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転生公爵様はお肉がお好きなようです

作者: 英仁

「セシリア、君との婚約は解消させてもらう」


そう言ったのは、オーランド公爵家当主クラウス・オーランドだ。

190を越える身長にサラッサラの金髪、澄んだ空のように蒼い瞳。

まぁ、一言でいえばイケメンで、今の俺である。


元々は日本で生きていた俺は28歳のサラリーマンだったのだが、いわゆるブラック企業に勤務していたため毎日日付が変わっても会社で仕事をし、朝日が昇る頃に少し仮眠をしてまた仕事に戻る。

そんな生活を毎日していたためか、過労でぶったおれそのまま死んでしまった。


死んでも死にきれなかった俺は怨霊となり上司を次から次へと呪い……なんてことはなく、映画をタダ見したり、のんびり散歩したりと生前出来なかったことを心行くまで楽しんだ。

ちなみに、こっそり女風呂を除いたこともあるのだが、霊体になると性欲も無くなるようで、特に興奮することもなかったとだけ言っておく。


そんな幽霊ライフを送っていたある日、空から一本の糸とその先に釣り針が着いているものがぶら下がっているのを見つけ、気になって手を振れた瞬間、グンッと釣り針が跳ね俺の指に突き刺さり、そのまま空へと釣り上げられてしまった。


突然の事にジタバタする俺と、釣り上げた俺を見てガッツポーズする釣竿を持ったじいさん。

じいさんは、俺が落ち着いたのを見ると、

「じゃ、転生ね」

とコンビニ行ってくるね見たいに言われ、気が付くとクラウスという人物に生まれ変わっていた。


公爵とか金持ちじゃんラッキーと悠々自適な生活を送っていたある日、将来の結婚相手と紹介されたのがスカーレット伯爵家の令嬢であるセシリア・スカーレットだ。


公爵と伯爵で階級に差があるが、当主である俺の父と彼女の父が学園からの親友らしく、さらに子どもが生まれたときにそれぞれ男と女が生まれたために、「じゃあ、結婚させようぜ!」となったらしい。


そしてお互い順当に成長し、今日学園の卒業式典の場で俺が彼女との婚約を破棄したというわけだ。




って、なに言ってくれちゃってしやがりますかねぇ!

どの口がそんなことを言いやがった!

俺のだよ!


「そんな……。なぜですか!」


セシリアか声をあげる。

普段は大人しいセシリアがここまで焦ってくれると思うと、おもわずにやけそうになる。

表情筋動かないけど。


「君が彼女にした多くのこと、まさか知らないとは言うまい」

「し、知りません!私には覚えがありません!」


セシリアの釣り目がちの大きな目に涙が溜まる。

見た目のせいか、クールな性格だと思われがちなセシリアだが、本当は本を読んだり裁縫が趣味だったり、あと実は少し人見知りするせいで上手く喋れないだけだったりする。

だが、その事は俺だけが知っていればいい。

だって婚約者だからね!


そして、これにはマリアナ海溝よりも深く、地球よりも重い理由があるのだ。

その理由となる張本人が、今俺の右腕に抱きついているキャロル・オーガス男爵令嬢だ。

彼女はまるでゲームの主人公かのように学園で多くの男子生徒を落とし、そしておれも落とされたというわけだ。


ちゃうねん、最後まで聞いて。

確かに俺は、彼女の事が好きだ。

だがこれは、彼女と近くにいるときだけの感情であり、彼女がいないときの俺はセシリアが好きなのだ。


流石におかしいと思った俺は、影の者を使い彼女のことを調べた。

そして分かったことは、彼女が魅了のスキルを持っていることだった。


やっかいなモノである魅了スキルだが、解除方法も存在する。

それは、自分が魅了スキルの効果にかかっていることを自覚し、無理やり解除することだ。


俺が魅了スキルの効果にかかっている知ったのが、卒業式典が始まる前で、さっきからなんとか解除しようとしているのだが。


「残念だよ、セシリア。やはり君は公爵家にはふさわさしく無いようだ」


とか言っちゃってるわけ。

セシリア以上にふさわしいやつなんかいるわけがない。

みろ、あの母性の塊を!

あれに顔をうずめてハスハスするのが俺の癒しなんだぞ。

対して彼女はどうだ。

小さいというか、無い。


あと、セシリアの長い髪に顔をつっんで匂いをかぐのも好きだし、細くてシュッとした指もすきだし、釣り目がちなのを悩んでるのもすきだし、とにかくセシリがすきだ。

他の女はいらん。

だから動け!動けよ俺の体ァ!


「今この場をもって宣言しよう」


するな、やめろ。


「セシリア・スカーレットとの婚約を解消しーー」


しない、したくない。


「彼女との婚約をーー」


ヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロ


「ここに宣言しオボロダラッシャアアアアアアアッッッ!!!」


バギィッ!という音が辺りに響く。

セシリアが慌ててこちらへとかけよってきた。


ギリギリの所で動いた右手を自分の顔面に向けて全力で振り抜いたのだ。

ギリギリだよね?

