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水平思考ゲームへようこそ  作者: イツキ
怪盗Tからの挑戦状
5/7

第1章「怪盗Tからの挑戦状」 第4話

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-問題-


「怪盗Tからの挑戦状」



警察に一通の犯行予告が届いた。


差出人はもちろん今世間で話題沸騰の怪盗Tだ!


翌朝、各メディアがこのニュースを大々的に報じている。


それを見て、カメオはホッとした。


いったいなぜ?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-質問-


1:お前なんて関係ないだろ? NO

2:お前怪盗Tの知り合いか? NO

3:お前は怪盗Tの正体を知らない? NO

4:お前が怪盗T? YES


質問回数 残り6回!────



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



再び揃った3人。

もう座りながらのんびり考える余裕はなかった。

カメオは悠然と2人の間を歩き、部屋中央のソファにゆっくりと腰かけた。



『さぁ、ど~ぞ♡』


「質問考えてある、って言ったわよね?」


「あぁ。聞くぞカメオ。」



ペンダントを右手で掴み、カメオに向けこう言った。



「質問だ。お前・・・・・・・・目立ちたがり屋だな!?」


「ぇ。」


『エ。』


「え?」



リングは光をあげ回転を始めた!

しかしラル子は頭を抱えている。



「え?おかしい?ウソ!?ちょっとストップ!ストップ!」



ラテ夫の声も虚しくプレートの回転は続き、そしてあっさりと止まった!



「NO・・・違うのか・・・。」


「そりゃ違うわよ!」


「なんで!?だってそれくらいしかないじゃん!報道されてマークされて喜んでんだぜ?コイツ。最近SNSとか動画サイトでも目立とうとバカなことする奴いるじゃん!?」


「たしかにいるけど!違うよ!」


「なんで?」


「・・・それじゃ、面白くないから・・・かな。」


「面白くない?」



少し考えてラル子は続けた。



「たしかにそれなら矛盾しないんだけど、それが答えじゃ回答者は満足しないわよ。」


「いや俺は元の世界に帰れれば満足なんですけど。」


「なんのひねりもないじゃない!もっとこう・・・あっと驚く答えが待っていたりとか・・・!」



なんだかキラキラした目で楽しそうに話すラル子。

まるでオタクが好きなアニメについて熱弁しているときみたいだ。

カメオは黙って頷いている。


怒られるかと思っていたラテ夫は少し安心していた。



「大丈夫、残り質問5回だろ?まだ半分ある。」


『ん~・・・。』



突然カメオは口を開いた。



「なんだ?」


『時間もないので、一応確認しておいてあげようかと思いまして。』


「確認?」


『君さ、さっき()()したって思ってるよね?』


「あ?しただろ。キャンセルできなかったし。」


『ちょーっと違うんだよね。正確には()()をしてる。そしてそれを外した。』


「何が違うんだ?」


『ん~、まぁ聞いてよ。ルールにも書いてあることだけどね。』



そう言ってカメオは、机に置いてあったルールの紙を手に持ち話し始めた。



『今確認しておきたいのは、()()()()はセットで10回って事。分かるよね?今まで君は質問と回答を計5回行った。10回中5回。ちょうど半分って思うでしょ?でも違う。君がヒントを得るチャンスはあと()()()()4回。なぜなら最後の1回は()()でなきゃいけないから。10回の質問で答えが分かっても、残りの質問回数が0ならそれを答えるチャンスがないんだ。もちろん残り5回のチャンス、全部()()してもいいよ?当てずっぽでね。ま、それじゃクリアできないと思うけど♡』


