表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

自分本位な異世界転移生活

作者: ふるふる

 ある日~、森の中~、少年が~、突っ立っていた。

 

 今のとある少年の状況を伝えるとしたら、このようなものであろう。

 どこにでもいる高校2年生だった少年の状況を伝えるとしたら、このようなものであろう。

 彼のおかれている状況は非常に単純なものである。


 1,クラス丸ごと異世界召喚される。

 2,勇者となって魔王を倒せだのなんだの言われたのち、能力を調べられる。

 3,役立たず認定されて、足を踏み入れて帰ってきたものはいない系の森に転移させられる。


 非常にありがちな異世界転移の3ステップである。

 そして、そんな絶体絶命な状況に置かれた少年が何をしているのかというと……


 「おっ、クマの肉って結構うまいんだな。……でも、地球のクマ肉って食えたっけ?」


 のんきに食事をしていた。

 ちなみに少年が今食べているクマは、この森で最強のモンスターで、本来なら今頃哀れな少年を頭から丸かじりにしているはずだった。

 実は、ドラゴンよりも強かったりする。


 ここまで、異世界転移のテンプレを踏襲していたらもうお分かりかもしれないが、少年は当然のごとくチート能力持ちである。

 少年一人で魔王ぐらいは楽勝で倒せるだろう。

 しかし、そんなことは面倒くさかったし、元の世界に大した執着もなかった少年はこの世界で好きに生きていくべく、捨てられるように仕向けたのである。

 そうして目論見通りに誰の目も届かないところに追いやられ、腹ごなしも済ませた少年は行動に出る。


 「この森から出るには……、《探知》。こっちか」


 魔法で行き先を調べた少年は、森から最短で出る道を歩き出す。



 

 4日ほど歩いて、森から出ることに成功した。

 森を出るとすぐに丘があったため、周りの景色を見渡すべく、少年は丘を登る。

 すると……


 「……、なんか馬車が襲われてやがる。それに、あの奥で守られている女、王城の奴らと似たような服を着ているな。……もしかして貴族とかか?」


 少年の眼下で馬車が襲われていた。

 彼の予想通り襲われているのは貴族の少女で、盗賊の割には連携の取れた者たちが馬車を襲ってる。

 少女の護衛は3人、対して盗賊は2人ほどやられているものの、まだ7人が襲い掛かっている。

 ちなみに馬は殺され、馬車の御者も額に矢を生やして息絶えていた。

 馬車の護衛はかなりの手練れだが、盗賊も連携が取れているうえに数が多い。

 少女たちが助かるには、少年が介入するしかないだろう。

 しかし、


 「もうちょっとだけ待つか」


 彼は高みの見物を決め込んだ。




 5分後、護衛たちは奮闘してさらに5人の盗賊を屠ったものの、全滅した。

 生き残っているのは、それなりに傷を負った盗賊2人と無傷の少女である。

 しかし、今まで戦いの場に足を踏み入れたことなどない少女には、手負いの盗賊2人を退ける力などない。


 「はぁ、てこずらせやがって。9人もやられたじゃねえか」

 「まあ、この馬車の荷物を奪えば大儲けですぜ、頭」

 「その前に、この女で一発ヤッテいくか。こいつが1番の戦利品だしな」


 そう言って盗賊の2人は少女の方へ向かう。

 彼女は絶望した。今から自身に待ち受けているものは、ただの生き地獄であると理解したからだ。


 「誰かっ、助けて……!」

 「さすがに、そんな気持ちわりぃ物は見たくねぇな」


 その声とともに、生き残った盗賊2人の首と胴体は永遠の別れを経験することになる。

 今の今まで高みの見物を決め込んでいた少年が割り込み、彼らの首を跳ね飛ばしたからだ。

 ちなみに、その剣は少年が魔法で作り出したものだ。

 クマを素手で倒すのがちょっと面倒だったため、森の中で作っていた。


 その光景を見た少女は、歓喜に震える。少年の姿が自身を助けてくれた英雄のように見えたからだ。

 だが、少女は知らない。彼が面倒くさい、ただそれだけの理由で少女の護衛が殺されるのを見ていたことを。


 だが、そのようなことをつゆほども知らぬ少女は自身の英雄に声をかける。


 「助けてくださり、ありがとうございます! わたくしの名前は……」

 「うっさい、しゃべんな」


 その一言とともに、少年は手に持った剣を少女の心臓に突き刺す。

 少女に避けるすべなどなく、少年の件はいとも簡単に少女の心臓を破壊した。


 「な……で、どし……て……」


 少女はわけがわからなかった。

 自信を助けてくれた英雄が、ゴミを見るような眼で自分を見ながら心臓を刺した。

 恐怖と混乱の中、高貴な生まれの少女はあっさりと息絶えた。


 少女を殺したことなど気にせず――事実、少年としては蚊を叩き潰した程度の気持ちだった――馬車の中をあさる。


 「お、それなりに食料と金は積まれてるな。盗賊どもが襲うのも納得だ、ありがたくもらっていこう」


 馬車を一通りあさって魔法で戦利品を収納したのち、馬車周辺の死体からも装備品をあさる。

 騎士と盗賊からは武具・防具、少女からは高級そうなネックレスをはぎ取る。

 馬の死体も念のため収納しておいた。

 そうして一通りの作業を終えた少年は学生服から、盗賊の服の中で比較的無事であったものに着替えた後、馬車や死体を魔法で地中の奥深くに埋める。

 魔法で街の方向を探ったのち、その方向へ歩きだした。




 こうして、一人の少年は異世界に解き放たれた。

 病的なまでに自分のことしか考えず、自身が楽に生きるためなら他者を害することもいとわないその少年が、これからどのようなことを巻き起こしてゆくのか。

 そのことは、少年本人ですらもわからないであろう。

ぶっちゃけ、貴族とかとかかわるの面倒くさいし、自分の方が強ければ殺して物資だけ奪った方が楽だと個人的には考えています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