40話 昼休み終わりの当たり前の光景
火曜日
朝親父を見送って、登校の時間になるまで自室で勉強していると、
ピンポ~ン
家のチャイムが鳴る。朝っぱらから誰だ?と思ったが、1階にいる茜と義母さんに対応は任せて俺は勉強に集中する。すぐに下から騒がしい声が聞こえる。義母さんと茜のテンションが高い、あと一人聞き覚えのある声が・・・舞?気になったので、下に行こうと扉を開けた所で、階段を上がってくる舞が見えた。
「よう、おはよう。どうした?」
「あっ。おはよう。来ちゃった、えへへ~」
「来たって俺に用か?茜じゃなくて?それとも少し早いけどもう出るのか?」
何となく舞の様子がおかしい気がする。
「ちょっとだけ、修一の部屋で・・・駄目?」
「まあ、別に構わないけど」
舞は何回か俺の部屋に入っているし散らかっている訳でもないので、部屋にきてもいいが、さっきから様子がおかしい。舞を部屋に入れて扉を閉めようとしたら、階段から顔を出して様子を見ている義母さんと茜が見えた。二人とも何してんの?
「修一君。私も茜もいるって事忘れないでね。あと、あんまり時間はないからね。」
義母さんから意味深な注意をされる。
「お、お母さん。な、な、何言ってるの?」
顔を真っ赤にした茜がテンパっている。俺も義母さんからの注意の意味が分かったので、多分顔が赤くなっているが、何も言わずに部屋に戻る。部屋に入り、扉を閉めて振り向くと、いきなり舞が抱き着いてきた。
「おおっと。どうした?補給きれたのか?」
さすがに部屋で二人きりなので、抱き着かれても恥ずかしくなる事はない。少しビックリしたが、そのまま舞を抱きしめる。
「・・・・昨日三条さんと話をした」
そういえば昨日は「ごめん、今日はちょっと用事あるから連絡できないかも」ってメッセージが来てたから、何も連絡しなかった。
「三条に何か言われたのか?」
「修一の事諦めないって、あと早く別れてって」
「あいつ、何てこと言ってんだ。・・・・それで不安になったのか?」
コクリと頷く。俺の体に顔を埋めているから表情は見えないけど、泣いてはいないだろう。
「馬鹿だな。そんな事で不安になるなよ。大丈夫だから安心してどっしり構えとけ」
「修一の事信じてるけど、やっぱり不安なの。だって私は別のクラスだけど、三条さんは同じクラスなのよ。付き合ってる時はちょっかい掛けないって言ったけど信じられないし」
「まあ、三条に何かされたら舞に全部話すから心配するな。それに俺が好きなのは舞だけだから安心しろ」
「・・・うん。分かった・・・じゃあ、証拠みせて」
そう言って舞は顔を上げて俺を見たあと目を瞑るので、俺は何をして欲しいかすぐに分かる。自分の部屋なので誰もいないのは分かっているがいつもの癖で回りを確認。
ん?さっき扉ちゃんと閉めたよな?
ちゃんと閉めたはずの扉が少し開いている。
「まだ?」
舞から催促されるが、さすがにこの状況ではできないので、舞に声を掛ける。
「舞、見られてる」
そう言うと舞はカッと目を開き扉の方へダッシュで移動する。少しだけ空いた扉の隙間からこっちを覗いている目が二つ見える。
「おばさん!茜!」
舞が今まで聞いた事がないぐらい大きな声で扉に向かって声を掛ける。
ゆっくり扉が開くと義母さんと膝立ちの茜がいた。さっきから母娘で何してんの?
