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2話 謝罪と説明

医者になる


母さんが死んだとき俺はそう決めて中学になってからほぼ全ての時間を勉強に費やしてきた。だから色々頑張っている。親父は気にするなと言ってたけど、医者になるには学費もかなりかかると聞いたので、万が一の為に高校に入ってから新聞配達のバイトも始めたし、奨学金も借りてお金を貯めている。睡眠時間を削って勉強をやっているので、睡眠時間確保の為に休み時間は常に寝ている。それが理由で「寝太郎」なんて渾名を付けられても全く気にしてはいなかった。


・・・が、こちらの事情も知らずにいきなり上から目線で仲良くしてあげると言われるとさすがにムカついてしまった。こいつら何様のつもりだ?


「・・・仲良くしてあげる?・・・なあ?・・お前ら何か勘違いしていないか?」


自分でできる限りの低い声、冷たい表情で二人に話しかける。


「「・・・」」


いきなりの俺からのきつい口調の問いかけに二人は驚いて絶句している。


「なあ?俺は別にボッチだからって自分で可哀そうとか思ってないし、目標に向かってやる事やってる結果、ボッチなだけだから別に後悔した事もない。だから今の生活を崩してまで友達とか欲しくねえよ。まあそういう事だからボッチの奴が可哀そうだと思ったなら俺以外の奴と仲良くしろ!」


「・・違っ」


「・・・」


「そういう慈善活動的なやつは俺は別に必要としてないから。お前らと仲良くする気はない。じゃあ」


暗い顔をしている二人を前に話を切り上げて校門に向かって歩き出す。


あームカつくなー。

家に着いた直後も胸のムカつきは収まらかったが、晩飯の用意や勉強等日常の事をやっているうちに苛立ちは収まってくれた。





翌日昨日の事はすっかり忘れて、いつも通りの朝を過ごして登校し、教室の近くまで来たときに、昨日の二人が教室前に立ってきょろきょろ周りを見渡しながら何か探しているのを見つけてしまった。


あー朝から嫌な奴らみてしまった。昨日の事思い出したじゃねーか。・・あー、また苛ついてきた。とりあえず関わらないように無視するのがいいな。いや待て。俺じゃなくて俺のクラスの奴に用事かも知れないな。そうだよ、昨日あんだけ拒絶したんだから俺に用とかあるわけないな。


とか考えて教室に向かうと向こうは俺に気づいたみたいでとビクリと一回震えてからこっちを見てくる。


うわー。めっちゃこっち見てる。やっぱり俺に用だよな・・。絡まれたくね~。


俺はもう関わりたくないので気づいてませんよ風を装い教室のドアを素早く通ろうとした。


・・・瞬間、腕を掴まれた。


掴まれた瞬間、昨日の事を思い出し、自分でも自覚できるぐらい冷たい表情になっていくのが分かった。そして俺の腕を掴んできたキレ女の方を振り向いて文句を言おうと思ったが・・


「昨日はごめんなさい!」


いきなりキレ女が謝罪してきた。後ろの方ではもう一人の女子・・・名前確か清水だっけ?・・・も一緒に頭を下げていた。

俺はてっきりまた切れられるかと思っていたので少し毒気を抜かれたが、いまだに昨日の事が心に引っ掛かっていたので冷たい対応になる。


「何?」


「だから昨日の事、誤解させる言い方だったわ。ごめんなさい」


「はあーー。もういい。気にしないから。だからもう俺の事はほっといてくれ」


キレ女の謝罪で俺は昨日のことは、もうどうでもいいやと思いでかい溜息をついた後、投げやりに言葉を返す。


「「ダメよ(です)」」


「何でだよ!」


二人してハモって否定された為、思わずツッコんでしまった。


「いや、だから何で俺なんだ?昨日も言ったけど他の奴じゃ駄目なのか?」


「・・はい。橘君じゃないと駄目なんです」


見るとキレ女じゃなくてビクビクしながら清水が答える。その声は細く震えているので、昨日の事を引きづっているんだろう。


「だから何で?理由は?」


「・・・えーっと・・・、ここではちょっと」


清水が周囲を見ながらそう言ってきたので、俺も周囲を見回すとかなりの数の視線を集めている事に気づく。


「あー。確かに・・・。じゃあ今日の放課後昨日の場所でいいか?」


コクコクと清水が頷きながら


「はい、ありがとうございます!放課後昨日の場所ですね。・・・あの・・・・ちゃんと来て下さいね・・橘源一さんにも関係ある話ですから」


「!!?」


いきなり親父の名前が出てきたので吃驚している内に二人は自分のクラスに戻っていった。





教室に入ると今まで喋った事もないクラスメイト数人に捕まった。


「おい。橘。さっきの何?」


「清水さんと楠木さん学年でも有名な美人と知り合いなの?」


「どんな関係だよ?」


「昨日の事って何だよ?」


そういう質問に俺は「知らん」、「俺が聞きたい」と適当に返事を返しておいた。


休憩時間はクラスメイトが質問にくる前にいつものように寝てやり過ごし、昼休みはさっさとクラスから離れて体育館裏に避難したので、そこまで絡まれる事もなかった。





放課後。

昨日と同じ場所に向かうと二人は先に来て俺を待っていた。


「ちゃんと来たわね」


俺が二人の場所に着くとキレ女が開口一番言ってくる。


何なのこいつ。何で上から目線なの?


