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31話 今までの学校行事

多分いるだろうなと思いながら体育館裏に行くと思った通り楠木が座っていた。


「友達はいいのか?」


少し落ち込んだ様子で座っていた楠木だったが俺が声を掛けると嬉しそうな顔をした後、すぐに落ち込んだ様子に戻る。


「あんな事があったらさすがに仲良く一緒に食べれる訳ないでしょ」


「まさか、喧嘩とかしていないよな?」


そうならないように茜に頼んで楠木を止めさせたんだが、少し不安になってくる。


「大丈夫よ。茜が止めてくれたから。修一が何を考えてたか茜から教えて貰ったし。それを聞いて私も我慢できた」


「そうか、喧嘩しないで良かったよ。それにあいつら良い奴らじゃないか。舞の為にあれだけ怒ってくれるんだから」


「何で修一は怒ってないのよ。叩かれたのよ、普通は文句ぐらい言うのに、何で良い奴らなんて言えるのよ」


「・・・それは、恋人の振りを始めた時からこれぐらいはある事を覚悟していたからかな?それに理不尽に怒られたんじゃなくて舞の為に怒ってる事が分かったからな」


楠木は少し驚いた顔をしたが、すぐに溜め息をついて呆れた顔をする。


「修一はあの時どんだけ先を見ていたのよ。鈍いのか鋭いのか分からなくなるわ」


「ああ?俺ぐらい鋭い奴なんていないぞ。さっきも茜の事で小笠原に注意してきたし」


「どこが鋭いのよ。それに鋭かったら・・・・そういえば、小笠原に用事って何よ」


楠木は何か言いかけたが、すぐに小笠原の事に話題を変えた。まあ確かに俺から小笠原に用事なんて今まで無かったから気になるんだろう。


「取り合えず腹減ったから飯食おう。小笠原の事は飯食いながら話すから」


「・・・っていう訳だ」


弁当を食べながらさっきの小笠原とのやり取りを説明する。


「はあ?茜がいじめられてる訳ないでしょ?私も小笠原もいるのよ。そんな奴がいたら私達で止めさせるわよ」


俺の説明を聞いて即いじめを否定される。


まあ小笠原にも否定されたし、俺の思い違いか。それならいいな。


なんて考えていると、


「何で最初に私に聞かずに小笠原に聞いてるのよ?あいつは彼氏だけど男子よ。私に聞けばいいじゃない女子の事なんてすぐに分かるし」


分かってる。俺も最初は楠木に聞こうとしたが、最近の情緒不安定な様子からあまり心配かけたくなかったので聞けなかった。なんて言えるはずもないので、


「いや、女子のいじめは隠れてやるって聞くから舞が見てない所でやっているかもって思ってな。」


「ふ~ん。まあいいわ。それで納得してあげる」


納得してない様子だが納得したという楠木に突っ込みをいれたいが、言うと藪蛇になりそうなので我慢する。


「それよりも・・・その。叩かれた所・・・大丈夫?」


心配そうに俺の頬に手を伸ばしてくる。


「?・・ああ、大丈夫だ。親父に殴られた時に比べればどうって事ないぞ」


叩かれた時の痛みも治まっているので何を言われたか一瞬分からなかった。そういえば叩かれたんだった。


「修一、あのお父さんに殴られたの!?大丈夫だったの?」


俺の答えにものすごく驚いた表情をして聞いてくる。


そう言えば楠木は親父を見た事があったな。確かにあんなのにぶん殴られたって聞いたら驚くよな。


「ああ。あん時は首から上が飛んでいったかと思ったけど、何とか無事だった」


あの時、マジ切れした親父が殺意むき出しで拳を振りかぶっている様子を思い出すと、いまだに震えてしまう。まあさすがにあの時は俺が悪かったので、殴られて当然だと思っている。


