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23話 新学年

始業式

今日から私達は3年、最上級生です。しかも私達の高校は進学校なので、ほぼ全ての3年生が受験生です。まあ先の話は置いておいて、今は目の前の問題です。あれから純君と話し合い別れた事がバレた後、義兄さんが悪く言われない為にどうするかは決めてはいますが、できればその前に解決したいです。舞は『修一と私は同じクラスになるから別れたなんて思われないぐらいイチャイチャするから大丈夫』と本気で言ってましたが、私にはどうしてもフラグにしか聞こえませんでした。今の所、クラス替えで3人の内誰かが義兄さんと同じクラスになったらいいなって感じです。

今日は舞と駅で待ち合わせて一緒に登校する約束です。


「おはよう」


駅の改札で舞が待ってました。挨拶をして学校に向かいます。


「クラス替え不安だな~」


2年まで舞も純君も同じクラスだったので楽しかったのですが、3年で離れたら悲しいです。元々引っ込み事案の私は舞の友達が舞と話している内に私とも仲良くなる事が多いので、自分から話しかけたりは苦手です。ですのでできれば舞か純君どちらかと同じクラスだと心強いのですが・・・。義兄さんは・・・基本寝てそうですね。何かあれば助けてくれると思いますが。


「大丈夫よ、今年は修一も同じクラスになる予定だから」


根拠が何もないのにそこまで自信たっぷりにいえるのは何故でしょうか?どう聞いてもフラグにしか聞こえません。

そうして二人で学校の玄関に張り出されたクラス表の前まできましたが、

・・・・見えない。人が一杯で良く見えません。周りでは同じクラスになれて喜んでいる声、別れて残念がっている声が聞こえます。なんとか見えないか努力してみましたが、全然前に出れません。そんな時純君の姿が見えました。


「純君。クラス表見た?」


私が声を掛けると純君は嬉しそうな顔をした後、すぐに困った顔になりました。嫌な予感がします。誰か違うクラスになったのでしょうか。


「見たぞ、同じ5組だ、楠木も同じな。またよろしくな」


「やったー!」


そう言われて、嬉しくて思わず純君に抱き着いてしまいましたが、すぐに浮かない顔をしていた事を思い出し、純君から離れます。


「・・・純君?もしかして」


「・・・橘は1組だ」


ショックです。義兄さんは別クラスです。やっぱりそう甘くありません。チラリと舞を見ると、目から光が消えています。取り合えず元気づけなきゃと思い1組のクラス表に舞を引っ張っていきます。クラス表にはやっぱり義兄さんの名前があります。1組に知り合いはいないか探しましたが、あまり喋った事がない子がほとんどです。


「1組に舞の知り合いいる?何かあれば協力してもらわないといけないからよく見てね」


そう言うと目に光が戻ったようで、じっくり眺め始めました。


「知り合いは女子の半分ぐらいいるわね。その中で協力頼めそうなぐらい仲いい子は2~3人って所かしら」


さすが舞、友達が多いです。私達の知らない所で義兄さんにアピールしてくる子がいれば教えてもらうように頼んでおけば良さそうです。これなら少しは心配しなくてもいいかもしれません。


「よし、それじゃあ、教室に行くよ」


そう言って舞を引っ張って自分のクラスに向かいます。クラスの黒板には席順が張り出されていたので、二人で見ていると、


「舞、やっと同じクラスになったわね」


「明美じゃん。あんたも5組なのね」


そう言って話しかけてきたのは、『山口明美』という名前で舞と同じ陸上部の女子です。確か面倒見がかなり良いので女子陸上部の部長になったと聞きました。中学は別でしたが、舞とは中学時代から大会等で会うと良く話をして仲が良いと聞いています。


「清水さんもこれからよろしくね~」


そう言って手を振ってくるので、私も「よろしく」と手を振り返します。舞から話を聞いていた通り、かなりフレンドリーなタイプです。その後は二人で陸上部の他の人が何組か話しています。その近くで私も別の友達と同じようにあの子は何組だと話しています。純君も同じサッカー部の男子や仲のいい男子と仲良く話しています。


「そういえばあんた達3人ずっと同じクラスでしょ。どんなクジ運してるのよ」


私が別の友達と話していると二人からそんな会話が聞こえてきました。人気者の二人の周りにはいつの間にかたくさんのクラスメイトが集まり話をしています。


「クジ運って何よ。クラス決めてるの先生たちだから文句あるなら先生たちに言ってよ。それよりもこれから1年間バカップルのイチャイチャに耐えないといけないから覚悟しときなさいよ」


