22話 方向性の確認
「で?何でこうなったの?」
舞から結果だけを聴いて今から取り調べを行います。
「えっと。やっぱり告白するのは怖くて・・・でも急がないと学校始まったら修一がモテまくると思ったから、それなら恋人の振りを続ければ誰も近づいてこないと考えたのよ」
う~ん。アピールする人が出てくるかもとは言いましたがモテまくるなんて一言も言ってません。取り合えず言いたい事は後にしてまずは全てを聞き出します。
「それで?」
「う、う。茜怒ってるわよね?」
「怒るかどうかは最後まで聞いてからにするね」
この時点で怒る事は決定していますが、取り合えず今は事情を把握する事が先です。
「そう言って怒らなかった事ないじゃないの!」
電話口で文句を言ってきます。さすが幼馴染よくわかっています。ですが、今は、
「舞?それで?」
幼馴染からの文句は無視して話を進めます。
「う~。それでいくつか恋人の振りを続けたい理由を挙げてみたんだけど全部却下されて、挙句の果てに『これから告白してくる人にいい人がいるかも』なんて言われたから頭に来て怒って帰っちゃった」
はあ~。頭が痛いですが今からお説教です。
「舞、今日は学校が始まる前に唯一義兄さんを家に引き止めておける日だったんだよ。分かってる?それとも学校始まるまでのあと2日で告白できる?」
「・・・・多分無理です」
敬語で私に答えてきましたが、聞く前から分かっています。まあ、無理ですね。舞が異性を好きになったのは初めてですが、想像以上に恋愛事にビビりな事が分かってしまいました。普段ははっきりと物を言う性格なのに・・・。今日だって、義兄さんの部屋に行った時、食事中私が前置きして長く席を外した時、帰りに送って貰った時等告白するタイミングはありました・・・というか私が作りましたが全部失敗しました。
「この間の公園の件は、義兄さんは気にしない事にした様子だったからそこは前進したって言っていいよ」
「えへへ~。ありがとう。もっと褒めて~」
・・・カチンときました。私の親友は今日1歩進んで数歩下がった事に気づいていないようです。
「今日の行動でマイナスになってるんだけど、分かってる?」
「・・・・え?噓?」
本当に分かっていないみたいです。何で友達の事はよく理解して気が利くのに義兄さんに対してだけポンコツになるのか不思議です。
「まず恋人の振りを提案した事、『振り』は結局『振り』にしかならないよ。特に義兄さんの場合はアピールしても全部『振り』だからとしか考えないよ!更に最後怒って帰っちゃた事。義兄さん何で舞が怒ったか絶対分かってないよ。今日義兄さんの前で泣いてたし、舞の事面倒くさい女って思われちゃったかもね」
まあ、義兄さんは絶対そんな風に思っていませんが、軽く脅しておきます。
「ど、どど、どうしよう・・茜~ごめん。どうしたらいいかわかんないよ。助けてよ~、修一やっぱり怒ってるかな?」
情けない声で助けを求めてくる私の親友。親友の頼みです。私もだいぶ助けてもらったので当然助けます。義兄さんはもしかしたら、少し怒ってるかもしれないですね。あとで少し探りを入れてみましょう。
「はあ~。修一から告白してきてくれないかな~。そしたら100%成功するんだけどな~」
舞のそんなボヤキを聞きながら義兄さんにどう探りを入れるか考えます。
「やっぱり直接聞くしかないかな?純君」
私は今、舞以外に全ての事情を知っている彼氏に相談しています。
「そうだな。橘って茜の話聞いた限りだと変化球に気づかないタイプじゃないか。やっぱり直球で聞いた方がいい気がする」
「そっか。そうだね。ぼかせる所はぼかしてうまい具合に直接聞いてみる。ありがとう。・・・・それで学校始まった時の対策はどうしたらいいかな?何か良い考え浮かんだ?」
今現在、義兄さんが舞に対して怒っているかどうかの確認は方向性が決まりました。が、もう一つの問題、舞と義兄さんが別れたと知られた時に義兄さんが絶対に悪く言われる問題です。そうならないようにするのが更に難問で困っています。
「う~ん。一つ思い浮かんだけど、橘がいい返事をしてくれないかもしれないな~」
私は全然いい考えが浮かびませんが、純君は思い浮かんだみたいです。
「聞かせて。それ聞いたら他にいい案が思い浮かぶかもしれないから」
とりあえず時間もないので、聞いてから考えてみる事にしました。
「別れた事を黙っていてもらうってのはどうかな?って考えたんだけどそれならまだしばらく時間は稼げるかなって・・・」
「・・・・」
「・・・・茜?」
純君の言った事をしばらく考えます。それなら舞はふたつ返事だけど・・義兄さんが頷いてくれるかが問題だなあ・・・何か良い理由が・・・・思いつかないな~。