「・・・・茜から修一のお父さんすごく優しい人で怒った事がないって聞いてるんだけど、一体何したのよ?」


「いや。・・・・ちょっと・・・欠席したのがバレたのが決定的だったな。ははは」


別に大した理由じゃないが、言うのが恥ずかしいので軽く誤魔化してしまう。


「・・・え?学校休んだら怒られるって・・・全然優しくないじゃない!あれ?でも茜って学校休んだ事あるわよね。確か小笠原と喧嘩した時・・・はっ!修一に授業サボらせた私ってすごくヤバい?え?私どうなるの?怖いんだけど」


茜が休んだ事がある事を思い出して心配するが、すぐに自分も俺をサボらせた事を思い出して怯えだす楠木。


うん。何か勘違いしているな。


「いや、いや授業サボったぐらいじゃ親父は怒らないって。自分でもよくサボってたって言ってるし、まあ、それを母さんに見つかってボコボコにされてたらしいけど」


「修一のお父さんをボコボコにできる、あんたのお母さん何者よ?・・・それじゃあ修一は何を欠席したのよ?」


「・・・親父に黙って修学旅行を欠席してな・・・それで殴られた」


「・・・・・・え?噓でしょ?」


ドン引きして一言呟いてから口を開けたまま呆然としている。


「・・・・・・・!え?って事は修一って修学旅行行っていないの?何でサボったのよ!いじめられてたの?」


しばらく固まっていたが、正気に戻ったみたいですごい剣幕で質問してくる。


「サボりじゃねえよ。最初から欠席で学校に届けてたんだよ。学校から何回か確認の電話があったけど親父の振りして誤魔化したんだよ。別にいじめられてた訳でもないからな?ただ、ボッチの俺が行っても楽しくないし、他の奴らも気を使うのは中学で分かってたから。それならまだ学校で勉強してた方がマシだと思ってな。それをずっと親父に黙ってて、修学旅行に出発したその日にバレて殴られた。今思えばあの頃既に義母さんと付き合ってたからそれ経由だな、バレたの」


「そりゃ、そんな事したら殴られるわよ。・・・そういえば後輩に聞いた事あるわ。修学旅行に体調不良で欠席した2年生が学校で一人で勉強していたって。それで休み時間机に突っ伏して泣いているのを見たって・・・それ聞いた時は可哀そうだなって思ったけど・・・修一だったのね」


「体調不良と泣いてたってのはガセだな。あん時は勉強がすごい捗ったわ~昼飯も昼寝も教室でできたし、休み時間もすごい静かでぐっすり眠れたんだよ。また修学旅行行ってくれねえかな」


そうぼやくと、すごい呆れ顔の楠木がジト目で俺を見てくるが、俺は実際にそう思っているので気にはしない。


「はあ~。やっぱり修一って勉強できるけど、馬鹿でしょ。・・・・・!!さっきそれが『決定的だった』って言ったわよね?」


溜め息をついてから俺をディスり始めたと思ったら何かに気付いたように顔を上げて聞いてくる。


「ああ。そん時に今までの学校行事全部サボってたのがバレた」


まあ隠す事じゃないので、正直に話す。


「ええ??噓でしょ?文化祭は?体育祭も?あとあと社会科見学とか他の行事もなの?」


驚いて俺を掴んでぶんぶん揺すってくる。


「ああ、全部は全部だ、入学式から体育祭、文化祭とりあえず高校に入ってから学校行事は出席した事ないな。サボって勉強してた。ははは」


「笑いごとじゃないわよ!何考えてるのよ!そんな事してるからボッチになるんでしょ!」


今だに俺を掴んでいたが、さっきよりも勢いが強くなって揺すってくる。楠木もマジ切れしているので、少し怖い。


「大丈夫だ、親父と約束してるから今後はちゃんと出席するから」


殴られたあとに親父から「これでも手加減したからな」って言葉を聞いてからは、命を助ける仕事に就く前に命を粗末にしない為にも、学校行事には参加すると約束している。


「次やったら私も怒るからね!茜にも教えて怒ってもらうから!ああそうだ、学校行事がある時は迎えに行ってあげるわ!茜と三人で学校に行きましょう、うんいいじゃない!」


マジ切れしている楠木だったが怒っている途中で何故か3人で登校する対策が気に入ったのかご機嫌になる。俺は色々ツッコみたいがまたマジ切れされると俺の睡眠時間が減るので黙ってやり過ごした。


