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水平思考ゲームへようこそ  作者: イツキ
怪盗Tからの挑戦状
4/7

第1章「怪盗Tからの挑戦状」 第3話

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-問題-


「怪盗Tからの挑戦状」



警察に一通の犯行予告が届いた。


差出人はもちろん今世間で話題沸騰の怪盗Tだ!


翌朝、各メディアがこのニュースを大々的に報じている。


それを見て、カメオはホッとした。


いったいなぜ?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-質問-


1:お前なんて関係ないだろ? NO

2:お前怪盗Tの知り合いか? NO

3:お前は怪盗Tの正体を知らない? NO


質問回数 残り7回!────



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





カメオは何も言わない。ただベッドに座り俯いている。

その表情は分からないが、ラテ夫はハッキリと感じた。

その恐怖。底知れなさ。そう、まるでこの街に初めて来たときのような不穏さ。



「ぇ、ぁ、ぇと、」


「待って!」



言葉に詰まるラテ夫にラル子はとっさに声をかけた。



「ちょっと待って、1回ストップ。今何か言おうとしてた?」


「ど、どうした。いやまぁ、そうだけど。」


「また()()になっちゃうかもしれない。」


「あ、確かに。」


「カメオさんの近くにいると、ペンダントが反応しちゃうのかも。」


「マジか!たいしたことない会話が()()として判定されちゃったらもったいないぜ・・・。あれ?でもそういえばさっきさ、」



カメオの部屋に入ってからの会話を思い出したラテ夫。



────────────────────────────


「犯人の名前は『あ』から始まりますか?」とか。そうすれば~


────────────────────────────



「俺、言ってるぞ?質問っぽいこと。」


「あー確かに。よく覚えてたわね。」


「カメオも目の前で聞いてる。」


「そうね。でもペンダントは反応しなかった。その時何してたっけ?」


「何って、今と一緒だよな?ソファに座ってルールの紙を眺めてた。」


「ペンダントは?」


「いや普通。首にかかってたよ?」


「・・・もしかして、そういうこと?ペンダントは手で持っていなきゃいけない・・・?」



今までの3回の質問の状況を思い出す2人。

全てラテ夫は手にペンダントを持っていた。



「なるほど、それが条件か。ペンダントを手にした状態で、対象者に向かってYESかNOで答えられる質問をすると、それが()()として成立する。そんなとこか?」


『それで合ってますよ♡』



突然入ってくるカメオ。



「なんでお前が知ってんだ!てかだったら教えろよ!1回質問無駄にしちまったじゃんか!」


「まーまー、分かったんだしいいじゃない。」


『ごめんね♡じゃぁ代わりにほら、そこ見てくださいよ。』



そう言ってカメオは、ペンダントの周囲に位置する宝石を指さした。

リングの周囲に位置する10個の宝石。

よく見ると、1時~4時の辺りに位置する3つの宝石は黒ずんでいるようだ。



「知らないうちに、右側の宝石が黒ずんでる。これ、全部で10個ってことは・・・。」


『そう。ほら、今って3回質問して残りは7回でしょ?』


「なるほど。これに対応してたのか。」



ラテ夫は残り7つの宝石を見つめ考えた。

まだ7回あるのか、もう7回しかないのか。

そして、これが0になったときに何が起こるのか・・・!



「とにかく、うかつに触っちゃダメって事だわね。」



その矢先だった。

ラテ夫は突如立ち上がり、なんとペンダントを手にした。



「ちょっと!話聞いてたの!?それ持ってると質問が始まっちゃうわよ!?」


「分かってる。さっきは動転したけど、今のやりとりの時間で落ち着けた。大丈夫。」


「どーいう事?」



ラル子がそう尋ねると、ラテ夫は一呼吸置き、目を見開き話し始めた。



「カメオはこの事件の重要人物。でも怪盗Tとは知り合いという関係じゃない。でもその正体を知っている。わけ分かんないだろ。2番目と3番目の質問、矛盾してんだ。」


「確かに。」


「例えば、国民の誰もが怪盗Tの正体を知ってるけど捕まってない、って事なら矛盾しないけど、それなら警察がとっくに逮捕してるさ。でもできていない。海外に逃亡してるんなら、日没までに俺が逮捕できない!!」


「なんか勘違いしてそーな推理だけど聞くわ。」


「怪盗Tの正体は誰にも知られていないはず。でもコイツだけは知っている。」


『・・・。』



ベッドに座るカメオを見下すラテ夫。

カメオはまた俯いたままだ。



「考えられるのは一つ。質問だ。」



固唾を飲むように見守るラル子。

ラテ夫はペンダントをカメオにつきつけた!



「カメオ。お前、怪盗Tだろ?」




その瞬間、ペンダントは光り輝き回転し始める!

