第1章「怪盗Tからの挑戦状」 第2話
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-問題-
「怪盗Tからの挑戦状」
警察に一通の犯行予告が届いた。
差出人はもちろん今世間で話題沸騰の怪盗Tだ!
翌朝、各メディアがこのニュースを大々的に報じている。
それを見て、カメオはホッとした。
いったいなぜ?
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・質問
1:お前なんて関係ないだろ? NO
質問回数 残り9回!────
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見知らぬ街 見知らぬ男
最初にこの空間に感じた違和感は、次第に不安へと変わっていった。
「あいつ・・・この事件に関係あんのか・・・?」
「・・・ってことだわね。」
『だねー♡』
「お前が言うなよ!」
真剣な剣幕の2人をよそに、飄々とした態度のカメオ。
『ハハハ。ごめんごめん♡』
カメオはニコニコ笑いながら返している。
「クソっ、笑っていられるのも今の内だからな?」
そう言ってラテ夫はペンダントをカメオの顔の前に見せびらかした。
「コイツで今からお前を尋!問!する。嘘は通用しないぜ・・・!」
『・・・。』
「怖くて何も言えないか・・・何か言ったらどうだー?」
『何かって、そんなこと言われても・・・。』
「何とか言ったらどうなんだって言ってんだよ!」
『いやだからそれじゃぁ。』
「質問じゃないって事でしょ。」
ラテ夫の態度に呆れたラル子は渋々会話に入ってきた。
「質問?」
「もー忘れたの?そのペンダント、質問に反応するんだって。」
「あ、そか。よーし質問だ。おいカメオ、犯人の名前を教えろ。」
『・・・。』
「・・・。」
「っておい!は・ん・に・ん・の・な・ま・え!」
『・・・。』
「・・・。」
「なんで2人とも黙り込んでるんだよ!」
「ルール。」
「ルール?」
「もう1回読み返してみて?」
「・・・おう。」
ラル子に渡されたルールと書かれた紙をもう1度読み返すラテ夫。
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-ルール-
水平思考で謎を解け!
・「質問」は計10回まで。「回答」も質問回数に含みます。
《例》
「犯人は滑っている?」(質問) ⇒ YES (残り質問回数3回)
「犯人はスキー選手だ!」(回答) ⇒ NO 残念! (残り質問回数2回)
「犯人は滑りたくなかった?」(質問) ⇒ YES (残り質問回数1回)
「犯人はお笑い芸人だ!」(回答) ⇒ YES 正解おめでとう!
・「YES」か「NO」で回答できる質問のみ有効です。
《例》
「お前は誰だ?」「犯人を教えろ?」 ⇒ 回答できません。無効です。
「犯人と知り合いか?」「お前が犯人か?」 ⇒ YESかNOで回答できます。有効です。
「凶器は鈍器?」「現場はドンキ?」 ⇒ 重要ではありません。or YESでもNOでも成立します。
(本作品のシステム上、この回答は意図的に避けています。)
・タイムリミットは日没まで。
もし間に合わなかった場合~~~~~~~~~~~~~~~~
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「YESかNOかで答えられる質問・・・。」
「そう。つまりさっきの質問は」
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「犯人の名前を教えろ。」
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直前の質問を回想し、納得するラテ夫。
「YESかNOでは答えられない。」
「そーいうこと。」
『そーゆー事♡』
「ぐぬぬ・・・。」
拳を握り、カメオの態度に沸騰するラテ夫にラル子は告げた。
「もう、冷静になってよ。時間ないんだから。」
そう言ってラル子は空を指さした。
「そうだった、日没まで、それもルールだったもんな。」
「そー!」
『そー♡』
「コイツ!」
ルールの紙を眺めているラテ夫に、カメオはそっと話しかけた。
『あの~、コレ長くなります?』
「・・・。」
『え、無視ですか?』
「お前の質問には答えん。」
『何でですか~!お互い様でしょ~!』
「うるさい!読んでんだ、集中できん。」
『いやほら、見てくださいよ。』
そう言って上方を指さすカメオ。
「さっき見た。時間がない。」
『いやそ~じゃなくて、暑いじゃないですか。こんな直射日光の中、ずっと立ち話ですか?ボク日焼けしたくないな~。』
「うるさい!探偵は汗かいてなんぼなんだ。我慢しろ、関係者。」
『カメオです~。名前で呼んでください~。』
「お前と喋ってんのが一番暑苦しいわ!」
『ホッ。じゃぁ意見が一致したということで、行きましょうか!』
「どこへだよ。」
『だからアソコですよ。』
そう言って再度上方を指さすカメオ。
ラテ夫が見ると、電気屋のすぐ横。小綺麗なアパートの2階を示しているようだった。
『ボクん家。どうです?飲み物くらい出しますよ?大事なお客様ですから。』
「ラテ夫ー、喉乾いたー。」
『ほらお嬢さんもそう言っていることですし。』
「お前ら、組んでんのか?」
『はい♡』
「なわけねーだろ!」
カメオの部屋に案内された2人。
1Kで8畳ほど。どうやら一人暮らしのようだ。
テレビやベッド、パソコンにラジカセ。隅には雑誌や新聞が詰まれている。
その浮いている容姿からはかえって想像できない、普通の男の部屋という感じだった。
しかし、奇麗に整頓されているのが、どこか生活感が無い、そっけないようにも見えた。
『奇麗な部屋でしょ?』
「ラテ夫ん家よりはね?」
「お前、どっちの見方だ。さっさと聞くこと聞いて出るぞ?こんなとこ。」
『えぇ♡』
カメオはニコニコしている。
