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19話 恋人の振り終了

着いた場所はまあ、学生御用達のマック。各自それぞれ注文して席に着いて食べ始める。

映画の感想を言いながら食べている途中で隣に座る楠木からクイクイと服を引っ張られる。見ると口を開けてこっちを見ているので、俺の手に持っているテリヤキバーガーを口にもっていくと楠木はパクリと一口食べる。


「うん。やっぱり定番は安心した味よね。でも私の新作も美味しいわよ。修一、ほら食べてみて」


そう言って新作のバーガーを俺の方に差し出してくるので、俺も一口食べる。


「・・・おっ。これ美味いな。こっち頼んでも良かったな」


「でしょ。でしょ。修一ってあんまり新作とか手をださないタイプでしょ?たまには冒険した方がいいわよ」


「うるせー。俺は安定志向なんだよ」


「だから、今みたいに美味しい新作に気づかないのよ。」


「くっ・・」


こいつには相変わらず口で勝てない。いずれどこかで言い負かしたいが、今の所どんな話題でも勝てる気がしない。

ふと見ると、小笠原も茜もポカンとした顔でこっちを見ている。


あれ?この光景今日どこかで見たな?どこだっけ?


「あんた達、どうしたの?」


二人の様子に気づいた楠木が声を掛ける。

声を掛けられた二人は顔を合わせると、ニヤニヤして俺たちに話してくる。


「ずいぶん、仲がいいですね。まだ付き合って1ヶ月ぐらいですよね?」


作戦を知っている茜が何故かおかしな質問をしてくる。


「自然過ぎて最初俺は気づかなかった。茜は?」


「私も最初普通にスルーしてからあれ?ってなったよ」


二人で話しているが何の話をしているのか分からない。


「?」


楠木の方を見ると、楠木の頭にも?マークが浮かんでいる顔をしている。


「あんた達、何の事言ってるのよ?」


楠木が質問すると、二人はニヤニヤして言って来た。


「いや、普通に俺たちの前でも食べさせ合いっこしてるなって思って」


「・・・・」


しまった!気を付けるって決めたばっかりなのに、何やってんだ。


恥ずかしくて二人の顔が見れず俯いてしまう。


「そう。別に普通よ。いつもやってるから」


楠木が反論するが、


いやいつもはやってねえだろ!・・・いややってる?っていうか楠木平気そうだな。


そう思って楠木に目を向けると、顔が真っ赤だった。


顔真っ赤じゃねえか。平気そうなふりしてもバレバレだ。


前の二人はそんな俺たちを見てニヤニヤしている。

しばらく二人からからかわれると、


「そういうそっちはやらないの?」


そうしていると楠木が反撃にでたので、俺は心の中で応援する。


「え?何を?」


「食べさせ合いっこに決まってるでしょ!あれ?私達より付き合ってる期間が長いのにまさかできないの?」


「いや、やらないから、俺たち外ではそういう事しないから」


小笠原は冷静に対処しているが、隣の茜は頬を膨らませて顔が赤くなっている。幼馴染だけあって茜の煽り方が上手い。・・・いや茜が単純なのか。


「はい、純君!」


そう言って顔を真っ赤にした茜は手に持ったバーガーを小笠原に差し出す。


「ええ?茜?こういう事恥ずかしいって「はい!」


小笠原の言葉を遮り更にバーガーを近づける。小笠原は苦笑いしながら茜のバーガーを口にする。食べ終わると小笠原は自分のを茜に食べさせる。


「ははっ。さすがに恥ずかしいな」


そういうが小笠原の表情は余裕そうだ。さすがイケメン慣れたもんだ。一方その彼女の茜は顔を真っ赤にして、それを楠木がからかっている。


「さて、食べ終わったから次は買い物するわよ」


「こっちまで出てきたの久しぶりだから、色々見たいね」


今日のこの後のプランはやっぱり決まっているみたいだ。

そうして色々な店に入るが、楠木も茜もあれがいい、これがいいと楽しそうに話しているが結局何も買わずに店から出てくる。小笠原も二人から色々聞かれてそれに答える様子を見ながら、あいつよく答えられるなとか感心して見ていた。

