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水平思考ゲームへようこそ  作者: イツキ
怪盗Tからの挑戦状
6/7

第1章「怪盗Tからの挑戦状」 第5話

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-問題-


「怪盗Tからの挑戦状」



警察に一通の犯行予告が届いた。


差出人はもちろん今世間で話題沸騰の怪盗Tだ!


翌朝、各メディアがこのニュースを大々的に報じている。


それを見て、カメオはホッとした。


いったいなぜ?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-質問-


1:お前なんて関係ないだろ? NO

2:お前怪盗Tの知り合いか? NO

3:お前は怪盗Tの正体を知らない? NO

4:お前が怪盗T? YES

5:お前は目立ちたがり屋だな? NO

6:本当に盗む気か? YES

7:大々的な報道されることがカメオにメリットになった? YES


質問回数 残り3回!────



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━






タイムリミットはあとわずか。

しかし手がかりなんて何もない。



「まずい!もうテキトーに質問するしか・・・。」


「テキトーって、あと2回の質問で回答にたどりつかなきゃいけないのよ?大丈夫?」


「大丈夫じゃない。でもやるしかないだろ!」



テキトーと言っても、先ほどまでのラテ夫は既にいない。

ここまでのやり取りの中で成長している。

それはラル子も分かっている。

しかし、残された時間は今のラテ夫にも少なすぎた。



「(考えろ!何かいい方法があるはずだ。思い出せ!一文字ずつ聞くってのはダメだった。ぼんやりとした質問・・・は、よかったよな?ピンポイントすぎる質問はダメだ。あとは文章のヒントを探ること。不自然さ、違和感。あとは・・・そういえばもう1つ言ってたな。視野を狭くする。関係ないものを疑う・・・。まだやってないなコレは。)」



夕日に照らされながら、ラテ夫はまだ動けない。



「(関係ないワード。どこだ?1行目から考えるか・・・。警察、1通、犯行予告の3つ。いや、届いた、もか。届いたこと自体が重要って線もある。クッソーなんでもっと早く気付かなかったんだ!うわー、質問してみたいけどダメだ。手当たり次第なんて出来ない。でも、これらを仮に質問出来たとしても、なんて質問すればいいんだ?例えば、1通しかないことは大事ですか?とかか?いやいやいや絶対重要じゃないだろコレ!いやでもだからこそ聞かなきゃいけないのか?分かんねぇ!じゃぁ2行目は・・・)」


「ラテ夫!」



ラル子に呼ばれた。

時間が無い事を目が訴えていた。

もうやるしかない。



「えっと・・・し・・・つもん・・・。」


『えぇ。』


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


『・・・。』



何も思いついてなんていなかった。

でも時間が無い。

でも何か聞かなきゃ。



「・・・・・・・・い・・ちぎょ・・・う・・・め・・・って、重要・・・?」



ラテ夫は完全に言葉に詰まっていた。

それでも、プレートは勢い良く回りだした!



「・・・?それ、深い意味があるのよね!?」


「ないよ。いや、ない!今頭にあったもの、そのまま出した!もう、ね!」


「ね!って言われてもー。」



10時の方向の宝石は燦然と輝き、そして全ての光を解き放った。

プレートが止まったのは・・・


── 「YES」!!