若干こめかみが引くついて、眉間に皺が寄ってきた。


「もう、舞!今日は私から話するって言ったでしょ。・・・ううんごめん。ついてきてもらってるのに。・・・一緒にいてくれるとやっぱり心強いから」


二人のやり取りをみて昨日から感じていたが、俺に用があるのはこの清水でキレ女は付き添いらしい。だからか今日キレ女は昨日と清水とで立ち位置が逆で一歩下がった所に立っている。


「昨日はごめんなさい」


最初に清水は俺に向かって謝罪してきた。


「いや、もうそれはいいから、聞かせてくれよ、親父の名前まで出してきた理由を」


「・・・それはですね・・・私の・・・母が「ちょっと!待てーーーー!!!」


向こうからサッカー部の恰好をした男がこちらに叫びながら走って向かってくる。


「純君・・。」


「小笠原かあ。面倒くさいのが来ちゃったな」


清水は嬉しそうだけど若干困った感じで、キレ女は心底面倒くさい感じの反応をする。


「お前、茜に何の用だ!」


清水をかばうようにしながら俺に向かって問いかけてきたこの男、かなりのイケメンである。


「いや、むしろ用があるのはそっちで俺の方が呼ばれたんだが」


「嘘つくな!お前が茜に告白した事は知ってる!けどな、茜は俺と付き合ってるから、いい加減あきらめろ」


「おい、ちょっと待て!何で俺が告ってる事になってるんだ?」


「はあ?お前が昨日茜を呼び出して告って振られたけど、今日の朝にまた呼び出して告白するって話だぞ」


「ふざけんな!誰がそんな出鱈目を!告る告らないとか全く話になかったのに何でそういう話になってるんだよ!」


「えっ?違うのか?」


「ちげーよ!そもそも何で俺が呼び出した事になってるんだよ!逆だよ!逆!こっちは呼び出されたんだよ!」


「純君。ちょっとこっち来て」


清水の彼氏と言い合っていると清水が彼氏を引っ張って離れていく。

離れた二人は「だから・・」、「でも・・・」、「大丈夫だから・・・」等と言い合っている。

一人にされた俺は詳しい話を聞きたい為、キレ女に手招きをする。


「何よ!」


こっちにやって来た途端、不機嫌そうな一言を言ってきたキレ女に対して俺は疑問を投げた。

「あいつ誰?」


「あいつは小笠原純。サッカー部に入っていて、中学から私たちの知り合いで、茜の彼氏よ。だから茜の事狙っても無駄だから」


キレ女の返答に俺はげんなりする。

昨日からのやり取りで何故こんな一言が出てくるのが不思議でならない。何で俺が好意を持つと考えられるのか。


「なあ?昨日からの件で、俺の中のお前らの評価マイナスなんだけど・・・狙うとか以前の問題だよな。むしろ何でそういう事を俺にいえるのか不思議なんだけど。自意識過剰じゃないか?」


「・・・・っ!」


俺が嫌味を言うとキレ女は苦虫を嚙み潰したような顔になる。

これ以上嫌味を言ってもこいつからは文句しか出ないだろうなと思い話題を切り替える。


「ところであれいつ終わるんだ?」


俺は両手の指を絡めて話し合いをしているのかイチャついているのか分からない二人を指さす。

「ごめん、それは流石に先に謝っておく!ただ、もうちょっと待って。小笠原って心配性な所があるから説得に時間がかかるの。あいつ中学から茜が好きで、何回も振られ続けたけど、2年になってようやくOK貰えたから茜の事すごく大事にしてるの」


「ええっ!中学から・・・何回も・・。どんだけ好きなんだよ」


その執念にさすがにどん引きする。


「まあ、他にも告られるぐらいあの子可愛いから」


そう言われると、俺の心象は最悪だが、まあ確かに見た目は可愛いな。さらっとしたストレートの長い黒髪で背は小さく、美人系というより可愛い系の見た目なので、年下のように見える。しかし、制服の上からでもはっきる分かる程に胸がでかい。で、隣に立っているキレ女を見ると、こっちはショートボブで若干茶髪っぽい。背は清水より高く、顔立ちはキレイ系だろう。どちらもタイプは違うが負けず劣らず可愛い。残念ながら、キレ女の胸は制服の上からでは盛り上がりは確認できない。


「何よ?」


こっちを見ている事に気づいたキレ女が相変わらずキレた感じで問いかけてくる。


「別に・・。・・・なあ・・俺にあいつらのイチャイチャっぷりを見せて何がしたいの」


「違うわよ!要件は別よ」


「はあー。」


「何よ、言いたい事があるならはっきり言いなさいよ」


「もう帰っていいか?」


「ダメ」


なら聞くなよとか思いながらいると、ようやく恋人同士の話し合いが終わったのか、小笠原がこっちをちらちら見ながらもグラウンドの方に向かって離れていく。


「すみません。お待たせしました」


「待ちくたびれた」


「・・本当にすみません」


「言い方!もう女の子にはもうちょっと優しくしなさいよ」


俺の対応に本当に申し訳なさそうな態度をする清水、逆に相変わらずキレ気味の態度をするキレ女。ここで言い返しても長くなりそうなので、話を進める事にする。


「で?要件は?」


「・・・あのですね・・・驚かないで欲しいんですけど・・・私の・・母親と橘君のお父さんがですね・・・お付き合いしているらしいんです!」


「・・・・・・はぁっ!?」


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