ソファに座りながらラテ夫はさきほどの紙を見つめていた。
「質問の仕方を工夫しないといけないのか。」
「そうだね。」
クーラーのきいた快適な室内。
カメオへの怒りはようやくクールダウンしたようだ。
「とにかく手当たり次第質問しまくってみよう!」
「どーやって?」
「例えば、犯人の名前は『あ』から始まりますか?とか。そうすればいつかは特定できんだろ?」
「何時間かかると思ってんのー?」
「いやでも名前さえわかればあとは警察でもなんでも・・・。とにかく名探偵お手柄!って事には。」
「無理よ無理。もっと効率いい質問があるんじゃない?」
「効率のいい・・・?」
「そもそも、カメオさんって事件の関係者ではあるけど、犯人を知らない可能性もあるんじゃない?」
「あ!確かに。」
「てかそれが普通よ。それこそ被害者とか。」
「・・・推理小説でも探偵が最初にコンタクトをとるのって被害者だよな大体。それも関係者だもんな。くそー。アイツなーんか怪しい雰囲気あるんだよなー。絶対悪い奴だと思ってた。惑わされてた。」
「じゃぁ、何て質問する?」
「んー・・・、ソイツが被害者かどうか聞いてみよう。YESかNOで答えられるだろ?」
「そうだわね。でもなんか、効率がね。」
「また効率・・・。」
「うーんとね、例えば「被害者ですか?」って質問したとする。で、答えがYESならいいんだけど、もしNOだったら彼は何になるのかしら?」
「何にって・・・、つまり事件の関係者であって被害者じゃない。例えば犯行グループの一人、いやでも待てよ?ただの「目撃者」かもしれない。警察とか捜査する側の人間も「関係者」って言えるかも。てことは俺らもまさか関係者の一員か?」
「考えすぎなとこもあるけど、いい感じだわね。そういう事。回答がNOだったら捜査がいまいち進展しないの。難しい話なんだけどね。あと、そもそも事件はまだ起こってないから被害はない。ってことは「被害者」って言葉自体適さないかもね。」
「なるほど・・・分からん・・・。」
「分からんのかい!」
「考えるの、苦手なんだよ・・・。」
「いや、被害者ですか?は決して悪い質問ではないんだけどさ、ルール分かってる?質問の回数。」
「回数?」
「最初に書いてあるでしょ!」
もう1度ルールを読み始めるラテ夫。
「10回ぃ!?このウソ発見器、10回しか使えないのか!」
「もーそれでいーよ・・・。そー10回。だから質問は効率よくしていかなきゃ!」
「・・・なんかラル子、お前今日スゴイな。何か知ってんのか?」
「え!?まさか、そんな事ないよー。私だって初めてだもん。」
「そう?いやなーんか普段より頼りになるなーって。」
「あはは・・・(初めてだよ、本当に。ココに来たのはね。)。じゃぁ質問、してみよっか。」
「よし!」
呼吸を整えた2人は、カメオの方を見つめていた。
『決まりました?質問。』
「何て聞くの?」
「さっきの話はよく分かんないけど、あんまりピンポイントな質問はよくないって事のような気がして。だからもっと、何ていうか、ぼんやりとした質問しようかな。ほら、さっきラル子が「犯人を知らない可能性もある~」って言ってたじゃん。だからそれを聞くよ。」
「うん、分かった。」
「じゃぁカメオ、尋問だぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
突如表情が挑発的になるラテ夫。
「ぁ、怒りは収まってなかったのか。我慢してただけだったのか。」
『尋問じゃなくて質問です~。』
「なんでもいい、いくぞ!お前、怪盗Tの知り合いか?」
やはり突如光を挙げて輝くペンダント!
回転するプレートを見つめる3人!
「どっちだ!?」
およそ15秒!
プレートが示したのは── 「NO」!!
「NO!?・・・ってことは知り合いじゃない!じゃぁお前は怪盗Tの正体を知らないって事だな!?」
ラテ夫がそう言った時だった。
「あ!」
ラル子は叫んだ。
なんとプレートが再度回転し始めたのだ!
「何だ!?」
焦るラル子と驚くラテ夫。
勢いよく回転するプレートを横目にラテ夫は聞いた。
「おい、何で回ってんだコレ?」
「そりゃさ、質問したからじゃん。もちろん。」
「いやしたけど、NOって1回出たじゃん。やり直しなんてあんの?」
「違うわよ、その後!」
「後??」
直前の自身の発言を回想するラテ夫。
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「じゃぁお前は怪盗Tの正体を知らないって事だな!?」
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「あれは違う!ちょっと確認しただけじゃん!質問じゃねーって!」
「でも反応しちゃった。」
「なんだよそれ。」
「・・・で、答えは何だったの?」
気付いた時にはプレートの回転は止まっていた。
ペンダントが示していたのは、またしても「NO」だった!
「NOだ。」
「NO!?」
落ち着くラテ夫と驚くラル子。対照的な2人。
「なに驚いてんだ?」
「いやだって、何て質問したか思い出してみて?」
「だから、「怪盗Tの正体を知らない」だよな。それがNOって事は・・・ハッ!おいおいおいおい!?」
「そう。」
「コイツ・・・正体知ってる・・・!!」
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-問題-
「怪盗Tからの挑戦状」
警察に一通の犯行予告が届いた。
差出人はもちろん今世間で話題沸騰の怪盗Tだ!
翌朝、各メディアがこのニュースを大々的に報じている。
それを見て、カメオはホッとした。
いったいなぜ?
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-質問-
1:お前なんて関係ないだろ? NO
2:お前怪盗Tの知り合いか? NO
3:お前は怪盗Tの正体を知らない? NO
質問回数 残り7回!────