俺は楠木に何回か「どっちが似合う?」と聞かれたが良くわからなかったので、「どっちも似合う」と返していると「あんたそればっかりじゃない!せめてどっちが良いかだけは答えて!」と怒られた。そうして何軒か回ると女子二人は一着ずつ服を買い満足した様子だった。店を出て駅方向に歩き始めたので、次は駅の近くで何かしてから帰るんだろうかと思っていた。





駅までくるといきなり茜が深呼吸を始めたので、これから茜が何をしようとしているかすぐに分かった。隣で手を繋いでいる楠木も真剣な顔をしているので、分かっているようだ。

小笠原は茜が何故深呼吸をしているか分かっていないのでキョトンとした顔をしている。そして、茜が覚悟を決めたようで、小笠原に話しかける。


「純君、これから大事な話があります。先に断っておきますが、別れ話ではありません。でも、もしかしたら、私は・・・振られるかもしれません」


最後声が震えていた。大丈夫だと思っていてもやっぱり怖いのだろう。


「え?茜?何の話?振られる?」


一人だけ何もわかっていない小笠原はさすがに混乱している。まあ、俺も同じ立場なら同じ感じになるよなとか考えていると、茜が俺と楠木の方を向く。


「舞、義兄さん、今日は有難うございました。義兄さんすみませんが、今日は夕飯お願いしてもいいですか?あとこの荷物も」


小笠原の前で俺を「義兄さん」と呼んだのでこれでもう後戻りはできない。茜は本当に覚悟を決めたようだ。


「分かった。夕飯の事は心配するな。荷物も大丈夫だ」


そう言って茜から今日買った服を預かる。


「え?橘?兄さん?は?」


混乱している小笠原を横に茜は楠木をジッと見つめている。暫く二人で顔を見合わせていたが、楠木がコクリと頷くと茜は小笠原の方を向いた。


「じゃあ、純君行こうか」


そう言っていまだに困惑している小笠原の手を引いて人込みの中に消えていった。


「じゃあ、コーヒーでも飲んでから帰るか」


二人が見えなくなってから楠木に声を掛ける。


「・・・・うん」


茜が心配なのだろう、あまり元気がない楠木の手を引き近くにあったコーヒーショップに入る。

元気のない楠木を先に席に着かせて、レジに並びコーヒーを二つ持って楠木の所まで戻る。

相変わらず元気のない楠木の前にコーヒーを置くと、財布を取り出そうとするので、手で待ったをかける。


「いいよ、奢るよ」


「でも」


「良いから気にすんなって。それより茜達大丈夫かな?」


そう言うと、財布を取り出すのをやめたので素直に奢らせてくれるみたいだ。


「・・・前も言ったけど、多分大丈夫よ。修一も今日の小笠原の様子見て分かったでしょ」


楠木のいう通り、小笠原は茜をとても大事にしているのが今日だけでも分かった。だから俺もそこまで心配していない。まあ万が一の時は俺が小笠原にしっかり話して何とかするつもりだ。それよりもさっきから元気のない楠木が気になる。茜達は大丈夫とは言ったものの心配なのだろうが、少し心配しすぎのような気がするが。


「その割には元気ないぞ。心配しすぎじゃないのか?」


「・・・そんな事ないわよ。・・・・苦っ」


俺の心配を否定してコーヒーを口にすると、眉間に皺が寄る。


「あっ。悪い。俺と同じブラックのままだった。砂糖とミルク持ってくるわ」


「いい。大丈夫、ブラックでも平気だから」


平気だと言ってコーヒーを口にするが、再び眉間に皺が寄る。


全然平気に見えないんだが、まあいいか・・・さて、こっちもきちんとお礼を言わないとな


「えっと、今まで茜の為に俺なんかと恋人の振りをしてくれてありがとうな。茜も小笠原の前で俺を「義兄さん」って呼んだから本当の事を言うと思う。まあ、もし今日茜が言わなくても学校始まったら俺から小笠原にちゃんと説明する。だから今日で恋人の振りは終わって大丈夫だ。本当にありがとう」