「あはは。ほら!茜怒られちゃったじゃない。ごめんね~舞ちゃん。全く茜はしょうがないわね」
「ん~!ん~!」
涙目になって首を振って抗議の声を上げているが茜は義母さんから口を押えられて言葉になっていない。そこを義母さんに背中をトンッと押されて部屋の中に倒れこんでくる。
「ごめんね~舞ちゃん。修一君、時間がないから今はそこまでね。その先は私や茜がいないときにしてね。」
「か、か、義母さん?な、な、何言ってるの?」
「はあ~。修一君今まで真面目過ぎてお母さんらしい事何もできなかったけど、ようやくお母さんらしい事できたわ。ふふふ~。じゃあ、もう少しだけ頑張って~」
そう言って何事も無かったかのようにいつものように階段を下りていく。
覗いた事?あの忠告?が母親らしい事・・・良く分からんが、義母さんは放置でいいか。それよりも
生贄に置いていかれた娘は怒りの舞から胸倉を掴まれている。
「あっ、舞。ちょっと、落ち着いて。・・・カバン!そうカバン忘れたのよ!」
慌てている茜は苦しい言い訳をしている。
「ここは修一の部屋でしょ。あんたの部屋隣じゃない」
そんな言い訳を冷静に返す舞だが、声には怒りが込められている。
「あれ~、おかしいな~。まだ家に慣れてないな~」
往生際が悪く、更に苦しい言い訳をする茜。ちなみに今まで部屋を間違えた事は一度も無い。
「はあ~ほら、おでこ!避けたら・・・分かってるわよね!」
「えっ!嘘!ちょっと優しくね!手加減してよ!・・・・いっっった~い」
舞から痛そうなデコピンを食らって涙目になる茜。おでこが真っ赤になってるからかなり痛そうだ。
「はあ~ほら、もう学校行くわよ。修一も準備大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「あっ私カバンとってくるから、待ってて。」
3人で俺の部屋から出ると自分の部屋にカバンを取りに戻っていく茜。
「舞」
茜が部屋に入っていくのを確認してから舞に顔を近づける。
「うん?何・・・・・ん」
振り向いたら目の前に俺の顔があるので俺が何をしようとしたのか理解してくれる。
茜がすぐに部屋から戻ってくるので口と口が触れるぐらいの本当に短いキスをする。
「ふふ、えへへ~」
それだけで舞は上機嫌になるが、俺は階段下に見えた笑顔の義母さんに戦慄する。
見られた!まじか!・・・義母さんすごい笑顔だったな・・・はあ~。見なかった事にしてくれないかな。
義母さんはそのまま音も立てずにスーとリビングの方に見えなくなった。
1階まで降りてリビングの前を通ると舞が足を止めて義母さんに声を掛ける。
「おばさ~ん。さっきのお仕置きまだでしたね~」
「あら、いやだ、何の事かしら?お仕置きされたら、変な事口にしそう」
そう言って俺をチラリと見る。これはキスの事黙っててほしいなら助けろって事だよな。
「はあ~、ほら舞もう時間ないから行くぞ」
そう言って舞の背中を押して玄関に向かう。
「あっちょっと、修一!まだ話終わってないわよ」
「そうですよ、義兄さん、お母さんだけずるいですよ」
「ほらほら、行くぞ~」
そう言って二人を玄関に追いやる。
学校に向かう道すがらも舞と茜から文句を言われる。まあ、茜は良いが、舞にはちゃんと言っとかないと納得してくれないだろうと思い、耳元に口を近づけて茜には聞こえないように話しかける。
「すまん。さっきの廊下のやつ、義母さんに見られてた」
「見られたの!!」
こっちを振り向きながら舞は大きな声をあげる。
「ばか!」
すぐに注意するが手遅れだ。チラリと後ろを歩く茜を見ると、顔がニマニマしている。これはもう言い訳できない。
「ふ~ん。二人とも何を見られたんですか~?」
「そんな時間は無かったはずだけどな~。いつしたんですか~?」
「油断も隙もないな~」
茜が畳みかけるように質問をしてくるが、もう全て分かっているんだろう。