「ぐぬぬ・・・勉・強・に・な・り・ま・し・た。」



拳を握り、またケンカを売りそうになっているラテ夫。



『そうそう!それだよ!最初に会ったときはそうだったよね?気に入ってるよその感じ♡』


「俺はお前が嫌いだ!」


『複雑に考えなくてもさ、気楽にやってごらんよ。』


「考えるの、苦手なんだよ・・・。ルールがややこしいんだよ!」


『まぁ、最初はね♡でももうボクから教えることは何もない。あとは君次第だ。応援してる♡』


「んなわけねーだろ!」


『ボソッ・・・(ホントだよ。)』










カメオの小声は耳には届かなかったが、ラテ夫はやる気を出したようだ。



「ラル子、お前ちょっとこのゲーム知ってんだろ?なんていうか・・・コツとかあんのか?さっきの効率のいい質問とかは、よく分かんなかったぞ!」


「んー。ラテ夫は、推理小説とか好きだったわよね?犯人を捜すときって、どんな事がヒントになる?」


「まぁ、犯人の動機とかかな。」


「考えてみた?」


「動機・・・か。たしかに、カメオはなんで怪盗やってんだ?とかは考えてなかった。でも犯人はすでに分かってんだぜ?」


「ホッとしてるのはカメオ。答えはカメオの心の中。たどり着けてないって事は、まだ私たちはカメオの何も知らない。」


「・・・。」


「それともう1つ。答えが分からないときは、まずはヒント集めに集中したほうがいい、だわね。」


「ヒント集め・・・。」


「さっき、無意識に()()をしちゃったじゃない?でもそれってまだ早いと思うの。焦ってるのは分かるんだけど。」


「集め方ってあるのか?」


「究極を言えば、どんな質問もヒントになると思うんだけど・・・。」


「でもそれじゃダメなんだろ?」


「まず、問題文を読んでみたら?」


「・・・何回読めばいいんだよ。」


「そうじゃなくて、大抵の問題は、問題文の中にヒントとか()()()()()があるはずなの。」


「トッカカリ?」


「そう。あたし達があっさりと読み進んでしまった文章の中に。例えば不自然なワードとか、文章の違和感とか・・・。いわば動線。まずはそこをつっついてくれ、っていう。」


「そんなの、あるか?」


「全くないってことはありえない。ちゃんとした出題者なら絶対に用意する。」



ラテ夫は必死に読み返すも、自然な文章にしか見えない。



「分からん。ちゃんとした出題者じゃないんじゃないか?あの婆さん後期高齢者だぜ?絶対。」


「ないのなら隠れてるだけ。でも気づけないなら・・・あえて視野を狭くしてみるとか。今あたし達はカメオがホッとしている理由を探してる、でもそれを1回置いといて、関係なさそうな文章やワードを疑ってみるとか。」


「関係なさそうなって、そんな事やってる余裕あんのか?」


「ないわよ。でもそれくらいしかない。よく聞いて。ラテ夫はこの問題文の中でどこが1番重要だと思う?」


「どこって、カメオのホッとしてる理由が欲しいんだろ?じゃぁ4行目の・・・」


「じゃぁ1、2、3行目は何のためにあると思う?」


「・・・。」


「もし読み飛ばしちゃってるとしたら、そこにある。手掛かりは絶対にある。」









カメオが犯人と分かって、勝ったように思っていた。

でも、俺たちはカメオの何も知らない。

質問ではなく尋問。その通りかもしれない。

肝心なのはこれからだとラテ夫は強く感じた。



「俺たちが分かってる事は、カメオは怪盗Tだという事。わざわざ犯行予告を出すような奴って事、そしてそれによって世間が騒ぐと喜ぶドMだって事。なんで警察に教えるようなこと、リスクしかないのに・・・。いや、待てよ?その矛盾、まさかヒントなのか?」


「何か分かったの!?」


「いや・・・ただ、犯行予告を送るっていう事に何か理由があるんだろうと思って。リスクしかないことにホッしてるという矛盾の中に隠れてるはずなんだ、ヒントが。」


「確かに、そうだわね。」


「理由を知りたい・・・!ラル子、質問していいか?」


「もちろん!」



すぐ横に災禍の中心がくつろいでいることに気づかないほど会話に熱中していた2人。

確定している犯人の前でのんびり推理をするという場違い感に困惑しつつも、ラテ夫は質問を再開するのだった。



「カメオ、質問だ。」


『ええ。』


「お前、本当に盗む気か?」



その瞬間!眩しい光の中プレートは回転するッ!

先ほどの質問の時とは違う、緊張感に包まれた言葉がカメオに向かう。


『ほう。』


カメオはつぶやいた。

その言葉は聞こえたが、その意味を聞くことはしなかった。

回転が止まれば分かると思ったからだ。

しかし結果は・・・


── 「YES」!!




「YES・・・かよ・・・。」



ラテ夫つぶやいた。



『うん、そうだね。・・・なんか残念がってる?』


「NOだったら、面白いかな・・・って。」



ラテ夫はうつむいていた。



『お嬢さんは、どう思う?』


「今の質問ですか?」



カメオは黙ってコクッと頷いた。



「悪く、ないと思います。」


『だよね~。』


「だから悔しいんだと思います。」


『だよね~。』



2人がなぜか優しく見つめる先で、ラテ夫はただ黙って聞いている。



「(確実に質問はうまくなっている。今のはただ外れただけ。大丈夫。彼なら出来る。)」


「・・・目的は・・・あまり関係ない・・・のかな・・・。」


「・・・。」



自分を責めているのか、髪をかき上げ止まっているラテ夫。

しばらくすると、カメオは唐突に質問した。



『ねぇ、お嬢さんは質問しないの?』


「ぇ?あたしも全然分かんないですよ。」


『・・・このゲームはね、回答者は多ければ多いほどいい。なぜなら、着眼点が多いほどそれがヒントになるから。それに同じポイントを疑うのでも、疑い方は千差万別。お嬢さんはさ、もしボクの目的が知りたいとしたら、なんて質問する?』


