32話 帰り道
放課後
「橘君、今日も一緒に帰ろう」
「いや、今日から茜と帰る約束しているから無理だ」
三条がいつものように誘ってくるが、何故か今日から茜と一緒に帰る事を決められてしまった俺はその誘いを断る。
「・・・・・」
俺の答えに三条は何か思う所があるのかしばらく考え込む。
「義兄さん。お待たせしました。じゃあ行きましょう」
三条が目の前で無言で考え込んでいると茜がやってきた。
「清水さんだ・・・」、「やっぱり可愛い・・・」、「何で寝太郎なんかと・・・」
茜が教室に一人できて俺に話しかけているので、昨日ほどではないが教室はざわつく。
「それじゃあ、三条さん失礼しますね」
そう言って茜は俺の腕を掴んで立ちあがらせようとするので、俺も素直に従い席から立ち上がり、三条に挨拶しようとした所、三条に反対の腕を掴まれた・・・昨日と全く同じ状況になる。
「ちょっと、待って。・・・えっと・・・私も一緒でもいい?」
「・・・それは!!三条さん、義兄さんから聞いているかもしれませんが、義兄さんの悪い噂知っていますか?巻き込まれますので、しばらく義兄さんには近づかない方がいいですよ」
茜が三条にそう言うと何故か二人の間の空気が変わった気がした。
「・・・噂の事なら知ってるよ。でも大丈夫。噂なんか気にしないから。フフフ」
「・・・兄妹でプライベートな話もありますから。フフフ」
「・・・そういうのは家でやったほうがいいよ。フフフ」
「・・・プライベートな話以外も勉強の話とかもありますから。フフフ」
「・・・それなら尚更私もご一緒しないと一応学年でも上位の成績だから色々教えてあげるよ。フフフ」
「・・・いえいえ。三条さんが人に勉強教えるの嫌いって噂を聞いてますから無理してもらわなくても大丈夫ですよ。フフフ」
「・・・清水さんは特別に教えてあげるよ。フフフ」
ええっと。二人とも笑っているんだけど俺の背筋から冷や汗が出てくるのは何でだろう・・・何故二人とも相手の言葉を少し考えてから返事をするのか・・・何故最後笑うのか。
「えっと?それでどうなったんだ?」
嫌な汗が止まらないので二人の会話に強引に割り込んでどうなったか尋ねてみる。結局最後は関係ない話になっていたが決まったのだろうか。
「うん!三人で帰る事になったよ!清水さんとも話してみたかったし!」
茜が答える前に三条が大きな声で答える。茜がすごく苦々しい顔で三条を見ているが、観念したのか軽く溜め息をつく。
「まあ、私も三条さんと話をしてみたかったですし、いいですよ」
「それなら俺は別で帰るから二人で一緒に帰ればいいだろ」
話をしたいなら俺を残して二人で帰れば、三条は俺の噂に巻き込まれないし、二人が仲良くなれる素晴らしい案を思いついたので、提案してみると二人はすごいビックリした顔で俺を見てくる。
あれ?いい提案だと思ったけど駄目なのか?
「駄目か?」
「駄目ですよ!」
「駄目よ!」
俺的には良い案だと思ったが二人からほぼ同時に結構強い感じで否定される。何で駄目なんだ?
「はあ~。三条さん。こういう事を平気で言いますけどいいんですか?」
「はあ~。ちょっと後悔してるけど、でも大丈夫これから直していけばいいから」
すごく疲れた表情で答える茜に対して、溜め息をついた後、三条は笑顔で茜の質問に答える。
何か俺の悪口を言われている気がするが、何でだ?俺可笑しなこと言ったか?疑問に思ったが、何となく二人の会話に口を挟まない方がいいと思ったので黙って聞いている。
「くっ!なんでそこで笑えるんですか?・・・本当に三条さんは強いですね。どこかの誰かも見習ってほしいです」
「あははは。一回すごく後悔したからね!さすがにこれ以上は・・・ね?」
帰り道俺の前を二人が仲良く話をして時々笑いあいながら歩いている。俺に話が振られる事はなく二人の後ろをトボトボ歩いている。知らない奴がみたら可愛い二人の後をつけてる完全にヤバい奴だ。これなら俺いらなくね?
