流れ星、誰が見ていた?
朝の来るまえ。
夜が終わったその時に。
大きな流れ星が一つ。
つーーーっ。と、流れていきました。
あの流れ星、誰が見ていた?
それは介護施設の朝食を作る為、始発の電車を目指して歩いていたおばさん。
「凄いの見たわ。久方ぶりにウキウキしてきちゃった。入所してるみんなもいい日になるように頑張ろ。」
それは出勤前に川沿いでスマホを見ながら犬を散歩させてるお兄さん。
「わんわん!」
「へっ?わっ!流れ星!クソッ、ちょっとしか見れなかったっ。
…あー。そうだよな、スマホ見ながら歩くから駄目なんだよな。もうやめよ。教えてくれてありがとな。ちょっとでも見れて良かった。」
それはピンヒールで仕事帰りのおねぇさん。
「うわ。久しぶりに見たな。実家じゃ珍しくもなかったのに。
そうだ、たまには帰ろうかな。お母さん、元気かな。」
それは箱根駅伝を夢見て毎日公園の遊歩道を走る駅伝部員。
「箱根駅伝箱根駅伝はこ…っあぁ〜。3回言うのは流石に無理か!でもあんな大きいのは幸先いい気がする。きっと来年の今頃は!頑張ろ!」
それは夫婦でウォーキングをしていた道を今は一人で歩くおじいさん。
「随分立派な流れ星だったな。あいつも一緒に見てたらなぁ。もしや流れ星はあいつだったか?会いに来てくれたか?…なんてな。へへ。」
それは電気を消した居酒屋に侵入しようとしていた二人組。
「わわわ。兄貴、見ました!?」
「おぉ。デカかったなぁ。あんなの初めて見たな。
…今日はやめとこうか。なんとなく、な。」
公園で酔いを覚ましていたバンドマンは何かを思いついたのか、ガバっとブランコを降り家路を急ぎました。
ベランダに出ていた、勉強時間を朝型に変えた受験生は拳をグッと握りしめ、鼻から大きく息を吸い、また机に向かう為部屋に戻りました。
出鼻をくじかれたビルの屋上の少女は感情も声も無く、ただその頬をはらはらと涙が伝わりました。
神社の境内でデート中の猫は温め合うように寄り添いました。
みんなが寝ていたその時間。
たまたま起きてた人達と
その周りの人達に
ちょっと良い事あったんです。
12月25日。
深夜の早朝のおはなし。
おばあちゃんは背中を押しただけ。
それぞれみんな心に秘めた想いがあって。
一歩を踏み出すきっかけは小さな事だったりしませんか?
でもやっぱりそんなきっかけに出会えた事はやはり奇跡なのかな。
みんな、頑張ってるんだよな。と暗い中毎朝すれ違う人達を見て感じています。