俺と舞は顔を真っ赤にして質問に答えず歩いている。茜から質問される度に抗議のつもりか繋いでいる手に力が込められて少し痛い。
「それにしても、カップルの後ろをついて歩くって少し寂しいね。舞が前に言っていた事が分かった」
「でしょ?寂しいでしょ。これからしょっちゅうあるから覚悟しといてね」
「それって朝から家に来るって事?」
「そう。修一が学校だと恥ずかしがるから家で補給するの」
「ふ~ん。「人前でイチャついて恥ずかしくないの?私は絶対人前ではしないから」とか言ってた人がねえ」
茜のその言葉に驚いて舞の顔を見ると、慌てて俺から顔を逸らす。
「し、仕方ないでしょ。あの時は本当にそう思ってたんだから」
学校の最寄り駅に着くと改札の所で小笠原が待っていた。
「おはよ~純君」
真っ先に彼氏に声を掛ける茜、俺たちも挨拶を済ませて学校に向かう。前を小笠原と茜が手を繋いで歩いている。最初手を繋がれた小笠原は少しビックリしていたが、後ろの俺たちを見ると納得した様子だった、茜も「たまにはいいでしょ?」と満更でもない様子だった。
俺は俺で少し肩身の狭い思いをしていた。俺の前と横を歩いているのは校内でも有名な美男美女で、その横に少し身長の高さだけが目立つ俺なので、歩いていると注目を集める。俺に対して色々言われているみたいだが、いつもみたいに気にしないようにする。けど舞は何となく気になるみたいだ。
「お~い。あんまり気にするなよ。俺は全く気にしてないからな」
と言った所で、舞は止まらないだろうな~。
「おっはよ~。あんた達今日は一緒に登校なの」
思った通り舞は近くにいた下級生の女子集団に声を掛ける。
「あっ、楠木先輩。おはようございます」
集団から挨拶を返される、持っている荷物から陸上部の後輩だと思う。挨拶しながらも舞と手を繋いでいる俺をチラチラ見てくる。
「あ~、この人、私の彼氏の橘修一よ、仲直りしてまた付き合う事になったから覚えておいてね」
「あ、あ、は、は、はい。わかりました。し、失礼します」
何か言いたそうな後輩達だったが、挙動不審になって離れていった。そうしてまた舞は別の女子に話しかけて俺を紹介していく。
「小笠原さん、おはようございまーす」
「お~す、お前ら」
小笠原は自分からは何もしなくても歩いているだけで男子の集団から話掛けられる。やっぱりこいつも人気がある。
「お~今日は彼女さんも一緒ですか~、やっぱりすごい可愛いで・・す・・・ね?」
「・・・あの清水先輩の隣の人誰ですか?・・・え?・・・楠木先輩と手を繋いでる・・・?」
「ああ、あいつが最近茜の兄貴になった橘で楠木の彼氏だ。あいつらまた付き合いだしたんだよ」
「マジすか?あれが噂の寝太郎先輩」
「楠木先輩の彼氏で清水先輩の兄貴って・・・・すげえな」
「えっ?本当なんですか・・・いや、本当なんですね。小笠原さんの彼女さんが普通に話して・・うお!突っ込み入れてる!!」
「まじか?触ったぞ!清水先輩が小笠原さん以外の男子を触ったぞ!」
「清水先輩めっちゃ笑顔で話しかけてるし・・・ええ?本当にあの人何なんですか?楠木先輩も手を繋いでますよ!」
「だからあいつは楠木の彼氏だって。知ってるだろ?陸上馬鹿の楠木舞を落とした寝太郎って?あいつだよ」
「マジすか?あれが噂の寝太郎先輩。俺も寝てればモテるのかな?」
小笠原と後輩の話を聞くとやっぱり舞と手を繋いで、茜と話をしている俺は普通じゃないみたいだ。どうでもいいけど『寝太郎先輩』は初めて聞いたな。
そうやって二人はどんどん色んな人に話しかけ、かけられ俺と舞がまた付き合いだしたと話していく。残った俺と茜は二人で話しながら登校する。
学校に着いて3階まで階段を上ってる途中で前を歩く二人に聞こえないように舞に小声で話しかける。
「舞、今日補給は?」
「朝したから大丈夫よ」
そう言って平気そうな顔を向けてくる舞だが、少し不満に感じている自分に驚いていた。
・・・やばい・・・これは舞の事馬鹿にできない・・・けど舞には知られたくない馬鹿にされる。