お礼を言って楠木に頭を下げる。

しばらく頭を下げた後、顔を上げて楠木を見ると、俺を睨みつけている。やっぱり今まで茜の為に我慢していたようだ。まあ、嫌われても仕方がないが、最後に別れた理由だけは二人の間で決めとかないといけない。そう言うわけで楠木に話しかけようとした所、


ゴクッゴクッ


何故か楠木はコーヒーを一気飲みした。さっきの様子からブラックは飲みなれていないようだったので大丈夫なのだろうか。


「・・・く~っ。苦~」


案の定、飲み終わると顔をしかめ、その目には少し涙が浮かんでいる。


「おい、大丈夫か?無理して飲まなくても。」


「ふう~。無理してないわ。大丈夫よ」


明らかに大丈夫じゃないが、まあ本人が言ってるんだしこれ以上は何も言わない事にして、それよりも本題を話さないといけない。


「それでだ、別れた理由だけは決めとかないといけないだろ。俺が浮気したってのが一番そっちに被害が少なくてすむからそれでいいよな?」


俺が前から考えていた楠木に一番被害が少ない理由を提案してみる。これなら俺が振られたのも周りが納得するし、楠木は同情されるだろう。


「そんなの絶対駄目よ!修一が周りから酷い人だと思われるじゃない!」


「いや、別に俺の事はいいよ。ボッチだし、周りの評価なんて気にしないし」


「駄目!絶対ダメ!」


良く分からんが浮気が理由なのは断固反対される。


「じゃあ俺がDV野郎だったってのは?」


それならと思い、もう一つ考えていた理由を提案してみる。

隣の人がビックリした顔をしているが、気にしないようにしよう。


「それも駄目に決まってるじゃない!なんで修一が悪い事になってるのよ!」


「いや、最初に決めただろ。俺が全部悪い事にするって」


「嫌!」


今のやり取りで楠木が反対する理由は俺だけ悪者にはしたくないからだと分かった。まあ良い奴なのは分かっていたが、さすがに俺もここは引けない。だが、考えていた浮気とDVの理由を反対されると思っていなかったので、すぐに良い考えは思い浮かばない。


「そっちは何か良い案ないのか?」


取り合えず何も思い浮かばないので楠木に話を振ってみる。


「・・・・私が振られたってのは?」


「アホか。俺が舞を振るとかって周りから絶対信じてもらえないぞ。舞はもう少し自分の容姿が人より優れている事を自覚した方がいいぞ。」


「それは修一も同じでしょ!あんたももう少し自覚した方がいいわよ!」


「ああ、はいはい、ありがと」


この状況でお世辞を言われても嬉しくないので、適当に流す。

楠木は膨れっ面で俺を睨みつけているが、何か閃いたのか顔を輝かせる。


「・・・それじゃあ、二人が納得できる別れた理由が見つかるまでもうちょっとこの関係を続けるってのは?」


「それはない。これ以上お前に迷惑かけたくない」


楠木の提案を即却下する。当たり前だが、茜の問題が解決しただろう今なら俺の中ではこれ以上楠木に迷惑を掛けないってのが最優先事項になっている。だから即却下したのだが何故か悲しそうな顔になる。


「はあ~。取り合えず、『二人の事だから詳しくは言えないけど、俺が全面的に悪い』って事にするけどいいよな?」


さすがにこれ以上は妥協できないので、何か言おうとする楠木を手で制する。


「これで納得してくれないなら、やっぱり俺の浮気かDVって事にするぞ」


そう軽く脅すと更に何か言おうとしたが、結局何も言わず苦々しい顔をして頷いてくれた。


「ふう。それじゃあ帰るか」


そう言って残ったコーヒーを一気に飲み干して席を立つ。店を出た所で、何故か楠木が手を繋いでくる。いつもの習慣になったのだろうか。


「おい!もう恋人の振りしなくてもいいから手を繋がなくても大丈夫だぞ!」


俺が注意するが楠木は首を振って俺に囁いてくる。


「今日までは彼氏の振りしてくれるんでしょ。だったら私の好きにさせて!」


そう言われると何か理由があるのかと思い何も言わずに楠木のやりたいようにさせる。

そうして駐輪場まで歩いてバイクで楠木の家の近くの公園に向かった。帰る途中俺の腰に回された腕に時々力が入ったので、怖いのかなと思いその度にスピードを落とし安全運転を心掛けた。





