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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

世界救済

作者: 夏目 泡

「はあああっ!!」



 四肢を切り落として、内臓を引きずり出して、頭をめちゃくちゃに砕いて、やっとソイツは動かなくなった。


 くそっ! これだけやって、やっと一匹。だがもういい。目標はもうすぐなんだから。



『大変そうだね? 君には才能がある。ボクがもっと力を貸そう。そうすればこんなヤツらに苦戦することなんてないよ?』



 突然に、もう慣れたが脳内に子供のような悪魔の声が響き渡った。その誘いはまるで麻薬のように頭を巡って俺を頷かせようとするが、それが禁忌だということは分かっている。



 世界が狂い始めたのは大体七年くらい前からだ。


 以前から『魔物』というものは存在したが、人類の存続を危うくするようなものはなく、せいぜい強い害獣という扱いだった。

 だが異変は唐突に一人の男を中心に始まった。


「あははははは!!!!!!!! 本当に異世界だ! 俺が神だ! この世界は俺のものだ!!」


 町中でいきなり異国風の服装をした黒髪の少年が騒ぎ出した。当然、そんな頭のおかしいやつは普段であれば兵士に怒られて終わりか、悪くても逮捕されるだけのはずだった。


 しかし、彼はその街だけで兵士と増援の騎士、合わせて五百人を殺害したのだ。


 その日からだ。彼が造り出した黒い魔物、通称『黒魔』。そんなものが世界中に氾濫し、あらゆる国々が恐怖に呑まれたのは。


 中でもその厄災に拍車がかかったのは『魔王大討伐』後からだろう。


 連合軍三百万、対『魔王』と呼ばれた少年一人と数百体の黒魔。その決戦は確かに『魔王』と呼ばれた男を殺した。しかし、彼の生命活動が停止したかと問われればその答えは定かではない。


 彼は戦争中、瀕死の重症を負った後に、巨大な黒魔へと変わった。もともと黒魔は魔物とはかけ離れた力を持ち、魔術師と騎士百人が協力し、やっと一匹討伐できるかどうかという怪物だ。だが、ドラゴン型へとなったその黒魔はそれさえも凌駕し、残っていた討伐軍をほぼ全て虐殺した。そして今でも世界中を我が物顔で徘徊している。



 俺はあの戦争の生き残りだ。


 俺を拾ってくれた団長はとてもとても優しかった。

 一緒に酒を飲んで笑ったビーゴは間違いなく親友だった。

 後輩のジンは見所が多く、あのまま成長しいれば団長に匹敵したかもしれない。


 他にも、他にも、他にも……………。


 ああ、違う。今はこんなことを思い出したいわけじゃない。



 さて『魔王大討伐』の後だ、一部の人間が『天使』の声を聞くようになったのは。


 するとどうだろうか? 元魔王のドラゴンには及ばないものの、黒魔を一人で討伐できるような力を得た救世主が誕生し始めたのだ。人類は神からの救済に感謝し、天使の声に従い続けた。


 そして、それが『天使』ではなく、とある『黒魔』の罠であると気がついたのはたった一ヶ月後のことであった。


 『使徒』と呼ばれた天使の声を聞いたもの達は元魔王のドラゴンに匹敵するほどにまで成長していった。そして………、



 『黒魔』へと変わっていった。



 救済の英雄達は力を手にし、力を暴走させ、人間を辞め、理性無き怪物へとなった。まるで最初の『魔王』のように。


 あるいは鬼、あるいは巨人、あるいは人型、あるいは、あるいは…………。


 計十三匹の元魔王のドラゴンに匹敵する黒魔が誕生したところで、世界は『天使の声』を『悪魔の誘い』と断定し、まだ黒魔に変化する前の使徒達をも処刑し始めた。


 その騒動の中でさらに八匹の黒魔が産まれ、世界から救世主は消えた。そして『悪魔の誘い』に従うことは厳しく禁止された。こうして『人類の救世主』は絶滅した。


 世界中は絶望に沈み滅亡する国や地域も少なくはなくなった。



 だが、それが俺に関係するか? 