結局そのまま階段を上がりきり別クラスの3人と別れる所で繋いだ手を離すドサクサに紛れて少しだけ、本当に少しだけ舞の手をサワサワしてから手を離す。気付かないように・・・と思ったが駄目だった
舞はそれに気付くとものすごい意地悪い笑顔になって俺に小声で話しかけてくる。
「あれ?あれ~?どうしたの~?まさか補給きれた?私はいつでもハグされてもいいわよ~。なんならここでキスする?」
小馬鹿にした感じで聞いてくる。
「何言ってんだ。俺何かしたか?」
素直に認めたくないのでとぼけてみる。幸い茜達はもう背を向けて自分のクラスに歩いて行っている。
「ふ~ん。まあいいけど、じゃあお昼ね」
「ああ、それじゃあな」
俺がそう答えると舞は背を向ける。同時に俺は舞の腰に手を回して後ろから抱き着つく。
「少し補給」
耳元でそう囁いてからすぐに舞から離れる。まあ何人かに見られたと思うが、一瞬だったので、いいだろう。舞はこちらを振り返りもせず自分のクラスに歩いて行くのを見て、俺も自分の教室に向かう。
「おい、楠木、顔真っ赤だぞ。どうした?」
「うっさい」
そんな小笠原との会話が後ろから聞こえてきた。
4時間目が始まる前の休憩時間に俺のスマホが震えた。俺のラインを知っている人は基本的に休み時間に寝ている事を知っているので、連絡してくる事はないが今日は珍しい。
舞:明美が謝りたいから昼にうちのクラスに寄ってって
あかね:昼休みになったら5組にきてもらっていいですか?
ほぼ同時に二人からメッセージが来ていた。
:はい
5組に行くのは気が乗らないが彼女と義妹からの呼び出しなので、行くしかないな。
舞:心配しなくてもみんなに修一は悪くないって分かってもらったから
安心させるメッセージが来たが、やっぱり正直5組に行くのは不安だ。重い足取りで昼休み5組まで足を運ぶ。5組の廊下までくるとすぐに舞と茜が俺に気付いて廊下まで出てくる。
「すみません。義兄さん、わざわざ来てもらって。ほら、早く」
「修一、ごめんね。ほら、あんた達早く来て」
二人は廊下まで来ると呼び出した事を謝って、クラスの中に声を掛ける。
気まずそうな集団がこちらに向かってくる。見た瞬間にあの時俺に敵意むき出しで向かってきた陸上部の連中だと分かる。俺の所まで来ると一番先頭の元クラスメイトで俺を叩いた奴がものすごく気まずそうしている。
「ほら、明美」
「・・・あの、橘君この間はごめんなさい!」
そう言って頭を下げる元クラスメイトとその後ろにいる陸上部。
「舞と茜から全部聞いたわ。橘君全く悪くないのに私達勘違いして、更に私なんて叩いちゃうし、本当にごめんなさい。あの許して貰えるかわからないけど、気の済むまで叩いて下さい」
そう言ってまた頭を下げる元クラスメイト。
・・・困った・・・叩けっていわれても困る。まあ元々気にしてないんだけどな。
「おい、頭を上げてくれ、別に気にしてないから、舞の為に怒ってくれたって分かってるから俺も怒ってないから」
「だから修一は怒ってないから心配するなって言ったでしょ。」
舞もフォローしてくれると全員が顔を上げて困惑している。
「えっと。本当にいいの?あれだけ酷い事したのよ?特に私なんか叩かれても文句言えないくらいの事したのよ?だから早く気の済むまで叩いて下さい」
いや・・・まじで叩かれるの前提で話するのやめてくれよ。
「だから大丈夫だって!怒ってないから!叩く気もないから!それよりもこれからも舞と茜と仲良くしてくれればそれでいいから!」
そう言って元クラスメイト達に笑いかける。その言葉に舞が即座に突っ込みを入れる。
「ボッチのあんたが何を偉そ・・う・・ああ!駄目!!!」
俺の顔を見ると何故か慌てて俺の顔に両手を押し付けてくる。
「うぶ!・・・おい!何すんだよ!」
舞は俺の抗議に耳をかさずにビクついた表情で元クラスメイト達を見ている。元クラスメイト達もビックリした表情をして俺を見ている。・・・???俺?何か変な事言ったか?
