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言葉の神が見る世界  作者: つまり%
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03 雉も鳴かずば撃たれまい2

前回の投稿からかなり遅れまして申し訳ございません。今月から仕事も少しだけ落ち着いたので少しずつ投稿出来ればと思います。m(_ _)m

雫と2人で田坂村に向かって山道を歩いていると、徐々に日が落ちてきた。


(そろそろ夕暮れ時になりますか。)


一言主神の手を引いて隣を歩いている雫を見てみると、やはり疲労が少なからずあるのか、歩く速さが最初に比べ遅くなってきている。


(雫も私の加護があるとはいえ蘇ったばかり。人としてもまだ幼い彼女には、この辺りで体力を回復させてあげませんといけませんね。)


「雫、今日は日が落ちてきたのでこの辺りで野宿をしましょう。」

「あ、あの大丈夫なのでしょうか。」

「ん?何が心配なんだい?」

「え、えっと山の中ですと、野生の動物から、その襲われないでしょうか?」

「ああ、その事は心配要らないよ。この山は私の領域内だからね。基本的にここで暮らしている動物達は襲ってこないよ。」

「そうでしたか・・・」

「だから安心して大丈夫ですよ雫。それに田坂村に入る前に雫にはお話しておかないといけない事もあるからね。」


そう言うと一言主神は雫と繋いでいた手を解き、木が生い茂っている方に向かって数歩進んで行く。

そして歩みを止めた一言主神は両手を少し広げ、息を深く吸い込み言葉を発した。


『 我が領域内に住まう愛しきもの達よ。一時の間我らが安息の時を過ごす事を許されよ。』


その声は決して大きくないが、されど山全体に響き渡るかのような不思議な音程で、とても心地よく心洗われるような洗礼されていた。


「ぇっ・・・・・・」


一言主神の神力に驚いた雫だったが更に予想外の事が起きた。

森の方から次々と動物達が出てきたのだ。

鳥や狼、猪や熊まで一言主神の周りには集まってきた。


「おやおや、わざわざ出てきてくれたのかい?ありがとう。」

「ん?そうか、これは助かるよ。案内頼めるかな?」


どうやら一言主神は動物と話しできるみたいだ。


(何をお話されているのでしょうか?)


雫が不思議に思っていると一言主神は一通り話し終えたのか雫の元に戻ってきた。


「山の動物達が人間でも大丈夫な洞穴へ案内してくれるみたいですし、雫が食べても大丈夫な木の実や山菜がある場所も教えてくれましたよ。」

「す、すごいです。動物とお話出来るんですか?」

「一応神の端くれですからね。力を使えば意思疎通は出来ますよ。」


改めて一言主神の凄さを体感した雫は動物達に促されるように森の中へ入っていった。


案内され歩くこと数分大きな樹に小ぶりの洞穴がある所に着いた。


「今日はここで寝るとしましょう。」


中を見てみると地面に枯葉が敷き詰めてあり、夜になっても寒くは無いような構造になっていて、更に木の実や山菜なども少し置いてあった。


「あ、あの。ありがとうございます。」


案内してくれた動物達にお礼を言うと、動物達がのそのそと雫の周りに集まってきた。


「な、なんですか?」


少し怖かったが、雫に頭を擦りつけたり、雫の頭に乗ってきたりしてきた。


「雫にお礼を言われて嬉しかったみたいですね。」

「わっぷ・・・。う、嬉しいですけど・・・激しいです。」

「皆さん、雫が大変な事になってますから、そろそろ離れてください。」


一言主神が言うと雫の周りにいた動物達はしぶしぶ離れていった。


「はぁ、はぁ。びっくりしました。」

「彼らも悪気はあった訳では無いから許してあげてください。」

「だ、大丈夫です。」

「君達もありがとうございます。今夜は何とかなりそうです。さぁ元の居場所に帰ってくださっていいですよ。」


一言主神の言う通りに動物達がその場からあちこちに離れていった。


「さて、雫。今日は色々とありましたから疲れたでしょう?せっかくだから木の実など食べてください。大丈夫、ちゃんと人間が食べれる物ですから。」

「は、はい。では失礼します。」


2人で洞穴に入り、雫は置いてあった木の実を食べ始める。

そこでふと一言主神が何も食べてない事に気がついた。


「あ、あの。お食べにならないのですか?」

「ん?ああ、私は神だからね。食事は必要無いんだよ。それより雫に今後について話があってね。」

「今後ですか?」

「そう、村に入る前に私の人間としての設定を知ってもらいたくてね。」


神様のままだと怪しいし、どうやって身分を証明するかも分からないから人間としての設定が必要だと雫はなんとなく理解出来た。


「まず、人としての名前ですけど〘 葛城 諺(かつらぎ げん)〙と名乗ります。そして薬師として日本全国を旅しながら人々を癒す修行をしている。と言う設定にします。」

「雫は私の助手見習いとして一緒に旅をしているという事にしましょう。ですから雫は私の事を諺と呼んでください。」

「えっと・・・・・・、わかりました。げ、諺さん。」

「ありがとうございます。雫。」

「それから親しみを持ってもらうために、自分の事を僕と言いますし、口調も今より少し砕けた感じで行こうと思います。」


今後の自分達のことを話していると、次第に雫がうつらうつらし始めた。


「すみません雫。長く話しすぎましたね。雫に知っておいて欲しい事は話しましたのでそろそろ寝ましょうか。」

「あ、ありがとう・・・ございま・・・す。」


ゆっくりと枯葉の上に横たわった雫は、余程疲労が溜まっていたのか直ぐに夢の中へ旅立った。


(やはり無理をさせてしまっていましたか。)


雫の頭を撫で、そんな事を思った一言主神はふと雫の懐からこぼれ出した物を見つけた。


「おや?これは・・・」


それは古ぼけた小さな御守りだった。

それもただの御守りではなく、少しだけ神力が宿っていた。


(これは私が数年前に幼い少女にあげたものと同じだ。)

(なるほど。雫はこれを持っていたから、私の元にいた訳ですね。)


そして一言主神はこの御守りをあげた時の事を思い出した。

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