「~♪~♪」


私は今ご機嫌で家路についています。不安がなかったと言えばウソになりますが、あの後、近くの喫茶店で正直に全てを純君に話しました。話を聞き終えた純君は私にデコピンをして、『もう少し俺を信じてくれ』と言ってくれました。嘘をついた事や純君を信じ切れなかった事は本当に少しだけ文句を言われました。但し舞と義兄さんに迷惑をかけた事は滅茶苦茶怒られました。まあそこは覚悟していましたが、想像以上に怒られました。ですが許して貰えて気持ちも晴れて嬉しいです。

テンション高めで帰るとすぐに気を引き締め、リビングに向かいます。しかしすでに準備が終わったみたいで、義兄さんはいませんでしたが、台所をチラリと覗くと今日の夕飯は肉じゃがと豚汁のようでした。ここで私の好物を何も言わずに準備している義兄さんは本当に優しいです。2階に上がり義兄さんの部屋をノックすると、すぐに義兄さんが顔を出したので、部屋に入れてもらい報告をします。


「義兄さん。ありがとうございます!純君に全て話しました。舞や義兄さんが言う通り大丈夫でした!少し怒られましたが」


「そうか。良かったな。で?どうする学校でこれから?俺としては変に周りから言われたくないから今まで通りがいいんだけど」


私としても純君だけが本当の事を知ってくれていればいいので、義兄さんが一番望むようにしたいです。


「フフフ。義兄さん本当は学校で私と兄妹になったと知られると色々な人から話しかけられそうで面倒って思ってます?」


最近何となく義兄さんの考えが分かるようになってきたので多分今こう考えているんだろうなと思い口にすると頭を掻いて照れます。


「ああ、そうだよ。茜のいう通りだよ。あんまり人から話しかけられると俺の睡眠時間が減るから嫌なんだよ。あっ!小笠原にもこの事言っといてくれよ。あいつ本当の事知ってるから無理にでも俺と話してきそうな気がするからな。」


「良く分かりましたね。純君『橘ともっと仲良くしないと』とか張り切ってましたよ。まあ義兄さんが嫌なら純君には言っておきますね」


義兄さんは『助かる』と言って、頬を掻きます。・・・さて、ここから本題に入ります。


「それで義兄さん、舞とはどうなりましたか?」


そう尋ねると義兄さんは一瞬ビクッとしましたがすぐに何事もなかったように話してきます。


「ああ、あいつにはあの後、お礼を言って恋人の振りは終わりで良いって言ったよ。茜は小笠原の前で俺を「義兄さん」って呼んだだろ?だから本当の事を絶対言うと思ったから、茜と別れてからすぐにな」


う~ん。違います。私が聞きたいのはその後の事です。舞はちゃんと告白できたのでしょうか・・・。義兄さんが話を続けるのを待ちます。


「・・・・・」


「・・・・・」


「茜?」


無言がしばらく続くと義兄さんが不思議そうに私に声を掛けてきます。


あれ~?舞どうしたんだろ?ちゃんと伝えたのかな?・・・まさか!失敗した?


「・・・それで、義兄さんその後は?」


「そ、そ、その後?いや、な、な、何もないぞ。うん!なかった!」


義兄さん動揺しすぎです。確実に何かありました。いいえ、何かじゃなくて告白がですね。告白を断ったのか付き合う事にしたのか結果を聞きたいですが、義兄さんから聞くのは無理そうなので、親友に直接聞く事にしましょう。


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