「・・・へ、へえ~。舞が惚れるだけあるわね~。橘君どう?そこの抉れたのより私と付き合わない?」
元クラスメイトが自分の胸が持ち上がるように両手を組みながら何かとんでもない事を言い出した。・・・何でいきなり話が変わった?
「えぐ??!!!」
舞もビックリして変な声を上げる。俺はチラリと元クラスメイトの腕を組んで盛り上がった一部に目をやる。茜程ではないがそこそこある。
「明美!あんた本気で~「痛い!!痛い!!舞!!!爪が!!爪が食い込んで!!」
舞が殺気を放つと同時に俺の顔を覆うようにしていた両手に力が入り顔に爪が食い込む。ものすごく痛いので舞に抗議する。
「おお。怖い怖い。これだから貧乳は・・・「痛!!痛い!!おい、これ以上舞を挑発するな!!!舞に謝れ!そしたら許す!もう何も言わない!!」
元クラスメイトが舞を挑発すると、何故か俺に被害が及ぶので挑発をやめて謝るように叫ぶ。
「は~い。ごめんね舞。そんなに怒らないで。大丈夫、さすがに人の物に手を出す趣味はないから」
そう言うと納得してくれたのか俺の顔から手を離してブスっとした表情で元クラスメイト達を見ている。
「修一にちょっかいかけたら・・・あんた達本当に分かってるわね?・・・修一も!!デレデレしない!」
「してねえだろ。人聞きの悪い事言うなよ」
「あんた、明美の一瞬見たでしょ」
「・・・・見てないぞ・・・・・いってええ!!!すみません!許してください!!」
顔から離した手はいつの間にか恋人繋ぎになっていたが、今度は手に爪を立てられて慌てて謝る。
「ふん!次はないからね!あと学校ではあの笑顔見せないって約束したでしょ。約束破った罰もあるから」
「出来てた?本当に?見間違いだろ?」
「出来てた!ホントにやめてよ。あの顔は反則だって言ったでしょ。これ以上ライバル増えるかもって思うと不安になる」
そうは言ってもな~。どうしたらいいんだ?
「取り合えず休み時間は寝てれば大丈夫だから」
彼女から無茶ぶり・・・いや今まで通りしてろと言われる。
「ほら、ご飯食べに行くわよ」
そう言って俺の手を引いて体育館裏に向かって歩き出す。
ブーブーブー
スマホのアラームが震えて目が覚める。
ここ体育館裏は入学してから毎日弁当を食べている場所で、この間まで誰かと出会った事もなくボッチだった自分が昼休みに昼寝をして過ごしている場所だった。そんな場所だったが今では俺の彼女も隣で一緒になって昼寝をしている。彼女はクッションとタオルケットを持って来ていて、先住民の俺よりも快適に昼寝をしている。それが悔しいので、俺もそろそろクッションぐらいは持ち込もうと考えているが、そのクッションを買いに行く時は自分も連れていけと隣で寝ている彼女が五月蠅いので、持ってくるのは来週以降になるだろう。そんな事を横で寝ている彼女の顔を眺めながら考える。
さて、もう起こさないと授業に間に合わないので声を掛ける。
「お~い。舞、起きろ。時間だぞ」
「う~ん。・・・・おはよ~。ふあ~。眠い」
まだまだ寝ぼけている舞を横に俺は自分と舞の荷物を片付け始める。義妹が言うには「毎回起こして上げて荷物も片付けるなんて舞に甘すぎます」と小言を言われるが、外でのデートでは舞に色々世話になっているのでお互い様だと俺は思っている。
「よし、じゃあ教室に戻るか」
「うん。修一」
昼休み終わりに渾名が寝太郎の俺と美人で有名な彼女が二人で手を繋いで教室に向かう光景、今では当たり前になってしまった。
終