「YES・・・自分で聞いといてアレだが、どういう意味なんだろ?」


「さっきも言ったけど、この文章の中にはヒントがたくさん隠されているかもしれないの。ある意味全部重要だわ。」


「そ、そうかぁ?いやでもその中でも1番重要って意味かもよ?」


「1行目のどこが?」


「・・・。」


「分かんないのかーい!」


『質問回数、残り2回。』



倒れたラル子とは裏腹に、カメオは突如立ち上がり続けた。



『実質あと1回の質問で、正解へたどり着くヒントの全てを手にしなきゃいけない。』


「言われなくても分かってるよ。嫌味を聞いてる時間はないんだよ。」


『・・・嫌味じゃないよ。』


「?」


『君なら出来る。』


「!!」


『・・・ぁ、ゴメン、いろいろ言いたかったケド、時間ないや。』


「なんなんだよ。」


『じゃ、頑張って♡』


「なんなんだよ!」







カメオにつっかかっている時間はない。

すぐに目線は問題文に戻っていた。


「最後の質問・・・。」


「ラテ夫!」


「・・・。」


「ごめん、返事しなくていい。考えながら聞いて。まだ教えてないことがあって・・・。この水平思考ゲーム。実は出題者からちょっとしたヒントが貰える場合があるの!」


「どういう事!」


「といっても直接的なものじゃないけど。質問がよかった場合、いいポイントを突いている場合、それを教えてくれるの。いい質問だね!って。」


「いい質問・・・。」


「さっきカメオさんが、ラテ夫を褒めた。なんでだと思う?いい質問だったからよ!ごめん、それだけ。」



敵だと思っていた奴が、頼りないと思っていた子が。

かわるがわる何度も励ましてくる。

しかしその理由を考える余裕はなかった。









「(どうする、最後の質問・・・。重要だって言われた1行目を突くか?それともノーマークだった2行目以下の文章か。どっちだ・・・!くそ、もう最後だ、全部考えろ!)差出人、もちろん、話題沸騰、怪盗T、翌朝、各メディア、ニュース、大々的な報道、見て・・・。」



全てのワードを疑っているラテ夫。

夢中になっているのか、全て口から出てしまっていた。



「おいおいおい!よく考えたらコレ、全部ヒントじゃないか!?2行目も!3行目も!4行目も!!なんか・・・見えてきたぞ・・・怪盗Tが・・・!」



目を見開き考えるラテ夫を、ラル子とカメオは見つめている。



「もちろん、なんだよ、話題沸騰なんだよ。ってことはコイツ、初犯じゃない!過去に何度も窃盗をしてるやつなんだ。そのせいでカルト的な人気を得ている。そんな奴がいちいち嘘の犯行予告で警察を攪乱なんてするはずないだろ。そんな事してたら人気でてねぇよ・・・。あー質問1回無駄にしてる、今気づいた。


後は・・・各メディア・・・?いや待て、コレ推測できるぞ。だってその後に“見る”って続いてる。“見るメディア”・・・テレビか!?“翌朝”もセットなら、朝のニュース番組!自然だ。間違いなく報道されているはず。俺たちがこの世界に来たのが昼なのは、それが重要なヒントになっていて、それを見せないためか・・・!?


確かめたいことが山ほどある。これだけあっても重要なのは1行目なのか・・・?」



ラテ夫にも流石にだんだんと疲労の色が見え始めていた。

頭の中で500文字も考えたことなんて人生でなかったからだ。

「考えるの、苦手なんだよ・・・。」

小声でそうつぶやいた時だった。



「頑張って!ラテ夫!きっとあなたには出来るから!信じてるから!」



絶対に回答に辿り着くヒントを得る。

そんな確証はどこにもなかった。

どちらかと言えば、ダメだった時の責任を負う覚悟だったかもしれない。

いずれにせよ、ラテ夫は動いた。



「モヤモヤしてるところが1つだけある。それを最後にハッキリさせてもらう。」



ラル子は息をのんでいる。



「質問だ!各メディアとは、テレビの事か!?」



今日一番の大声に呼応するように、ペンダントはいつにも増して光り輝いた!