「じゃあ俺は昼寝するから、舞はどうする?」


弁当を食べ終わって、昼寝の準備を始めながら楠木に尋ねる。


「ここにいてもいい?」


「ああ、別に昼寝の邪魔しなければいいぞ。」


まあ、あんな事があって教室には戻りづらいんだろう。そう察した鋭い俺はここにいる事を許可して寝始めると、すぐに腹に感触が。目を開けると楠木が俺の腹にもたれかかりスマホをいじっている。


邪魔するなって言ったのにいきなりかよ。・・・まあいいか。


なんて思いながら俺は昼寝を始める。


ブーブーブー

いつものようにスマホのアラームが震えて目が覚める。

アラームを止めて起き上がろうとした所で、楠木が俺の腹の上に頭をのせて寝ていた。


何やってんだ?こいつ・・・取り合えず起こすか。


「舞、起きろ。時間だぞ。」


俺の腹に置いている頭を揺すって声を掛ける。これで起きないと無理やり起き上がってから起こすしかないなと考えたが、すぐに楠木は目覚めたようだ。


「んあ?・・・・どこ?・・・学校?」


まだ寝ぼけた様子で起きた楠木だが、自分がどこで寝ていたか分かっていないようだ。


「よう、起きたか」


「え?修一?・・・・何だ寝ちゃったのか」


ようやく自分の状況に気付いた楠木だが、起き上がった後俺の制服に盛大によだれを垂らしているのが分かった。


「っておい!よだれ!どうすんだよこれ!」


俺が文句を言うと自分が俺の腹の上でよだれを垂らして寝ていた事を理解したのか真っ赤な顔をする。


「ごめ~ん。ちょっとマジ寝してた。拭く?」


軽い感じで謝ってくるが悪いと思って謝ってるからまあいいだろう。だけど拭く?って何だ。拭くに決まってるだろ!


「拭くに決まってるだろ!何で疑問形なんだよ!」


枕替わりに使っていたタオルでゴシゴシ制服からよだれをふき取る。楠木もハンカチを取り出していたが、何故か拭くのを躊躇っているようだ。何でだ?


「自分で言うのも何だけど、結構貴重だと思うわよ。私のよだれ」


アホな事を言い始める。


「まだ寝ぼけてんのか?いらねえよ!汚ねえだろ!ほら見ろ、少し染みになってるじゃねえか」


「汚いって何よ!失礼ね!でもマーキングできたしまあいいわ」


何でだ?よだれって汚いよな?俺おかしくないよな?


「マーキングって何だよ!良くねえよ犬かお前!」


「最近他の女子に尻尾振ってる修一にはこれぐらいで勘弁してあげるって言ってんの!」


だから何でこいつは時々上から目線で言ってくるんだ?しかも訳分かんねえ事いってるし・・・って時間がヤバい。


「訳分かんねえ事言ってないで教室戻るぞ!急がないと授業始まる」


荷物を持って教室に戻ろうとすると腕を掴まれて止められる。


「何だ?さすがにもうサボらないぞ?」


「あの・・・明日からもここでお昼一緒に食べていい?」


上目遣いでモジモジしながら聞いてくる美少女。さっきまで俺の腹の上でアホ面してよだれ垂らして寝ていた奴と同じ人物だと思えない。


「・・・昼寝の邪魔しなければいいぞ・・・あとよだれ垂らさなければ」


「もうしないわよ!・・・でもありがとう。明日から宜しくね」


歩いて去っていく楠木、しばらくしてから俺も早歩きで教室に戻る。


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