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水平思考ゲームへようこそ  作者: イツキ
怪盗Tからの挑戦状
2/7

第1章「怪盗Tからの挑戦状」 第1話

どこか静かで不穏な町・・・。

行き交う人々、流れる風。


全てが初めて見る景色なのに、新鮮味は感じない。



「ラル子・・・生きてるか・・・?」


「死んでないけど・・・分かんない!」



だだっ広い大通りの真ん中に2人は立っていた。

もちろんどうやってここに来たか、連れてこられたのか、今何時か、ここはそもそもどこなのか、全てが謎だ。



「なんだココ・・・。なんで俺たちここにいるんだ?なぁ・・・俺たちハメられたんじゃねぇか!?やっぱりあのばあさん取り立てだったんだ!それでこれからさ!強制労働施設みたいなとこでさ!うおおおおおお人生の終わりだあああああ!」



思わず頭を抱えようとするラテ夫。



「痛い痛ーいッ!!」



ラル子の声に気付き、ようやく手を繋いでいたことを思い出したラテ夫。



「あ!ごめんごめん!って、俺たちいったい何時間手ぇ繋いでたんだ・・・?」


「そんな事よりラテ夫ー、それ何ー?」



怒りに震え握ったもう一方の拳には、封筒が握られている事を思い出した。



「これも何時間握ってたんだ・・・そういえば何だったんだ?コレ。」


「・・・何か書いてあるね。」



クシャクシャの封筒を広げると、そこには



「「水平思考ゲームへようこそ」」



2人は声をそろえて読み上げた。



「・・・どういう意味だ?」


「中を見てみようよ」



封を開けると、紙が入っていた。


そこには、こう書かれていた─────






━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-問題-


「怪盗Tからの挑戦状」



警察に一通の犯行予告が届いた。


差出人はもちろん今世間で話題沸騰の怪盗Tだ!


翌朝、各メディアがこのニュースを大々的に報じている。


それを見て、カメオはホッとした。


いったいなぜ?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━






「なになに?警察に──・・・──いったいなぜ?」



全て声に出し読み上げたラル子。

その横でまじまじとラテ夫も一緒に読んだ。



「・・・知ってる?」


「どれの事?」


「いや、この怪盗Tって奴。」


「知らなーい。」


「だよなぁ・・・誰?てかそもそもこれ何だ??」


「問題・・・って書いてあるね?」


「・・・、よく分かんないけど、この怪盗Tって奴を捕まえればいいのか?」



突然目を大きくするラテ夫。



「待てよ?怪盗Tからの挑戦状だぁ!?それが俺のところに来たってことは!」


「ことは?」


「フン、やーはーりーな!見ている奴は見ているんだよ。俺の天才的な推理センスを!あのばあさん隅に置けないじゃないかー!世紀の怪盗Xと名探偵ラテ夫の勝負を見たかっただけなんじゃないか!?なんだなんだー普通に依頼してくれたって引き受けたのにー。俺が怖気ずくとでもー?ハーッハッハハハ!」


「怪盗はTだよ()探偵・・・ん?これは?」



封筒の中には、もう1枚の紙が入っていた。



「ねぇ、ルールって紙が入ってるけど?」







━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-ルール-


水平思考で謎を解け!


・「質問」は計10回まで。「回答」も質問回数に含みます。


《例》

「犯人は滑っている?」(質問) ⇒ YES (残り質問回数3回)

「犯人はスキー選手だ!」(回答) ⇒ NO 残念! (残り質問回数2回)

「犯人は滑りたくなかった?」(質問) ⇒ YES (残り質問回数1回)

「犯人はお笑い芸人だ!」(回答) ⇒ YES 正解おめでとう!



・「YES」か「NO」で回答できる質問のみ有効です。


《例》

「お前は誰だ?」「犯人を教えろ?」 ⇒ 回答できません。無効です。

「犯人と知り合いか?」「お前が犯人か?」 ⇒ YESかNOで回答できます。有効です。


「凶器は鈍器?」「現場はドンキ?」 ⇒ 重要ではありません。or YESでもNOでも成立します。

(本作品のシステム上、この回答は意図的に避けています。)