駅についてようやくヤバい奴状態から解放されて三条に挨拶しようとしたが、
「清水さん。今日はすごく楽しかったからできれば連絡先交換したいけど・・・さすがに・・・ねえ」
「そうですね。私も楽しかったですけど・・・さすがに私はあっち側なので・・・決着が着いたらにしましょう」
「???」
「そう。それじゃあお願いしようかな?それと明日からも3人で帰っていい?」
「・・・本当は・・・いや、いいですよ。これ以上は邪魔したくありませんので」
「ありがと!それじゃあまた明日ね!清水さん!橘君!」
「さようなら」
「ああ、気を付けてな」
そういって手を振って三条は電車に乗って去っていった。
「なあ、茜。最後二人が何の話してたか分からなかったんだけど・・・『あっち側』とか何?連絡先交換できないとか何なんだ?女子の中で派閥とかあって別派閥のやつと連絡先交換したらいけないとか?」
「義兄さんは知らなくても大丈夫ですよ。それにしても三条さんいい人ですね」
何故か茜は三条の事が大変気に入ったみたいだ。兄としては妹に友達が増えるのは嬉しい。
「今日三条さんと話して分かったんだけど、本気で義兄さんの事が好きだって分かった。多分結構前から・・・。それに1回すごく後悔したって言ってた。多分義兄さんが舞と付き合った事に対してだと思う。だから別れたって聞いてすぐに動き出したんだよ。だからごめん舞。自分から言っといて悪いけどこれ以上は三条さんの邪魔はしたくない。」
今日三条さんと話して分かった事や思った事を舞に報告します。
「あと、三条さんは舞が義兄さんの事を好きだって気付いてるね。向こうから見たら義兄さんとヨリを戻そうとしているように見えているのかな?」
「・・・・分かった。ありがとう。茜、もう大丈夫。あとは自分で頑張る」
「本当にいいのね?」
「うん、大丈夫」
あまり大丈夫じゃなさそうに舞が答えますが、言っておかないといけない事があります。
「兄妹だってバラしたからみんなに広める為に、今週は義兄さんと一緒に帰るようにするね。それが終わったら私はもう何もしない」
「分かった。茜、ありがとう。さて、私も頑張らないと」
通話を終えてから、本当に舞は大丈夫か心配になりますが、私がここで考えていても仕方がありません。
翌日
「義兄さん、一緒に帰るのは今週まででお願いします。それで多分周りも兄妹だと分かってもらえると思いますので」
三人で下校中に義兄さんに話をしますが、実際は三条さんに聞いてもらえるように話します。
「おう。分かった」
それを聞いた三条さんが私に何か言いたい様子でしたが、結局何も言いませんでした。
「そう言えば、舞とクラスの奴らってまだ微妙な感じなのか?」
「・・・正直、他の子達は気付いていないですが、表に出していないだけで舞だけが微妙な感じです」
「そうか。そうするとまだしばらく昼飯一緒に食べる事になりそうだな」
「「・・・・・」」
義兄さんはなんでここでそういう事を言えるのでしょうか。今すぐ怒りたいですがさすがにそうすると三条さんの好意まで話してしまいそうなので我慢です。今こういう事を言うって事は確実に三条さんの好意には気付いてないですね。舞もですが、三条さんもここまで鈍感の人を好きになって大変です。っていうかこれで三条さんますます焦る気が。
「ええっと。た、橘君と楠木さんって、お、お昼一緒に食べてるの?」
思った通り、慌てた感じでさぐりを入れてくる三条さん。私に恨めしい目を向けてこられても困ります。
「ああ、昨日俺のせいでクラスメイトと微妙な感じにさせたからな。仲直りするまで一緒に食べる事になった」
「二人は別れたのに一緒にお昼食べてて大丈夫なの?誰かに見られたりしたらどうするの?」
「それは大丈夫だ、今まで誰にも見つかった事ない場所だからな」
「ちなみにどこで食べてるの?」
「体育館裏だけど誰にも言うなよ」
「言うつもりはないけど・・・・そうだ!今週土日も学校で勉強するでしょう?だったら前みたいにお昼一緒に食べない?」
まあ三条さんならそう来ますよね。予想は出来てましたけど、グイグイ来るな~。
「あ~土日は舞と勉強する約束してるから一緒でもいいならいいぞ」
おお!舞はちゃんと頑張っていますね。昨日の私との電話の後に義兄さんと約束をしたみたいです。っていうか義兄さん・・・それは修羅場になる事分かってない・・・よね・・・義兄さんだし。
「できる訳ないでしょ!何考えてるのよ!」
義兄さんの提案に当然三条さんは怒りながら反対します。もしかしたらと思いましたが、さすがの三条さんでも舞と一緒にお昼は無理みたいです。
「ええ?・・・お前らって仲悪いの?」
多分、同じ人を好きになるぐらいですから、趣味は合うはずです。それに私が話した感じ噂と違って話しやすいし、舞とも絶対仲良くなれます・・・好きな人が同じじゃなかったら・・・。
「・・・いや、悪くはないけど・・・でも無理なの!」
さすがに三条さんが困って可哀そうなので助け船を出します。
「義兄さん。仲が悪くなくても女子には色々あるから察して下さい」
紅葉ちゃんから『お兄ちゃん鈍感の癖して何故か自分の事鋭いとか察しがいいって思いこんでるから、そういう風に誘導すれば勝手に納得してくれるよ』と教えてもらったので、こういえば勝手な解釈して納得してくれるんだろうなと思い誘導してみると、勝手に納得した様子でした。義兄さん、年下の紅葉ちゃんから手玉に取られてます。この事はあとで舞と三条さんには教えておきましょう。
木曜日、金曜日は今まで以上に三条さんのアピールが凄かったです。私はもう一緒に帰るだけで何もしませんでしたが、これでもう明日から私は決着が着くまで動きません。状況は気になりますが、こちらから聞く気もありません。どうなるのでしょうか。