これ絶対私と純君の事を言ってると思ったので、「誰がバカップルよ」と文句を言おうとした所、


「何言ってるのよ、あんた達だってバカップルでしょ。で、仲良くやってるの?」


明美さんがそう言った瞬間、舞の肩がピクリと揺れるのが見えました。すごく嫌な予感がします。


「・・・ちゃった。」


「えっ?何て?」


周りの子も舞が何を言ったか聞こえていないようでしたが、私には聞こえました。黙っておくように約束した事を・・・。その事を口にした舞にビックリして私は固まってしまいました。


「・・・振られちゃった」


「え?・・・噓でしょ。・・・え?え?」


周りのクラスメイトも信じられないようでパニクっています。その中でも目の前で話していた明美さんがかなり動揺していましたが、更に驚いた顔になると、舞の周囲にいる人も驚いた表情になります。私からでは舞の後ろ姿しか見えませんでしたが、舞が今どんな表情をしているか分かりました。


「・・・舞?」


恐る恐る呼びかけるとゆっくり振り返ったその顔は思っていた通り、涙を流してグシャグシャになっていました。

この間の春休み家で舞が泣いているのを見ましたが、本当に久しぶりでした。その時は義兄さんが、舞の好きな人が目の前にいて、喧嘩して泣かせた様子でもなかったのでそのまま慰めるのを義兄さんに任せましたが、今回は違います。


「・・・茜、ごめん・・・無理でした」


涙を流しながら私に謝ると、舞は教室から走って行ってしまいました。


ああ、もう最悪です。絶対ないと思っていた舞から別れた事を言うなんて・・・。しかも何で敬語なんですか。


「純君!みんなに説明お願い!」


そう言って私も舞の後を追って飛び出しました。

純君たち男子も騒ぎに気づいてこちらに注目していましたので、私の声も純君に届いたでしょう。

別れた理由は「義兄さんが全て悪い」事になっているはずですが、舞は絶対「自分が全て悪い」と言う事は分かっていました。だから私と純君は前もって「詳しい事は言えないけど、二人とも悪い。けどどっちも自分が悪いと思ってお互いを庇っている。」と説明する事に決めていたので、すぐに純君がクラスメイトに説明してくれるでしょう。分かっています。一番悪いのはあの二人の優しさに甘えた自分だと言う事は、でもそこで私まで加わると余計にややこしくなります。純君には二人に迷惑かけた事を何度も怒られ、もう反省は終わらせているのですぐに舞を追いかけます。

肝心の舞ですが、さすが陸上部私が廊下に出るともう姿が見えません。しかし幼馴染を舐めないでもらいたい、舞がどこに行くかおおよそ分かっています。


「いい加減、落ち込んだらグランドが見える場所まで行くのやめてよ。追いかけるの疲れるんだよ」


そう文句を言いながら舞の方に歩いていきます。肝心の舞はグラウンドが見える校舎の壁にもたれながらぼーっとグラウンドを見ています。


「茜が落ち込んだ時にトイレに籠るのやめたら考えてあげる。出てくるように説得するのも大変なのよ」


舞はちらりとこちらに目線を送って私に反撃してきます。その目にはもう涙は見えていないです。嫌味を嫌味で返せるぐらいならもう大丈夫でしょう。


「はあ~。それにしても嘘も言えないなんてどれだけ義兄さんの事好きなの。陸上馬鹿って言われていた頃の『楠木舞』が懐かしいね」


「うっ!・・・だって仕方ないでしょ。初めてだから、自分でもコントロールできないのよ」


「分かってるよ。でもあとでみんなにはちゃんと説明しないと心配してるよ」


「う~。言いたくない」


思った通り我儘を言ってきます。すでにみんなには純君が説明していると思うので、舞にも事後報告ですが納得してもらいます。


「舞は義兄さんとの約束破って自分が全て悪いってみんなに説明するつもりでしょ」


「!!・・・・はあ~。本当に何でわかるのよ~!茜は心でも読めるの?」


「フフフ、舞の考えてる事なら余裕だね~」


「ムカつくわね~」


さて、軽く煽って舞も調子を取り戻したようなので話をしましょう。どうせ始業式はもう始まっているので少しぐらい話が長くなってもいいでしょう。


「それで、舞がそう主張すると義兄さんの説明と真逆になるんだけど、どうするの?」


「大丈夫よ、私の方が修一より友達多いから直接説明する人も増えるし、頑張って私が悪いって信じてもらうわ。こういう時はあいつがボッチで良かったと思うわ」


舞はそう言いますが、それを知った義兄さんは舞の人気と自分の人気の無さを利用してくるだろうなと思いましたが、私としてはどちらの主張も信じてくれる人が半々になるぐらいが丁度いいので、敢えて舞には教えません。


