰かに見られたら、更に噂になるわよ」


「楠木の言う通りだな。俺が帰りにスーパーに寄って買ってくるよ」


「・・・分かりました。それでは買い出しお願いします」


という事で、楠木を俺が送っていく事になり、玄関で準備していると、

ガチャ。

玄関が開いて親父が帰ってきた。


「ただいま・・・・」


「おかえり。今日は早いな」


「お帰りなさい義父さん」


「あっ・・・こんばんは!お邪魔してました」


帰って玄関開けたら知らない子がいたので、固まる親父。その親父を見て少し緊張しながらもしっかり挨拶する楠木。


「義父さん。この子は私の幼馴染で親友の楠木さんです」


「どうも、楠木舞です。よろしくお願いします」

「ああ、茜ちゃんと仲良くしてくれてありがとう。宜しくね」


挨拶が済んだ所で俺は声を掛ける。


「親父、楠木を駅まで送っていくから」


「・・・ふ~ん」


親父はニヤニヤしながら俺を見てくる。何となくムカつくので、帰りにスーパーで魚を買ってこよう。今日の橘家の夕飯は焼き魚に決定した。


「じゃあ、行ってくる」


いまだにニヤニヤしている親父を無視して家をでる。





「~~♪~~~♪」


楠木は駅まで送ってる最中に鼻歌なんかを歌いだしニコニコしてかなりご機嫌な様子。


「なんか機嫌よさそうだな」


その様子をみて俺は声を掛けると楠木はピタッと立ち止まり、ニコニコしていた表情もしかめっ面になる。


「・・・ほら練習よ!練習!振りとは言え私たち恋人になった訳じゃない?一般的にあくまで一般的によ、付き合い始めた頃の気分ってどうだと思う?」


「・・・・まあ、楽しいんじゃないか?」


楠木の質問に何となくそうだろうなと思う答えを返す。


「そう!それ!最初は何でも嬉しくて楽しいはずよ!だからどこで誰に見られててもいいように常に楽しそうにする練習」


最後の方は声が小さくなって聞こえにくかったが、そういう練習も必要だなと思う。


「俺も練習しといた方がいいのかな」


何となく考えた事がポロリと口から出てしまった。


「そうよ!橘もちゃんと練習しときなさいよ!周りにバレる可能性は少しでも下げないといけないんだから!」


楽しそうにする振りか・・・面倒くさいな・・・いや、折角楠木が手伝ってくれてるんだから真剣に・・・・いや待て。


「よく考えたら俺は別に練習しなくて大丈夫だ、学校じゃ休み時間ずっと寝て空気みたいなもんだし」


寝太郎の俺なんて気にする奴も見てる奴もいないだろうし、ボッチの俺が教室で一人でニヤニヤしてたら不気味すぎる。


「・・・そう」


少し暗い口調で答える楠木だが何か思いついたのかすぐに顔を輝かせる。


「・・・じゃあ・・・名前!お互い名前で呼び合うってのは?これなら楽しそうにしてなくても恋人っぽいでしょ!」


ニコニコしながら顔を近づけてくる。正直かなり顔が近いので楠木の肩を押し返し距離をとる。


「いやいや、それはさすがに慣れ慣れしいだろ?」


「慣れ慣れしくないわよ。私たち付き合ってるのよ。全然おかしくないわよ!そうよ!もう決めた!」


俺の意見を聞かずに勝手にそう決めるともじもじしながら、


「・・・・・修一。」


俺の名前を呼ぶ。


「っ!」


名前を呼ばれて自分の顔が赤くなっていく事がわかる。正直すごく恥ずかしい。楠木の方を見ると顔を真っ赤にしているがニコニコしている。


「正直、すごく恥ずかしいんだけど・・・っていうかお前も顔真っ赤だぞ」


「・・・・そんな事ない!・・・修一。」


「くっ!」


再び名前を呼ばれて更に顔が熱を帯びていく。楠木は相変わらずニコニコ顔だ。こいつ、からかってるんじゃないだろうなとか考える。


「・・・じゃあ、はい、・・・し、修一も」


顔は相変わらず真っ赤だがニコニコしながらとんでもない事を言い出してきた。


『も』ってなんだ?え?俺も?名前呼びしなきゃいけないのか?下の名前『舞』だったよな?いや、無理、無理、恥ずかしすぎる。


「いや、お、俺は大丈夫、は、恥ずかしいし」


「む~。私だってすごく恥ずかしいんだから。それに恋人の振りがバレる可能性は少しでも下げとかないと。修一も恥ずかしいとか言ってる場合じゃないわよ」


楠木は頬を膨らませて反対してくる。こちらが迷惑をかけているので、何も言い返せない。

・・・そして俺は覚悟を決める。


「・・・・・・・ま、・・・舞」


呼ばれた瞬間、楠木は顔を真っ赤にして俯く。俺もさっき以上に顔が真っ赤になっている自覚がある。


「・・・やっぱり、これは無しにしよう。すごく恥ずかしいし、な?」


俺の提案に俯いた顔をバッと上げて楠木はすごい勢いで反対してくる。


「駄目よ!それでバレたらどうするの?こっちだって恥ずかしいの我慢してるの!修一も我慢して!」


くそっ!そう言われたら何も言えねえ。


俺は何か良い言い訳がないか考えているが、何も思い浮かばないので言い返せないでいる。

すると、


「だから、・・し・・・修一も覚悟を決めなさい!」


茜の為に嫌なのに無理して俺と恋人の振りをしてくれている楠木は、恥ずかしい事を我慢して名前呼びまでしてくれている。そう考えると俺も恥ずかしさなんて我慢しないといけない。

「わ、分かったよ。・・・ま、舞」


くそ~!滅茶苦茶恥ずかしい。


「えへへ~。なに?修一?」


「!!」


楠木はニコニコ笑いながら答えてくる。演技だと分かっていても可愛いと思ってしまい、照れて何も言えなくなる。向こうも恥ずかしいのかそのまま無言である。そのまま無言で歩いているとすぐに駅も見えてきた。俺は改めて茜の事を手伝ってくれるお礼だけはきちんと言う事にする。


「楠木、今日は茜の為に本当にありがとうな」


そういって頭を下げ、顔を上げると何故か楠木は不満気な顔をしている。

俺が何か気分を害する事を言ったか心配になる。


「・・・名前・・・戻ってる」


俺が不満顔の理由がわからずにいると楠木はポツリと不満の理由を教えてくれる。


「ああ、すまん。こんな事でバレたらお前の我慢は無駄になるもんな。気を付けるよ」


そう言って、ワザとらしく咳払いして、楠木にお礼を言う。


「舞、今日は本当にありがとう。これからしばらく宜しく頼む」


そう言うと楠木は不満顔からパッと顔を輝かせて満面の笑みになる。


「こっちこそ宜しくね!修一!」


そう言って手をブンブン振りながら駅のホームに消えていった。





帰り道

振りとは言え俺が付き合うか~。しかもあんなに可愛い子とか・・いやいや、振りだから振り。あれ?でもこれって、彼女がいたとしてカウントしていいのか?


なんてことを帰宅中に考えてくいる自分に気付いて、浮かれすぎだなと気を引き締めた。

帰宅後、ニヤニヤしながら俺を見てくる親父の前に鯵の開きを置いたら、悲しい顔に変わった。


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