・タイムリミットは日没まで。


もし間に合わなかった場合~~~~~~~~~~~~~~~~

━━━━━━━━━━━~







「何なんだ?質問?回答?え、怪盗?」


「なんだかすごーく肝心なところの字がかすれて読めないんですけどー。さっきクシャクシャにしちゃった人は誰ですかー?」


「ぐぬぬ・・・。タイムリミットなんかあんのか・・・?そしたら迎えが来るのか?」


「だったらまだ、いいけどね。」


「ん?ラル子、何か知ってんの?」


「いや別に?そんな事ないけど・・・ただなんか、すごーく不安な・・・」


「不安に感じることなんてないさ!今目の前にしてるのは誰だい?」


「さっき廃業しかけた名探偵様です。」


「・・・。その通りだ。なら大丈夫。闇夜に潜む大怪盗、華麗にズバッと捕まえて見せましょう!」


「だからタイムリミットは日没だって。闇夜にはならないわよ。」








────街を見渡す2人。



「とにかく、この怪盗Tって奴の情報を探そう。ラル子、二手に分かれて聞き込み開始だ。そういえば今は・・・。」



腕時計を確認するラテ夫。



「12:10か。」


「あたしたちがここに来たのって、ちょーど12時頃かな?」


「ん?あぁそうなるな・・・って、え?となると・・・俺たち、ほとんど時間経ってなくないか?ばあさんに誘拐されたのもちょうどその頃だったような・・・?アレ?」


「んー、とにかくさっさとこの()()に挑戦しよーよ。」


「あぁそうだな。日没って、今は18時くらいか?って事は・・・たった6時間しかないのか!?それだけの時間で大怪盗を捕まえる!?そんな事が出来たらまさに」


「名・探・偵。だね!」


「よーし、やるぞー!!」


「(・・・大丈夫かしら、思っていたより・・・)ボソッ」


「ん?何か言った?」


「ううん?何も。ところでさ、この問題、もう一人登場人物がいるようだけど・・・」







2人の目の前には、こじんまりとした電気屋さんがあった。

何台も積まれた店頭のテレビには、ワイドショーが映し出されていた。

アナウンサーもコメンテーターも大興奮している。


「遂にキターーー!怪盗T!!次の標的はあああレインボーダイヤー!!!」


自然と2人も吸い込まれるように足を運んだ。

店の前にもいつしか人だかりが出来、十数人のギャラリーが囲んで見入っていた。内容は勿論



「・・・これが、」


「怪盗T・・・。」



店の奥からはラジオの音が聞こえていた。犯行予告の文を繰り返し読み続けているようだ。

「我は怪盗T 竜宮城に潜むレインボーダイヤ 華麗に頂戴致す ~~~~~~~」


レジの横には新聞や雑誌も売られていた。中身こそ分からないが、全て表紙は怪盗T一色だ。



「見たことない番組だなぁ・・・これどこのローカル局だ?俺たちはマジでどこまで連れてこられたんだ?」



ラテ夫がいぶかしげにモニターに注視していると



『ホッ』



隣には、どこか高貴な印象を受ける色白の若者が立っていた。

それもそのはず。

時代錯誤な服装・・・というかコスプレと言うべきか?