純君が心配そうに聞いてきたので、私の考えを伝えます。
「舞は大丈夫だけど、純君のいう通り義兄さんがなあ~何か良い理由があればいいんだけど・・・義兄さん舞に迷惑かけてるって本気で思ってるから黙っててってだけだと納得してくれないな~って思って」
「そうだよな~。俺もそこが問題だと思ってるんだよ。何か良い理由ないかな~」
しばらく二人で考えても答えが出ないです。
「それなら、橘がどういう考えでいるのかまずは聞いてみるってのはどうだ?」
純君が言うには義兄さんが自分からバラしていくのかそれとも聞かれるまでは言わないのかそれを確認してから考えようという事でした。
コンコン
純君と話して今後の方向性が決まったので、義兄さんの部屋に来て、扉をノックします。
すぐに義兄さんが顔を出してくれます。
「どうした?」
「少し話したい事があります、今いいですか?」
義兄さんはいつも通り部屋に入れてくれます。部屋に入るといつもは閉じているパソコンが開いています。珍しく勉強ではなくて何か調べ物をしているようです。気にはなりましたが、義兄さんはすぐにパソコンをパタンと閉じた為、何を調べていたかわかりません。
「珍しいですね?何か調べものですか?」
「・・・ああ、ちょっとな」
・・・すごく気になりますが、先に本題を済ませてからです。
「義兄さん、今日は舞が済みませんでした。詳しくは聞いてないですが、舞が送って貰ったお礼も言わずに怒って帰ったそうですね」
嘘です。舞のその時の心情まで聞いているので一から十まで知っています。ただそれを話すと義兄さんから色々聞かれそうで、私が上手い事返せない気がしたので、敢えてぼかします。
「・・ああ、その事か。別に茜が謝る事でもないだろ。怒って帰ったけど、お礼はその前にちゃんと言ってたから」
苦笑いしながら、義兄さんがいつもの調子で話してきます。
・・・これは怒ってないよね・・・もう少し探りを入れた方が・・・いや、ここは純君のいう通り直球で聞きましょう。
「・・・あの、義兄さん、舞の事・・・怒ってます?」
義兄さんはキョトンとした顔で私を見てきます。何でそんな事を聞かれたのか分かっていないようです。この様子なら大丈夫かな。
「いや、何も怒ってないぞ。むしろ舞に変な事言って怒らせたから反省してるんだが。」
う~ん?何か二人の意見が違ってる?いや義兄さんからしたら舞を怒らせたと思ってるのでしょう。でもこれで義兄さんが舞に怒っていないのは確定です。いや、もしかしたら怒っているかもしれませんが、こればっかりはどうしようもないです。まあ、義兄さんは腹芸なんて器用な事できないって紅葉ちゃんも言ってたので大丈夫だと思います。
「・・・人付き合いって難しいな」
何か義兄さんがオジサンみたいな事を言い出しました。気まずいので次の話題に移ります。
「義兄さんは学校始まったら舞と別れたって事どうするんですか?」
「どうするとは?」
「自分から積極的にバラしていくのか、それとも聞かれるまで黙っておくのかですが」
さて、どうするつもりでしょう。前者ならすぐにでも対策を立てなければいけません。後者なら少しは時間が稼げそうです。
「考えたけど、聞かれたら答えるよ。まあボッチの俺がいきなり知らない奴に話しかけて『別れた』なんて話するのはおかしいだろうし、そんな事したら舞が変な噂されそうだしな」
その答えに心の中で思わずガッツポーズをします。よし!これで少しは時間が稼げる。その間に何とか義兄さんが悪く言われないような言い訳を考えるとして・・・舞にも黙っていてもらうように伝えて・・・問題はいつ誰が義兄さんに聞いてくるか分からないって事なんですよね。まあ、校内でも今では有名カップルになっているので、別れた噂はすぐに広まるでしょう。その前に対策を考えておけば大丈夫です。
「そうですか。分かりました。それでは邪魔してすみませんでした。・・・あの・・・良ければ探し物手伝いましょうか?」
お礼を言って部屋を出る前にPCを指差して聞いてみます。
「い、いや、大丈夫だ。大体当たりはつけたから」
ふむ・・気にはなりますが、この調子では答えてもらえそうにありません。仕方がないので、お礼を言って部屋をでます。自分の部屋の扉を開けた所で、義兄さんから声を掛けられます。
「な、なあ、舞の誕生日っていつか分かるか?」
若干照れた様子で聞いてくる義兄さんを見て何を調べていたか察しがつきました。うん、怒ってる相手の誕生日プレゼントなんて調べないですね。これなら絶対怒ってないって言えます。その事を伝えた時の親友の笑顔が浮かび私も思わず頬が緩みます。
「7/7七夕ですよ。覚えやすいですよね?」
「そうか、ありがとう」
義兄さんのお礼を背中に部屋に戻ります。