ざわつく周りを無視して、俺は声をあげる。


「せ、宣言しない!セシリアとの婚約も解消しないし、彼女との婚約も宣言しない!」

「ク、クラウス様、鼻血が……」


セシリアが回復魔法をかけるために伸ばした手を握ろうと伸ばした手を、他の女がとる。


「クラウス様が好きなのは私ですよね!?」


そう彼女が言う。

彼女の魅了スキルの発動条件、それは対象に触れながら声をかけることだ。

つまり、俺の手をとり声をかけてきた彼女の魅了スキルが発動する。


「そんなわけがない」


俺に魅了スキルがかかることは絶対にあり得ないのだ。

自覚し、自力で魅了スキルを解除した場合、解除されるだけでなくあるスキルを獲得する。


『魅了完全耐性』


自力で解除した俺は魅了完全耐性を取得したため、彼女のはもちろん他の人の魅了スキルでさえ効かないのだ。


未だに繋がれたままの手を振りほどき、セシリアの手を繋ぎ抱き寄せる。


「そ、そんな女のどこがいいのですか! 腰回りには贅肉が着いていますし、胸も無駄に大きいなど、恥さらしではありませんか!」


そう、この世界では女性はとにかく細いことが美とされる。

だから、ほとんどの女性は胸が小さいし、腰だってコルセットをギュンギュンに絞めるせいで、砂時計のような体をしているのだ。


「いいことを教えてやろう」


そう言いながら俺はセシリアを正面に移動させ抱き締める。

突然の奇行にざわざわするが、無視無視。


「遠い国の言葉で、この腰の肉のことをラブハンドルという」

「ラブハンドル……?」

「ラブは愛を意味し、ハンドルは取っ手の意味だ。そして、愛する者と抱き合うと、手はどこにいく?」

「腰……」

「そう、腰だ。故にラブハンドル。対して貴様はどうだ。何が楽しくてそんな貧相な体を抱き締めなければならん」


フニフニ


「そしてこの胸も、ここに顔をうずめると柔らかさに包まれ嫌なことを忘れられる」


フニフニフニ


「そしてこの二の腕。ただただ柔らかく気持ちが良い」


フニフニフニフニ


「そう、全ての女性には肉がたらん! コルセットなど外してしまえ!飯をくえ! あと、適度な運動も忘れるな」


その瞬間、全ての女性に電流が走る。

まさかの公爵家次期当主から太れ宣言だし、しょうがない。


電流が走ったか知らんけど。


「あの、クラウス様……」

「どうした、セシリア」

「これ以上揉むのは……」


そういえば、さっきからずっと揉んだままだった。

一日中揉んでても飽きないぞ。


「すまない、嫌だったか?」

「その、嫌と言うわけではないのですが、できれば人目の無いところで……」


セシリアの声は大きくなかったものの、周りは静まっていたため、その一言はよく響いた。

ほら、皆何いってんの!?みたいな表情をしているが、潤んだ瞳をしながら胸元からこちらを見上げるセシリアを見ていたらこう、たまらなくなるわけで。


「では、二人になれる場所へ移ろう」


そういってセシリアを横抱きにする。

突然のことに驚いたセシリアが慌てて首に腕を回す。

頬に当たるセシリアの二の腕の感触を楽しみつつ会場を後にする。


ちなみに、あの女が魅了スキルを持っていることは、影の者を通して国王陛下へ報告済みであり、そのうち彼女は拘束されることになるだろう。







さて、その後の話をしよう。

まず、女性の美の価値観が変わった。

公爵家の婚約者がそうならということで、1人がコルセットを外し、また1人外し……となりその内にコルセットを着ける女性はいなくなった。


いや、着ける人もいるにはいるのだが、以前の様にギュンギュンに絞めて砂時計になるためではなく、体のラインを整える程度のものが新しく出て来て、それなりに人気があるようだ。


これがいわゆる知識チートというやつなのだろう。


そして、キャロル・オーガス。

彼女はあの後やはり拘束された。

魅了スキルは危険ということで処刑されることが決まりかけたが、現在彼女は王都のとある屋敷に軟禁状態となっている。

彼女の魅了スキルを利用して、要人に魅了完全耐性を着けるためである。

その代わり、彼女は屋敷の敷地内に限っては自由に歩き回る事ができ、衣食住も約束されている。

屋敷内には使用人が数名いるが、その誰もが魅了完全耐性のスキルを持っているため、彼女を逃がしたりする心配はない


最近は恋愛小説を書いており、出版もされている。

平民貴族問わず結構人気が出てきているようだ。


そして俺とセシリアだが。

学園を卒業した次の月に結婚し、今では夫婦となっている。

最近のお気に入りは、セシリアのむっちりした太ももを枕にしながらお腹に顔をうずめることだ。

胸とはまた違った肉感を堪能しつつ、毎日の仕事の疲れを癒している。

セシリアの足が痛まないよう長時間はできないのが悩みではあるが。


「セシリア」

「どうしました?」


セシリアが俺の髪をすきながら微笑む。


「俺のわがままでこんなことさせてすまないな」


一瞬手が止まるが、すぐに動き出す。


「クラウス様が喜んでくださるなら、私は全然かまいません。それに……」

「それに?」

「コルセットをギュンギュンに絞めるのは辛かったので、それから解放された時はとても嬉しかったです」

「やっぱり辛いのか、アレ」

「口から胃が飛び出てしまうかと思ったときもありました」


俺がセシリアにコルセットを着けるのをやめるように言ったのが12歳の頃だ。

さらに食事もちゃんと食べるように言い、適度に運動もさせた。

もちろん、セシリアが運動するときは俺も一緒にしていた。

おかげでセシリアの肉は、脂肪と筋肉が適度にミックスされそれはもう極上の肉になっているのだ。


「クラウス様……」

「どうした?」

「くすぐったいです」


知らない内に腹肉に顔を埋めながら、腰肉も堪能していたようだ。

セシリアが身をよじらせながら笑う。


「子どもが出来たらまた新しい肉感が堪能できると思うと楽しみだ」

「もういますよ?」

「え!?」

本来魅了スキルにかかった場合、スキルを持った者と離れても一時的に解除されることはありません。

なのに、クラウスが一時的に解除されていたのは、あまりにも肉がなくセシリアには自分好みの肉が着いていたからです。


という、どうでもいい裏設定。

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