中世のヨーロッパが舞台の、おとぎの国の王子様とも言えそうな風貌の・・・


とにかく、とても()()()()()い男が立っていた。



『ホッ』



ラテ夫の耳元で息を吐いていた。


「・・・ちょっとアンタ、さっきから何なんだ!人の耳元で!」


『ホ?あ~すみませんすみません、つい。いや~すみません。ホッ。』


「だからそれをやめろって!わざとやってんのか!?」


『そんな~、いいじゃないですか~♡ホッ。』


「何だよさっきからホッホホッホって!」



その男は笑顔だった。

だが、周囲のギャラリーの熱狂的な表情とは違う。

どこか静かで不穏な男。

まるで安堵しているような・・・。



「ねぇラテ夫ー?さっきさ、」


「ラル子!早く行くぞ!今変な奴に絡まれてる。」


「いや、さっき言いそびれたんだけどー、この問題、登場人物がもう一人いるわよね?」


「もう一人?」


「そー。この4行目。」


「“それを見て、カメオはホッとした”・・・カメオ?」


「そう、カメオさん。」


「カメオ?知らないよそんな奴。テレビでもカメオなんて一言も・・・」



『ちょっと~、さっきから何なんですか~?』



先ほどの若者が話しかけてきた。



「ゲ、さっきの非常識な奴!まだいたのか。」


『何なんですか~?』


「それはコッチのセリフだ!」


『コッチのセリフですよ~。』


「な・に・が・だ!」


『だってさっきから~、ボクの名前をず~っと耳元で繰り返してるじゃないですか~。何で知ってるんですか~?』


「え!?」



思わず驚いたラテ夫。



『何で知ってるんですか~?怖いです~。警察呼びましょうか~?いやそれはチョットやめとこうかな~・・・。』


「コイツが、そのカメオ!?この事件の?」


「この問題の、ね。」


『え~?何々~?問題~?事件~?』


「うるさいな、黙ってろ。」


『え~いいじゃないですか~面白そう♡見たところあなた、探偵?』


「そうだ!俺は私立探偵ラ」


『の、コスプレ?もしかしてホームズ!?ボク大好きなんですよ~ホームズ♡』


「俺は本物だ!」





『・・・(クスクス)。この世界にホンモノなんて必要ないですよ。ね?お嬢さん?』


「・・・。」



男はクスクス笑いながらラル子に小声でつぶやいた。

ラル子は、何も返さなかった。



「もう何なんだよ・・・ほら、よく文章読んでみろ、カメオなんて最後一文に出てきただけ、オマケじゃないか。俺が知りたいのは怪盗Tの情報!」



問題文の最後を指さし、面倒くさそうに吐き捨てるラテ夫。



『ホッ』


「もう!いい加減にしろよ!お前なんてこの事件に関係ないだろ!?」





その時だった。


ラテ夫の胸の中央が突然光りだした!




「わ!何だ!?・・・あのペンダントか!」




ラテ夫は、謎の老婆の指示で首に掛けられていたペンダントを思い出した。

眩い光を放ったが、事務所で最後に見たほどではない。

薄目でなんとか開けていられた。




「ぇ、動いてる・・・!回ってる!?」




その大ぶりのペンダントは、よく見ると2つのパーツに分かれていた。


1つは装飾が施された大きなリング。

表面には、10個の宝石が均等に装飾されていた。


もう1つは、1枚の円形のプレート。

リングの中に縦に1本の軸が通っており、そこに刺ささって回転できるようになっていた。


その装飾の内1時の方向、右上の一つが眩しく光り輝き、リングの中央のプレートが勝手に回転しているのだ!



「ぉぃぉぃ、また何かされるんじゃ・・・」



怯えるラテ夫をよそに回転は勢いを増し、やがて光量のピークと共にピタリと止まった・・・!




「・・・何だったんだ・・・。ん?これは・・・NO?」



プレートにはよく見ると掘り込みの文字でNOと描かれていた。



「NO・・・」



ペンダントを裏返すと、プレートの裏側にはYESの文字が同様に描かれていた。



「こっちはYES・・・でも、今のはこっちが表示されたからNOって事だよな・・・?何が?もうわけわからん。ラル子ー!いるかー?」


「いるわよ、ずっとここに。」


「よかった、誘拐されてなかった。なぁ、ちょっとどういう意味なんだ?コレ。」


「自分で考えなさいよ、本物の探偵なんでしょ?」


「考えるの、苦手なんだよ・・・。」


「・・・多分、ね。」



ラル子はそう言って、先ほどの2枚目の紙を取り出した。



「コレ見て。」


「ルール?」


「そう。読んでみて。」


「えっと・・・あ、”「YES」か「NO」で回答できる質問のみ有効です。”」


「そう、つまり」


「今のが()()ってわけか。」


「多分ね。」


「んー、でも俺今質問なんてしたか?誰に?」


「・・・ちょっと思い出してみよっか。」





先ほどの直前のやり取りを回想する2人。



──────────────────────────────


「もう!いい加減にしろよ!お前なんてこの事件に関係ないだろ!?」


──────────────────────────────



「たしか、お前なんて関係ないだろ?ってカメオに問い詰めた。つまり」


()()した。そして」


「ペンダントが”NO”を示した。」


「そう。」


「今のが・・・()()・・・。なんて・・・なんて便利な道具なんだ!!コレ、携帯型のウソ発見器なのか!すげぇ!」


「いやなーんか違うような。」


「と・に・か・く!これで犯人を突き止めればいいってことだな♪ワクワクして来たぜ!」


「それもなーんか・・・。」




興奮して喜ぶラテ夫だったが、ほどなく事の重大さに気づいた。



「・・・ちょっと待った。俺、”関係ないだろ?”って質問したよな?で、NOだったわけだよな?ってことはさ・・・カメオは・・・」



少し後ろで様子を見ていたカメオ。

2人が同時に振り向くと、悟られない程度に微かに微笑み、小声で呟いた。




『さぁ、ゲームの始まりだ。』





━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-問題-


「怪盗Tからの挑戦状」



警察に一通の犯行予告が届いた。


差出人はもちろん今世間で話題沸騰の怪盗Tだ!


翌朝、各メディアがこのニュースを大々的に報じている。


それを見て、カメオはホッとした。


いったいなぜ?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


-質問-


1:お前なんて関係ないだろ? NO


質問回数 残り9回!────



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