「私と純君は『どちらも悪いけどお互いに庇ってる』って説明させてもらうからね」


なるべく軽い口調で言います。舞に今の私の気持ちは悟られてはいけません。


「・・・・え?な、なんでよ!茜!」


そうですね、こう言えば舞は当然怒りますよね。でも私の中ではこれが一番いいと思うので、引くわけにはいけません。


「こういえばみんな困惑して、どちらの主張が本当に正しいか分からなくなるからだよ。それで義兄さんも舞も悪く言われる事は少なくなると思う」


そう言って私は唇を噛んで痛みで感情を殺します。


「茜!あんた本当に怒るわよ!・・・それなら私が浮気したって事にするわ」


「そうすると義兄さんも同じように浮気したって言ってその後は暴力ってどんどん主張が、原因が変わっていくね。でも私と純君は最初からどちらも悪いって所から変わらないからみんな誰を信じてくれると思う?」


喋っていると感情が溢れてきそうです。舞から顔を逸らしながら反論してまた唇を嚙み締めます。


「・・・・」


「・・・・」


「・・・はあ~、何であんたが泣きそうなのよ」


「別に泣きそうじゃない!」


呆れたように舞が言ってくるので睨みつけて反論しますが多分もう誤魔化せないでしょう。これだから幼馴染は困ります。


「さっきから唇噛んで泣きそうなの我慢してるじゃない。分かるわよ幼馴染だから」


さっきの仕返しでしょうか。先ほどまで怒っていたのに今はニヤニヤしながら私を抱きしめて来ました。もう無理です。泣いたら駄目なのに、泣く資格もないのに涙が溢れてきます。


「・・・だって・・・私が一番悪いんだよ。・・・二人は何も悪くないのに・・・私が二人の・・・舞と義兄さんの優しさに甘えて恋人の振りをお願いしたから・・・だから今こうなってる」


「何言ってんのよ、私も茜達の喧嘩を利用したから自業自得よ。この中で全く悪くないのは修一だけよ。それとあの時と逆だけど、この話はこれでおしまい。これからの話をするから早く泣き止んで」


そうは言ってもすぐには泣き止めません。それでは気を紛らわしてもらうためにあの日の事を聞いてみましょう。


「そんなに・・・すぐには無理。・・・舞はあの時すぐに泣き止んだの?・・・好きな人に慰めてもらったんだもんね~」


「うっ!そ、それは、分かったわよ、ちょっと待つわよ!」


舞もやっぱりすぐには泣き止まなかったみたいです。それなら詳しく教えて貰いましょう。


「義兄さん、慰めるの上手かった?」


あまり上手に慰めている姿が想像できませんが、もしかしたらがあるかもしれません。


「全然。へったくそもいい所よ。ワタワタしながら『分からないけど、分かった、ごめん』よ。どういう事よ分かってるの?分かってないの?って感じでしょ。で、最後は『頼むから泣き止んでくれ』よ。最初わざとやってるんだと思ったわ」


すごく想像できてしまいます。分からないながらそれでも一生懸命慰める義兄さんは優しいなと思います。


「フフフ。想像できるね。それでそんなにワタワタしながらも慰めてくれる義兄さんを更に好きになったと」


「クッ!・・・・そうよ!悪い!っていうか茜もう泣き止んでるでしょ。話するわよ!」


舞からの惚気を聞いて気が紛れたので真面目な話をしましょう。


「最初の通り舞は自分が悪いって説明しておいて、特に明美さんには十分すぎるぐらいね。あの人と仲いいんでしょ?他の人以上に動揺してたから」


「はあ~もう分かったわよ。但し私も全力で私が悪いって言うからね!後から文句言ってこないでよ!」


まあ、舞の全力と義兄さんの本気、どっちかに偏らないように私と純君は舵を切るだけです。


「あとこんな状況だから義兄さんにアプローチしてきた子がいた時の連絡は純君の友達に任せる事にするね」


「・・・分かったわ」


その後しばらく待ち体育館で行われていた始業式の帰りの列に紛れ込み教室に戻りました。純君の最初のフォローでクラスメイトの大半はどちらが悪いか決めかねている様子でしたが、舞と仲のいい数人、主に陸上部は義兄さんが悪いと決めつけている様子でした。困ったな~。


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