眩しい中でも2人は目を閉じなかった。

この質問が最後の希望。


「これがダメなら、おしまいだ。」


もう20秒は回っているプレートはゆっくりと焦らすように動きを止めていった。


「どっちだ・・・!」


光の中でプレートが示したのは・・・


無情にも


NO



ラテ夫は、崩れ落ちた。

























「終わった・・・。」



ラテ夫は床に倒れこんだ。



「ゴメン、ラル子・・・。」



大粒の涙をこぼしながらラテ夫は言った。



「ゴメンな・・・俺、実は名探偵じゃないんだよ。やっぱりダメみたいだ。・・・ずっと2人でやっていけるって思ってたんだけど・・・。ゴメン。」



もう太陽は半分も見えない。


ラル子はオレンジ色の涙を拭いている。


そんな時だった。


それまで目を閉じただ黙って座っていたカメオが、2人を横目で見ながらそっと口を開いた。



『時間が無いです。回答をどうぞ。』



「・・・分かるわけねーだろ。」



かすれそうな声でそう返すのが精いっぱいだった。

しかしそんな中、諦めていないのはラテ夫でもラル子でもなく、カメオだった。



『ん~。お嬢さん、一つだけ、彼にまだ教えてないことがあるんじゃないですか?』



涙を拭いラル子は必死に応えた。



「何ですか?」


『水平思考ゲームの基礎中の基礎。そして、最も大事な事。』


「!?」


『分かるよね♡』



その瞬間ラル子は、うずくまるラテ夫のもとへ駆け寄った。



「ラテ夫聞いて!!!」



涙目で見上げるラテ夫に、ラル子は続けた。



「水平思考ゲームで最も大事なこと!」


「・・・?」



ラル子は今日一番の笑顔でこう言い放った。



「それは、失敗もヒントになるって事!!!」


「失敗も・・・ヒントに・・・?」


「そう!ラテ夫は今、とても大きなミスをしてしまったって思ってる。でも違うの!YESじゃなかったって事は、NOだっていうヒントを得たって事なの!!」


「NOという・・・ヒント・・・?」


「どんな質問も全て回答へ向かう・・・。それが、水平思考ゲーム!!」


「違った・・・ってのは、ミスじゃない・・・。」



ラテ夫はゆっくりと立ち上がった。

そして震えるような脳みそで、推理を再開した。



「・・・“見るメディア”なのに、テレビじゃなかった・・・。それは、テレビじゃないものに限定できたって事・・・。とするとあとは何だ?ラジオは違う。あれは“聞く”だ。ってことは、文字を媒体にしたメディア・・・。新聞、雑誌、ネットニュース・・・。」



外の太陽を見ようと振り返った時だった。

カメオの部屋には、新聞も雑誌もノートPCも置かれているのが目に入った。



「(部屋にもある・・・。いや待て、でもこれらは正確には“読む”メディアだ・・・。内容はしっかり“読まなきゃ”分からない・・・。“見る”なんてのはチラ見だけ・・・せいぜい写真や見出しの文字くらいしか目に入らないだろ・・・。)」



その時だった。

ラテ夫に閃光が走った。



「あ・・・そういう・・・事・・・か・・・?」
















数秒のの沈黙の後、ラテ夫は精悍な顔で話し始めた。



「ラル子!」


「はい!?」


「俺、元の世界に戻ったら、もう一度一から探偵をやってみようと思う。」


「うん!」


「今日人生で一番頭使った・・・。あーホント、今までの自分が情けないよ。汗かいて走ることしかしてこなかったから。」


「それがラテ夫のイイトコだよぉ!」


「だから、最後の回答。もし正解したら、また一緒に・・・やってくれないか?」


「・・・名探偵には私のような有能な助手が必要じゃない?」


「有能?」


「そこはいいじゃないの!ラテ夫も()()()なんでしょ?」


「まぁ、今日は有能だったよ。初めて見直した。」


「初めてってどーゆー事ー?」



夕日を胸に浴びながら、いつもの仲良しコンビの日常がつかの間繰り広げられていた。

それをほほえましい表情でカメオが見守っていたことに、2人は気づかなかった。


そしてラテ夫は振り返った。



「カメオ・・・。10個目の質問・・・回答・・・!」


『辿り着けたかな?真実に。』


「あぁ!いくぞ!」



ラテ夫はペンダントを右手でカメオ突きつけた!





━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-問題-


「怪盗Tからの挑戦状」



警察に一通の犯行予告が届いた。


差出人はもちろん今世間で話題沸騰の怪盗Tだ!


翌朝、各メディアがこのニュースを大々的に報じている。


それを見て、カメオはホッとした。


いったいなぜ?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-質問-


1:お前なんて関係ないだろ? NO

2:お前怪盗Tの知り合いか? NO

3:お前は怪盗Tの正体を知らない? NO

4:お前が怪盗T? YES

5:お前は目立ちたがり屋だな? NO

6:本当に盗む気か? YES

7:大々的な報道されることがカメオにメリットになった? YES

8:1行目って重要ですか? YES

9:各メディアはテレビの事か? NO


質問回数 残り1回!────



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