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16話 疑惑が確信へ

月曜日

「おはよう、茜」


「あっ。純君!おはよう」


駅から学校まで歩いていると後ろから純君が追い付いてきました。

挨拶をしてしばらく二人で他愛ない話をしていると、昨日舞から教えて貰った作戦の事を純君に伝えないといけない事を思い出しました。


「そういえば、昨日舞達初デートしたんだって。夜に舞から連絡が来て惚気られたよ」


そういうと純君は苦笑いします。


「あいつもようやく彼氏持ちだもんな。しかし橘ってすごいな。あの陸上一筋の楠木を落とすなんて中学の奴らに言っても絶対信じてもらえないだろ」


「ふふふ、そうだね。特に男子は信じてくれないだろうね」


「橘のどこが良かったんだろ?俺が聞いた限りだといつも寝てて友達もいない声もほとんど聞いた事がない変わった奴だって話だけど。楠木って寝てる奴が好きなのかな?」


そんな訳ありません。さすがに親友が『寝てる人が好き』とか言ってきたら、軽くお説教です。実際は私の為に付き合ってる振りをしてくれているだけなので、どこが好みだとかは答えられません。


「そんな事ないと思うけど・・・まあ人の趣味は人それぞれ、私も何度振っても諦めてくれない人を好きになっちゃたし」


自分で言ってて恥ずかしくなってきました。隣の純君をチラリと見ると純君も顔を赤くしています。


「それでね、舞がお揃いのキーホルダー買って貰ったって自慢してきたんだ。私達と同じだね」


そう言って私のカバンに付いているパンダのキーホルダーを指差します。


「ああ、そうだな」


純君は私から目線を逸らし頬を掻いています。この間、舞から私達の初デートの裏話を聞いたので少し意地悪で言ってみました。


二人で歩いて教室まで行くと、教室の前で純君は友達に捕まります。


「朝っぱらから仲いいねえ」


「うるせ~。だったらお前も彼女作れ」


「作りたくてもできねえんだよ!」


そうこうしている内に人気者の純君は男子に囲まれたので、先に教室に入る事にします。


ガラガラ


教室のドアを開けるとすぐに友達が困った顔で私に駆け寄ってきました。何かあったのでしょうか?


「あ、茜!助けてよ、舞が、おかしくなっちゃった!」


「楠木さんが!楠木さんが!」


そう言って友達が指す場所には、だらしない顔でキーホルダーを眺めている舞の姿がありました。


・・・・・ガラガラ、ピシャ。


よし!今日はもう帰ろう!そう決めて扉を閉めます。

すぐに友達が教室から飛びだしてきて私を教室に引っ張り込みます。


「茜!あんたの親友でしょ、どうにかしてよ!」


「そうだよ、幼馴染なんでしょ、ああなった原因と元に戻す方法ぐらい分かるでしょ!」


友達が無茶苦茶言ってきて困ります。チラリと舞を見ると、相変わらずの顔でなんか「グヘへ~」とか言う声まで聞こえてきそうです。


あ~これは無理だな。


「今日はなんか頭とお腹が痛いから帰るね」


と言って帰ろうとしましたが、友達が掴んで離してくれません。

「茜~!」、「清水さ~ん。」

私の名前を呼びながら続々とクラスの女子たちが私に集まってきます。

仕方がありません。


「はあ~。少し話してくるからみんなはここで待っててね」


そう言うとコクコク頷いてくれる女子たち。男子は男子で不気味な舞からすでにかなり距離を取って教室の隅か廊下にいます。パッと見だとなんか舞がいじめられているようです。

まあ、これで小声で話せばクラスメイトに話の内容まで聞こえないので好都合です。


「おはよう。舞」


「あっ茜~おはよう~。見てみて!これ昨日言ってたキーホルダー。えへへ~」


舞の周りに私以外人がいない異常な空間になっているのですが、気づいていないみたいです。これも演技で気づいていない振りをしているか分かりませんが、演技なら過剰過ぎるので、少し注意する事にします。