 悪魔の誘い? だから何だ? 俺はあのクソドラゴンさえ殺せれば何だっていい。


 その為に怪物になることなんて些細なことだ。



「ああ、いいぞ『ディアブロ』。もっと俺を呪え」


『あは、ははははははははははははは!!!!!!!!!!!』



 頭を、狂って、狂って、仕方のないワライゴエが支配する。


『ははは! 本当にいいの? これ以上やると、人間辞めちゃうかもよ?』


 気持ち悪い。どうせ止めろって言ったって止める気なんかないくせに。けど、それでもいい。復讐相手までは、もうあと一歩だ。

 視界が真っ赤に染まる中、山頂に向けての僅かな距離を歩いた。俺は泣いていたかもしれないし、笑っていたかもしれない。ただわかるのは、さっきまで苦戦していた普通の黒魔を今はもう紙ゴミのように蹴散らせるようになっていたことだ。



「やっと会えたなクソ野郎」



 何匹かの黒魔を殺し、山頂にたどり着くと、紅い目をしたソイツが待っていた。俺が来ることは分かっていただろうに、わざわざ待って居てくれるとは、お優しいヤツだ。




 さっさとブチ殺そう。




「『ディアブロ』、全然足りない。出し惜しむなよ。コレを殺せるだけよこせッッ!!!!!」

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」


 俺は翔んだ。硬い氷と岩石の足場をアイスクリームのように潰し、変わりにヤツの頭上まで移動する。

 俺の方を向いたヤツは口を開け、深紅の光を溜め、

 次の瞬間には音が消えていた。それから自分があの光を受けたのだと気がついた。ブレスに直撃したのだ。自分だって人間離れした動きをしているが、相手はあまりに攻撃速度が速すぎる。

 ああ、熱い。左手が消し飛んだ。しかし、代わりに俺は愛用の剣を振るい右目を奪った。


「GAAAAA……!!!!」


 また叫ぼうとしていたが、その叫びを聞く必要はない。そのまま脳天に剣を振り下ろす。

 

 ベキッ


 額の鱗を割ることはできたがそれ以上刃が進まなかった。なら、もう一度だ、



「あ?」



 なんだ? やけに体が動かしずらいな?


 ああ、そうか。腹に大穴が空けばそうなるよな。


 不定形なタイプの黒魔と違い、ヤツはドラゴンの形をしているから、それ以上の変形はないと油断していた。だが、ヤツの額、つまり俺の足場からいつの間にか生えた鋭い棘が俺を貫通していた。

 地面に叩きつけられる。ヤツが飛んだのがわかった。ああ、そのまま踏み潰す気か。そうか、俺もこれで終わり、


「なんて、納得できるわけねぇだろうがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

『いいよ、いいよ、最高だッ! さあ、もっと力をあげよう!』



 ブチッッッと。何かが切れたオトガシタ。



 気がつくとやけに視界がクリアだった。目の前には縦に半分になって、ピクリとも動かないドラゴンの残骸が落ちていた。


『やった、やった、やった!! これで君が最強だッ! そして、あとちょっとでボクが君になるんだ!!』




「……そうか、殺せたのか」



 誰もいない山頂。自分の中の雑音など気にせず濁った達成感の中、答えを求めない問いを発した……、



「はい。そうですよ」



 はずだったのだが、答えが返ってきた。


 驚き、振り向くと一人の少女がいた。まだ未完成の幼い容姿であっても見惚れるほどの美しさ、…………そしてうっすらと漂う残酷な香りは恐ろしいほど魅力的だった。



「ダレだ? コんナ、ところニ、何ヲしにきた?」



 ……まだ喋れるなんて思ったより人間らしいな俺は。アイツを殺した今、もうとっくに怪物に成り果てたかと思ったのに。


「それは私があなたの呪いを止めているからですよ」


 ただの人間でないとは分かっていたが、俺の考えが読めるのか? 誰だ? まさか神でも現れたのか?


「ええ、そうですよ」


 投げやりな、冗談半分な考えだったけどどうやら合っていたらしい。今さら神がこんな世界に何をしにきたと言うのだ?



「それは勿論、世界を救いに」



 その瞬間、俺は自分の死を感じた。悔しいことに抗いようのないそれは、思っていたよりも暖かく、安らかなものだった。

 こういう感じのどうだろうか? 実は主人公は神様のつもり。もし連載して欲しいっていう意見があればてきとうでもいいので感想やポイントをくれると嬉しいです。

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