「あたしだったら・・・。」


『直前の質問は踏まえても踏まえなくてもいいから。』



少し考えるラル子。

するとラテ夫はそっとペンダントを手渡した。



「俺じゃ無理なのかな、これは。いや、天下の名探偵でもさ、得手不得手はあるってもんよ!アッハッハ!」



無理して強がってるのが痛いほど分かった。

カメオとは別の意味で嘘がつけない男なんだ。

そういう所が大好きなんだ。



「分かった。貸して。」



ラル子はペンダントを手に取るとカメオに向けた。

ラテ夫の質問、無駄にはしない・・・!



「質問よ!大々的な報道されることが、あなたにメリットになった?」



ラテ夫のときと同様、ペンダントは光り輝き高速回転を始めた!

3人の見守る中、ラル子は考えていた。

この質問、答えは「どっちでもいい!」


プレートが示したのは・・・


── 「YES」!!




「ふぅ・・・、YESね。」


「やっぱラル子すげぇよ!」


「いや別にYESが出ればいいってワケじゃないから。」


「いやいやセンスある。うん。これからは」


「いーえ、ラテ夫がやって。」


「なんで?」


「そーじゃないと意味がないから。」



そう言ってラル子は、ペンダントをさらっと返した。



「意味って?」


「とにかく、あたしたちは2人でそれぞれ質問をした。カメオの目的。それを知るために。回答に近づいてるといいんだけど・・・。」


「ん?あぁ。えっと、俺は、本当に盗むのか?って聞いたんだよな。で、答えはYES。」


「あたしは、大々的な報道がメリットになった?って質問した。こっちもYES。」


「あれ?なんか同じようにカメオの目的を探ろうとしてるのに、質問が全然違うぞ?」


「たしかにそうね。」


「・・・これがカメオの言ってた事か。」


「だわね。」


「コイツ、そもそも敵なのか?さっきから助けてくれてるようにしか見えないぜ?」


『そもそも敵じゃないですって!味方でもないですけど。でも今の2つの質問は、()()()()かもしれませんね♡』



2つと言っても、ほとんどラル子の功績と感じていたラテ夫だった。

しかし、一応2つを組み合わせて考えてみる事にした。



「カメオは盗む。つまり犯行予告に嘘はない・・・ってことか。だから警察を攪乱させることが目的じゃない。それだけが俺の収穫。でも報道にメリットがあることは分かった。それがラル子の収穫。じゃぁメリットって何なんだ!?この一連の質問では、犯行の成功率が上がるとはとても思えない!怪盗にとってのメリット・・・??」


「見て!!」



突如ラル子が叫んだ!



「どうした!?」


「空が・・・。」


「!?」



急いで窓へ駆け寄ったラテ夫は絶望した。

気づけば窓の外は赤く照らされていたのだ。

話に熱中するあまり、時間があっという間に過ぎ、夕日に照らされていた。



「嘘だろ!?もうこんな時間!?まだ全然回答なんて!」


「そんな事言っても。ねぇラテ夫ー。」


「くそ!どうする・・・。ラル子、あと質問何回だ?」


「もうすでに7回してる。あと3回。」


「最後のを回答に使うとしたら、あと2回・・・。」


「質問回数以上に時間がない!」



ラテ夫は考えていた。

質問回数以上に時間以上に、質問のアイディアがない・・・。



「わけわかんねぇよ水平思考ゲームって。水平思考って何なんだよ!」



“もしクリア出来なかったら”

忘れかけていた不安が一気に押し寄せてきていた。





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-問題-


「怪盗Tからの挑戦状」



警察に一通の犯行予告が届いた。


差出人はもちろん今世間で話題沸騰の怪盗Tだ!


翌朝、各メディアがこのニュースを大々的に報じている。


それを見て、カメオはホッとした。


いったいなぜ?


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-質問-


1:お前なんて関係ないだろ? NO

2:お前怪盗Tの知り合いか? NO

3:お前は怪盗Tの正体を知らない? NO

4:お前が怪盗T? YES

5:お前は目立ちたがり屋だな? NO

6:本当に盗む気か? YES

7:大々的な報道されることがカメオにメリットになった? YES


質問回数 残り3回!────



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