いままでの3回よりも、より強力な光と回転を見せていた!

カメオを見つめるラテ夫。それを見つめるラル子!

その間誰も何も言わず、ただ時間だけが過ぎた!


そしてプレートの回転が止まった瞬間───




『YES』



カメオは重い口を開いた。

その口調は、先ほどまでの飄々とした優男とは違っていた。



「カメオ・・・。」


「カメオさん・・・。」


『ふぅ・・・。いやーバレちゃいましたね。思ったより早かったな~。いやね、2番目の回答、微妙じゃないですか。本人ってのは、知り合いって言えるか言えないか微妙でしょ?でもまぁ知り合いって感じではないからNOにしたんですよね。いや、フォローしようとしたんですよ?ミスリードになっちゃいそうだったから。でもすぐに3番目の質問が来ちゃって、タイミングがなかったんですよ~。いや、おめでとうございます♡』



カメオは飄々とした口調に戻っていた。

どこかスッキリしているようにも見えた。



「ラル子?」


「はい。」


「逮捕だああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


「え!あ、え?」



突如叫ぶラテ夫に困惑するラル子。

驚いたのはカメオも同じ。



『え!え!話が違う!ちょっと!』


「ラル子!窓をガードだ!そこから外へ逃げる可能性もある!俺は玄関を封鎖する!」



1Kのアパート。2つの逃げ道を封鎖しにじり寄るラテ夫。



「タイムリミットは日没?おいおいまだ13時過ぎだぜ。名探偵を甘く見ていたようだな。さぁ堪忍しろ!」


『いや、だから違うって!』


「違わねーよ!ペンダントが示した。お前も認めた!犯人はお前だ!逃がすなよラル子。コイツを捕まえれば、俺は探偵業に戻れる・・・!」


「いや、えーと、その。」


「かかれ!」



飛び掛かったラテ夫。

身長180cm。身体能力は高く、頭脳よりも体を使うほうが得意。のはずだった。


しかし、カメオはとっさにアクロバティックな動きでラテ夫を受け流し、



『ラル子!』


「きゃっ。」



ラル子に向かって今度は飛び掛かろうとした。

思わず頭を抱えてしゃがむラル子。

カメオはその上を目掛けて飛び込むと、そのまま窓を割って外に逃げてしまった。


ラテ夫はひっくり返った姿勢であっけにとられている。



「ナンテヤツ。」



ラル子はゆっくりと立ち上がった。



「あー怖かった。もー、何してんのよ?」


「ホントだよ。」


「ちーがうわよ。ラ・テ・夫!」


「俺?何言ってんだよ。アイツが、」


「そーじゃなくて!」


「とにかく後を追おう。逃げられたらヤバイ。間に合わない!」


「違う!いったんストップ!座る!」



なんだか今日はやけに主導権を握る。

普段と違うラル子に疑問を感じつつ、やや圧倒されるように言う事を聞いた。



「何なんだよ?」


「ねぇ、これ見て。何て書いてある?」



渡されたのは問題文であった。



「さんざん読んだよ。何がおかしいんだ?」


「あたしたちの目的!」


「え?怪盗Tを捕まえることじゃないのか?」


「ちがーう!」


「違うの!?」


「ちがうよ、見てよ!」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-問題-


「怪盗Tからの挑戦状」



警察に一通の犯行予告が届いた。


差出人はもちろん今世間で話題沸騰の怪盗Tだ!