「舞。助けてもらっている私が言うのは間違ってるんだけど、それでも言わせてもらえば少し演技が過剰すぎるよ。逆に怪しまれる」


そういうと今までのだらしない顔から普通の表情に戻りました


「・・・・過剰?」


「そう、周りを良く見て、作戦がバレるかもしれないよ」


そう言って周囲を見渡すと、不安そうにこっちを見ているクラスメイトに気付いたようです。


「あっ。そ、そうね。ちょっとやりすぎたわ。気をつける、ごめんごめん」


もう大丈夫そうだと思い、クラスの子達に手を挙げて合図する。すぐに私達の所に何人かやってきて、舞をからかいだします。


「今日はどうしたのよ?」

「べ、別にどうもしないわ。いつも通りよ」


「変な物でも食べたの?」

「食べてないわよ!」


「そのキーホルダーどうしたの?」

「これ?これはね~ぐへへ~」

「「・・・・・」」


これは駄目そうだと思ったので、助け船を出す事に。


「このキーホルダーは舞をアホの子にするから、今日は話題にしない方がいいよ」


「ひどくない!」


舞から抗議されますが、無視します。


「でもさすが茜ね。あんなになった舞を元通りにするんだもの」


友達から褒められ少し嬉しいです。


「ご褒美に私の卵焼き一個あげるわ」「あっ、じゃあ私唐揚げあげるね」「私ウインナー」「ミニトマト」「梅干し」「ご飯」「ご飯」


そんなに食べたら太ってしまいます。うん?最後変じゃなかった?


休み時間も舞は友達と話していましたが、キーホルダーの話題になると途端にアホの子になるので、みんな面白がってからかっていました。舞の中ではそういう設定なんでしょう。





昼休み

いつもより多いご飯を食べ終わっていつものように舞や友達と話していると、陸上部の子達が数人連れだってやってきました。その中には下級生もみえます。


「何よ、あんたたち、どうしたの?っていうか一年もいるじゃない」


「いやあ、舞がなんかアホの子になってるって噂を聞いたから見にきたのよ。」


そう答えたのは確か義兄さんと同じクラスの明美さんという名前で、確か陸上部の部長になった人です。後ろには一年生がいるのですでに下級生までに広まっているのかと思い私と友達は苦笑いになります。