翌朝、各メディアがこのニュースを大々的に報じている。


それを見て、カメオはホッとした。


いったいなぜ?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




「あたしたちはこの問題を解かなきゃいけないの!」


「問題を解くって・・・、この、いったいなぜ?ってとこ?」


「そう。」


「カメオがホッとしてる理由?」


「そう!」


「・・・。そんなの知ってどうすんだ?」


「そーゆー問題なの!」


「じゃぁ捕まえても意味ないって事?」


「というか、捕まえられないかも?」



その発言に深く考えるラテ夫。



「・・・なぁ、ラル子。何か知ってんのか?今日のお前、いろいろ変だぞ?」


「いや、そんな事ないと思うけど・・・。」


「捕まえられないって、まるで決まってるみたいに。捕まえてみてもいいじゃん、無理だったけど。」



ラル子も少し考えた。

しばらくの沈黙の後、ラル子は切り出した。



「この世界、現実だと思う?」


「!?な、なんだよ急に。」


「そう、急だったじゃん。突然ワープした。このペンダントだって非科学的。この街なんて見たことない。携帯も、ホラ。」



ラル子はおもむろにスマホの画面を見せつけた。



「ね?圏外。今時そんな場所ってある?日本に。これだけ人がいるのに。」


「たしかに変だ・・・。カメオも明らかに変人・・・。」


「それはどーでもいいけど。とにかく、ここは架空の世界なんじゃないかって。」


「架空の世界!?」


「そう。よくは分からないけど・・・。」


「確かに、説明がつかないことが多すぎるな。」


「架空・・・というか、ゲームの世界。」


「ゲーム!?」


「そう、“水平思考ゲーム"。」


「水平思考ゲーム・・・?そういえば封筒にも書いてあったな、そんな事。」


「あたし、ちょっとだけそのゲームやったことあって、だからなんとなくルールとか知ってたの。」


「そうだったのか!いや、普段と違ってやけに頼りになるなって思ってさ!」


「いや別に、ホントにちょっとだけ、やった事あるだけ・・・。」


「ふーん・・・。となると、ゲーム内のプレイヤーは決められた選択肢の範囲でしか行動しかとれない。だからこっちとしても捕まえるとかそういう事はできない、って事?」


「多分。それにほら。」



今度は割れた窓の外を指さした。

すぐ階下。先ほどの電気屋の前にはなんとカメオも立っている!

そして・・・


『ホッ』



「あいつ!!逃げずに何やってんだ!?」


「・・・ホッとしてるんだと思うよ。」


「ホッとって、あ!そういう事か。カメオもゲーム内のキャラクター!」


「そう、しかも重要キャラ。だから決まり決まった行動をしてくれてる。分かりやすくね。」


「・・・。」



謎の老婆、謎の問題、謎の男カメオ、謎の街。

一つ一つ思い出し考えるラテ夫。



「今俺たちは、ゲームの世界にいる。もしだよ?もしもこのゲームクリアできなかったら・・・。つまり10回の質問で謎が解けなかったら・・・どうなるんだ?」


「・・・。」


「例えば、この世界から出られなくなったりとか・・・。」



しばらくの2人は何も言えなかった。

時間だけが過ぎ、お互い目を合わせず、ただ街ゆく人々の動きを見つめるしかなかった。



「・・・とにかく、問題を解こう・・・それしかない。」



空気の重さにそう切り替えたラル子。

しかし問題文を読み返しながら、次第に指先が震え始めた。



「おいどうしたんだよ。」


「読んでみた。怪盗Tをカメオに変換して読んでみたの。そしたら・・・。」


「貸せ!」



強引に紙を奪い、声に出し読みはじめたラテ夫。



「警察に一通の犯行予告が届いた。

差出人はもちろん今世間で話題沸騰の()()()だ。

翌朝、各メディアがこのニュースを大々的に報じている。

それを見て、カメオはホッとした・・・。 」



読み終えてようやく、ラル子の気持ちを理解した。



「謎が・・・さっきより深まってる・・・。矛盾してる!アイツ、なんで注目されてんのに喜んでんだ・・・?」


「分からない。」


「いろいろおかしいだろ!ヒントを得たらかえっておかしくなったぞ!警察や世間に注目されたら困るだろフツー!」


「・・・。」


「ホッとしてるって」


「見て!」



ラル子はそう言い、フローリングの床を指さした。

気付いた時には2人の影が床一面に伸びていた!

慌てて空を見上げるラテ夫。



「おいおいおい!タイムリミットって」


「日没。」



質問を言い終わる前に答えるラル子。



「もう考えてる時間はない!とにかくカメオを連れ戻そう。早くくしないと・・・。」


「・・・連れてくるね。」



ラル子はそう一言告げ部屋から出ると、カメオに何か話しかけた。

ラテ夫それを窓から横目で見ながら、もう1度問題文とルールを確認している。



「(なんなんだよ・・・全然意味わかんねーよ、どうすりゃいいんだよ!)」



そこに2人が戻ってきた。

カメオは口元に静かな笑みを浮かべていた。



『さぁ、そろそろ再開します?尋・問♡ 嘘はつきませんよ?ついてもいません。それに』


「黙ってろ・・・ゲームキャラのくせに。」


『・・・あなただってそうでしょ?』


「やめて。言い争ってる時間はない。」



ラル子の断定的に攻める口調に、余裕は感じられなかった。



「大丈夫。質問、考えといた。」



口元をキリッと閉め、決意を固めるラテ夫。

まるで挑発するかのように、飄々とした態度のカメオ。

向かい合う2人をよそに、ラル子は太陽を見つめていた。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-問題-


「怪盗Tからの挑戦状」



警察に一通の犯行予告が届いた。


差出人はもちろん今世間で話題沸騰の怪盗Tだ!


翌朝、各メディアがこのニュースを大々的に報じている。


それを見て、カメオはホッとした。


いったいなぜ?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-質問-


1:お前なんて関係ないだろ? NO

2:お前怪盗Tの知り合いか? NO

3:お前は怪盗Tの正体を知らない? NO

4:お前が怪盗T? YES


質問回数 残り6回!────




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