「何よそれ!だれがアホの子ですって。私はいつも通りよ」


軽く怒りながら文句を言う舞でしたが、その顔は笑っています。


「清水さんたちごめんね。ちょっとだけ舞と話させて。」


明美さんが私達に断りを入れて了承をもらうと舞の尋問が始まります。


「で、噂だとキーホルダーがって話だけど、これかしら?・・・「案の滝」?ああ、あの滝か」


「それでこのキーホルダーどうしたの?」


代わる代わる陸上部の2年生が質問していき、下級生は黙ってその様子を見ています。


「別にそこのお土産屋さんで買ったのよ」


さすがに休み時間に何回も揶揄われたので、すぐにアホの子にはなりません。


「じゃあこれ持って良く見ててよ~」


そう言って陸上部の子からキーホルダーを渡されしばらく見つめている舞。


「・・・・フフ、・・・フフフ、・・・エヘヘー」


すぐにアホの子になります。陸上部の子達もさすがに驚いたようです。

「あんた、その顔なんなのよ」


「本当にアホの子になったね~」


「先輩のそんな顔初めて見ました」


陸上部の子達は口々に驚きますが更に尋問が続きます。


「で~、これは買ったの~?買ってもらったの~?」


「・・・・修一に買ってもらった~。グヘへ~」


さすが陸上部、舞と長い時間一緒にいるだけあって、的確に尋問してきます。


「修一ってうちのクラスの橘君よね?す、すごいわね、舞をここまでするなんて」


「やっぱり本当に付き合ってるんだ」


「ええっ。先輩彼氏できたんですか?どんな人ですか?」


「ああそういえばあんた達知らないんだっけ。最近よね舞が付き合いだしたの」


「2年の良く寝てる人って聞いたことない?」


「ああ、聞いた事あります。あの寝太・・・常に寝てて顔を誰も見た事がないっていう」


さすがに義兄さんの渾名は有名なのか下級生も口にしそうになりましたが、先輩の彼氏だと気づいたのかすぐに誤魔化しました。そんな事より下級生が口にした義兄さんの噂がすごく気になりました。誰も顔を見た事ないって・・・義兄さんはのっぺらぼうか何かかな?


「私は同じクラスだから見た事あるけど・・・そうよね、授業中以外寝てるから同じクラスにならないと顔見れないわよね」


「先輩、写真とかないんですか?」


ピクリ。

そう後輩から言われて舞の肩が少し揺れました。それに気づいたのは多分私だけ、それだけで多分あんまり見せたくない写真を舞が持っている事が分かりました。


「ないわよ」


アホの子から元に戻った舞は無表情でそう答えます。ですが、


「写真好きのあんたが撮ってない訳ないじゃない」


「そうよね。絶対持ってるわよ」


「ほら見せなさい」


そう言って舞に詰め寄る陸上部の子達。後輩はキラキラした目で舞を見ています。


「だから、持ってないって!」


舞は悪あがきをしますが許して貰えません。


「そうか~、だったら橘君の所に行く~?」


「おっ!そうだね、あっちに行こうか」


「うっ!・・・・分かった!見せるから!お願いだから修一に迷惑かけるのだけはやめて!」


ここまでの彼女達のやり取りで私の中の疑惑がどんどん確信に変わっていきます。


「分かればいいのよ。それにしてもあんたどんだけ橘君に惚れてるのよ。今のだけでもお腹一杯になるわ」


「う、う~」


舞は抗議の声を上げていますが、みんなワクワクした様子で舞を見ています。


「・・・はい、これ」


舞は俯いてスマホを差し出します。その画面を見た陸上部の子達から歓声があがります。


「あんた何て幸せな顔して笑ってるのよ!」


「嘘!これが楠木先輩」


「すご!これ本当に舞なの?メッチャ笑顔じゃん」


ひとしきり写真に写る舞の笑顔に騒いだ後、次はその彼氏である義兄さんが話題になります。


「これが橘君か~引き攣った笑顔も橘君らしいね~」


「う~ん。もっと暗い感じだと思ってたけど、結構イケメン?いや~イケメンかな~?」


「そうですか?ちょっと厳つい顔ですけど私はイケてると思いますよ」


「そうですよ!少し眠そうな目が気になりますけど、何かお兄ちゃんって感じで甘えさせてくれそうじゃないですか?私はアリですよ」


後輩も加わりワイワイ騒いでいます。どうやら義兄さんはお兄ちゃん属性があるみたいで、後輩からは高評価のようです。義兄さんはアリかナシかで先輩と後輩で意見が割れているなか1年生が「私なら告白されたら絶対付き合うと思います」とか発言した為、「修一は私のだから!絶対あげないから!」と舞が本気で言い返す事があり、みんな苦笑いしていました。その騒ぎにクラスの友達も何人か加わり騒いでいましたが私は私であの写真を見てから周りから距離をとり一人考え込んでいました。


あの写真の顔、絶対本気だ。演技じゃない・・・どうしよう。舞は義兄さんが好きなんだ・・・・周りを騙しているつもりが私と義兄さんが騙されていた・・舞。


その事に気付くと私も純君に早く本当の事を言う決意を決めないといけません。じゃないと、今のような関係だと絶対舞が悲しむ事になる・・・。次です!次のデートで純君に本当の事を言うと二人に話して一緒に付いてきてもらい退路を断ちます。そう決めたらすぐに純君にラインしてデートの約束をしました。


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